美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

文字の大きさ
上 下
100 / 181
本章

82話:ご主人様救出!

しおりを挟む
~カオル達救出前のエル・セシリオのお話~




「はぁ…今年の講習会はえらく遅いな~」

カオルとフィウスが講習会に参加してから数時間…。
セシリオとエルは講習会の会場からすぐ近くの場所でベンチに腰掛け2人を待っていた。


セシリオはエルと話をするのも飽きてきてベンチの背もたれにだらしなくもたれかかる。

「暇すぎるぞ…。なぁエル」
「ウン。ヒマダ」

セシリオとは真逆にエルは背筋を正してベンチに腰掛けカオルの帰りを待っていた。


いつもなら1時間程度で終わるはずなのに2人がなかなか会場から出てこない。
他の娼夫達は続々と会場から出てくるのだが…

遅すぎる…。

「あとどれくらいで終わるか聞いてみるか…。ちょっと会場に行って話してくるからエルはここで待ってろ」

痺れを切らしたセシリオはエルにそう言い講習会の会場へ入っていく。
会場の入り口近くの受付場はすでに片付けを始めていた。

「すいませーん。講習会ってまだ終わらないですか?」

片付けをしていた中年の係員に声をかけると怪訝な顔をされる。

「講習会なら2時間前に終わったぞ」
「え?まだ俺の連れが会場から出てきてないんですけど…」
「…その連れの名前と所属している娼館はなんだ?」
「ラビリンスのフィウスだけど…。あと娼館所属なしのカオルも出てきていない」

係員はハァ…とため息をつき、面倒くさそうにしまった名簿を箱から取り出してペラペラとめくっていく。

「ラビリンスのフィウス…あとカオルねぇ…。あぁ……コイツらは講習会が終わってすぐに帰されているな。もういないぞ」
「はぁ?会場前でずっと待ってたんだぞ。」
「いないって言ってるだろ!!ったく…何度言わせればいいんだ。さっさと帰れ」

「そんな訳ねーだろ。フィウスの匂いもまだこの近くからするし…」
「あのなぁ、匂いがなんだと言われても俺は知らん。ここにはもういない。醜い獣人に割いてる時間なんてこっちにはないんだよ!!」

係員の男は苛立ちながら近くにいる警備員を呼び寄せ、セシリオは摘み出されるように会場から追い出される。


「くそっっ!一体なんなんだよ…」

セシリオはイライラしながらエルの元へと戻り状況を伝える。

「アルジ……イナイ…?」
「あぁ。もう帰ったなんて言いやがるが、まだ会場の中からフィウスの匂いもカオルの匂いもする。一体どうなってんだよ…」
「アルジ…イナイ…イナイ…」

説明を聞いたエルは混乱し落ち着きなくソワソワしだす。
セシリオの一件で会場の入り口前には警備員が立たされており再度会場に入るのは難しい状況になっていた。

セシリオはどうしたものか…と、大きなため息をつく。


「あ、あの…ラビリンスのフィウスさんの…知り合いですか?あと、そちらにいるのはカオルさんの連れの方ですよね?」
「あん?何だお前。俺のご主人様に何か用か?俺は今忙しいんだよ」

セシリオはこれからどうするかと考えている所に声をかけてきた気弱な青年に苛立ちギロリと睨みつける。

青年はセシリオの顔とその表情に「ヒッ…」と小さく悲鳴をあげ固まってしまう。

「おい…。何だって言ってるん…」
「アルジノニオイ…」

セシリオが青年に問い詰める前に、エルが青年の手首を掴み無表情のまま見下ろす。
青年はエルを見上げさらに顔を青くする。

「カオルの匂い?スンスン…。本当だな。お前なんでカオルの匂いさせてんだよ」

青年よりも身長も体格もデカい2人に見下ろされ青年はカタカタと震えながらも話し始める。


「あ、あの…信じてもらえないかもしれないんですが…フィウスさんとカオルくんが大変なんです!助けるのを…て、手伝って下さい!」
「おい…それどうゆう事だよ……」

青年はシーナと名乗り会場で行われていた一部始終を話し出す。
証拠として持っていた資料には娼夫の写真や名前、あとは売却先の相手も記載されていた。

「くそっっ…ホープ…。あいつまだ諦めてなかったのかよ…。あの時殺しておくんだった…」
「アルジ…チカ…。タスケル…」
「僕が場所を案内します!」

「いや…お前はその資料もって騎士団の詰所に向かえ。んで、さっきの話しをしてこい。流石にその資料もあれば様子を見に来るくらいはしてくれるだろう」
「ですが…地下の部屋はいくつもあるので…」
「大丈夫だ。俺達獣人は鼻が利くから匂いで部屋も分かるからな。それにお前戦えないだろ?自分の身も守れない奴は連れていけない」

シーナは助けに行けず悔しそうな表情を浮かべるが、セシリオに言われた通り、自分は力もなく一緒に行っても足手まといになってしまう…と、納得する。


「すみません…。僕は2人を売り渡した側なのに…何もできなくて…。」
「いや…こうやって教えてくれただけで十分だよ。じゃあ俺達は中に向かう。お前もちゃんと騎士団連れてこいよ!」
「イッテクル…」
「お願いします……」


セシリオとエルは会場の2階にある窓が空いているのを見つけると、近くにあった木をスイスイと登りヒラリと窓へと飛びつく。
中に入れば人の気配はあまり無く、2人の匂いを辿りながら地下の方へと向かっていく。

地下の通路を歩いていくと奴隷にされた娼夫達の泣き声や叫び声…それに甘ったるく喘ぐ声が廊下に響き渡っていた。

廊下を奥へと進んで行けば2人の匂いが強くなる…
そして、2人以外の匂いと精液の匂い…


セシリオとエルは怒りに満ちた目で足早にカオルとフィウスの元へと急ぐ。

「ここだな…行くぞ」
「ウン…」

鍵のかかっていないドアを開け2人が目にした光景は今まで抑えていた怒りを爆発させるのには充分だった。

フィウスの髪を引っ張り口淫をさせながら罵声を浴びせているホープ。
泣きじゃくるカオルを壁に押さえつけ犯し始めているジリアス。


2人は怒りを抑えきれずに互いの主人の元へと向かって行った…
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

処理中です...