美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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本章

34.5話:イケメン店員の事情〜リオSide〜①

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~Side リオ~

いつものように親父の食堂で働く毎日。
別に食堂での仕事は嫌いじゃない。

ただ…なんとなく毎日が退屈に感じていた。
その日も普段と変わらず昼時の忙しさに追われながら仕事をしていた。

また一人客が入ってきたな…
扉が開く音がして入り口へと目を向けると黒髪の可愛い少年が立っていた。
初めて見る顔だったので少し気にかけて様子を見ていると入り口で立ち止まったままオロオロと周りを見渡している。

「どうした?」

困っている感じがして思わず声をかけてしまう。
初対面の仮面なしに声をかけると大抵嫌そうな顔をされるのが分かってるのに…
その少年が気になってしょうがなかった。

少年はどう注文したらいいか分からないと俺に尋ねてくる。
…特に嫌な顔もされなかったので安心した。

注文の仕方を教えるが少年は文字が読めないらしく店のオススメでいいか尋ねると笑顔を見せてくれた。

めっちゃ可愛い…

思わず凝視してしまう俺を不思議そうに見てくるので慌てて顔を逸らして厨房へと向かう。
ランチセットをトレーに乗せていくがわざと一品少なくしておく。

「あと一品あるけど後から持ってくるから」

少年にそう言いトレーを渡す。
そう…俺は少しでも話したくてこんな子供じみた事をしてしまう。

少し時間を開けてもう一品を持って行こうと手前の座席を探すが…姿が見えない。

…まさかな。
そう思いながら仕切りの奥の席へと向かうと…皆がチラチラと目線を向ける先に少年の後ろ姿が見える。

しかも座ってる机は冒険者ギルド『アトラース』のギルド長のよく坐る場所…ってギルド長もいるし。

ギルド長は寡黙で何考えてるか分からないから皆あの席にはあまり座りたがらない。
少年はそれを知らずに座ったんだろうけど、俺でも時折怖いと思う独特の雰囲気や体格に顔なのに…平気なのか?

俺は少年の方へと向かうとギルド長の顔が見える。いつもの気難しい顔ではなく、どこか優しい顔をしてギルド長は少年を見ていた。

黙々と食べる少年に声をかけ残りの一品を渡すとまた満面の笑顔を向けてくる。

…やっぱり可愛い。

少年にトレーの返し方を伝えてその場を去るが…少年の事がずっと気になって仕方ない。

今度はいつ来てくれるだろうか?
もしかしたら会えるのは今日だけかもしれない…
せめて名前だけでも…

少年が帰ってしまわないようにチラチラと確認しながら仕事をこなしていく。
注文を受けて厨房に引っ込んだ時に少年がトレーを返却に来る姿が見えた。

やばっ!帰る前に名前!

慌てて返却口に向かい声をかける。

「なぁ!君…名前なんて言うの?」
「え?カオルです…」
「カオル…うん。覚えた。俺はリオ。カオルはまた食べに来るか?」
「はい!ここの料理美味しかったんでまた来ます」
「そうか…じゃあ来るの待ってるからな!」

そう言って俺は嬉しさのあまり気がつけば手を振っていた。

カオル……可愛い名前だ。
明日も来てくれるかな?

そう思いながら少し浮き足立ったまま俺は仕事に戻った。


次の日の朝。
カオルがひょっこりと食堂に顔を出してくる。
俺は嬉しくてすぐにカオルの元へと向かう。

「おはよう。また来てくれたんだな」
「はい。俺ここのご飯気に入ったんです」

今日も笑顔が可愛い…

常連客も俺と笑顔で話すカオルを物珍しそうに見てくる。
カオルが来てくれるのは嬉しいけど、他の奴とは仲良くなって欲しくないな…と意地の悪い考えが浮かぶ。

「朝飯も昨日と一緒でオススメでいいか?」
「はい!」

そう言って出来上がった食事を渡すと、またカオルは仕切りの奥へと向かっていく。
確かに手前の席は混雑しているが仮面なしなのに躊躇わずに奥へと向かうなんて…少し変わってるな。

そう思いながら俺はカオルの姿をチラチラと見ながら仕事をしていく。

カオルは朝、昼、晩の食事を俺の食堂で食べ毎日話すようになればすぐに仲良くなった。
同い年という事も分かりカオルの敬語は無くなりさらに距離が縮まった気がした。

「ねぇリオ。服ってどこで売ってるの?」
「ん?服屋は隣の通りにあるけど」

食事が終わったカオルは俺に服屋を尋ねてくる。
カオルはこの町に来てまだ数日しか経っていないらしく俺に色々と聞いてくる事が多い。

これは…遊びに誘ってもいいかな?

「なぁ…一緒に服買いに行くか?」
「え!?いいの?行きたい!」

少し緊張しながら誘うとカオルは嬉しそうに行きたいと答えてくれる。

嬉しい…カオルと2人きりで遊べる…

俺は飛び跳ねて喜びたい気持ちを抑えながらカオルと服屋へ行く予定日を決めていった。
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