70 / 181
本章
54話:最低な本音 〜ディランSide〜
しおりを挟む
~ディランSide~
ロワーヌ刑務所を出てからすぐカオルは眠ってしまう。
本当にカオルには辛い思いをさせてしまった…
声を出せなくなり最後はギルバートに殺意まで向けられて…
ギルバートの罪を決定付ける為とはいえ、やはりこんな事をさせるべきではなかった…
ーーー『数日後にギルバートの保釈が決定している』
ギルバートの取り調べが終わった後に私はログス審判官から呼び出されそう告げられる。
どうやらヴェルニ公爵家が裏で手を回しギルバートを解放させようと動いているらしいとログス審判官は話す。
「今日来ていたゾネイル捜査員もギルバート側に買収されているようで保釈に向けてギルバート殿に不利な情報など証拠隠滅をしているようでのぉ…」
ログス審判官はため息をつきながらゾネイル捜査員の事を考えているのか忌々しそうな表情を見せる。
「ゾネイル捜査員の件についてはこちらでも不正の証拠を掴んでいるので捕まえる事はできるが、ギルバート殿についてはこのままでは保釈されてしまう。そこで君が保護している少年に協力をしてもらいたいんじゃが…」
「協力…ですか…」
私は嫌な予感がして表情が険しくなる。
「あの感じだとギルバート殿は洗脳をかけた少年に自分が有利になる証言を命じるだろう。ワシはその状況を記録してギルバート殿が洗脳者だという確かな証拠を手に入れたいのだが…」
「それではカオルに囮になれと言っているのと同じではないですか!そんな事させられない…」
「しかし、このままではギルバート殿は保釈され少年のような被害者がまた出るかもしれん。彼は今まで様々な事件に関与したと言われているが、なかなか尻尾を掴めなかったが今回は彼を捕まえる事ができそうなんじゃ…。それに洗脳をかける程に執着している少年を彼がそのまま諦めると思うか?」
「それは……」
ログス審判官がやろうとしている事はカオルに負担をかける事は確かだ。
そんな事をさせたくはない…
しかし、このままギルバートを野放しにするのは…
「ワシの言っている事は正攻法ではないのはわかっておる…。頼む手を貸してほしい…」
頭を下げるログス審判官。
「……分かりました。立ち合いには私も参加させてもらいます」
「あぁ。こちらも君がいてくれる方が安心する。明日はよろしく頼む」
それからカオルには、ある人物に会ってもらう事だけを伝えた。
ギルバートは案の定カオルに自分の都合の良い発言をするように命令していた。
これで先に捕まり自白したゾネイル捜査員の証言と合わせればギルバートの保釈は取り消され奴は罪を償う事となる。
しかし、最後の最後でカオルに向けた殺意は許せるはずもなく殺す勢いでギルバートを殴りつけてしまった。
今思えばカオルに合わせる前に私がギルバートなど処分すればよかったのだ…
「すまない…カオル…」
私の肩に寄りかかり眠るカオルの頬をそっと撫でる。
洗脳が早く解けカオルの声が戻ってほしいと願っている…しかし、洗脳が解ければカオルとの関係は終わる。
心のどこかでカオルとの繋がりが切れる事を恐れている自分がいる。
カオルが洗脳から解けた時、私に向けられる目はどんなものか…
非難、恐怖、憎しみ、哀れみ…
カオルが私の元から去っていく姿を想像すると胸がはちきれそうだった。
このまま洗脳が解けなければいいのに……
頭の中にいる最低な私が呟いた。
ロワーヌ刑務所を出てからすぐカオルは眠ってしまう。
本当にカオルには辛い思いをさせてしまった…
声を出せなくなり最後はギルバートに殺意まで向けられて…
ギルバートの罪を決定付ける為とはいえ、やはりこんな事をさせるべきではなかった…
ーーー『数日後にギルバートの保釈が決定している』
ギルバートの取り調べが終わった後に私はログス審判官から呼び出されそう告げられる。
どうやらヴェルニ公爵家が裏で手を回しギルバートを解放させようと動いているらしいとログス審判官は話す。
「今日来ていたゾネイル捜査員もギルバート側に買収されているようで保釈に向けてギルバート殿に不利な情報など証拠隠滅をしているようでのぉ…」
ログス審判官はため息をつきながらゾネイル捜査員の事を考えているのか忌々しそうな表情を見せる。
「ゾネイル捜査員の件についてはこちらでも不正の証拠を掴んでいるので捕まえる事はできるが、ギルバート殿についてはこのままでは保釈されてしまう。そこで君が保護している少年に協力をしてもらいたいんじゃが…」
「協力…ですか…」
私は嫌な予感がして表情が険しくなる。
「あの感じだとギルバート殿は洗脳をかけた少年に自分が有利になる証言を命じるだろう。ワシはその状況を記録してギルバート殿が洗脳者だという確かな証拠を手に入れたいのだが…」
「それではカオルに囮になれと言っているのと同じではないですか!そんな事させられない…」
「しかし、このままではギルバート殿は保釈され少年のような被害者がまた出るかもしれん。彼は今まで様々な事件に関与したと言われているが、なかなか尻尾を掴めなかったが今回は彼を捕まえる事ができそうなんじゃ…。それに洗脳をかける程に執着している少年を彼がそのまま諦めると思うか?」
「それは……」
ログス審判官がやろうとしている事はカオルに負担をかける事は確かだ。
そんな事をさせたくはない…
しかし、このままギルバートを野放しにするのは…
「ワシの言っている事は正攻法ではないのはわかっておる…。頼む手を貸してほしい…」
頭を下げるログス審判官。
「……分かりました。立ち合いには私も参加させてもらいます」
「あぁ。こちらも君がいてくれる方が安心する。明日はよろしく頼む」
それからカオルには、ある人物に会ってもらう事だけを伝えた。
ギルバートは案の定カオルに自分の都合の良い発言をするように命令していた。
これで先に捕まり自白したゾネイル捜査員の証言と合わせればギルバートの保釈は取り消され奴は罪を償う事となる。
しかし、最後の最後でカオルに向けた殺意は許せるはずもなく殺す勢いでギルバートを殴りつけてしまった。
今思えばカオルに合わせる前に私がギルバートなど処分すればよかったのだ…
「すまない…カオル…」
私の肩に寄りかかり眠るカオルの頬をそっと撫でる。
洗脳が早く解けカオルの声が戻ってほしいと願っている…しかし、洗脳が解ければカオルとの関係は終わる。
心のどこかでカオルとの繋がりが切れる事を恐れている自分がいる。
カオルが洗脳から解けた時、私に向けられる目はどんなものか…
非難、恐怖、憎しみ、哀れみ…
カオルが私の元から去っていく姿を想像すると胸がはちきれそうだった。
このまま洗脳が解けなければいいのに……
頭の中にいる最低な私が呟いた。
47
お気に入りに追加
3,454
あなたにおすすめの小説


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる