美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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29.5話:デブ男1号の事情〜キースSide〜②

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そんな生活が8年続き俺が15歳を迎えた時に転機が訪れる。

継父が死んだのだ。

母からはもう無理はしなくていい、元のキースに戻っていいと言われたが俺は混乱した。

元に戻るって…なんなんだよ?
どうすればいいんだ?
だって俺は貴族の息子なんだぞ?

今まで継父の言われるがままに動くマリオネットだった俺は、継父という糸が切れると自分で考えることも動くこともできなくなってしまっていた。

それからは継父に取り憑かれたように今まで言われた事を守り通しながらなんとか生活していった。


そしてある日あの服屋にいた赤髪の青年を見つけてしまう。
食堂で楽しそうに生き生きと働く姿を見て俺の心の中のドス黒いモノが湧き出てくる。

どうして醜いアイツが楽しそうなんだ。
どうして貴族でもないアイツが笑っているんだ。
美しくなった俺はこんなに…こんなにも苦しんでいるのに
平民なのに…醜いのに…なんでなんでなんで…


気が付けば俺は赤髪の青年リオに向かって継父と同じ事をしていた。
それから何度となくリオに会い平民としてあるべき姿を教えてやるが、いつまで経っても俺の貴族としての行為を否定するような目をやめなかった…

だからリオが嫌いだった。


あの日もリオを見かけたのでいつものように諭してやった。
俺を見る瞳は怒りに満ちていた。
お前は間違ってるんだ…醜くて汚らしい平民なんだ…

さぁもっとリオを正しい方に導いてやらないと…自分がいかに存在価値のない人間なのか分からせないと…

「おい!そこの2人!リオは醜くも気持ち悪くもない!カッコいいんだよ!」

突然、リオの隣にいた黒髪の青年が俺達に向かって叫んでくるが言っている事が理解できない。
リオがカッコいい?何を間違ったことを…

そう思っていると黒髪の青年がリオへキスをする。
俺とナイルは呆然と立ち竦む事しかできなかった。

その日は、ずっと黒髪の彼の顔がチラつき夜も眠れなかった。
俺の言葉を全て否定して怒りに満ちた表情を見せられて…
あの可愛らしい黒髪の彼に怒りが湧いてもいいはずなのに怒りは湧かず胸の奥が締め付けられた。


もう一度彼に会って彼の本当の気持ちを確認しないと…。
間違っている事を分かってもらわないと…


次の日にリオの食堂へと向かい黒髪の彼を待つ事にした。
俺が彼の目を覚ましてあげないといけない。

だって彼は美しく可愛らしいのに何故リオを選ぶんだ。
俺の方が美しいんだ…

彼が食堂へ現れ俺は詰め寄りながら問いかける

「なぁ。お前はリオに脅されて付き合ってるんだろう?」

そうだよな?
リオに無理矢理やらされてるんだよな?
そう心の中で呟きながら彼からの答えを待つ。

「あのなぁ…リオの事が好きで付き合ってるに決まってるだろ!」

彼は俺をまっすぐに見つめそう答える。
なんで…?なんで…そんな事言うんだ…
また胸の奥がギュッと締め付けられて目頭が熱くなる…
悔しくて悔しくて…俺は逃げるようにその場を離れた。
その日も彼の事ばかり考えてしまい食事も喉を通らなかった。


それから俺は自分の理想とする答えが出るまで彼の元へと向かった。
しかし、何度聞いても答えは同じ。
彼に会いリオへの愛を聞かされる度に俺の中でモヤモヤした言葉にできない気持ちが渦巻いていた。

そしていつものように彼に会いに行った帰りにナイルが俺に問いかけてくる。

「ねぇ…兄さんはあの黒髪の奴が好きなの?」
「え…?好き…?」

………俺は彼が好き?…好きなのか?

最初は分からなかったが好きだと自覚すると俺の心の中に渦巻いていたモヤが晴れる。
好き…これが好きという気持ちなのか!

そして次の日もいつものように彼に会いに行く。
好きだと自覚して彼に会いに行くのはとてもドキドキした。

早く彼に会いたい…

しかし、その日彼はリオと手を繋ぎ仲睦まじい姿を俺に見せてきた。

本当に付き合っていたのか?と聞くと肯定され彼が腰に手を回す。

嘘だ…そんな…嘘だ…

そう思っていると彼とリオは俺の目の前でまた唇を重ねていた…

もう何が何だか分からない。
引きつった顔で固まっているとナイルが心配してくれた。
せっかく好きだと分かったのに…このまま終わりなんて嫌だ。絶対に嫌だ。

「おい…お前…リオのどんな所が好きなんだ…」

そう聞くと彼はリオがカッコいい、スタイルがいい、優しいなど到底信じられないことを言ってくる。
しかし、彼の目は嘘を言っているようには見えず本心なんだと分かった。

彼に自分が変わる時間が欲しいと伝えてその場を去ることにした。


彼が望むものは継父が貴族として望んだモノとは真逆のものだ。
彼が望む姿に変われば貴族として失格だと死んだ継父から叱られただろう…。

父さんごめんなさい。
それでも俺は名前も知らない彼に恋せずにはいられないんだ。

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