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本章
29.5話:イケメン騎士団長の日常〜アルクSide〜③
しおりを挟む~アルクside~
「では次の者入れ」
「クリストファー王子。お久しぶりです。ずっとお会いしたく…」
「違う。次だ」
はぁ……。これでもう何百人目か…
王宮の一室では毎日毎日毎日毎日…同じ事が行われている。
僕はため息をつきながら次の者を部屋へと通す。
『自分こそはクリストファー王子が探しているカオルです!』
そう言って集まった国中のカオル達数百人。
クリストファー王子は毎日何十人ものカオル達を本物のカオルかどうか確認しているが一向に減る気配がない。
中には元々黒髪では無いのに髪を黒く染めてくる者もいて…王子の警護にあたっている騎士団は頭を抱えている。
最初こそはクリストファー王子の目的が分からなかったが、どんなに偽物のカオルが来ても嫌な顔をせずに一人一人確認している事からカオルは王子の想い人ではないかと噂されている。
それ以来『カオル』と名乗る者がさらに多く現れたので顔合わせの際の王子の警護には、僕と副団長のオドリーが着くはめになっている。
醜い王子とはいえクリストファー王子の人気は高い。
偽物達もバレると分かっていても王子と関われるチャンスを掴みたいという者もいれば、クリストファー王子の想い人という弱みを政治利用しようとする者もいる。
特に、反第一王子派は本物のカオルを我先に見つけようと必死なようだが……それに振り回される身にもなって欲しい。
王子も偽物達は不敬罪で裁けばよいのに…。
「あーもう面倒くさい…早く本物のカオル出てこいよなぁ。遊びにも行けやしない…」
今日の『偽カオル』の紹介書類を整理しながら隣でオドリーがぶつくさと文句を言っている。
結局、今日もカオルは見つからず明日も50人程の『カオル』がやってくるらしい…
この『カオル捜索』のせいで僕も王宮に缶詰状態でカオルくんに会えずにいる。
「そうだな…早く出てきてくれるといいな」
「ところでアルク…お前最近スリランの町に行ってるらしいけど…ついに童貞卒業か?」
何故そんな事を知っているんだよ…。
と、言いたいがオドリーは人脈が広く情報を集めるのが得意だ。その情報は時に騎士団にとってプラスになる情報もあるので蔑ろにはできない。
「あぁ…まぁな」
「マジかよ!やったな!脱童貞祝いに酒奢ってやるよ。で、どんな年増の娼夫とやったんだ?60過ぎか?まさかの70か?」
面白そうに笑いながら話を聞いてくるオドリーを見てため息をつく。
確かにカオルくんに出会わなければ一生童貞かオドリーの言った通りになっていたかもしれないけど…
「違うよ。若くて凄く可愛い子だよ」
「……そうか。まぁそう思いたい気持ちはよく分かるよ。そうかそうか…現実逃避したくなるくらいの相手だったんだな。これ以上は聞かないでおくよ」
おい。どういう意味だよ。
何故かオドリーから憐みの視線を向けられる。
まぁ…本当に違うのだから適当に流しておこう。
それにしても本当にクリストファー王子の探している『カオル』が早く見つかってほしい…
僕は今だにカオルくんが呼んでいた『クリス』がクリストファー王子なんじゃないかと時折考えてしまう…
もし本当にそうだったらカオルくんを連れて隣国に亡命するしかないよな…。
そんな事を考えながら明日クリストファー王子と顔合わせをする大量の『カオル』達の紹介書類に目を通していくのだった。
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