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本章
82話:ご主人様救出!
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~カオル達救出前のエル・セシリオのお話~
「はぁ…今年の講習会はえらく遅いな~」
カオルとフィウスが講習会に参加してから数時間…。
セシリオとエルは講習会の会場からすぐ近くの場所でベンチに腰掛け2人を待っていた。
セシリオはエルと話をするのも飽きてきてベンチの背もたれにだらしなくもたれかかる。
「暇すぎるぞ…。なぁエル」
「ウン。ヒマダ」
セシリオとは真逆にエルは背筋を正してベンチに腰掛けカオルの帰りを待っていた。
いつもなら1時間程度で終わるはずなのに2人がなかなか会場から出てこない。
他の娼夫達は続々と会場から出てくるのだが…
遅すぎる…。
「あとどれくらいで終わるか聞いてみるか…。ちょっと会場に行って話してくるからエルはここで待ってろ」
痺れを切らしたセシリオはエルにそう言い講習会の会場へ入っていく。
会場の入り口近くの受付場はすでに片付けを始めていた。
「すいませーん。講習会ってまだ終わらないですか?」
片付けをしていた中年の係員に声をかけると怪訝な顔をされる。
「講習会なら2時間前に終わったぞ」
「え?まだ俺の連れが会場から出てきてないんですけど…」
「…その連れの名前と所属している娼館はなんだ?」
「ラビリンスのフィウスだけど…。あと娼館所属なしのカオルも出てきていない」
係員はハァ…とため息をつき、面倒くさそうにしまった名簿を箱から取り出してペラペラとめくっていく。
「ラビリンスのフィウス…あとカオルねぇ…。あぁ……コイツらは講習会が終わってすぐに帰されているな。もういないぞ」
「はぁ?会場前でずっと待ってたんだぞ。」
「いないって言ってるだろ!!ったく…何度言わせればいいんだ。さっさと帰れ」
「そんな訳ねーだろ。フィウスの匂いもまだこの近くからするし…」
「あのなぁ、匂いがなんだと言われても俺は知らん。ここにはもういない。醜い獣人に割いてる時間なんてこっちにはないんだよ!!」
係員の男は苛立ちながら近くにいる警備員を呼び寄せ、セシリオは摘み出されるように会場から追い出される。
「くそっっ!一体なんなんだよ…」
セシリオはイライラしながらエルの元へと戻り状況を伝える。
「アルジ……イナイ…?」
「あぁ。もう帰ったなんて言いやがるが、まだ会場の中からフィウスの匂いもカオルの匂いもする。一体どうなってんだよ…」
「アルジ…イナイ…イナイ…」
説明を聞いたエルは混乱し落ち着きなくソワソワしだす。
セシリオの一件で会場の入り口前には警備員が立たされており再度会場に入るのは難しい状況になっていた。
セシリオはどうしたものか…と、大きなため息をつく。
「あ、あの…ラビリンスのフィウスさんの…知り合いですか?あと、そちらにいるのはカオルさんの連れの方ですよね?」
「あん?何だお前。俺のご主人様に何か用か?俺は今忙しいんだよ」
セシリオはこれからどうするかと考えている所に声をかけてきた気弱な青年に苛立ちギロリと睨みつける。
青年はセシリオの顔とその表情に「ヒッ…」と小さく悲鳴をあげ固まってしまう。
「おい…。何だって言ってるん…」
「アルジノニオイ…」
セシリオが青年に問い詰める前に、エルが青年の手首を掴み無表情のまま見下ろす。
青年はエルを見上げさらに顔を青くする。
「カオルの匂い?スンスン…。本当だな。お前なんでカオルの匂いさせてんだよ」
青年よりも身長も体格もデカい2人に見下ろされ青年はカタカタと震えながらも話し始める。
「あ、あの…信じてもらえないかもしれないんですが…フィウスさんとカオルくんが大変なんです!助けるのを…て、手伝って下さい!」
「おい…それどうゆう事だよ……」
青年はシーナと名乗り会場で行われていた一部始終を話し出す。
証拠として持っていた資料には娼夫の写真や名前、あとは売却先の相手も記載されていた。
「くそっっ…ホープ…。あいつまだ諦めてなかったのかよ…。あの時殺しておくんだった…」
「アルジ…チカ…。タスケル…」
「僕が場所を案内します!」
「いや…お前はその資料もって騎士団の詰所に向かえ。んで、さっきの話しをしてこい。流石にその資料もあれば様子を見に来るくらいはしてくれるだろう」
「ですが…地下の部屋はいくつもあるので…」
「大丈夫だ。俺達獣人は鼻が利くから匂いで部屋も分かるからな。それにお前戦えないだろ?自分の身も守れない奴は連れていけない」
シーナは助けに行けず悔しそうな表情を浮かべるが、セシリオに言われた通り、自分は力もなく一緒に行っても足手まといになってしまう…と、納得する。
「すみません…。僕は2人を売り渡した側なのに…何もできなくて…。」
「いや…こうやって教えてくれただけで十分だよ。じゃあ俺達は中に向かう。お前もちゃんと騎士団連れてこいよ!」
「イッテクル…」
「お願いします……」
セシリオとエルは会場の2階にある窓が空いているのを見つけると、近くにあった木をスイスイと登りヒラリと窓へと飛びつく。
中に入れば人の気配はあまり無く、2人の匂いを辿りながら地下の方へと向かっていく。
地下の通路を歩いていくと奴隷にされた娼夫達の泣き声や叫び声…それに甘ったるく喘ぐ声が廊下に響き渡っていた。
廊下を奥へと進んで行けば2人の匂いが強くなる…
そして、2人以外の匂いと精液の匂い…
セシリオとエルは怒りに満ちた目で足早にカオルとフィウスの元へと急ぐ。
「ここだな…行くぞ」
「ウン…」
鍵のかかっていないドアを開け2人が目にした光景は今まで抑えていた怒りを爆発させるのには充分だった。
フィウスの髪を引っ張り口淫をさせながら罵声を浴びせているホープ。
泣きじゃくるカオルを壁に押さえつけ犯し始めているジリアス。
2人は怒りを抑えきれずに互いの主人の元へと向かって行った…
「はぁ…今年の講習会はえらく遅いな~」
カオルとフィウスが講習会に参加してから数時間…。
セシリオとエルは講習会の会場からすぐ近くの場所でベンチに腰掛け2人を待っていた。
セシリオはエルと話をするのも飽きてきてベンチの背もたれにだらしなくもたれかかる。
「暇すぎるぞ…。なぁエル」
「ウン。ヒマダ」
セシリオとは真逆にエルは背筋を正してベンチに腰掛けカオルの帰りを待っていた。
いつもなら1時間程度で終わるはずなのに2人がなかなか会場から出てこない。
他の娼夫達は続々と会場から出てくるのだが…
遅すぎる…。
「あとどれくらいで終わるか聞いてみるか…。ちょっと会場に行って話してくるからエルはここで待ってろ」
痺れを切らしたセシリオはエルにそう言い講習会の会場へ入っていく。
会場の入り口近くの受付場はすでに片付けを始めていた。
「すいませーん。講習会ってまだ終わらないですか?」
片付けをしていた中年の係員に声をかけると怪訝な顔をされる。
「講習会なら2時間前に終わったぞ」
「え?まだ俺の連れが会場から出てきてないんですけど…」
「…その連れの名前と所属している娼館はなんだ?」
「ラビリンスのフィウスだけど…。あと娼館所属なしのカオルも出てきていない」
係員はハァ…とため息をつき、面倒くさそうにしまった名簿を箱から取り出してペラペラとめくっていく。
「ラビリンスのフィウス…あとカオルねぇ…。あぁ……コイツらは講習会が終わってすぐに帰されているな。もういないぞ」
「はぁ?会場前でずっと待ってたんだぞ。」
「いないって言ってるだろ!!ったく…何度言わせればいいんだ。さっさと帰れ」
「そんな訳ねーだろ。フィウスの匂いもまだこの近くからするし…」
「あのなぁ、匂いがなんだと言われても俺は知らん。ここにはもういない。醜い獣人に割いてる時間なんてこっちにはないんだよ!!」
係員の男は苛立ちながら近くにいる警備員を呼び寄せ、セシリオは摘み出されるように会場から追い出される。
「くそっっ!一体なんなんだよ…」
セシリオはイライラしながらエルの元へと戻り状況を伝える。
「アルジ……イナイ…?」
「あぁ。もう帰ったなんて言いやがるが、まだ会場の中からフィウスの匂いもカオルの匂いもする。一体どうなってんだよ…」
「アルジ…イナイ…イナイ…」
説明を聞いたエルは混乱し落ち着きなくソワソワしだす。
セシリオの一件で会場の入り口前には警備員が立たされており再度会場に入るのは難しい状況になっていた。
セシリオはどうしたものか…と、大きなため息をつく。
「あ、あの…ラビリンスのフィウスさんの…知り合いですか?あと、そちらにいるのはカオルさんの連れの方ですよね?」
「あん?何だお前。俺のご主人様に何か用か?俺は今忙しいんだよ」
セシリオはこれからどうするかと考えている所に声をかけてきた気弱な青年に苛立ちギロリと睨みつける。
青年はセシリオの顔とその表情に「ヒッ…」と小さく悲鳴をあげ固まってしまう。
「おい…。何だって言ってるん…」
「アルジノニオイ…」
セシリオが青年に問い詰める前に、エルが青年の手首を掴み無表情のまま見下ろす。
青年はエルを見上げさらに顔を青くする。
「カオルの匂い?スンスン…。本当だな。お前なんでカオルの匂いさせてんだよ」
青年よりも身長も体格もデカい2人に見下ろされ青年はカタカタと震えながらも話し始める。
「あ、あの…信じてもらえないかもしれないんですが…フィウスさんとカオルくんが大変なんです!助けるのを…て、手伝って下さい!」
「おい…それどうゆう事だよ……」
青年はシーナと名乗り会場で行われていた一部始終を話し出す。
証拠として持っていた資料には娼夫の写真や名前、あとは売却先の相手も記載されていた。
「くそっっ…ホープ…。あいつまだ諦めてなかったのかよ…。あの時殺しておくんだった…」
「アルジ…チカ…。タスケル…」
「僕が場所を案内します!」
「いや…お前はその資料もって騎士団の詰所に向かえ。んで、さっきの話しをしてこい。流石にその資料もあれば様子を見に来るくらいはしてくれるだろう」
「ですが…地下の部屋はいくつもあるので…」
「大丈夫だ。俺達獣人は鼻が利くから匂いで部屋も分かるからな。それにお前戦えないだろ?自分の身も守れない奴は連れていけない」
シーナは助けに行けず悔しそうな表情を浮かべるが、セシリオに言われた通り、自分は力もなく一緒に行っても足手まといになってしまう…と、納得する。
「すみません…。僕は2人を売り渡した側なのに…何もできなくて…。」
「いや…こうやって教えてくれただけで十分だよ。じゃあ俺達は中に向かう。お前もちゃんと騎士団連れてこいよ!」
「イッテクル…」
「お願いします……」
セシリオとエルは会場の2階にある窓が空いているのを見つけると、近くにあった木をスイスイと登りヒラリと窓へと飛びつく。
中に入れば人の気配はあまり無く、2人の匂いを辿りながら地下の方へと向かっていく。
地下の通路を歩いていくと奴隷にされた娼夫達の泣き声や叫び声…それに甘ったるく喘ぐ声が廊下に響き渡っていた。
廊下を奥へと進んで行けば2人の匂いが強くなる…
そして、2人以外の匂いと精液の匂い…
セシリオとエルは怒りに満ちた目で足早にカオルとフィウスの元へと急ぐ。
「ここだな…行くぞ」
「ウン…」
鍵のかかっていないドアを開け2人が目にした光景は今まで抑えていた怒りを爆発させるのには充分だった。
フィウスの髪を引っ張り口淫をさせながら罵声を浴びせているホープ。
泣きじゃくるカオルを壁に押さえつけ犯し始めているジリアス。
2人は怒りを抑えきれずに互いの主人の元へと向かって行った…
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