美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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68話:カオルとケモ耳 ①

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「お兄さんお兄さん!ちょっとちょっと…」

雑貨屋に日用品を買いに向かっていると仮面をつけた金髪の青年から声をかけられる。
その青年はこの町ではあまり見かけない石油王って感じの民族衣装を着ていて、言葉にも少し訛りを感じた。

「あの…なんですか?」
「私は今日この町に来たばかりの奴隷商なんですが…どうですお兄さん?家内奴隷に愛玩奴隷…うちの店では色々と取り揃えていますよ。今回お兄さんには特別にお安くしておきますよ?」

ニコニコと笑いながら俺に話をしてくる青年…
俺は『奴隷』って言葉を聞いて思わず顔をしかめてしまう。

この世界にも奴隷っているんだな…

「いや…俺は奴隷とかはいいです…」
「まぁまぁそう言わずに!見ていくだけでも結構ですから!」
「え?あ、ちょ、ちょっと…」

そう言うと奴隷商人の青年は「さあさあ」と俺の背中をグイグイ押して裏通りの方へと案内していく。
何度か断ろうとするがその度に青年に言いくるめられ「じゃあ…見るだけ…」と俺は青年の後をついていく。

見るからに怪しげな大きな建物へと案内される。
建物の中は外観の怪しさとは逆に明るく綺麗な場所だった。
そこから地下へと続く階段を降りていくと…鉄格子をはめられた三畳くらいの広さの牢屋のような部屋がズラリと並ぶ場所に辿り着いた。

地下とゆうこともあり薄暗くなんだか不気味だ…

「私のところの奴隷は愛玩奴隷が人気なんですよぉ~。元々は娼館で働いていた者が多くてすぐにでも楽しんでいただけると思いますよ!」
「はは…」

青年は明るくそう言うと一番手前の部屋にいる奴隷を紹介しだす。
その奴隷の人はむちむちボディーの不細工さんで、こちらの世界ではイケメンの分類に入る人だった。

「こちらは東の国の元娼夫でして、見た目がいいのも売りなんですが夜の相手としても……」

青年はペラペラと奴隷について説明をしてくるが適当に聞き流す。
部屋の中にいる青年の目は光がなく淀んでいてボーっと天井を見上げている。

…なんだか怖い。

俺がそんな事を思っていると青年は俺の反応が良くないのに気付き次の部屋の奴隷を紹介しだす。


青年と一緒に奥へ進みながら部屋毎に奴隷を紹介してもらっていると、青年は一つ部屋を飛ばす。
なんだか気になって部屋を覗いて見ると薄暗くてよく見えないが鎖に繋がれ隅っこにうずくまる人影…

「あの…この人は…?」
「あぁ。これは南の方にいる半獣人なんですが、見た目も悪くて言葉も上手く話せない奴でして…。戦闘奴隷としてなんとか使えていたんですが右眼を失明してからはそれもダメになりとしても反応が悪いせいですぐに返品されるなんですよ。今度開かれる闘技場で大型の獣と闘うイベントがあるんですがそこにコイツを出品する予定なんです」
「処分品……」

青年は普通の事のように話してくるが奴隷のいない日本で過ごした俺にとっては衝撃的だった。
サラッと青年が説明しただけでも辛い生活してきた感じが分かるのに、使い物にならないから処分するなんて…

俺は偽善かもしれないけど、目の前にいる人を助けてあげたいと思ってしまう。

あぁ~~でも中途半端に助けてしまって辛い思いとかさせてしまわないかな?
いやでもこのまま死ぬより……マシだよな?


「あの…奴隷を買ったら俺のモノになるんですよね?」
「えぇ。もちろんです。買った人に契約権をお渡ししますので」
「奴隷を辞めさせる事もできます?」
「そうですね。契約解除を行えば奴隷を解放できますよ。奴隷を買われた方の中には、その奴隷を気に入り婚姻を結ぶ方もいますので」


なるほど…じゃあ、俺が買って奴隷を辞めてもらえばいいんだ。
そうしたらこの人は自由になる…


「じゃあ…俺この半獣人が欲しいです…」
「えぇっ!?で、ですがコイツはもう廃棄ランクの奴隷ですよ?コイツよりもいい奴隷は山ほど…」
「この人がいいんです!俺この人を買います!」
「そうですか……じゃあ契約の準備をしてきますのでお待ち下さい」

そう言うと奴隷商の青年は半獣人の部屋の鍵を開けて鉄格子に繋いでいた鎖を引っ張りだす。

引きずられるようにして部屋から出てきたのは…背の高い狼の半獣人だった。
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