147 / 181
本章
127話:社交界 ①
しおりを挟む
初めての社交界…一体どんな感じなんだろうか?
綺麗に着飾った金髪碧眼のお姉さんとか見てみたいな…って、この世界は男しかいないんだったな…。
『社交界』という言葉に浮かれている俺は、クリスの従者として付き添う事になった。
従者用の服も仕立ててもらい着替えを済ませるとクリスから仮面をつけられる。
「なぁ…やっぱり仮面は必要か?」
「もちろんだよ!じゃないと一緒に連れていけないよ?」
「う……じゃあ付ける…」
そう言って俺は仮面をつけたままクリスを見上げた。
「でも……仮面付けても可愛いからやっぱり心配だな…」
「気にしすぎだって!ほら!ランスさん迎えに来てるよ!」
ランスさんは数分前から部屋の隅で俺達のやり取りをずっと見ていた。可愛いだのなんだの言われていた場面を見られるのは…やはり恥ずかしい…。
「クリストファー王子。馬車の準備は出来ています」
「あぁ分かった。さぁ、カオル行くよ」
「うん…」
いつものより綺麗に着飾ったクリスに手を引かれ馬車へと乗り込む。しばらく馬車に揺られていると大きな屋敷が見えてくる。
「なぁクリス。今日行く所って…あそこか?」
「あぁそうだよ」
「うわぁ…でっかい屋敷だな!」
「そうだね…。一体どれだけの金をかけたんだか…」
屋敷へと到着すれば、たるんだボディーの羽振りの良さそうなおじさんが出迎える。
クリスを見るなり猫なで声を出してきて…なんだか寒気を感じた。
「クリストファー王子。わざわざお越しいただきありがとうございます」
ニタニタと笑いながら話しかけるおじさんを見てクリスは無表情のまま「あぁ。今日はよろしく頼む」と、一言声をかけて中へと入っていく。
クリスの後を追うように俺とランスさんも屋敷の中へと進んで行く。ランスさんがおじさんの横を通り過ぎる時に軽く会釈をしていたので俺も同じように頭を下げる。
頭を上げた時におじさんと目が合うと、ニタニタした笑顔を向けられ「ようこそ…」と小声で呟かれた…。
おじさんの気持ち悪さに鳥肌を立てながら屋敷の大きな扉を抜けて中へと入って行く。
床一面に敷き詰められた高そうな絨毯。
そこら中に飾られたド派手な装飾品に目がチカチカしてしまう…。
しかし、ド派手な廊下を抜け広々としたホールへと足を踏み入れれば煌びやかな世界が広がっていた。
「すげぇ…」
思わず足を止めて周りを見渡してしまうとランスさんが隣にやってくる。
「カオル様…。人が多いので、はぐれないように気を付けて下さい」
「あ…はい」
なんだかいつもよりピリピリしているランスさんの背中を見失わないようについていく。
少し前を歩くクリスの周りには、王子に挨拶を…と、すぐに人集りができる。
「クリストファー王子がヴェルニ公爵の夜会に来るなんて…。珍しいな…」
皆がクリスに注目しており、ヒソヒソとクリスの事を話している。
そして、気がつけばクリスはあっという間に囲まれ姿が見えなくなった。
「あ…。ランスさん。クリスが…」
「落ち着くまでは近づかないでおきましょう」
ランスさんにそう言われ俺とランスさんはホールの端に移動する。
今だにクリスの周りは人が絶えず…いや、さらに人が多くなった感じもする。
「凄い人集りですね…」
「えぇ。クリストファー王子は人気がありますから…」
「ランスさん。クリスの側に行かなくて大丈夫なんですか?」
「クリストファー王子にはカオル様の警護に専念しろと言われていますので。それに他の者が護衛についています」
「なんか…すみません」
「気にしないで下さい。カオル様を守るのが私の使命ですから」
ランスさんはそう言って珍しく俺に微笑みかけてくれた。
仮面を付けた者達に囲まれたクリスを遠目にみながらボーっとしていると、クリスのいる方角からガシャンッ!と、何かが割れる音と人の悲鳴が聞こえてくる。
「な、何っ!?」
「っっ!?」
クリスのいた周囲はザワザワと騒がしくなり、ランスさんは眉間にシワを寄せてそちらを見つめる。
クリス…大丈夫かな…?
ランスさんを見上げると少し殺気だった雰囲気を纏わせていた。
「ランスさん!クリス…大丈夫でしょうか…?」
「分かりません…」
「あの…俺の事はいいんでクリスの方に行って下さい!」
「しかし…」
「俺より王子であるクリスの方が大事でしょ!早く!」
「……すみません。すぐに戻りますのでここにいて下さい」
そう言ってランスさんはクリスの元へと向かい人混みの中に消えていく。
俺は大人しく隅っこでランスさんの帰りを待っていると、お屋敷の使用人に声をかけられる。
「カオル様でしょうか?」
「はい…そうです」
「クリストファー王子より別室で待機して欲しいと伝言を預かっております。ご案内してもよろしいですか?」
「別室に…ですか…?」
ランスさんに、この場所に待機しているように言われたけれど…
使用人さんへと目線を向けると優しく微笑まれる。
「この騒ぎですのでカオル様に何かあってはいけないと…。一旦部屋で落ち着くまで待っていて欲しいとの事です」
「でも…」
「クリストファー王子も、そちらに向かわれる予定ですのでご安心下さい」
クリスとランスさんのいる方へと視線を向けるがまだザワザワと騒がしく、ランスさんが戻ってくる様子もなかった。
「……分かりました。ついて行きます」
「はい。では、お部屋へ案内しますね」
使用人さんに連れられてホールから離れた奥の部屋へと案内される。
「では私はここで。ごゆっくりお過ごし下さい」
「はい。ありがとうございました」
広々とした部屋に一人だけ取り残され、とりあえずソファーのある奥の方へと進んでいくと人の気配を感じ…
「ねぇ。君がカオル?」
声のする方向に振り向くと…とても綺麗な少年がこちらを見ながら微笑んでいた。
綺麗に着飾った金髪碧眼のお姉さんとか見てみたいな…って、この世界は男しかいないんだったな…。
『社交界』という言葉に浮かれている俺は、クリスの従者として付き添う事になった。
従者用の服も仕立ててもらい着替えを済ませるとクリスから仮面をつけられる。
「なぁ…やっぱり仮面は必要か?」
「もちろんだよ!じゃないと一緒に連れていけないよ?」
「う……じゃあ付ける…」
そう言って俺は仮面をつけたままクリスを見上げた。
「でも……仮面付けても可愛いからやっぱり心配だな…」
「気にしすぎだって!ほら!ランスさん迎えに来てるよ!」
ランスさんは数分前から部屋の隅で俺達のやり取りをずっと見ていた。可愛いだのなんだの言われていた場面を見られるのは…やはり恥ずかしい…。
「クリストファー王子。馬車の準備は出来ています」
「あぁ分かった。さぁ、カオル行くよ」
「うん…」
いつものより綺麗に着飾ったクリスに手を引かれ馬車へと乗り込む。しばらく馬車に揺られていると大きな屋敷が見えてくる。
「なぁクリス。今日行く所って…あそこか?」
「あぁそうだよ」
「うわぁ…でっかい屋敷だな!」
「そうだね…。一体どれだけの金をかけたんだか…」
屋敷へと到着すれば、たるんだボディーの羽振りの良さそうなおじさんが出迎える。
クリスを見るなり猫なで声を出してきて…なんだか寒気を感じた。
「クリストファー王子。わざわざお越しいただきありがとうございます」
ニタニタと笑いながら話しかけるおじさんを見てクリスは無表情のまま「あぁ。今日はよろしく頼む」と、一言声をかけて中へと入っていく。
クリスの後を追うように俺とランスさんも屋敷の中へと進んで行く。ランスさんがおじさんの横を通り過ぎる時に軽く会釈をしていたので俺も同じように頭を下げる。
頭を上げた時におじさんと目が合うと、ニタニタした笑顔を向けられ「ようこそ…」と小声で呟かれた…。
おじさんの気持ち悪さに鳥肌を立てながら屋敷の大きな扉を抜けて中へと入って行く。
床一面に敷き詰められた高そうな絨毯。
そこら中に飾られたド派手な装飾品に目がチカチカしてしまう…。
しかし、ド派手な廊下を抜け広々としたホールへと足を踏み入れれば煌びやかな世界が広がっていた。
「すげぇ…」
思わず足を止めて周りを見渡してしまうとランスさんが隣にやってくる。
「カオル様…。人が多いので、はぐれないように気を付けて下さい」
「あ…はい」
なんだかいつもよりピリピリしているランスさんの背中を見失わないようについていく。
少し前を歩くクリスの周りには、王子に挨拶を…と、すぐに人集りができる。
「クリストファー王子がヴェルニ公爵の夜会に来るなんて…。珍しいな…」
皆がクリスに注目しており、ヒソヒソとクリスの事を話している。
そして、気がつけばクリスはあっという間に囲まれ姿が見えなくなった。
「あ…。ランスさん。クリスが…」
「落ち着くまでは近づかないでおきましょう」
ランスさんにそう言われ俺とランスさんはホールの端に移動する。
今だにクリスの周りは人が絶えず…いや、さらに人が多くなった感じもする。
「凄い人集りですね…」
「えぇ。クリストファー王子は人気がありますから…」
「ランスさん。クリスの側に行かなくて大丈夫なんですか?」
「クリストファー王子にはカオル様の警護に専念しろと言われていますので。それに他の者が護衛についています」
「なんか…すみません」
「気にしないで下さい。カオル様を守るのが私の使命ですから」
ランスさんはそう言って珍しく俺に微笑みかけてくれた。
仮面を付けた者達に囲まれたクリスを遠目にみながらボーっとしていると、クリスのいる方角からガシャンッ!と、何かが割れる音と人の悲鳴が聞こえてくる。
「な、何っ!?」
「っっ!?」
クリスのいた周囲はザワザワと騒がしくなり、ランスさんは眉間にシワを寄せてそちらを見つめる。
クリス…大丈夫かな…?
ランスさんを見上げると少し殺気だった雰囲気を纏わせていた。
「ランスさん!クリス…大丈夫でしょうか…?」
「分かりません…」
「あの…俺の事はいいんでクリスの方に行って下さい!」
「しかし…」
「俺より王子であるクリスの方が大事でしょ!早く!」
「……すみません。すぐに戻りますのでここにいて下さい」
そう言ってランスさんはクリスの元へと向かい人混みの中に消えていく。
俺は大人しく隅っこでランスさんの帰りを待っていると、お屋敷の使用人に声をかけられる。
「カオル様でしょうか?」
「はい…そうです」
「クリストファー王子より別室で待機して欲しいと伝言を預かっております。ご案内してもよろしいですか?」
「別室に…ですか…?」
ランスさんに、この場所に待機しているように言われたけれど…
使用人さんへと目線を向けると優しく微笑まれる。
「この騒ぎですのでカオル様に何かあってはいけないと…。一旦部屋で落ち着くまで待っていて欲しいとの事です」
「でも…」
「クリストファー王子も、そちらに向かわれる予定ですのでご安心下さい」
クリスとランスさんのいる方へと視線を向けるがまだザワザワと騒がしく、ランスさんが戻ってくる様子もなかった。
「……分かりました。ついて行きます」
「はい。では、お部屋へ案内しますね」
使用人さんに連れられてホールから離れた奥の部屋へと案内される。
「では私はここで。ごゆっくりお過ごし下さい」
「はい。ありがとうございました」
広々とした部屋に一人だけ取り残され、とりあえずソファーのある奥の方へと進んでいくと人の気配を感じ…
「ねぇ。君がカオル?」
声のする方向に振り向くと…とても綺麗な少年がこちらを見ながら微笑んでいた。
17
お気に入りに追加
3,458
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。



塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる