美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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本章

3話:ある日森の中イケメンさんに出会った③

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 窓から入り込む朝日で目が覚める。
 起きたら元の世界に戻って……などいない。
 残念な気持ちのままベッドから起き上がりリビングへと向かうと、ソファーに座るイケメン……。

「おはようカオル」

 朝からなんとも眩しいクリス。
 お茶を飲んでいたイケメンが素敵な笑顔を見せてくれた。

「おはよう、クリス」
「昨日は眠れた?」
「うん。よく眠れたよ」

 そう本当によく眠れた。
 異世界に来た不安や元の世界に戻れないかもしれない恐怖で眠れない夜を明かす予定だったが爆睡だ。
 自分の神経の図太さがほんと嫌になる。

「そうかよかった。じゃあ、改めて朝の挨拶しないとな」

 そう言って、クリスが近寄ってくる。
 よく意味が分からずに突っ立ってるいると、クリスは俺の顎をクイッと上にあげ、顔を近づけてきた。

 ——……え? えぇぇぇえ!?

 キスされそうな雰囲気に慌てふためいてしまう。

「わ! え? クリス? な、何するの?」
「え? 何って朝の挨拶だけど?」
「挨拶? これ挨拶なの?」
「うん」

 確かにヨーロッパとかではチークキスみたいなのがあるけど……この世界での挨拶ってキスなの?

「ごめん。俺の国じゃ挨拶でこんなに顔近づけないからビックリしちゃった」
「そうなんだ。この世界では、親しい人とは朝や寝る前の挨拶でキスするんだよ」

 そう言うとクリスは俺の唇に軽くチュっとキスをしてくる。
 そう。これが俺のファーストキスだった……
 迫りくるイケメンの顔と柔らかい唇の感触に顔を真っ赤に染めて固まる。

「ん? カオルどうしたの?」
「ど、どうもしてない……です」

 嘘です。
 もう心臓バクバクです。

 クリスは固まっている俺を見てクスっと笑い「ほら。朝ご飯にしよ」と頭をポンポンと撫でキッチンへと向かっていった。


 朝食を済ませら後片付けをしながら俺は今日から何をしていくのかクリスに確認していく。

「なぁクリス。俺はこれからここで何をしていればいい? 俺が出来ることなんて家事くらいなんだけど……」
「そうだねぇ……私も狩りに行く時以外はほとんど家にいるから一緒に畑の手伝いや森に生えてるキノコや果物の採取を手伝ってくれればいいかな。あ。でも森は危ないから一人で行ったらダメだよ!後は……私の話し相手をしてくれたら嬉しいかな」
「分かった! 話し相手ならまかせてよ!」

 俺がそう答えるとクリスは嬉しそうに笑ってくれる。

 それからクリスと色々な話をした。
 クリスの仕事はこの森を守る番人。
 たまに森を荒らす奴がいるらしく、そんな奴らを取り締まったり森の状態を確認したりするらしい。
 ずっと森の中で暮らしているわけではなく、交代でこの森の番人をしているらしい。

「でも一人で森の中にいるのって寂しくないのか?」
「んー……寂しいと思う事もあるけれど、一人の方が……楽だからね。でも、今はカオルがいてくれると嬉しいし楽しいよ」
「そっか。よかった!」

 クリスに一人の方が楽と言われた時は正直言って俺早く出ていかないとって思ってしまった。
 楽しいと口では言ってくれているが、このままクリスに甘えるのはダメだなって思う。
 早く馬車が来てくれるといいんだが……。


 それから話題は変わり、この世界の事をクリスから教わる。
 文化は多少違うところもあったが、明らかに違うのがこの世界には男しかいないということ。

 この世界にいる限り、俺の童貞は男の尻に捧げないといけないのかと思うと……早く元の世界に戻りたくなる。
 それに子供はどうやってできるんだ? と、疑問に思ったがなんだか怖くて聞けなかった。

 それからクリスと俺の同居生活は一週間が経った。

「クリス、おはよう。」
「カオルおはよう。ほら……もうそろそろ出来るでしょ?」

 優しく微笑みながらクリスが俺の前に立ちキスを待っている。
 この一週間の間にクリスから課せられた試練。
 それは……

 俺からクリスに挨拶のキスをする事。

 もし、このまま元の世界に戻れなくて、この世界で生きていくのなら挨拶は必要な事だ。
 幸いクリスは男でも綺麗な顔してるからまだマシだ……。
 うん、きっと大丈夫。

 俺は顔を真っ赤にしながら背伸びをしてクリスの唇へキスをする。

「こ、こんなんでいいのか?」
「うん…充分。じゃあ私からも…」

 クリスはそう言うと俺にまた優しくキスをしてくれる。

 やっぱりキスが挨拶なんて慣れないが、クリスはとても満足そうな顔をしているから……まぁいいか。
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