美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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本章

106話:クリスの正体

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「おはようカオル。昨日は眠れた?」
「おはよ…クリス…」

昨日はよく眠れたかって?
眠れる訳がない。

朝から爽やかさ全開のクリスとは対照的に俺は目の下にクマをこしらえドンヨリしている。

昨日はベッドから抜け出して一人で悶々としている息子を慰めてやろうと思ったのに、ベッドから起き上がろうとすると寝ぼけたクリスにぎゅうぎゅうに抱きしめられて身動きが取れなかった。

首筋にスースーと寝息がかかり、抱きしめられた手は胸に添えられ時折やんわりと揉まれたかと思えば腹や下腹部を撫でられたりと……生殺しだ。

クリスも寝ぼけて無意識でやったんだろうから、もちろん文句は言えない。
顔を洗ってモンモンムラムラした気持ちを切り替えているとクリスがタイミングよく朝食を持ってきてくれる。

朝食も美味しく食べ終え、昨日着ていた服を探しているとクリスから服は洗濯していると言われクローゼットから俺にピッタリのサイズの服を出してくる。

明らかに高そうな生地でデザイン性に富んだシャツとパンツが並ぶ。
こんな服を俺が着たら貧相な顔が目立つんだが…。

しかし、これ以外の服はないので文句を言わずに着替えを済ませるとクリスは嬉しそうに「似合ってるよ」と、笑顔でお世辞を言ってくれた。


「なぁクリス。もうそろそろ宿に帰ろうと思ってるんだけど、帰り道が分からないから教えて欲しいんだ」
「そうだね…。でも、その前にカオルに確認しておきたい事があるんだけど…いいかな?」
「うん!いいよ。どうしたの?」
「カオルは…『ニホン』に戻りたい?」
「え…?戻り…たいけど…。もしかして、戻れる方法があるの!?」
「あぁ…でもまだ研究段階でね。カオルの協力が必要なんだ」
「協力…する!俺が出来ることならする!」


思わぬ展開に俺は驚きを隠せずに目をパチクリさせながら答える。
クリスは俺の答えを聞くと部屋のドアの方へと向かい人を部屋へと呼び入れる。クリスの後ろから入って来た人は仮面をつけた40代くらいの銀髪の男性だった。

「カオル。この人は魔道具に精通しているグレイスだ。転移魔法の第一人者でもあり魔導師団長も務めている」
「カオルくんよろしくね」

グレイスさんに手を取られてニコリと微笑まれる。
魔導師団長って…めっちゃ偉い人なんじゃないか?
というか、なんでクリスの家に??
え?マジでどういう事ですかクリスさん??

「じゃあカオルくん今日から協力してもらえるかな?」
「えっと…。はい…よろしくお願いします」
「まずは身体測定をしてカオルくんに魔力があるかの測定と…。あとは…」
「グレイス。カオルに負担をかけないようにお願いしたい」
「はいはーい。クリストファー王子に言われた通りにしますから安心してください」


……………え?
??
王子って言った??ねぇ今、クリスに向かって王子って言ったよね!?
てか、本当の名前ってクリストファーだったの??
もう……意味分かんねーーよっ!!

魔導師団長の登場やクリスが王子などなど…頭の中で処理しきれずに混乱して口をパクパクしている俺の事など気にせず二人はどんどん話を進めていき、これからの予定などを確認しあっている。

「え!?あのさ…なんか色々ツッコミ所あるんだけど…クリスは…この国の王子様…なの?」
「あぁそうだよ。黙っていてごめんね」

クリスは『あはは~ごめ~ん』と、さらりと軽い感じで言ってくるが…ちょっと待ってくれ。
そこ凄く大事な事だからっっ!!

まさかリアル王子がずっと近くに…
じゃあ、今までタメ口で喋ったり甘えたりご飯作ってもらったりたりたり…この国の王子に全部やらせてたってことーー!!?

「あ…う…え……」
「カオル…大丈夫?」

思考がパンクした俺は訳の分からない言葉しか話せず狼狽えているとクリスが心配そうに覗き込んでくる。
いや。お前のせいだからな!いきなり王子だって言われて驚かない奴なんていないからな!

「だ、大丈夫じゃないです…クリストファー王子様…」
「敬語は使わない約束だろ?それに王子なんてつけずに今まで通り『クリス』と呼んでくれ…」


そんなの無理だと言ってもクリスは納得してくれず、今までのようにクリスと接するなんて到底むりなんじゃないかと不安は募るばかりだった。
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