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本章
94話:聴取
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あの事件から2日後。
娼館の講習会を利用した奴隷売買の事件は俺がエル達に助けられた後に騎士団の調査も入り、あの場にいた娼夫さん達は皆助けられたと聞いた。
そして、その事件の被害者達から状況を確認する為に話を聞いているらしく、可能であれば話を聞きたいと騎士団の方から声をかけられて俺は今騎士団の詰所に来ている。
個別に一人ずつ話を聞いていくようで心配して付いてきてくれたエルは別室で待ってもらった。
机と椅子だけが並んだ部屋に通されて少し緊張しながら待っていると部屋に騎士団の人達が入ってくる。
そして、その中には見慣れた顔が…
ん…?んん?
「アルク…さん?」
「カオルくん…。今日はよろしくね」
真っ白な軍服に包まれたアルクさんが入って来て俺はビックリして固まる。
いや…そういえばアルクさん騎士団長とか言ってたよな。
アルクさんは俺と向かい合うように座り、いつもと違う仕事モードのアルクさんに何故か俺はドキドキした。
てか、軍服が似合いすぎてアルクさんが眩しい…
アルクさんに見惚れポケーっとしている俺とは対照的にアルクさんは険しい顔をして、あの事件の事を聞いてくる。
「じゃあ…カオルくん。思い出すのは辛いかもしれないけど話してくれるかな…?」
「はい…」
アルクさんの他に書記のような人達もいて皆の視線が俺に注がれて少し緊張する…。
俺は深呼吸してあの時の事を話し始める。
講習会での内容や配られたお茶の事…今だに俺についている首輪や…ジリアスにされた事…
話している途中で机の上に置いていた手が震えた時アルクさんがそっと手を握ってくれた。
あの時の事を思い出し言葉にするのは凄く嫌だった。
けれど…
俺よりも辛そうに話を聞くアルクさんの顔を見て…辛いのは俺だけじゃないんだって思った。
ちゃんと話して事件を解決してもらわないと、また俺らみたいに辛い目に合う人が出てくる…
そう思いながら俺は思い出せるだけの事を話していった。
そして、全てを話終わるとアルクさんはいつものように優しく微笑みかけてくれた。
「…カオルくん話してくれてありがとう。」
俺はアルクさんの手を無意識に握り締めていて、アルクさんの手は少し赤くなっていた。
「アルクさん…手…ごめんなさい」
「そんな事気にしなくていいんだよ。じゃあ、部屋を出ようか」
アルクさんは他の騎士団の人に俺を見送ってくると伝え一緒に部屋を出ていく。
「カオルくん今日は本当にありがとう。」
部屋を出てすぐにアルクさんは俺のことをギュッと抱きしめてくる。
いきなりだったので少し驚いたけど…アルクさんの大きな体に包まれると凄く安心する。
俺もぎゅっとアルクさんを抱きしめると、アルクさんは嬉しそうに口元を綻ばせる。
「カオルくん…」
「アルクさん…」
名前を呼び合って目と目が合えば…なんだか甘い雰囲気に…
「おいおい…アルク。廊下の真ん中でイチャコラすんな。通れないだろ」
自分達だけの世界に入り込んでいると、アルクさんの背後から不機嫌そうな声が聞こえ我に返った俺達は慌てて抱きしめていた腕を解く。
「はは…。ごめんねオドリー。邪魔だよね…」
「ったく…。この忙しい時に人様のイチャイチャなんて見たくねーんだよ」
大きなため息を吐きながらアルクさんの同僚オドリーさんはギロッと俺の事を見てくる。
オドリーさんの不機嫌そうなギョロっとした目はなんだか怖くて見つめられると少し緊張してしまう。
「アルク。これが…お前が探してたカオルくんか?」
「うん。今日は聴取に来てくれたんだ」
「そっか…。カオルくん来てくれてありがとうな。この事件は早く解決するから」
オドリーさんはそう言うとニヤっと目を細めて笑い俺の方へと近づき頭をポンポンと撫でてくれる。
最初は怖い感じの人かと思ったが…とてもフランクな感じで意外に優しい人なのかな?
「はい!お願いします!」
俺が愛想よく返事をすればオドリーさんもニコリと微笑んでくれる。
「ちょっと…オドリー…。距離近い…」
「ん?お前…あからさまに嫌そうな顔すんなよ」
「だって…」
俺とオドリーさんが話していると今度はアルクさんが少し不機嫌そうな顔を見せていた。
それから2人は仲良さげに話した後、オドリーさんはまた仕事へと戻っていった。
「オドリーさんって優しくていい人ですね!」
「うん。ほんと昔からいい奴なんだ…。カッコよくて優しくて…。僕とは大違いだ」
そう呟くアルクさんは羨ましそうにオドリーさんの背中を見つめていた。
「そんな事ないです!アルクさんも凄くカッコいいし優しいですよ!俺はそんなアルクさんが好きです!」
なんだか元気のないアルクさんの腕をガッシリと掴み励ますと、アルクさんの顔はみるみる真っ赤に染まっていく。
「ぼ、僕もカオルくんの事大好きだからね!」
「はい!」
少し元気になったアルクさんを見て笑顔を向けるとアルクさんも恥ずかしそうに微笑んでくれた。
また仕事が落ち着いたら俺に会いにくる約束をしてアルクさんと別れ、俺はエルと一緒に家へと帰っていった。
娼館の講習会を利用した奴隷売買の事件は俺がエル達に助けられた後に騎士団の調査も入り、あの場にいた娼夫さん達は皆助けられたと聞いた。
そして、その事件の被害者達から状況を確認する為に話を聞いているらしく、可能であれば話を聞きたいと騎士団の方から声をかけられて俺は今騎士団の詰所に来ている。
個別に一人ずつ話を聞いていくようで心配して付いてきてくれたエルは別室で待ってもらった。
机と椅子だけが並んだ部屋に通されて少し緊張しながら待っていると部屋に騎士団の人達が入ってくる。
そして、その中には見慣れた顔が…
ん…?んん?
「アルク…さん?」
「カオルくん…。今日はよろしくね」
真っ白な軍服に包まれたアルクさんが入って来て俺はビックリして固まる。
いや…そういえばアルクさん騎士団長とか言ってたよな。
アルクさんは俺と向かい合うように座り、いつもと違う仕事モードのアルクさんに何故か俺はドキドキした。
てか、軍服が似合いすぎてアルクさんが眩しい…
アルクさんに見惚れポケーっとしている俺とは対照的にアルクさんは険しい顔をして、あの事件の事を聞いてくる。
「じゃあ…カオルくん。思い出すのは辛いかもしれないけど話してくれるかな…?」
「はい…」
アルクさんの他に書記のような人達もいて皆の視線が俺に注がれて少し緊張する…。
俺は深呼吸してあの時の事を話し始める。
講習会での内容や配られたお茶の事…今だに俺についている首輪や…ジリアスにされた事…
話している途中で机の上に置いていた手が震えた時アルクさんがそっと手を握ってくれた。
あの時の事を思い出し言葉にするのは凄く嫌だった。
けれど…
俺よりも辛そうに話を聞くアルクさんの顔を見て…辛いのは俺だけじゃないんだって思った。
ちゃんと話して事件を解決してもらわないと、また俺らみたいに辛い目に合う人が出てくる…
そう思いながら俺は思い出せるだけの事を話していった。
そして、全てを話終わるとアルクさんはいつものように優しく微笑みかけてくれた。
「…カオルくん話してくれてありがとう。」
俺はアルクさんの手を無意識に握り締めていて、アルクさんの手は少し赤くなっていた。
「アルクさん…手…ごめんなさい」
「そんな事気にしなくていいんだよ。じゃあ、部屋を出ようか」
アルクさんは他の騎士団の人に俺を見送ってくると伝え一緒に部屋を出ていく。
「カオルくん今日は本当にありがとう。」
部屋を出てすぐにアルクさんは俺のことをギュッと抱きしめてくる。
いきなりだったので少し驚いたけど…アルクさんの大きな体に包まれると凄く安心する。
俺もぎゅっとアルクさんを抱きしめると、アルクさんは嬉しそうに口元を綻ばせる。
「カオルくん…」
「アルクさん…」
名前を呼び合って目と目が合えば…なんだか甘い雰囲気に…
「おいおい…アルク。廊下の真ん中でイチャコラすんな。通れないだろ」
自分達だけの世界に入り込んでいると、アルクさんの背後から不機嫌そうな声が聞こえ我に返った俺達は慌てて抱きしめていた腕を解く。
「はは…。ごめんねオドリー。邪魔だよね…」
「ったく…。この忙しい時に人様のイチャイチャなんて見たくねーんだよ」
大きなため息を吐きながらアルクさんの同僚オドリーさんはギロッと俺の事を見てくる。
オドリーさんの不機嫌そうなギョロっとした目はなんだか怖くて見つめられると少し緊張してしまう。
「アルク。これが…お前が探してたカオルくんか?」
「うん。今日は聴取に来てくれたんだ」
「そっか…。カオルくん来てくれてありがとうな。この事件は早く解決するから」
オドリーさんはそう言うとニヤっと目を細めて笑い俺の方へと近づき頭をポンポンと撫でてくれる。
最初は怖い感じの人かと思ったが…とてもフランクな感じで意外に優しい人なのかな?
「はい!お願いします!」
俺が愛想よく返事をすればオドリーさんもニコリと微笑んでくれる。
「ちょっと…オドリー…。距離近い…」
「ん?お前…あからさまに嫌そうな顔すんなよ」
「だって…」
俺とオドリーさんが話していると今度はアルクさんが少し不機嫌そうな顔を見せていた。
それから2人は仲良さげに話した後、オドリーさんはまた仕事へと戻っていった。
「オドリーさんって優しくていい人ですね!」
「うん。ほんと昔からいい奴なんだ…。カッコよくて優しくて…。僕とは大違いだ」
そう呟くアルクさんは羨ましそうにオドリーさんの背中を見つめていた。
「そんな事ないです!アルクさんも凄くカッコいいし優しいですよ!俺はそんなアルクさんが好きです!」
なんだか元気のないアルクさんの腕をガッシリと掴み励ますと、アルクさんの顔はみるみる真っ赤に染まっていく。
「ぼ、僕もカオルくんの事大好きだからね!」
「はい!」
少し元気になったアルクさんを見て笑顔を向けるとアルクさんも恥ずかしそうに微笑んでくれた。
また仕事が落ち着いたら俺に会いにくる約束をしてアルクさんと別れ、俺はエルと一緒に家へと帰っていった。
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