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本章
53話:もう一人のご主人様? ④
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ご主人様から引き離され嫌われて絶望感に浸っていると、ずっと黙っていたログス審判官と呼ばれていたお爺さんが話し出す。
「ふむふむ。なんとなーく分かった気がするのぉ~」
この部屋の空気には似合わないのんびりとした口調でログスさんは話を続ける。
「カオルくん。ワシは君の話が聞きたいんじゃがいいかの?」
今は誰とも話したくない気分なんですけど…
俺はそう思いながらも涙が溢れ出しそうな目をゴシゴシとこすりログスさんの方へと向き返事をしようと思ったが…
そういえばギルバートさんから『話さなくていい』って言われたから声がでないんだった。
俺はどうにかならないかと口をパクパクさせるがやっぱり声が出ない。
「おや?どうした?声が出せないのかのぉ?」
ログスさん大正解です!
そう思っていると、その言葉にギルバートさんが焦ったように反応する。
「ログス審判官!カオルはディランに裏切られてショックを受けています!今話を聞くのは…」
「しかし、もう少し話を聞かないとディラン殿が本当にやったかなんて分からないじゃろ?」
「ですが…」
「それとも…ギルバート殿に『話さなくていい』と命令を受けたから話せないのかのぉ…」
ログス審判官がそう言ったので俺はぶんぶんと頭を立てに振り頷く。
ギルバートさんは、そんな俺を見て凄く怖い表情を見せる。
「カオル!よけいな事をするんじゃ…」
「おっと…ギルバート殿そんな命令口調でカオルくんに話かけてどうしたんじゃ?まるでギルバート殿が洗脳者に見えるではないか」
ニッコリと笑うログス審判官にギルバートさんの口調は荒くなる。
「なんて失礼な事を…まるで私が犯人のように聞こえるではないか!ゾネイル捜査員はまだ来ないのか!彼なら私の無実を証明できる!」
「あぁ~ゾネイルくんはのぉ今日ここには来れないそうじゃよ」
「なっ!?クソ…あの役立たずめ……」
「金で悪に染まるような奴は捜査員には向いていないからのぉ~。今頃、自分から色々と話をしてくれている頃かのぉ…何を話してくれるのか楽しみじゃな」
楽しそうに笑みを浮かべるログスさんとは対照的に、その言葉を聞いたギルバートさんの顔はみるみる青ざめていく。
「さてカオルくん。君は今言葉が喋れないんじゃろ?ワシの質問に頷いたりで構わんから答えてくれるか?」
俺はコクリと頷く。
「君にこの魔道具を使用したのは誰かな?」
ログスさんは袋から見覚えのあるヘッドギアを取り出す。
俺は迷わずギルバートさんを指差す。
「ギルバート殿で間違いないかね?」
コクコクと頷くとログスさんはニッコリ笑ってくれる。
「そうかそうか。カオルくん答えてくれてありがとう。ではギルバート殿は別室にて詳しく話を聞かせてもらおうかのぉ」
ログスさんの言葉に兵士がギルバートさんに立つように促すとヨロヨロと立ち上がる。
ずっと自信に満ち溢れた顔をしていたのに今では絶望したような表情を見せブツブツと何か呟きだす。
「終わりだ終わりだ…はは…あははは……」
何か吹っ切れたように笑いだしたかと思うとギルバートさんはギリっと俺を睨みつけニタァと笑みを浮かべる。
「カオルッッ!!自がぃっっ…あがぁっ…」
俺に向かって何かを叫ぼうとしたと同時にディランさんの拳がギルバートさんの喉仏を潰すように殴りつけ次の瞬間には床に倒れ込んでいた。
ギルバートさんはピクピクと痙攣しヒューヒューと辛うじて息をしている…
「この下衆が…」
ご主人様は今までに見たことがない程冷酷な表情でギルバートさんを見下ろす。
一瞬の出来事に俺は何が起こったのか理解できずただ呆然と立っているだけだった。
ギルバートさん…さっきなんて言おうとした?
もしかして『自害』しろとか言いかけてなかった?
俺は初めて感じた人の憎悪に冷や汗をかく。
「カオルすまない。本当にすまなかった。怖い思いさせたな…」
ご主人様は俺の元へと駆け寄り申し訳ないと何度も何度も謝ってくる。
声が出せない俺はふるふると顔を横に振り『俺は大丈夫だから!』と抱きつく。
「カオルくんワシからも謝罪させてくれ。本当にすまなかった。君の洗脳者がギルバート殿である事を裏付ける証拠がどうしても必要だったんじゃ。それには君に命令する場面を確認する事…ディラン殿には反対されたが、これしか方法が見つからなかったんじゃ…」
ログスさんも頭を下げて俺に謝ってくるが…
なんだか凄くシリアスな場面に俺はついていけずとりあえず『分かりました』の意味も込めて頷いておく。
「あとはカオルくんの声なんじゃが…ギルバートに命令を解けと言っても素直に従わないじゃろうから洗脳が解けるまで不自由な生活を送らせてしまう…本当にすまぬ…」
「カオルが困らないように私もずっと側にいるから…」
その後も2人は沢山謝ってくるので『もう気にしないでください!』と笑いながら頷いておいた。
これで俺の気持ち伝わってるのか分からないけど…
倒れたギルバートさんは兵士に担がれて部屋を出て行き、それから2人はギルバートさんの後ろ盾の公爵家がなんだの、洗脳が解けた後の事などを話しだす。
俺は2人の会話にはついていけないので椅子に座り待つことにした。
今まで自分が洗脳されてるなんて嘘だと思っていたけれど、今日ギルバートさんに命令されて洗脳の恐ろしさが分かった。
自分が自分じゃなくなったみたいだった…
……もしかしてご主人様への『好き』って気持ちも本当は違うのかな?
そう思うと胸がギュッと痛くなった。
ログスさんとご主人様の話し合いも終わり「家に帰ろう」とご主人様が声をかけてくれたので頷く。
なんだか色々と起こりすぎて精神的に疲れてしまった俺は帰りの馬車でご主人様の肩を借りてウトウトとしだす。
早くお家に帰ってご主人様とイチャイチャしたいなぁ…と、思いながら色々あった今日の出来事から現実逃避するように俺は眠りについた。
「ふむふむ。なんとなーく分かった気がするのぉ~」
この部屋の空気には似合わないのんびりとした口調でログスさんは話を続ける。
「カオルくん。ワシは君の話が聞きたいんじゃがいいかの?」
今は誰とも話したくない気分なんですけど…
俺はそう思いながらも涙が溢れ出しそうな目をゴシゴシとこすりログスさんの方へと向き返事をしようと思ったが…
そういえばギルバートさんから『話さなくていい』って言われたから声がでないんだった。
俺はどうにかならないかと口をパクパクさせるがやっぱり声が出ない。
「おや?どうした?声が出せないのかのぉ?」
ログスさん大正解です!
そう思っていると、その言葉にギルバートさんが焦ったように反応する。
「ログス審判官!カオルはディランに裏切られてショックを受けています!今話を聞くのは…」
「しかし、もう少し話を聞かないとディラン殿が本当にやったかなんて分からないじゃろ?」
「ですが…」
「それとも…ギルバート殿に『話さなくていい』と命令を受けたから話せないのかのぉ…」
ログス審判官がそう言ったので俺はぶんぶんと頭を立てに振り頷く。
ギルバートさんは、そんな俺を見て凄く怖い表情を見せる。
「カオル!よけいな事をするんじゃ…」
「おっと…ギルバート殿そんな命令口調でカオルくんに話かけてどうしたんじゃ?まるでギルバート殿が洗脳者に見えるではないか」
ニッコリと笑うログス審判官にギルバートさんの口調は荒くなる。
「なんて失礼な事を…まるで私が犯人のように聞こえるではないか!ゾネイル捜査員はまだ来ないのか!彼なら私の無実を証明できる!」
「あぁ~ゾネイルくんはのぉ今日ここには来れないそうじゃよ」
「なっ!?クソ…あの役立たずめ……」
「金で悪に染まるような奴は捜査員には向いていないからのぉ~。今頃、自分から色々と話をしてくれている頃かのぉ…何を話してくれるのか楽しみじゃな」
楽しそうに笑みを浮かべるログスさんとは対照的に、その言葉を聞いたギルバートさんの顔はみるみる青ざめていく。
「さてカオルくん。君は今言葉が喋れないんじゃろ?ワシの質問に頷いたりで構わんから答えてくれるか?」
俺はコクリと頷く。
「君にこの魔道具を使用したのは誰かな?」
ログスさんは袋から見覚えのあるヘッドギアを取り出す。
俺は迷わずギルバートさんを指差す。
「ギルバート殿で間違いないかね?」
コクコクと頷くとログスさんはニッコリ笑ってくれる。
「そうかそうか。カオルくん答えてくれてありがとう。ではギルバート殿は別室にて詳しく話を聞かせてもらおうかのぉ」
ログスさんの言葉に兵士がギルバートさんに立つように促すとヨロヨロと立ち上がる。
ずっと自信に満ち溢れた顔をしていたのに今では絶望したような表情を見せブツブツと何か呟きだす。
「終わりだ終わりだ…はは…あははは……」
何か吹っ切れたように笑いだしたかと思うとギルバートさんはギリっと俺を睨みつけニタァと笑みを浮かべる。
「カオルッッ!!自がぃっっ…あがぁっ…」
俺に向かって何かを叫ぼうとしたと同時にディランさんの拳がギルバートさんの喉仏を潰すように殴りつけ次の瞬間には床に倒れ込んでいた。
ギルバートさんはピクピクと痙攣しヒューヒューと辛うじて息をしている…
「この下衆が…」
ご主人様は今までに見たことがない程冷酷な表情でギルバートさんを見下ろす。
一瞬の出来事に俺は何が起こったのか理解できずただ呆然と立っているだけだった。
ギルバートさん…さっきなんて言おうとした?
もしかして『自害』しろとか言いかけてなかった?
俺は初めて感じた人の憎悪に冷や汗をかく。
「カオルすまない。本当にすまなかった。怖い思いさせたな…」
ご主人様は俺の元へと駆け寄り申し訳ないと何度も何度も謝ってくる。
声が出せない俺はふるふると顔を横に振り『俺は大丈夫だから!』と抱きつく。
「カオルくんワシからも謝罪させてくれ。本当にすまなかった。君の洗脳者がギルバート殿である事を裏付ける証拠がどうしても必要だったんじゃ。それには君に命令する場面を確認する事…ディラン殿には反対されたが、これしか方法が見つからなかったんじゃ…」
ログスさんも頭を下げて俺に謝ってくるが…
なんだか凄くシリアスな場面に俺はついていけずとりあえず『分かりました』の意味も込めて頷いておく。
「あとはカオルくんの声なんじゃが…ギルバートに命令を解けと言っても素直に従わないじゃろうから洗脳が解けるまで不自由な生活を送らせてしまう…本当にすまぬ…」
「カオルが困らないように私もずっと側にいるから…」
その後も2人は沢山謝ってくるので『もう気にしないでください!』と笑いながら頷いておいた。
これで俺の気持ち伝わってるのか分からないけど…
倒れたギルバートさんは兵士に担がれて部屋を出て行き、それから2人はギルバートさんの後ろ盾の公爵家がなんだの、洗脳が解けた後の事などを話しだす。
俺は2人の会話にはついていけないので椅子に座り待つことにした。
今まで自分が洗脳されてるなんて嘘だと思っていたけれど、今日ギルバートさんに命令されて洗脳の恐ろしさが分かった。
自分が自分じゃなくなったみたいだった…
……もしかしてご主人様への『好き』って気持ちも本当は違うのかな?
そう思うと胸がギュッと痛くなった。
ログスさんとご主人様の話し合いも終わり「家に帰ろう」とご主人様が声をかけてくれたので頷く。
なんだか色々と起こりすぎて精神的に疲れてしまった俺は帰りの馬車でご主人様の肩を借りてウトウトとしだす。
早くお家に帰ってご主人様とイチャイチャしたいなぁ…と、思いながら色々あった今日の出来事から現実逃避するように俺は眠りについた。
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