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本章
91話:イケメン騎士団長の日常 ⑧ 〜Sideアルク〜
しおりを挟む~アルクSide~
急いでカオルくんのいる宿へと向かうと軍服を着たままの僕を見て受付のドルンさんは驚いた表情で見てくる。
「アルクさん…そんなに急いでどうしたんですか…?」
「カオルくんは…部屋にいますか?」
「あぁ、いると思いますよ。エルと一緒に帰ってきていたから…。でも、体調が悪いみたいでエルに抱きかかえられていたから今は寝ているかも…」
「……そうですか。少し顔を見てきます」
エル…
確かカオルくんが最近買った奴隷の名前だったな…。
カオルくんが抱きかかえられていたとドルンさんは言っていたが…やはりあの部屋にいたのはカオルくんだったのだろうか…。
嫌な予感がしながら僕はカオルくんの部屋へと向かい深呼吸をしてドアをノックする。
しばらくするとドアが開き、カオルくんではなく狼の半獣人が僕の目の前に現れる。
「ハイ。ナンデスカ?」
「あ…。カオルくんは…?」
「アルジハ…ネテル」
部屋の奥ではベッドで寝ているカオルくんの姿が見える。
その姿を見て僕は少しホッとした…
しかし…事実を確認しないと…
「なぁエルくん…。カオルくんは…娼館の講習会に行っていたのかい?」
「……ナンデシッテル?」
僕の質問にエルは目を細めて警戒するようにギロっと睨みつけてくる。
「僕はその講習会の事件を調査していてね…。奴隷にされそうになった娼夫があと2人見つからないんだ…。フィウスと…カオル。カオルくんはもしかして…奴隷にされそうになっていたんじゃないか?エルくんがカオルくんを助けたのかい?」
「……ウン」
「そう…か…」
なんとなくそんな気はしていたが…事実を知ってしまうと、あんな非道な事をしていた娼館の奴らに怒りが湧いてくる。
だが、今はそれよりもカオルくんの状態が知りたい。
眠っているようだが…本当に大丈夫なのだろうか…。
「中に入っても…いいかな?カオルくんの様子を確認したいんだ…」
「……アナタハ、アルジノナニ?」
「僕は…カオルくんの…」
カオルくんにとって僕は一体何なんだろうか…。
ただの客…いやそれ以上なんだと思いたい…
「僕はカオルくんの友人だよ。頼むからカオルくんの様子を見せて欲しい…。」
「……ワカッタ」
僕が必死に頼むとエルは僕の匂いをスンスンと嗅いでドアから離れ僕を部屋へと入れてくれる。
ベッドでスヤスヤと眠るカオルくん…。
首には娼夫達がつけていた物と同じ首輪がついていた。
その首輪を見ると、あの会場にいた娼夫達の姿を重ねてしまう。
皆、泣きじゃくり…怯えていた…
「カオルくん…怖かったよね…」
僕はカオルくんの首につけられた首輪に触れながらカオルくんの寝顔を見つめる。
「ソレ…ハズレナイ…」
エルはそう言うと忌々しそうに首輪を睨みつけていた。
奴隷用の首輪は簡単に外れないように装着者が魔力を流し首輪を固定している。
服従の契約等をしていない首輪は装着者が注いだ魔力が切れれば外れるようになる。
まだカオルくんは契約は結んでいないので数日後には外れるだろう。
「この首輪は魔力が切れれば外れるから。多分、2~3日後くらいかな…」
「ホント!ヨカッタ!」
エルは首輪が外れると聞くと嬉しそうに尻尾を揺らしていた。
「ところでエルくん。もう一人いたフィウスって名前の人の事は知ってる?」
「シッテル。フィウス、セシリオト、イッショ。」
「えっと…セシリオって人が助けに来たって事なのかな?」
「ウン」
エルはぶんぶんと首を縦に振る。
詳しく聞くとフィウスもセシリオもカオルくん達の知り合いだったようだ。
「なぁエルくん。カオルくんの目が覚めたら…また会いにくると伝えてくれる?」
「ワカッタ。……ナマエハ?」
「アルクだよ」
エルは了承した。と、頷いてくれる。
僕は眠るカオルくんの頬を撫でおデコにキスをして部屋から出ていく。
本当は僕が付き添ってあげたいけれど…僕にはやらなきゃいけない事がある。
急いで来た道を戻り、あの会場へと向かう。
カオルくんをこんな目に合わせた奴らは絶対に許さない…
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