上 下
51 / 181
本章

36話:久しぶりの再会

しおりを挟む
「ディランさんおはようございます」
「あぁ…カオルおはよう」



今日も朝食をとりに食堂に向かう。
食事を受け取ると俺の指定席になりつつある一番奥の端の席に座り、向かいにいる『ディランさん』に挨拶するのが日課となっている。

数日前にようやく互いに自己紹介して名前を教えてもらった。
ディランさんは寡黙な人だけど目が合えば微笑んでくれる優しい人だ。
年齢は…30代くらいかな?
父さんの雰囲気に似てるディランさんと一緒にいるとなんだかホッコリする。

そんな感じで俺の食事時間は最近癒しタイムとなっている。

「カオル、口に付いてるぞ」
「え?…あ、本当だ」

口の端を指さされて拭えばケチャップが付いていた。なんだか恥ずかしくてエヘヘと照れ笑いしてしまう。


「ディランさん。こんなとこにいたのかよ」

そんなホッコリタイムの途中に、なんだか聞き覚えのある声が俺の背後から聞こえる。

「……今は食事中だぞ」

今まで聞いたことのないディランさんの渋い不機嫌ボイス。

怖いけど渋くてめっちゃイケボなんですけど…と、俺が場違いな事を思っているとディランさんを探していた人は俺の隣の席にドカっと座る。

「はいはい。飯なんて今まで適当に食ってた人からそんな事言われる日が来るとはねぇ…」
「うるさい…。仕事は終わったのか?」
「じゃなきゃ帰ってきませんよ」

仲良さげな2人の会話を聞きながらチラッと横目で座った人を見る。
短い金色の髪の毛と黒色の瞳…見覚えのある横顔……あぁっ!!

「バルドさん…?」
「ん?…あぁ!!カオル!お前元気にしてたか?」

俺の顔を見てバルドさんは嬉しそうに頭をガシガシと撫でてくれる。

「はい!色々あったんですけど、どうにか生活してます」
「そうかそうか。俺を尋ねてギルドに顔出してくれたんだってな。ちょうど入れ違いで仕事が入ってしまってさっき帰ってきたところだったんだ。会えなくてすまなかったな」
「いえ、いいんです。バルドさん。町まで案内してくれて本当にありがとうございました!」
「気にするなって。元気そうにしてて俺も安心したよ」


町の暮らしにも慣れてきた時に一度ギルド『アトラース』を訪ねたがバルドさんはちょうど仕事が入り町を離れたと聞かされた。

それから1か月くらい経つが、ずっと仕事だったんだろうか?
やっぱり冒険者って大変だなぁ…。

「はは。いいんだよ。ところで父親の手がかりは掴めたのか?」
「はい…。でも会いに行くのにお金が結構かかりそうで…今は仕事しながら貯めてるところです!」

まぁ…お金全然貯まってないけど…。

俺とバルドさんが楽しそうに話しているとディランさんは少し不機嫌そうな顔をしていた。

やば。そう言えばバルドさんと仕事の話の途中だった…ディランさんごめんなさい。

仕事の話を聞くのもなんなので俺は席から離れることにした。

「あの…俺そろそろ宿に戻りますね」
「またなカオル」
「はい!ディランさんも、また昼食の時に」
「あぁ…」

俺は2人に挨拶するとトレーを手に席を後にする。

バルドさんに久しぶりに会えて俺は凄く嬉しかった。
また今度ギルドにお邪魔しに行ってもいいかなぁ~なんて考えていると俺はバルドさんにしてない事に気付き、慌てて席に戻りバルドさんに声をかける。

「バルドさん!俺ちゃんと挨拶してなかったです…」
「えっ?……あっ!カオル!ここでは……っんぐ」

俺は何か言いかけたバルドさんの唇にちゅっと挨拶のキスをする。

「お帰りなさいバルドさん!また会いに行きますね!」

そう言って頭をペコっと下げて俺は「ちゃんと挨拶できてよかったぁ~」と、ルンルン気分で帰っていった。


俺が挨拶し帰った後、ディランさんがさらに不機嫌になりバルドさんが大変困っていたとリオから聞いた。

バルドさん仕事で何かやらかしたのかなぁ?と、俺は呑気に考えていた。



しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...