美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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本章

127話:社交界 ①

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初めての社交界…一体どんな感じなんだろうか?
綺麗に着飾った金髪碧眼のお姉さんとか見てみたいな…って、この世界は男しかいないんだったな…。

『社交界』という言葉に浮かれている俺は、クリスの従者として付き添う事になった。
従者用の服も仕立ててもらい着替えを済ませるとクリスから仮面をつけられる。

「なぁ…やっぱり仮面は必要か?」
「もちろんだよ!じゃないと一緒に連れていけないよ?」
「う……じゃあ付ける…」

そう言って俺は仮面をつけたままクリスを見上げた。

「でも……仮面付けても可愛いからやっぱり心配だな…」
「気にしすぎだって!ほら!ランスさん迎えに来てるよ!」

ランスさんは数分前から部屋の隅で俺達のやり取りをずっと見ていた。可愛いだのなんだの言われていた場面を見られるのは…やはり恥ずかしい…。

「クリストファー王子。馬車の準備は出来ています」
「あぁ分かった。さぁ、カオル行くよ」
「うん…」

いつものより綺麗に着飾ったクリスに手を引かれ馬車へと乗り込む。しばらく馬車に揺られていると大きな屋敷が見えてくる。

「なぁクリス。今日行く所って…あそこか?」
「あぁそうだよ」
「うわぁ…でっかい屋敷だな!」
「そうだね…。一体どれだけの金をかけたんだか…」

屋敷へと到着すれば、たるんだボディーの羽振りの良さそうなおじさんが出迎える。
クリスを見るなり猫なで声を出してきて…なんだか寒気を感じた。

「クリストファー王子。わざわざお越しいただきありがとうございます」

ニタニタと笑いながら話しかけるおじさんを見てクリスは無表情のまま「あぁ。今日はよろしく頼む」と、一言声をかけて中へと入っていく。

クリスの後を追うように俺とランスさんも屋敷の中へと進んで行く。ランスさんがおじさんの横を通り過ぎる時に軽く会釈をしていたので俺も同じように頭を下げる。
頭を上げた時におじさんと目が合うと、ニタニタした笑顔を向けられ「ようこそ…」と小声で呟かれた…。


おじさんの気持ち悪さに鳥肌を立てながら屋敷の大きな扉を抜けて中へと入って行く。
床一面に敷き詰められた高そうな絨毯。
そこら中に飾られたド派手な装飾品に目がチカチカしてしまう…。


しかし、ド派手な廊下を抜け広々としたホールへと足を踏み入れれば煌びやかな世界が広がっていた。

「すげぇ…」

思わず足を止めて周りを見渡してしまうとランスさんが隣にやってくる。

「カオル様…。人が多いので、はぐれないように気を付けて下さい」
「あ…はい」

なんだかいつもよりピリピリしているランスさんの背中を見失わないようについていく。
少し前を歩くクリスの周りには、王子に挨拶を…と、すぐに人集りができる。

「クリストファー王子がヴェルニ公爵の夜会に来るなんて…。珍しいな…」

皆がクリスに注目しており、ヒソヒソとクリスの事を話している。
そして、気がつけばクリスはあっという間に囲まれ姿が見えなくなった。

「あ…。ランスさん。クリスが…」
「落ち着くまでは近づかないでおきましょう」

ランスさんにそう言われ俺とランスさんはホールの端に移動する。
今だにクリスの周りは人が絶えず…いや、さらに人が多くなった感じもする。

「凄い人集りですね…」
「えぇ。クリストファー王子は人気がありますから…」
「ランスさん。クリスの側に行かなくて大丈夫なんですか?」
「クリストファー王子にはカオル様の警護に専念しろと言われていますので。それに他の者が護衛についています」
「なんか…すみません」
「気にしないで下さい。カオル様を守るのが私の使命ですから」

ランスさんはそう言って珍しく俺に微笑みかけてくれた。

仮面を付けた者達に囲まれたクリスを遠目にみながらボーっとしていると、クリスのいる方角からガシャンッ!と、何かが割れる音と人の悲鳴が聞こえてくる。

「な、何っ!?」
「っっ!?」

クリスのいた周囲はザワザワと騒がしくなり、ランスさんは眉間にシワを寄せてそちらを見つめる。

クリス…大丈夫かな…?

ランスさんを見上げると少し殺気だった雰囲気を纏わせていた。

「ランスさん!クリス…大丈夫でしょうか…?」
「分かりません…」
「あの…俺の事はいいんでクリスの方に行って下さい!」
「しかし…」
「俺より王子であるクリスの方が大事でしょ!早く!」
「……すみません。すぐに戻りますのでここにいて下さい」

そう言ってランスさんはクリスの元へと向かい人混みの中に消えていく。
俺は大人しく隅っこでランスさんの帰りを待っていると、お屋敷の使用人に声をかけられる。

「カオル様でしょうか?」
「はい…そうです」
「クリストファー王子より別室で待機して欲しいと伝言を預かっております。ご案内してもよろしいですか?」
「別室に…ですか…?」

ランスさんに、この場所に待機しているように言われたけれど…

使用人さんへと目線を向けると優しく微笑まれる。

「この騒ぎですのでカオル様に何かあってはいけないと…。一旦部屋で落ち着くまで待っていて欲しいとの事です」
「でも…」
「クリストファー王子も、そちらに向かわれる予定ですのでご安心下さい」

クリスとランスさんのいる方へと視線を向けるがまだザワザワと騒がしく、ランスさんが戻ってくる様子もなかった。
 
「……分かりました。ついて行きます」
「はい。では、お部屋へ案内しますね」

使用人さんに連れられてホールから離れた奥の部屋へと案内される。

「では私はここで。ごゆっくりお過ごし下さい」
「はい。ありがとうございました」

広々とした部屋に一人だけ取り残され、とりあえずソファーのある奥の方へと進んでいくと人の気配を感じ…


「ねぇ。君がカオル?」


声のする方向に振り向くと…とても綺麗な少年がこちらを見ながら微笑んでいた。
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