108 / 181
本章
88.5話:イケメン半獣人の事情 ② 〜エルSide〜
しおりを挟む
自分を見上げる少年を見て、今日はどんな風に痛めつけられるのだろうか…と思っていると奴隷商の男は何も言わないエルに声を荒げる。
「ほらエル挨拶しろ!これからお前のご主人様になる方だぞ」
奴隷商の男の言葉の意味がすぐには理解できずに黙っていると、話はどんどん進んでいきようやく自分が目の前の少年に売られた事を理解する。
コノヒトガ…オレヲ…コロシテクレルノ…?
奴隷商の男は自分を廃棄すると言っていたので、そんな自分を買う理由など一つだ。
死んでもいい奴隷。
きっと沢山痛い事をされる。
それでもいい。
もうこんな世界から早く消えてしまいたかった。
エルがそんな事を思っている間に契約を結ぶ準備が進められた。
自分を傷つける客達はエルが抵抗し自分に歯向かわないように服従の契約を結ぶ事がほとんどだった。
しかし目の前にいる少年は違った。
服従の契約を嫌がり主従の契約すらも結びたくない様子だった。
「ごめんな…。主従の契約だけ結ばせてほしい…」
奴隷の自分に『ごめん』と言ってくる少年の言葉の意味が分からず少年と主従の契約を結ぶ。
契約を結ぶ時は体が支配される感覚に包まれ冷たく不快な気持ちになるのだが少年との奴隷契約は少し違う感覚がした。
アッタカイ……?
今まで感じた事のないほわっとした感覚にエルは少し戸惑ってしまう。
契約が終わると少しでも体を綺麗にする為に別室へと連れられる。
「じゃあエル。またあとでな」
少年は自分を見て優しい笑顔で微笑んでくれた。
別室で体を拭かれ着替えをしている間も、エルの頭の中では少年の笑顔がずっと浮かんでいた。
着替えを終えて部屋へ戻ると少年が近づいてきてまた柔らかい笑顔を向けてくれる。
「えーっと…俺の名前はカオル。改めてエルよろしくな」
「…カオル。オレノ……アルジ…」
「うん!そうだよ!」
エルが喋るとカオルは嬉しそうに笑ってくれる。
今までの主人達とは違うカオルにエルは不思議な気持ちになった。
奴隷商人の元を離れエルは久しぶりの外に出る。
暗い地下に長いこといたせいか外の世界はとても眩しく見えた。
カオルの後ろを少し離れて歩いていると人通りの多い道へと出る。あまりの人の多さにエルが戸惑っているとカオルが心配そうに覗き込んでくる。
「エルどうした?」
「ヒト…タクサン…」
「あぁそうだね。人が多い場所を歩くの初めてなのかな…?怖い?」
「…コワクナイ」
主人であるカオルに迷惑をかければ殴られる…。
そう思っているとカオルはまた笑顔を見せてくる。
「じゃあ人も多いし、はぐれないように手を繋いで行こうか!」
そう言って右手を握ってくるカオルにエルはとても驚いた。
今までの主人達が自分に触れてくる時は暴力を振るう時だけだった。
こんな風に優しく触れられた事などない…
エルはカオルが今までの主人達とは違うのだ感じた。
握られた手を握り返すと嬉しそうな顔を見せてくれるカオルにエルは少しずつ好意を寄せていた。
それからカオルと過ごす日々はエルにとって幸せでしかなかった。
毎日自分に向けて見せてくれるキラキラと輝くような大好きなカオルの笑顔。
甘いカオルの香りも、優しい手も…エルが生きていく上でカオルの存在は無くてはならないモノになっていった。
アルジ…スキ…
そしていつしかエルはカオルに特別な感情を抱くようになる。
自分とカオルは奴隷と主人という特殊な関係。
だが、その関係が続く限りエルは永遠にカオルだけのモノになれる。
奴隷の証であり、ずっと自分を縛っていた忌々しい奴隷の首輪は今ではカオルと自分を繋ぐ無くてはならない大切な物になった。
「アルジ…ズット…イッショ…」
エルは首輪を大事そうに撫でながら、これからもずっと…永遠にカオルと幸せな日々が過ごせるように願うのだった。
「ほらエル挨拶しろ!これからお前のご主人様になる方だぞ」
奴隷商の男の言葉の意味がすぐには理解できずに黙っていると、話はどんどん進んでいきようやく自分が目の前の少年に売られた事を理解する。
コノヒトガ…オレヲ…コロシテクレルノ…?
奴隷商の男は自分を廃棄すると言っていたので、そんな自分を買う理由など一つだ。
死んでもいい奴隷。
きっと沢山痛い事をされる。
それでもいい。
もうこんな世界から早く消えてしまいたかった。
エルがそんな事を思っている間に契約を結ぶ準備が進められた。
自分を傷つける客達はエルが抵抗し自分に歯向かわないように服従の契約を結ぶ事がほとんどだった。
しかし目の前にいる少年は違った。
服従の契約を嫌がり主従の契約すらも結びたくない様子だった。
「ごめんな…。主従の契約だけ結ばせてほしい…」
奴隷の自分に『ごめん』と言ってくる少年の言葉の意味が分からず少年と主従の契約を結ぶ。
契約を結ぶ時は体が支配される感覚に包まれ冷たく不快な気持ちになるのだが少年との奴隷契約は少し違う感覚がした。
アッタカイ……?
今まで感じた事のないほわっとした感覚にエルは少し戸惑ってしまう。
契約が終わると少しでも体を綺麗にする為に別室へと連れられる。
「じゃあエル。またあとでな」
少年は自分を見て優しい笑顔で微笑んでくれた。
別室で体を拭かれ着替えをしている間も、エルの頭の中では少年の笑顔がずっと浮かんでいた。
着替えを終えて部屋へ戻ると少年が近づいてきてまた柔らかい笑顔を向けてくれる。
「えーっと…俺の名前はカオル。改めてエルよろしくな」
「…カオル。オレノ……アルジ…」
「うん!そうだよ!」
エルが喋るとカオルは嬉しそうに笑ってくれる。
今までの主人達とは違うカオルにエルは不思議な気持ちになった。
奴隷商人の元を離れエルは久しぶりの外に出る。
暗い地下に長いこといたせいか外の世界はとても眩しく見えた。
カオルの後ろを少し離れて歩いていると人通りの多い道へと出る。あまりの人の多さにエルが戸惑っているとカオルが心配そうに覗き込んでくる。
「エルどうした?」
「ヒト…タクサン…」
「あぁそうだね。人が多い場所を歩くの初めてなのかな…?怖い?」
「…コワクナイ」
主人であるカオルに迷惑をかければ殴られる…。
そう思っているとカオルはまた笑顔を見せてくる。
「じゃあ人も多いし、はぐれないように手を繋いで行こうか!」
そう言って右手を握ってくるカオルにエルはとても驚いた。
今までの主人達が自分に触れてくる時は暴力を振るう時だけだった。
こんな風に優しく触れられた事などない…
エルはカオルが今までの主人達とは違うのだ感じた。
握られた手を握り返すと嬉しそうな顔を見せてくれるカオルにエルは少しずつ好意を寄せていた。
それからカオルと過ごす日々はエルにとって幸せでしかなかった。
毎日自分に向けて見せてくれるキラキラと輝くような大好きなカオルの笑顔。
甘いカオルの香りも、優しい手も…エルが生きていく上でカオルの存在は無くてはならないモノになっていった。
アルジ…スキ…
そしていつしかエルはカオルに特別な感情を抱くようになる。
自分とカオルは奴隷と主人という特殊な関係。
だが、その関係が続く限りエルは永遠にカオルだけのモノになれる。
奴隷の証であり、ずっと自分を縛っていた忌々しい奴隷の首輪は今ではカオルと自分を繋ぐ無くてはならない大切な物になった。
「アルジ…ズット…イッショ…」
エルは首輪を大事そうに撫でながら、これからもずっと…永遠にカオルと幸せな日々が過ごせるように願うのだった。
30
お気に入りに追加
3,423
あなたにおすすめの小説
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる