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本章
131話:イケメン護衛の事情 ③〜ランスSide〜
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クリストファー王子宛に届いた一通の夜会への招待状。
差出人はヴェルニ公爵からだった。
「ヴェルニ公爵から招待状など…珍しい事もあるのだな」
「お断りの手紙を書いておきますか?」
「いや…少し考えさせてくれ」
普段のクリストファー王子ならば、すぐに断る案件だが今回は少し様子が違っていた。
翌日、クリストファー王子はヴェルニ公爵の夜会へ参加すると言われ私は少し驚いてしまう。
「カオルも従者として参加をする予定だ。ランスはカオルの護衛を頼むよ」
「分かりました…。ですが、本当によろしいのですか…?」
「あぁ。ヴェルニ公爵も最近は大人しくしているようだしね…。それにカオルに社交界の場を見せておきたいんだ。今後の為にもね…」
なんだか上機嫌のクリストファー王子に少し不安を感じた…。
何も起こらなければいいのだが…。
✳︎
夜会当日。
クリストファー王子に連れられてカオル様も用意していた馬車へと乗り込まれる。
従者の格好をして仮面をつけたカオル様…。
仮面をつけたところでその愛らしさが消える事はなく、逆に目立ってしまうのではないかと些か不安を覚えた。
ヴェルニ公爵の夜会は噂に聞いていた通りの豪華なものだった。
カオル様はその豪華さに圧倒された様子だった。
クリストファー王子はヴェルニ公爵の夜会に参加したというだけで注目の的になっており、すぐに人集りができてしまう。
私とカオル様は人混みを避けて少し離れた場所へと移動すると、しばらくしてクリストファー王子のいる場所からガシャンッ!と割れる音と悲鳴が聞こえる。
「な、何っ!?」
「っっ!?」
ザワザワと騒がしくなる会場にクリストファー王子に何かあったのではないかと不安がよぎる。
すぐにでもクリストファー王子の安否を確認したいが…今はここから離れる事はできない…
「ランスさん!クリス…大丈夫でしょうか…?」
「分かりません…」
「あの…俺の事はいいんでクリスの方に行って下さい!」
「しかし…」
「俺より王子であるクリスの方が大事でしょ!早く!」
カオル様の言葉に私は少し考え…クリストファー王子の元に行くことを決断する。
「……すみません。すぐに戻りますのでここにいて下さい」
カオル様は私の言葉に頷き、私はクリストファー王子のいる場所へと向かった。
人混みをかき分けてクリストファー王子を見つけるが、特に怪我などはしていなかった。
騒ぎの原因も、どうやら給仕の者がグラスを落としその音に驚いた者が叫び声を上げただけのようだった。
安心した私はすぐにカオル様の元へと戻ったのだが……姿が見当たらない。
トイレにでも行かれたのか…?
そう思いトイレを探すが…いない…。
カオル様…どこに…
少しずつ不安は大きくなり私は思いつく場所を必死に探していく。
「すまない。尋ねたいことがある。10分程前にここにいた黒髪の従者を見なかったか?」
私は近くにいた給仕へと声をかけると、給仕は少し考え答えてくれる。
「あぁ…そういえばそこにいた従者の方はエントランスホールで見かけましたよ」
「エントランスホールで…?」
「はい…。急がれている様子でそのまま外に向かわれていました」
「そんな!」
私は急いでエントランスホールへ向かい、そこでも警備兵に確認するが皆同じことを言う。
カオル様が逃げだした…何故?
もう私一人ではどうする事も出来ず、私はクリストファー王子にカオル様の件を報告する。
「カオルが…いなくなった…だと…」
「はい…。私が目を離した間に…申し訳ございません」
クリストファー王子は私の報告に怒りの表情を見せる。
「すぐに辺りを探しましたが見つからず、給仕の者達がカオル様が一人で外へと出て行く所を見たという情報が数件…」
私の報告を聞いていたクリストファー王子の顔は怒りと絶望が入り混じる。
「カオルが…逃げ出したと言いたいのか…?」
「……はい」
「嘘だ…嘘だ…。カオルが私の元から逃げるなんて…もう二度と離さないと誓ったのに…」
二度と…?
以前にも同じような事があったのか…気にはなったが今はカオル様の居場所を突き止めるのが先だ。
「クリストファー王子…。カオル様の捜索は私達にお任せください…」
「ダメだ…。私も探す…連れ戻さないといけないんだ…。カオルを…絶対に…」
普段のクリストファー王子ならば絶対に見せることのない歪んだ表情に思わず冷や汗をかいてしまう…。
それから私達はカオル様を必死に探すが…その姿を見つける事はできなかった…。
差出人はヴェルニ公爵からだった。
「ヴェルニ公爵から招待状など…珍しい事もあるのだな」
「お断りの手紙を書いておきますか?」
「いや…少し考えさせてくれ」
普段のクリストファー王子ならば、すぐに断る案件だが今回は少し様子が違っていた。
翌日、クリストファー王子はヴェルニ公爵の夜会へ参加すると言われ私は少し驚いてしまう。
「カオルも従者として参加をする予定だ。ランスはカオルの護衛を頼むよ」
「分かりました…。ですが、本当によろしいのですか…?」
「あぁ。ヴェルニ公爵も最近は大人しくしているようだしね…。それにカオルに社交界の場を見せておきたいんだ。今後の為にもね…」
なんだか上機嫌のクリストファー王子に少し不安を感じた…。
何も起こらなければいいのだが…。
✳︎
夜会当日。
クリストファー王子に連れられてカオル様も用意していた馬車へと乗り込まれる。
従者の格好をして仮面をつけたカオル様…。
仮面をつけたところでその愛らしさが消える事はなく、逆に目立ってしまうのではないかと些か不安を覚えた。
ヴェルニ公爵の夜会は噂に聞いていた通りの豪華なものだった。
カオル様はその豪華さに圧倒された様子だった。
クリストファー王子はヴェルニ公爵の夜会に参加したというだけで注目の的になっており、すぐに人集りができてしまう。
私とカオル様は人混みを避けて少し離れた場所へと移動すると、しばらくしてクリストファー王子のいる場所からガシャンッ!と割れる音と悲鳴が聞こえる。
「な、何っ!?」
「っっ!?」
ザワザワと騒がしくなる会場にクリストファー王子に何かあったのではないかと不安がよぎる。
すぐにでもクリストファー王子の安否を確認したいが…今はここから離れる事はできない…
「ランスさん!クリス…大丈夫でしょうか…?」
「分かりません…」
「あの…俺の事はいいんでクリスの方に行って下さい!」
「しかし…」
「俺より王子であるクリスの方が大事でしょ!早く!」
カオル様の言葉に私は少し考え…クリストファー王子の元に行くことを決断する。
「……すみません。すぐに戻りますのでここにいて下さい」
カオル様は私の言葉に頷き、私はクリストファー王子のいる場所へと向かった。
人混みをかき分けてクリストファー王子を見つけるが、特に怪我などはしていなかった。
騒ぎの原因も、どうやら給仕の者がグラスを落としその音に驚いた者が叫び声を上げただけのようだった。
安心した私はすぐにカオル様の元へと戻ったのだが……姿が見当たらない。
トイレにでも行かれたのか…?
そう思いトイレを探すが…いない…。
カオル様…どこに…
少しずつ不安は大きくなり私は思いつく場所を必死に探していく。
「すまない。尋ねたいことがある。10分程前にここにいた黒髪の従者を見なかったか?」
私は近くにいた給仕へと声をかけると、給仕は少し考え答えてくれる。
「あぁ…そういえばそこにいた従者の方はエントランスホールで見かけましたよ」
「エントランスホールで…?」
「はい…。急がれている様子でそのまま外に向かわれていました」
「そんな!」
私は急いでエントランスホールへ向かい、そこでも警備兵に確認するが皆同じことを言う。
カオル様が逃げだした…何故?
もう私一人ではどうする事も出来ず、私はクリストファー王子にカオル様の件を報告する。
「カオルが…いなくなった…だと…」
「はい…。私が目を離した間に…申し訳ございません」
クリストファー王子は私の報告に怒りの表情を見せる。
「すぐに辺りを探しましたが見つからず、給仕の者達がカオル様が一人で外へと出て行く所を見たという情報が数件…」
私の報告を聞いていたクリストファー王子の顔は怒りと絶望が入り混じる。
「カオルが…逃げ出したと言いたいのか…?」
「……はい」
「嘘だ…嘘だ…。カオルが私の元から逃げるなんて…もう二度と離さないと誓ったのに…」
二度と…?
以前にも同じような事があったのか…気にはなったが今はカオル様の居場所を突き止めるのが先だ。
「クリストファー王子…。カオル様の捜索は私達にお任せください…」
「ダメだ…。私も探す…連れ戻さないといけないんだ…。カオルを…絶対に…」
普段のクリストファー王子ならば絶対に見せることのない歪んだ表情に思わず冷や汗をかいてしまう…。
それから私達はカオル様を必死に探すが…その姿を見つける事はできなかった…。
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