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本章
103話:再会 ②
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部屋の小さな机を挟んで椅子に腰掛けるとクリスの方から口を開く。
「私がどうやってカオルの事を探し出せたか…それについてまずは話せばいいかな?」
「うん…」
「カオルを見つけたのは今日のパレードだったんだよ。本当に偶然だったんだ…。ここの場所は、その店の店主に聞いたんだよ。この店に来ていたのは知り合いの宿にいる子だってね。」
「そーだったんだ…」
なるほど…そりゃ凄い偶然だな。
てか、あんなにわんさか人がいたのによく見つけられたな…と、逆に感心しながらクリスの話を聞いていく。
「本当はね、カオルに会いに行くか迷ったんだ。あんな酷い事をしてしまったから…。あの時の私はどうかしていた。カオルもこの世界で生活して気づいただろ?私のような見た目が醜いと言われている事に…」
「うん…」
「私の事を恐れず普通に接してくれるカオルに私はどんどん惹かれていった。だから…カオルを外に出したくなくて…誰にも触れさせたくなかった。カオルに鎖を付けてしまった日は、あの美しい青年にカオルを取られてしまうのではないかと思いあんな事をしてしまったんだ…」
クリスは苦しそうな顔であの時の自分の心境を話してくれる。今ならなんとなくだが…クリスの気持ちも分かる。
この世界はイケメンが不憫な思いをする事が多い。人によっては親からも冷たくされる事もあると聞いた。
もしかしたら、クリスもそうだったのかもしれない…。
そんな人が、自分の事を否定しない人と出会えば誰だって嬉しいよなぁ…
「クリスあのな…俺も何も言わずに逃げ出してごめん…。でも、あの時は本当に怖かったんだ。クリスが孕ませるとか言ってくるし…だから…」
「カオルが謝る事なんかない!全ては…私が悪いんだ…」
もの凄く反省した顔のクリス…。金色の瞳もどこか潤んで見えた。
元々のクリスは優しくて料理もできて一緒にいて楽しくて…あんな事さえなければ、ずっと一緒にいたと思う。
だから…なんだかちょっぴりクリスが可愛そうに思えてきた。
「俺もさ…この世界で生活してクリスが今までどんな風に周りから言われてきたか、なんとなくだけど想像がつくんだ。外見重視で酷いこと言ってくる奴も多いしさ…。もし俺がクリスと同じ立場でありのままの自分を受け入れてくれる人と出会ったら、ずっと一緒にいたい、離したくないって思うからさ…。でも、鎖で繋いだり無理矢理エッチなことするのはダメだと思う!そういう時は、ちゃんと言葉で伝えないと、やられてる方はとんでもなく怖いんだからな!」
後半何言ってんのか自分でもよく分からなかったが、クリスは俺の言葉でポロポロと涙を流していた。
「えぇ!?クリス!な、なんで泣いてるの!?」
「だって…カオルが…優しくて…。ごめんね…カオル…」
「もういいって…。じゃあ仲直りしよ!」
「こんな私を許してくれるのかい?」
「うん。ほら仲直りの握手…」
俺はクリスへと手を差し出すとギュッと手を握られる。
これで俺達は友達に戻るんだ。
「カオル…ありがとう」
「うん。これでクリスと俺は友達だね!」
「そっか…友達…だね。」
仲直りした俺達はそれから色々な話をした。
俺がこっちに来てからどんな生活を送っていたかとか、こんな友達がいるとか、今一緒に暮らしてるエルの事とか。
流石に『仕事は、娼夫やってる!』なんて事は言えないのでリオの店で働いていることにした。
「とても楽しそうだね…」
「うん。親切な人達が多くてさ…みんな優しいんだ!」
「そうか…。それはよかった…。あ。そういえば…」
クリスはそう言うと、カバンの中をゴソゴソと探し始め中から綺麗にラッピングされた箱を取り出す。
「実はね、カオルの好きなお菓子を持ってきたんだよ。」
「あ!もしかして…クリスの手作りのお菓子?」
クリスは「そうだよ…」とニコリと笑い、持ってきた焼き菓子を広げてくれる。久しぶりに食べるクリスの手作りお菓子に俺は頬を緩ませた。
「どう?美味しい?」
「うん!」
ポリポリとお菓子を食べながらまた雑談をして…チラッと時計を見る。
そういえばアルクさん遅いな…。
すでにアルクさんが来る予定の時間から一時間以上経っていた。
「時計見てるけど…もしかして予定がある?」
「あ…。実は人が来る予定だったんだけど、仕事が忙しいみたい」
「そっかそっか…。急な仕事でも入ったのかもね…」
「そうかも…しれな…い……」
アルクさんは騎士団長だし色々あるんだろうな…そう思っていると急激な眠気が俺を襲う。
なんだか…目も開けられなくて…。あれ…?この感じ……
「クリ…ス…」
クリスへ声をかけると俺の異常に気付いたのか「どうしたの?」と、心配そうな顔で椅子の上でふらふらしている俺を支えてくれる。
「なんか…ねむい…。俺…おかしい…」
「それは大変だ!医者に見せなきゃいけないな」
「あ…、でも……アル…ク…さん…が……」
「今はアルクの事なんて考えちゃダメだよ。さぁ、私の知り合いの医者に見てもらおうね…」
「う…ん……」
「安心して…。あとは私がどうにかするから、ゆっくり眠って」
「ごめ……ん…」
「気にしないで…カオル…。」
優しく肩を引き寄せてられ俺はクリスの腕の中に…。
薄れゆく意識の中で最後に見たクリスの顔は、なんだかとても嬉しそうに見えた。
「私がどうやってカオルの事を探し出せたか…それについてまずは話せばいいかな?」
「うん…」
「カオルを見つけたのは今日のパレードだったんだよ。本当に偶然だったんだ…。ここの場所は、その店の店主に聞いたんだよ。この店に来ていたのは知り合いの宿にいる子だってね。」
「そーだったんだ…」
なるほど…そりゃ凄い偶然だな。
てか、あんなにわんさか人がいたのによく見つけられたな…と、逆に感心しながらクリスの話を聞いていく。
「本当はね、カオルに会いに行くか迷ったんだ。あんな酷い事をしてしまったから…。あの時の私はどうかしていた。カオルもこの世界で生活して気づいただろ?私のような見た目が醜いと言われている事に…」
「うん…」
「私の事を恐れず普通に接してくれるカオルに私はどんどん惹かれていった。だから…カオルを外に出したくなくて…誰にも触れさせたくなかった。カオルに鎖を付けてしまった日は、あの美しい青年にカオルを取られてしまうのではないかと思いあんな事をしてしまったんだ…」
クリスは苦しそうな顔であの時の自分の心境を話してくれる。今ならなんとなくだが…クリスの気持ちも分かる。
この世界はイケメンが不憫な思いをする事が多い。人によっては親からも冷たくされる事もあると聞いた。
もしかしたら、クリスもそうだったのかもしれない…。
そんな人が、自分の事を否定しない人と出会えば誰だって嬉しいよなぁ…
「クリスあのな…俺も何も言わずに逃げ出してごめん…。でも、あの時は本当に怖かったんだ。クリスが孕ませるとか言ってくるし…だから…」
「カオルが謝る事なんかない!全ては…私が悪いんだ…」
もの凄く反省した顔のクリス…。金色の瞳もどこか潤んで見えた。
元々のクリスは優しくて料理もできて一緒にいて楽しくて…あんな事さえなければ、ずっと一緒にいたと思う。
だから…なんだかちょっぴりクリスが可愛そうに思えてきた。
「俺もさ…この世界で生活してクリスが今までどんな風に周りから言われてきたか、なんとなくだけど想像がつくんだ。外見重視で酷いこと言ってくる奴も多いしさ…。もし俺がクリスと同じ立場でありのままの自分を受け入れてくれる人と出会ったら、ずっと一緒にいたい、離したくないって思うからさ…。でも、鎖で繋いだり無理矢理エッチなことするのはダメだと思う!そういう時は、ちゃんと言葉で伝えないと、やられてる方はとんでもなく怖いんだからな!」
後半何言ってんのか自分でもよく分からなかったが、クリスは俺の言葉でポロポロと涙を流していた。
「えぇ!?クリス!な、なんで泣いてるの!?」
「だって…カオルが…優しくて…。ごめんね…カオル…」
「もういいって…。じゃあ仲直りしよ!」
「こんな私を許してくれるのかい?」
「うん。ほら仲直りの握手…」
俺はクリスへと手を差し出すとギュッと手を握られる。
これで俺達は友達に戻るんだ。
「カオル…ありがとう」
「うん。これでクリスと俺は友達だね!」
「そっか…友達…だね。」
仲直りした俺達はそれから色々な話をした。
俺がこっちに来てからどんな生活を送っていたかとか、こんな友達がいるとか、今一緒に暮らしてるエルの事とか。
流石に『仕事は、娼夫やってる!』なんて事は言えないのでリオの店で働いていることにした。
「とても楽しそうだね…」
「うん。親切な人達が多くてさ…みんな優しいんだ!」
「そうか…。それはよかった…。あ。そういえば…」
クリスはそう言うと、カバンの中をゴソゴソと探し始め中から綺麗にラッピングされた箱を取り出す。
「実はね、カオルの好きなお菓子を持ってきたんだよ。」
「あ!もしかして…クリスの手作りのお菓子?」
クリスは「そうだよ…」とニコリと笑い、持ってきた焼き菓子を広げてくれる。久しぶりに食べるクリスの手作りお菓子に俺は頬を緩ませた。
「どう?美味しい?」
「うん!」
ポリポリとお菓子を食べながらまた雑談をして…チラッと時計を見る。
そういえばアルクさん遅いな…。
すでにアルクさんが来る予定の時間から一時間以上経っていた。
「時計見てるけど…もしかして予定がある?」
「あ…。実は人が来る予定だったんだけど、仕事が忙しいみたい」
「そっかそっか…。急な仕事でも入ったのかもね…」
「そうかも…しれな…い……」
アルクさんは騎士団長だし色々あるんだろうな…そう思っていると急激な眠気が俺を襲う。
なんだか…目も開けられなくて…。あれ…?この感じ……
「クリ…ス…」
クリスへ声をかけると俺の異常に気付いたのか「どうしたの?」と、心配そうな顔で椅子の上でふらふらしている俺を支えてくれる。
「なんか…ねむい…。俺…おかしい…」
「それは大変だ!医者に見せなきゃいけないな」
「あ…、でも……アル…ク…さん…が……」
「今はアルクの事なんて考えちゃダメだよ。さぁ、私の知り合いの医者に見てもらおうね…」
「う…ん……」
「安心して…。あとは私がどうにかするから、ゆっくり眠って」
「ごめ……ん…」
「気にしないで…カオル…。」
優しく肩を引き寄せてられ俺はクリスの腕の中に…。
薄れゆく意識の中で最後に見たクリスの顔は、なんだかとても嬉しそうに見えた。
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