美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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69話:カオルとケモ耳 ②

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「ほらエル挨拶しろ!これからお前のご主人様になる方だぞ」
「………。」

連れてこられた『エル』は見上げる程に背が高くボサボサと伸びた黒髪は失明した右眼を隠している。髪の毛の間から見える左眼で俺をじぃーっと見つめてくるが、その琥珀色の瞳はなんだか淀んでいた。

頭からは黒色の毛を纏った耳と、エルの後ろからはダラリと垂れたシッポが見える。
褐色の肌は薄汚れていて、あまりまともな食事を食べていないのか少し痩せているように見える…

「ったく…返事もできなくなったのか!お兄さん…ほんとうにコイツを買うんですか?」
「はい。お願いします」
「返品は3日以内で…料金は処分前なのでお安くしときますよ。じゃあ服従契約の準備をしましょうか」

そう言うとお兄さんは何やら首輪のような道具を戸棚から持って座らせたエルの首にはめていく。

あの首輪見覚えが…いや付け覚えがある…。

「あの…服従契約ってなんですか?」
「奴隷が逆らわないようにする為ですよ。この魔道具に主人となる人の血を流しておけばなんでも言うことを聞く従順な奴隷のできあがりです」

奴隷商のお兄さんは普通の事だとニコっと笑いながら教えてくれるが、それって自分の意思もなくなるって事なんじゃないの?

「え?それじゃあエルが可愛そうじゃあ…」
「はは!何を言ってるんですか?奴隷ですよ?」
「でも……。あの、服従の契約って必ずしないとダメですか?」
「そうですねぇ…服従の契約していない奴隷は何をしでかすか分かりません。せめて主従の契約だけでも交わさないと、お兄さん最悪殺されちゃいますよ」
「主従の契約ですか…」
「服従の契約よりは効力は薄くなりますが簡単な命令ならば従います。主人と認識させる事で命を奪うリスクも減らす事ができます」


殺されるかもしれない…
チラッとエルを見るとじーっと俺を見つめてくる。

俺よりもデカいエルに襲われたらあっさり俺はやられるよな…。
仲良くなるまでは契約結んでた方が俺も安心できる。エルにはちゃんと奴隷から解放する事を説明すれば大丈夫かな…

「ごめんな…。主従の契約だけ結ばせてほしい…」

俺は座り込むエルを見つめてそう伝えるとコクッと軽く頷いてくれた。

「じゃあ契約を結ぶので血を貰いますね」

奴隷商の青年はそう言うと針先で俺の人差し指を刺して血を絞り出すと、エルにはめられた首輪へと血を垂らす。
そして青年がブツブツと呪文を呟くとエルの首輪が光りだす。しばらくすると光は首輪に吸い込まれるように消えていく。

「はい。これで契約は完了ですよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ支払いをしている間にエルの支度をしてきますので一旦上の部屋へ行きましょうか」
「わかりました。…じゃあエル。またあとでな」

そう言って俺は奴隷商の青年に別室へ案内されてお金の支払いを済ませエルについて教えてもらった。

エルは南の国に住む狼の半獣人で戦争孤児として奴隷商の青年が引き取ったそうだ。
歳は17歳。見た目は俺よりも年上に見え驚いていたが半獣人は成長が早く15歳くらいで人間の20代の外見まで成長するらしい。

エルは精神年齢が低く大きな子供だと思ってもらった方がいいと言われた。
言葉や礼儀などが上手く覚えられずトラブルを起こし手放される事が多い問題児だったと青年は語る。


青年と話しながら待っているとエルが連れてこられる。

少しだけ整えられた髪と身なり。スッポリと全身を覆うローブを着せられ顔には仮面がつけられていた。

「エルは半獣人に加えてこの見た目なので外を連れて歩くならローブを着せる事をお勧めします」
「分かりました」

俺はそう答えるとエルの前まで向かう。
エルを見上げると無表情でエルもこちらを見てくる。

「えーっと…俺の名前はカオル。改めてエルよろしくな」
「…カオル。オレノ……アルジ主人…」
「うん!そうだよ!」

エルが初めて喋ってくれて俺はなんだか嬉しくなった。
やはり言葉を話すのが苦手なようで辿々たどたどしい喋り方だが、俺はまったく気にならなかった。

「では何か困った事があればいつでも来てください。またお待ちしておりますね」
「あー…そうですね。では俺達はこれで…エル行こう」

奴隷商の青年に見送られ俺達は宿へと向かった。
裏通りを抜けて人が多い通りに出るとエルの足が止まる。

「エルどうした?」
「ヒト…タクサン…」
「あぁそうだね。人が多い場所を歩くの初めてなのかな…?怖い?」
「…コワクナイ」

エルはフルフルと顔を横に振り怖くないと答えるが少し震えているように見える…

「じゃあ人も多いし、はぐれないように手を繋いで行こうか!」

俺はそう言ってエルの右手を握りニコッと笑いかけると、エルは俺の方を見て「…ワカッタ」と頷き繋いだ手をギュッと握り返してくれる。

手を繋いだまま宿へと向かうと、宿屋の店員ドルンさんが俺達を見て少し驚く。

「カオルくんお帰り。隣にいるのは…?」
「ドルンさんただいま。えーっと実は…」

俺はエルを連れて来た経緯をドルンさんに話し、今の部屋にエルを連れて行ってもいいか確認する。

「そうか。半獣人の奴隷か…なんだか大変だったね。うちは一室の料金で支払ってもらってるから人数が増えても構わないよ」
「そうなんですか!ドルンさんありがとうございます。よし、エル部屋に行こう」

そのまま部屋へ入るとエルはキョロキョロと部屋の中を見渡す。

「エル?どうした?」
「ニオイ…アルジジャナイ…チガウニオイ」

エルは鼻をスンスンさせて少し嫌そうな顔をする。

「匂い?エルは半獣人だから鼻がいいのか…凄いな!」

昨日はキースが来ていたからその匂いが残っているんだろうか?
俺には全然分からないけど…

「アルジ…イイニオイ」

そう言って今度は俺の首筋の匂いを嗅いでくる。
鼻が首筋に当たってなんだかくすぐったい。

「エル!くすぐったいって~」

俺がケラケラと笑うとエルも少し笑ったような表情を見せる。
奴隷商人のところにいた時は瞳は淀んでいて生気も感じられなかったけど、今は琥珀色の瞳がキラキラと輝いている。

「ん……?エル…ちょっと近くに寄って」
「ン??」

今度は俺がエルの体をスンスンと匂いを嗅ぐ。
エルには申し訳ないが…色んな臭いがする。

「よし!エルまずはシャワー浴びようか!」
「シャワー…?」
「あぁ~分からないかな?俺が入れてやるから安心していいよ」

エルは頷き俺はエルを風呂に入れる事にした。
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