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本章
2話:ある日森の中イケメンさんに出会った②
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それからクリスは家の中を案内してくれる。
大きなリビングの隣にはクリスの寝室があり、その隣にある少し小さめの部屋があった。
そこは空き部屋なので、俺の部屋として使っていいと言われる。
ベッドと机と椅子があるシンプルな部屋で、こじんまりした感じがとても居心地がいい。
クリスに「ありがとう」と、満面の笑みを向けると少し恥ずかしそうに微笑む。
「じゃあ、私は夕食の準備をしてくるからカオルは少し休んでいるといいよ」
「俺も手伝いますよ」
「カオル、敬語になってる」
「あ。……えっと、俺も手伝う」
年上にタメ口を使うのは慣れないなと思いながら敬語を訂正しつつクリスと一緒にキッチンへと向かう。
なかなかに立派なキッチンはリビングを見渡せる対面式キッチンだ。
「カオルは嫌いな物ある?」
「いや、特には。でも、ここの食材がどんなのかわからないからなんとも言えないかも……」
だいたい何でも食べれるが虫とかは無理だ。
最近TVで見た昆虫食を思い出すと背筋がゾクリとした。
「野菜はこんなのを使うんだが……どうかな?」
目の前に出されたのはジャガイモとニンジンと玉ねぎだった。
「俺のところと同じだ!」
「そうか、よかった! あとは、今日狩ってきた鶏の肉を使おうと思うけど、お肉も大丈夫?」
「うん。俺、肉好き!」
笑顔を浮かべるとクリスも微笑んでくれる。
「まずは何をしたらいい?」
「カオルは料理できるのかい?」
「うん。俺のところ父親しかいなかったから仕事でいない時は自分でご飯作ってたんだ」
「そうなんだ。じゃあ、皮剥きとか手伝ってもらおうかな」
それからクリスと一緒に夕食を作り鶏肉のソテーと野菜のスープが出来上がった。
「さぁ、食べよう」
「うん。いただきます」
俺は食事の挨拶をしてから鶏肉のソテーを頬張る。
半日以上何も食べていなかったので腹ペコだった事もあり鶏肉は今までで食べた中でも一番うまく感じた。
スープもクリスがブイヨンみたいな物を入れていたので日本で飲むスープに近い。
「うまーい!」
「それはよかった」
がっつく俺とは対照的にクリスは品良くスプーンを口元に運ぶ。
その姿はとても優雅で綺麗で、イケメンの食事風景はこんなにも素敵なのかと乙女のような感想が浮かぶ。
そして、あっという間に食事を平らげたあとは片付けも一緒に済ませる。
「カオルは入浴はする? この家にも風呂はついているんだが」
「え? 風呂まであるの! できれば入りたいかな……」
「そうか。なら準備してこよう」
こんな山奥でも風呂に入れるなんて!
森の中を歩き回ってベタつく体のまま寝るのかと少し憂鬱に思ってたから嬉しさ倍増だ。
でも、ここまで水道かなんかが繋がってるのか?
キッチンの蛇口からも水出てたし……
そんな事を考えていると風呂の準備が出来たとクリスが言ってきたので風呂場へと向かう。
風呂場は足まで伸ばせる浴槽と洗い場にはシャワーまで付いていた。
「おぉ……」
思っていた以上に広々とした風呂に俺は歓喜する。てか、俺の実家の風呂より広い。
「じゃあ入ろうか」
クリスはそう言うと脱衣所で自分の服を脱ぎ出す。
「え? 一緒に……入るの?」
「そうだよ? カオルの世界では一緒に入らないの?」
「いや……一緒に入る場所もあるけど……」
「じゃあ、大丈夫だね!」
ほら脱いで脱いでとクリスに急かされて俺も仕方なく服を脱いでいく。
クリスは着痩せタイプだったのか脱ぐと凄い系だった。
羨ましいほどの筋肉がとても男らしい。
それに比べて白くて貧弱な俺の体よ……。
クリスの方を見れば俺の体をじっと見てくる。
時折クリスに凝視されるが……癖なのだろうか?
そんなクリスを見上げると、俺の視線に気がついたのか急に顔を赤くする。
「ご、ごめん……見すぎだよな……」
「ははっ。別にいいよ。俺もクリスの体見てたし」
「おあいこだね!」と、笑いかけるとクリスは照れたような表情を浮かべる。
「クリス、早く風呂入ろう!」
「あぁ、そうだね」
浴室に入りまずは体を洗おうと洗い場の方へと向かう。
シャワーを浴びて体を洗おうとするとクリスに止められる。
「カオルちょっと待って。私が洗うから」
「へ?」
俺が体を洗おうと持っていたタオルをクリスに奪われる背中を洗われる。
「ちょ! ちょっとクリス! 自分で洗うから!」
「ダメだよ。この世界では、一緒に入浴して互いに体を洗い合うのがルールなんだよ」
そう言いクリスに背中・腕・腰と次々に洗われていく……
「ほら前の方も……」
胸や腹も優しく泡で包み込まれるように洗われていくが恥ずかしさで爆発しそうだった。
そうするとクリスの手は俺の大事なところまで伸びていって……
「ダメ! ここはダメ! 俺がする!」
「うーん……じゃあ、今日は見逃してあげるけど次は洗うからね」
必死に抵抗する俺に、クリスは少しいじけた表情で諦めてくれたが……これからずっとこれなのか?
俺はタオルを返してもらい自分で残りの部分を洗っていく。
———この世界のルールでいくなら……クリスは俺が洗うのかな?
チラリとクリスを見ると、俺の言いたいことが分かったのかクスっと笑われる。
「私も洗って欲しいけどカオルができる範囲でいいよ」
クリスにそう言われて、あからさまにホッとしてしまう。
タオルを受け取り、背中や腕などを洗っていき出来ない所は洗ってもらった。
「ありがとう、カオル」
半分も洗っていないが笑顔でお礼を言われると少し申し訳なく感じてしまう。
「じゃあ、お湯に浸かろう」
足を伸ばせるくらいの浴槽だったので互いに向かい合って浴槽に浸かる。
肩まで浸かると疲れが吹きとぶ。
「なぁクリス。ここは森の奥って言ってたけど、このお湯とかってどこから引いてるんだ?」
「お湯や水は引いてきてるんじゃなくて魔道具を使ってるんだよ」
「魔道具?」
「そうだよ。この蛇口は私の魔力を流してお湯や水が出るようになってるんだよ」
魔法きたー!
散々読んできたライトノベルの世界を体感して少し興奮してしまう。
「凄い! 魔法は? 何か出せたりするの?」
「さすがに何も無い状態から何かを出すのはできないよ。でも魔道具を介して炎をだしたり水を出したりはできるよ」
「そうなんだ。でも、それだと俺が蛇口ひねっても水は出ない?」
「いや魔道具には私の魔力を注ぎ溜め込んでいるから、カオルが使っても大丈夫だよ」
それならば、クリスがいない時でも生活に支障はなさそうだな。
「さぁ、もうそろそろ上がろうか。のぼせちゃうよ」
クリスに促されて俺達は風呂から上がる。
体を拭くところまでクリスは手伝いたがったのでタオルを奪い取り自分で体を拭いた。
着替えはクリスの服を借りたが体格差があったのでTシャツを着ると彼シャツみたいになってしまった。
「ごめんね、サイズがちょうどいいのが無くて…」
「いや全然いいよ。貸してくれてありがとう」
クリスは寝る前にリラックスできるようにとカモミールの香りに近いハーブティーを入れてくれる。
———あ~なんだかホッコリするなぁ……
至れり尽くせりでスタートした異世界生活に最初の頃に抱えていた不安はどこへやら。
俺は友達の家に泊まりに来た感覚で一晩過ごすのだった。
大きなリビングの隣にはクリスの寝室があり、その隣にある少し小さめの部屋があった。
そこは空き部屋なので、俺の部屋として使っていいと言われる。
ベッドと机と椅子があるシンプルな部屋で、こじんまりした感じがとても居心地がいい。
クリスに「ありがとう」と、満面の笑みを向けると少し恥ずかしそうに微笑む。
「じゃあ、私は夕食の準備をしてくるからカオルは少し休んでいるといいよ」
「俺も手伝いますよ」
「カオル、敬語になってる」
「あ。……えっと、俺も手伝う」
年上にタメ口を使うのは慣れないなと思いながら敬語を訂正しつつクリスと一緒にキッチンへと向かう。
なかなかに立派なキッチンはリビングを見渡せる対面式キッチンだ。
「カオルは嫌いな物ある?」
「いや、特には。でも、ここの食材がどんなのかわからないからなんとも言えないかも……」
だいたい何でも食べれるが虫とかは無理だ。
最近TVで見た昆虫食を思い出すと背筋がゾクリとした。
「野菜はこんなのを使うんだが……どうかな?」
目の前に出されたのはジャガイモとニンジンと玉ねぎだった。
「俺のところと同じだ!」
「そうか、よかった! あとは、今日狩ってきた鶏の肉を使おうと思うけど、お肉も大丈夫?」
「うん。俺、肉好き!」
笑顔を浮かべるとクリスも微笑んでくれる。
「まずは何をしたらいい?」
「カオルは料理できるのかい?」
「うん。俺のところ父親しかいなかったから仕事でいない時は自分でご飯作ってたんだ」
「そうなんだ。じゃあ、皮剥きとか手伝ってもらおうかな」
それからクリスと一緒に夕食を作り鶏肉のソテーと野菜のスープが出来上がった。
「さぁ、食べよう」
「うん。いただきます」
俺は食事の挨拶をしてから鶏肉のソテーを頬張る。
半日以上何も食べていなかったので腹ペコだった事もあり鶏肉は今までで食べた中でも一番うまく感じた。
スープもクリスがブイヨンみたいな物を入れていたので日本で飲むスープに近い。
「うまーい!」
「それはよかった」
がっつく俺とは対照的にクリスは品良くスプーンを口元に運ぶ。
その姿はとても優雅で綺麗で、イケメンの食事風景はこんなにも素敵なのかと乙女のような感想が浮かぶ。
そして、あっという間に食事を平らげたあとは片付けも一緒に済ませる。
「カオルは入浴はする? この家にも風呂はついているんだが」
「え? 風呂まであるの! できれば入りたいかな……」
「そうか。なら準備してこよう」
こんな山奥でも風呂に入れるなんて!
森の中を歩き回ってベタつく体のまま寝るのかと少し憂鬱に思ってたから嬉しさ倍増だ。
でも、ここまで水道かなんかが繋がってるのか?
キッチンの蛇口からも水出てたし……
そんな事を考えていると風呂の準備が出来たとクリスが言ってきたので風呂場へと向かう。
風呂場は足まで伸ばせる浴槽と洗い場にはシャワーまで付いていた。
「おぉ……」
思っていた以上に広々とした風呂に俺は歓喜する。てか、俺の実家の風呂より広い。
「じゃあ入ろうか」
クリスはそう言うと脱衣所で自分の服を脱ぎ出す。
「え? 一緒に……入るの?」
「そうだよ? カオルの世界では一緒に入らないの?」
「いや……一緒に入る場所もあるけど……」
「じゃあ、大丈夫だね!」
ほら脱いで脱いでとクリスに急かされて俺も仕方なく服を脱いでいく。
クリスは着痩せタイプだったのか脱ぐと凄い系だった。
羨ましいほどの筋肉がとても男らしい。
それに比べて白くて貧弱な俺の体よ……。
クリスの方を見れば俺の体をじっと見てくる。
時折クリスに凝視されるが……癖なのだろうか?
そんなクリスを見上げると、俺の視線に気がついたのか急に顔を赤くする。
「ご、ごめん……見すぎだよな……」
「ははっ。別にいいよ。俺もクリスの体見てたし」
「おあいこだね!」と、笑いかけるとクリスは照れたような表情を浮かべる。
「クリス、早く風呂入ろう!」
「あぁ、そうだね」
浴室に入りまずは体を洗おうと洗い場の方へと向かう。
シャワーを浴びて体を洗おうとするとクリスに止められる。
「カオルちょっと待って。私が洗うから」
「へ?」
俺が体を洗おうと持っていたタオルをクリスに奪われる背中を洗われる。
「ちょ! ちょっとクリス! 自分で洗うから!」
「ダメだよ。この世界では、一緒に入浴して互いに体を洗い合うのがルールなんだよ」
そう言いクリスに背中・腕・腰と次々に洗われていく……
「ほら前の方も……」
胸や腹も優しく泡で包み込まれるように洗われていくが恥ずかしさで爆発しそうだった。
そうするとクリスの手は俺の大事なところまで伸びていって……
「ダメ! ここはダメ! 俺がする!」
「うーん……じゃあ、今日は見逃してあげるけど次は洗うからね」
必死に抵抗する俺に、クリスは少しいじけた表情で諦めてくれたが……これからずっとこれなのか?
俺はタオルを返してもらい自分で残りの部分を洗っていく。
———この世界のルールでいくなら……クリスは俺が洗うのかな?
チラリとクリスを見ると、俺の言いたいことが分かったのかクスっと笑われる。
「私も洗って欲しいけどカオルができる範囲でいいよ」
クリスにそう言われて、あからさまにホッとしてしまう。
タオルを受け取り、背中や腕などを洗っていき出来ない所は洗ってもらった。
「ありがとう、カオル」
半分も洗っていないが笑顔でお礼を言われると少し申し訳なく感じてしまう。
「じゃあ、お湯に浸かろう」
足を伸ばせるくらいの浴槽だったので互いに向かい合って浴槽に浸かる。
肩まで浸かると疲れが吹きとぶ。
「なぁクリス。ここは森の奥って言ってたけど、このお湯とかってどこから引いてるんだ?」
「お湯や水は引いてきてるんじゃなくて魔道具を使ってるんだよ」
「魔道具?」
「そうだよ。この蛇口は私の魔力を流してお湯や水が出るようになってるんだよ」
魔法きたー!
散々読んできたライトノベルの世界を体感して少し興奮してしまう。
「凄い! 魔法は? 何か出せたりするの?」
「さすがに何も無い状態から何かを出すのはできないよ。でも魔道具を介して炎をだしたり水を出したりはできるよ」
「そうなんだ。でも、それだと俺が蛇口ひねっても水は出ない?」
「いや魔道具には私の魔力を注ぎ溜め込んでいるから、カオルが使っても大丈夫だよ」
それならば、クリスがいない時でも生活に支障はなさそうだな。
「さぁ、もうそろそろ上がろうか。のぼせちゃうよ」
クリスに促されて俺達は風呂から上がる。
体を拭くところまでクリスは手伝いたがったのでタオルを奪い取り自分で体を拭いた。
着替えはクリスの服を借りたが体格差があったのでTシャツを着ると彼シャツみたいになってしまった。
「ごめんね、サイズがちょうどいいのが無くて…」
「いや全然いいよ。貸してくれてありがとう」
クリスは寝る前にリラックスできるようにとカモミールの香りに近いハーブティーを入れてくれる。
———あ~なんだかホッコリするなぁ……
至れり尽くせりでスタートした異世界生活に最初の頃に抱えていた不安はどこへやら。
俺は友達の家に泊まりに来た感覚で一晩過ごすのだった。
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