128 / 181
本章
108話:イケメン王子の事情〜クリスSide〜④
しおりを挟む
カオルへの話が終わると、私とグレイスは仕事があるからと言いカオルを残して部屋を出る。
カオルには部屋から出ないように伝えてはいるが、念のため扉には鍵をかけさせてもらう。
カオルがいる場所は王族のみが使用できる離れの塔。元々は王妃が身篭った際に落ち着いて過ごせるようにと作られた場所だが今は誰も使用していない。
警備も厳しく安全な場所なのでカオルを住まわせるには最も適した場所だ。
「いいんですか?あんな期待させるような事を言ってしまって」
「あぁ…大丈夫だ。グレイスは私の話に合わせてくれればそれでいい」
カオルに話した転移魔法の魔道具の改良は実際に行っている研究だ。嘘ではない。
ただ、この研究はグレイスが趣味で行っているものでまだ国家機密と言えるレベルのものではない。
しかし、改良が成功すればこの国の過去や未来を変える可能性もあるということで父と私とグレイスの研究メンバーのみ、その状況を把握している。
「はいはい。でも、カオルくんのデータはいただきますよ」
「……本当に毎日カオルの身体面のデータなどが必要なのか?」
「必要ですよ~ただでさえ異世界人は貴重なんですから。それにデータを比較できる相手がいると研究も捗りそうですしね…」
そう言うとグレイスは嬉しそうにふっと笑みを浮かべる。
グレイスがこの研究をしている理由は『ハル』の為だ。カオルと同様に私達がいるこの世界へと迷い込んだハルを元の世界に帰す目的で転移魔道具の改良を始めたのがきっかけだ。
だが、ハルはレオンと恋に落ち二人は結婚した。
今でも『ニホン』に帰りたいと思っているかは謎だがグレイスはハルが望めば帰してあげれるようにと研究を続けている。
「もし魔道具の改良が成功したらカオルくんを『ニホン』に帰してあげるんですか?」
「……そんな事させる訳ないだろう」
「うぁ~酷い人だな。期待だけさせといて…。王子がそこまで執着されるとは…少しカオルくんを同情しますね」
「煩いぞグレイス。ハルがレオンと結婚した後も未練たらしくハルに言い寄っていた奴に言われたくはない」
「はは。ハルの名前を出されると何も言い返せないですね…。ですが、嘘はいつかバレてしまいますよ」
グレイスは珍しく真面目な事を言ってくる。
普段は適当な事ばかり言っているグレイスが珍しいな…
「そんな事は言われなくても分かっている…」
「まぁクリストファー王子の気持ちはよく分かりますよ~。人は恋の前では無力ですからね」
「そうだな…」
「さぁ…これからお互いに忙しくなりそうですね。王子…好きだからといってカオルくんを傷つけてはダメですよ」
グレイスはそう言うと「では、研究費の援助の件忘れずに~」と言い残し去っていく。
カオルを繋ぎ止める為とはいえ、また嘘をついてしまった。鎖の次はカオルが一番望んでいる物で縛るなんて…最低だと思う。
だが、そんな事をしてでもカオルを離す事はできなかった。どんな形であれカオルが側にいる事を私は心から喜んでいる。
大丈夫…。
カオルが傷つかないようにココから出さなければいいんだ。
そして私がカオルを幸せにすればいいんだ。
カオルには部屋から出ないように伝えてはいるが、念のため扉には鍵をかけさせてもらう。
カオルがいる場所は王族のみが使用できる離れの塔。元々は王妃が身篭った際に落ち着いて過ごせるようにと作られた場所だが今は誰も使用していない。
警備も厳しく安全な場所なのでカオルを住まわせるには最も適した場所だ。
「いいんですか?あんな期待させるような事を言ってしまって」
「あぁ…大丈夫だ。グレイスは私の話に合わせてくれればそれでいい」
カオルに話した転移魔法の魔道具の改良は実際に行っている研究だ。嘘ではない。
ただ、この研究はグレイスが趣味で行っているものでまだ国家機密と言えるレベルのものではない。
しかし、改良が成功すればこの国の過去や未来を変える可能性もあるということで父と私とグレイスの研究メンバーのみ、その状況を把握している。
「はいはい。でも、カオルくんのデータはいただきますよ」
「……本当に毎日カオルの身体面のデータなどが必要なのか?」
「必要ですよ~ただでさえ異世界人は貴重なんですから。それにデータを比較できる相手がいると研究も捗りそうですしね…」
そう言うとグレイスは嬉しそうにふっと笑みを浮かべる。
グレイスがこの研究をしている理由は『ハル』の為だ。カオルと同様に私達がいるこの世界へと迷い込んだハルを元の世界に帰す目的で転移魔道具の改良を始めたのがきっかけだ。
だが、ハルはレオンと恋に落ち二人は結婚した。
今でも『ニホン』に帰りたいと思っているかは謎だがグレイスはハルが望めば帰してあげれるようにと研究を続けている。
「もし魔道具の改良が成功したらカオルくんを『ニホン』に帰してあげるんですか?」
「……そんな事させる訳ないだろう」
「うぁ~酷い人だな。期待だけさせといて…。王子がそこまで執着されるとは…少しカオルくんを同情しますね」
「煩いぞグレイス。ハルがレオンと結婚した後も未練たらしくハルに言い寄っていた奴に言われたくはない」
「はは。ハルの名前を出されると何も言い返せないですね…。ですが、嘘はいつかバレてしまいますよ」
グレイスは珍しく真面目な事を言ってくる。
普段は適当な事ばかり言っているグレイスが珍しいな…
「そんな事は言われなくても分かっている…」
「まぁクリストファー王子の気持ちはよく分かりますよ~。人は恋の前では無力ですからね」
「そうだな…」
「さぁ…これからお互いに忙しくなりそうですね。王子…好きだからといってカオルくんを傷つけてはダメですよ」
グレイスはそう言うと「では、研究費の援助の件忘れずに~」と言い残し去っていく。
カオルを繋ぎ止める為とはいえ、また嘘をついてしまった。鎖の次はカオルが一番望んでいる物で縛るなんて…最低だと思う。
だが、そんな事をしてでもカオルを離す事はできなかった。どんな形であれカオルが側にいる事を私は心から喜んでいる。
大丈夫…。
カオルが傷つかないようにココから出さなければいいんだ。
そして私がカオルを幸せにすればいいんだ。
37
お気に入りに追加
3,454
あなたにおすすめの小説


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる