美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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86話:イケメン騎士団長の日常 ⑦ 〜Side アルク〜

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講習会の会場へと到着すると、先に会場に到着している団員の姿が目に入る。
団員2名は入り口前で警備員数名に取り囲まれていた。

「おいおい。騎士団様が何の用があるのか知らないがこの会場には入らせないぞ」
「この会場で違法行為が行われていると情報が入ったのだ。話を聞きたい。責任者を出してくれ」
「違法行為だぁ~?はは。そんなに調べたきゃお前らより偉い奴を連れてこい!そしたらまずは俺達が話くらいは聞いてやるよ!」

自分達の方が人数が多く余裕があるのか頭の悪そうな警備員達は団員に強い口調で罵る。それを聞いて周りもゲラゲラとバカにするように笑っていた。
警備員達の態度に団員は苛立っていたが手を出さずにグッと耐えていた。


「私は騎士団長アルク・ジョワゼーレ。この会場で行われている講習会について聞きたい事があるだが…私の肩書きならば話を聞いてもらえるかな?」

団員達の後ろからズイっと割って入ると僕を見上げる警備員達からは「ヒィ…」と小さな悲鳴が聞こえる。
ニコリと微笑みながら要件を話すがその場にいる者達は皆下を向き黙り込む。


「さぁ、話ができる者はいないのか?」


「あ…あのぅ…如何なさいましたか?」

しばらくすると、ふくよかな体型をした中年の男が会場の入り口から機嫌を伺うように足早にこちらへと向かってくる。
この講習会を仕切る責任者と名乗る中年男は、騎士団長まで現れたので慌てて出てきたのだろうか息をきらしハァハァ肩で呼吸をしている。

「あぁ。こちらの会場で行われている講習会についてなんだが…講習会の裏で娼夫を無理矢理奴隷にし売買を行なっていると噂を聞いたが本当か?」
「なっ…!?そ、そんな噂はでたらめです!娼夫を奴隷にするなどありえませんよ!」

責任者の男は焦りを隠すように大声をあげて否定し始める。


「そうか…でたらめか…。それを聞いて安心した」
「はは…。そうですよ。そんな事をするなんて…」
「そんな事をすれば死罪もやむ終えないからな。では、私達は今から調査をさせてもらうが問題ないな?何せ噂はでたらめなのだから。だが、私達もここまで来て調査をせずに帰ったとは報告できない。さぁ入るぞ」
「えっ…?あ…お、お待ち下さいっっ!!」

僕が中へと入る合図を送ると待機していた団員達がゾロゾロと会場の中へと入っていく。
警備員も会場にいた講習会の職員達も急な出来事に対応できず大人しくこちらの言う事を聞いてくれる。

「こ、こんな乱暴な振る舞いが許されるのか!騎士団として恥を知れ!」

責任者の男はギャーギャーと喚き立ててくるが、僕にはそんな暇はない。
早く『カオル』と書かれている子がカオルくんで無いことを確認したい…

僕はイライラしながら責任者の男の話を聞いているとそこにオドリーがやってくる。

「はいはいはいはい。話なら俺が聞きますから。ほら。お前はさっさと捜索してこい」

オドリーは面倒くさそうに責任者の男を別室へと引き連れていった。

会場へと入り調べ始めればすぐにシーナが持ってきた資料と同じ物が見つかり疑惑は確信へと変わった。
まずは団員を一階と二階へ分け各部屋を調べさせていく。

「一階、二階に娼夫達はいません!」
「分かった。残るは地下だな…」

団員から報告を受けると地下へと続く階段に目を向ける。

団員達と地下にある薄暗い通路を歩いていく。
奥に進んでいくと娼夫達と思われる悲鳴や泣き声…喘ぎ声など聞くに耐えない声が大きくなっていく。

「……各自部屋を確認し娼夫達を保護しろ。」
「はっ!」

次々に団員達が部屋へと入っていき娼夫達を保護していく。
保護された娼夫達を見れば皆首輪を付けられていた。そして媚薬を盛られたのか顔を赤らめ蹲っている。

部屋にいた者達は一旦拘束させてもらう。
この国の者ではない顔や身なりの者が多く見られ、オドリーが言っていた他国への奴隷売買も正確な情報だったようだ。

娼夫達を資料と照らし合わせ一人一人名前を確認していく。
数十名の娼夫の確認が終わり、あと2人となる…

『フィウス』と『カオル』と名前を書かれた資料を見ながら僕は団員からの報告を待った。

「アルク団長!奥の広間で2人倒れています!」
「分かった。そちらへ向かう」

団員に広間の部屋へと案内されると、顔面を殴られ血塗れになった男と意識を失い床に横たわる男の姿が見えた。

広間で倒れている2人は残る2人の娼夫の特徴とは一致せず買い手側のようだ。
顔面の損傷が酷い男は団員に手当てをさせ、意識を失っている者を叩き起こす。

「おい…おい…。目を覚ますんだ」
「ん……。痛っっ…!あ?え?」

金髪の男は目を覚ますと、こめかみ辺りを痛そうに抑えながら僕を見て困惑した表情を見せる。

「聞きたい事がある。この部屋に『カオル』と『フィウス』とゆう者がいたか?」
「カオル…?あの…すみませんが、まずはこの状況から説明してもらえませんか?」

質問にヘラヘラ笑いながら答える男に苛立ち、僕は胸ぐらを掴み男を軽々と持ち上げる。

「カオルが…いたのかと聞いている…」

持ち上げた男を睨みつけると、男は顔を青くし一瞬にして怯えた表情に変わる。

「ひぃっ!い、いました!でも、相手をしている最中に誰かに後ろから襲われたんです!私も意識を失ったのでその後のことは分かりません!!」
「それは本当か??」
「はい!本当です!」

泣きながら許してくれと喚き立てる男を下におろし拘束するように団員へと伝える。


一体誰がこの部屋から2人を連れ出したんだ…。

行方が分からない2人は他の部屋も調べるが見つからず、一旦オドリーの元へと戻ることにした。

オドリーと話をしていた責任者の男はすでに観念した様子で首を垂れて顔を青くしていた。

「全員見つかったか?」
「いや…。カオルとフィウス…その2名の行方が分からない…」

僕はオドリーに消え入りそうな声で報告する。
2人は助け出されたのならばいいが…もし連れ去られたのならば…

見つからない『カオル』に僕は不安ばかりが大きくなっていく。

「そうか…。ここの処理は一旦俺が請け負ってやるから…お前はまず大事なカオルくんが無事か確認してこい」
「…っ!オドリー…いいのか…?」

「あ?いいも悪いもそんな不安そうな顔で仕事されたらこっちが気になるんだよ!でも、無事だったらすぐに帰ってこいよ!ここの処理面倒くさそうだからな」
「分かった!すまないオドリー」


オドリーに礼を言うと僕は急いでカオルくんの宿へと向かう。


カオルくんがいつもの笑顔で僕を迎えてくれる事を祈りながら…
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