美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

文字の大きさ
上 下
34 / 181
本章

24話:揺れる心〜さっきの決断はどこへ〜

しおりを挟む
「じゃあカオルくんそろそろ出ようか」

宿のチェックアウトの時間が来たので俺達は出発する準備をする。
アルクさんは仮面を付けマントを被り出会った時と同じように外見を隠すような格好をしている。

「そういえばカオルくんは、これからどこかの娼館に入るの?」
「えーっと…」

娼館かぁ…
そこらへんの事は何も考えてなかったなぁ。
確かに娼夫として仕事をしていくなら娼館とかに勤めた方がいいのだろうけど、どんな客でも取れって言われたら……無理かもぉ。
クリスやアルクさんみたいな綺麗どころならまだしも、中年おじさんとかはちょっとなぁ…。

さっそく問題発生して頭を抱えているとアルクさんが提案してくれる。

「悩んでるならこのままフリーの娼夫でいるのはどうかな?お客なら僕が付いてるからお金でカオルくんが困る事は無いと思うよ。一緒に暮らせないのなら宿も借りるからそこで生活したらいいよ」

ニッコリ笑ってアルクさんはパトロン宣言をしてくる。

「え…?で、でもぉ…」

さっき『自分の力で生きていく!』など力強く宣言した手前アルクさんに頼るのは…
でも…でも…すっごくいい条件なんですけどぉ…

俺がウジウジと考えているとアルクさんは畳み掛けるように説得してくる。


「娼館に行ったら沢山のお客を相手しても取り分は娼館側と良くて折半。悪いところは7:3や8:2もあるよ?それに娼館によってはとんでもないプレイもさせられるよ?カオルくん複数相手もできる?道具使われても大丈夫?縛られて痛い事されても誰も助けてくれないよ?」

アルクさんの質問攻めに俺は「ヒッ…」と小さく悲鳴をあげ…ただただ顔を青くするしかなくて…

「フ、フリーで行きたいと思います…」

俺の返事にアルクさんは嬉しそうに微笑んでくれて、一時的に援助する事を約束をしてくれた。

俺の自立への道のりはまだまだ遠いようだ…。


「じゃあ僕のカード渡しておくね」

アルクさんはそう言うと銀色の手の平サイズの四角いプレートを出してくる。

「カード?…これは何ですか?」
「ん?カオルくんはカード知らない?」
「はい。知らないです」

アルクさんの説明によると、この世界は通貨もあるがほとんどが『カード』を使っての支払いを行うようだ。
アルクさん名義のカードをもらい俺も使えるように追加で契約してもらう。

「これで大丈夫。お金は好きなように使っていいからね」

好きなように使えるカードを渡すとか…
アルクさん人が良すぎて心配になるレベルだよ。


そうしてチェックアウトしにカウンターへと向かうと昨日の受付の店員さんがいた。俺を心配してくれていたのか、俺の姿を見てホッとした表情を見せる。

アルクさんはカードで支払いをしながら店員さんに質問をしていた。

「この宿は長期滞在もできますか?」
「あぁ、できるよ」

店員さんに確認が済むと俺の方へと振り返り「借りるのはこの宿でもいいかな?」と確認してくる。
俺が頷くとアルクさんは話を進めていく。

「じゃあ…とりあえず半年間一室部屋を借りたいです。シャワーとトイレ付きの部屋でお願いします」
「そうなると…今日泊まってもらった部屋しか空いてないが、あの部屋でも構わないか?」
「はい。大丈夫です」

あっという間に俺の住む宿が決定。

「ここなら綺麗だし防犯も優れてるから僕も安心だよ」
「ありがとうございます。何から何まですみません…」
「ううん。いいんだよ。僕がカオルくんにしてあげたいだけだから」

アルクさんはそう言って嬉しそうに笑顔を見せてくれる。
優しくてイケメンのアルクさんに買ってもらって本当に良かったと俺は心の底から思った。


その後、アルクさんは仕事の緊急呼び出しがあり、嫌だ帰りたくないと駄々をこねだすが、なんとかなだめると渋々帰ることを決意してくれる。
「また3日後に会いに来るからね!」と、俺を抱きしめ別れを惜しみながら帰っていく。

とりあえず寝る場所とお金は確保できたな…。
俺はこれからどうしていくか考えながらアルクさんを見送った。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...