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本章
1話:ある日森の中イケメンさんに出会った①
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~数ヶ月前の事~
「あーもう! ここどこだよ!」
学校帰り。
いつも通る河川敷沿いの土手を自転車に乗り帰っていた時のことだ。
軽快に飛ばしていると、スマホが鳴り気をとられ、石に乗り上げ自転車ごと急勾配の土手から転落したことまでは覚えている。
そして、目が覚め気付いた時には森の中。
森から出ようと思い歩き続けてもう一時間ほど経つだろうか。
同じような場所をぐるぐると回っているのか、いつまでたっても森から出られない。
もはや奥へと迷い込んでしまった気すらする。
カバンもスマホも見当たらず、身一つの俺は途方に暮れた。
空は少しずつ茜色になり、肌に触れる空気がひんやりとしてくる。
「こんなところで野宿なんてしたくないってぇぇ」
森の中を歩き回り棒になった足を休めるために近くにあった石の上に座り込む。
大きくため息をつくと森の茂みがガサっと音がする。
俺は音の方へと目を向けると……一人の男性が立っていた。
薄茶色の髪に金色の瞳。
整った顔にスラッとした長身の体は、ハリウッド映画に出てくるイケメン俳優のようだった。
俺と目が合うと男性は顔を下に向け、慌てて背を向けて茂みの中へと戻っていく。
「あ、あの……!! 待って! ストップ! ストップ!!」
やっと出会えた人を逃したくなく必死に声をかける。
見た目が外国人みたいだったので英語も混ぜて声をかけると、男性は止まってくれたのて俺は慌てて駆け寄る。
「あの……あ、えーっと……どぅーゆーすぴーくじゃぱにーず?」
俺の最大限の英語知識で話しかけてみると男性は少しだけ振り向いてくれる。
「君は私の顔を見ても……怖くないのか?」
「え? 怖い?」
俺は再度男性をマジマジと見るが特に怖い感じはしない。イケメンだとは思う。
それよりも日本語を喋れる事に俺は歓喜する
「お兄さんは怖くない、ですよ? 日本語分かるんですか? ここは一体どこなんでしょうか?」
「私が怖く……ない。そうか……ふふ。怖くない………怖くないか……」
「え? 大、丈夫ですか?」
男性は俺の答えを聞くと突然クスクスと笑いだす。
前言撤回。
なんか怖い人かも……
「ここどこか分かりますか? 俺、気がついたらここにいて……」
「ここはバリスの森。王都からは西に進んだところにある森だよ」
ーーバリスの森? 王都?
聞き慣れない名前に困惑する俺を男性は心配そうに見つめてくる。
「もう日も暮れるからとりあえず私の家においで。暗くなると獣も出てくるから。家で話を聞くよ」
「……じゃあ、お邪魔します」
男性は俺に手招きして自宅があるであろう方向へと歩き出し俺は後ろからついていく。
見ず知らずの男について行くのも少し危険かなと思ったが野宿よりもマシだろう。
こんな森に置いていかれたらどうしようもないし。
男性に連れられ歩くこと三十分。
立派なログハウスに到着する。
はへ~っと、初めて見るログハウスを見上げていると家の中へと案内される。
北欧風の広いリビングに暖炉というオシャレな部屋に俺は失礼だがキョロキョロと視線がおよぐ。
「ソファーに座ってて。お茶持ってくるね」
「あ、すみません」
ふかふかのソファーに座り待っていると温かい紅茶が出てくる。
少し甘い紅茶の香りに心が少し落ち着く。
「じゃあ、まずは自己紹介からかな。私の名前はクリス。君の名前は?」
「薫です」
「カオルか……。この辺りではあまり聞かない名前だね。見た目もここの土地の者ではなさそうだし……」
「俺『日本』って国に住んでたんです。家に帰ろうとしたら土手から落ちて気付いた時にはこの森にいて……」
「……そうか。一人で見知らぬ場所にいたのは怖かったな。しかし『ニホン』という地名は…聞いた事がないな」
「そう、ですか……」
『日本』を知らないと言われなんだか泣きそうになる。
ここはまさかの異世界……?
俺、流行りの異世界転移しちゃった感じなのか?
つまり俺は家に帰れないのか?
下を向く俺にクリスさんは心配するようにそっと頭を撫でてくれる。
パっと、クリスさんの方を向くと撫でていた手を引っ込められた。
「あ……すまない……私に触られるなんてイヤだよな…」
「いえ……頭撫でられるなんて小さい頃以来だったんで驚いただけです。すみません……一人で落ち込んでしまって」
ニコっと笑うとクリスさんに顔を背けられ、なんだか少し気まずい空気が流れる。
俺はそっと目線を窓の方へと向けると外は日が落ち暗くなっていた。
今日は泊めてもらえるんだろうか?
いや、俺なら身元不詳な人物を泊めたりなんかしないな。
でも、野宿はマジで無理だ。
ここは土下座覚悟でお願いしてみないとな……。
「クリスさん……。初対面の人にこんな事をお願いするのもなんですが今日泊めていただけませんか? お願いします!」
俺は立ち上がり頭を下げる。
見ず知らずの男を家に置くなんていやだろうが、頼むから断らないでほしい。
神様仏様クリス様お願いしますぅ……。
クリスさんの返事が返ってくるまで俺は日本人の特技の一つでもある『とりあえず神頼み』を発動する。
クリスさんは少し間をあけて、柔らかく微笑む。
「もちろん構わないよ」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
クリスさんは御伽噺に出てくるようなキラキラした王子スマイルを俺に向けてくる。
顔良し、性格良し、こんな人に拾ってもらえて本当によかった……。
「困ってるカオルを突き放すことなんてしないよ。しかし、カオルに説明しておかないといけないことがあるんだ」
「なんですか?」
「実はこの家は森の奥深くに建っていて、周りには危険な生物や獣が生息しているんだ。だから、一人で外に出ちゃいけないよ」
「そ、そうなんだ……。はい、分かりました!」
クリスさんの言葉に、あのまま森にいたら……と、想像して身震いしてしまう。
では、家に戻る方法を探しに行くのは夜が明けてからがいいだろうか。
「クリスさん、一つ質問なんですが……この森を抜けるにはどれくらい時間がかかりますか?」
俺の質問にクリスさんの表情が曇る。
「さっきも言ったように、ここは森の奥地だ。危険な獣たちを対処しながらとなると……訓練を積んだ兵士で一週間。民間人はその倍以上はかかるだろう。そもそも、無事に森から出れるかさえも分からない」
「そんな……」
クリスさんの言葉に俺は絶望する。
「じゃあ、ここからずっと出られないんですか……?」
「……不定期だが、ここにも馬車が訪れる。それまで待った方がいい」
「馬車……。その馬車はいつ来るか分からないんですか?」
「分からないんだよ……。もしかしたら一年近く来ないかもしれない。それまで私と一緒にここで暮らしていくことになるが……無理にとは言わないよ」
見ず知らずの土地に来てここから先に進めないとなると日本へ帰る手掛かりを探すことができない。
だけど死んでしまったらそこで終わり。
ここはクリスさんのお誘いを受けた方がいいよな……。
「俺……何も持ってないし出来る事も少ないですけど、馬車が来るまでここに住まわせてほしいです。お願いします」
「うん、もちろん大丈夫だよ。カオル、よろしくね」
笑顔で俺の事を受け入れてくれるクリスさんの背後からは後光がさしているように見える……。
「それじゃあ、一緒に過ごすのだから敬語も使わなくていいよ」
「え……。でも……」
「じゃあ、敬語を使わないのがここに住む条件かな」
少し意地悪そうに微笑むクリスさんはやっぱりイケメンで……俺はコクリと頷いた。
「あーもう! ここどこだよ!」
学校帰り。
いつも通る河川敷沿いの土手を自転車に乗り帰っていた時のことだ。
軽快に飛ばしていると、スマホが鳴り気をとられ、石に乗り上げ自転車ごと急勾配の土手から転落したことまでは覚えている。
そして、目が覚め気付いた時には森の中。
森から出ようと思い歩き続けてもう一時間ほど経つだろうか。
同じような場所をぐるぐると回っているのか、いつまでたっても森から出られない。
もはや奥へと迷い込んでしまった気すらする。
カバンもスマホも見当たらず、身一つの俺は途方に暮れた。
空は少しずつ茜色になり、肌に触れる空気がひんやりとしてくる。
「こんなところで野宿なんてしたくないってぇぇ」
森の中を歩き回り棒になった足を休めるために近くにあった石の上に座り込む。
大きくため息をつくと森の茂みがガサっと音がする。
俺は音の方へと目を向けると……一人の男性が立っていた。
薄茶色の髪に金色の瞳。
整った顔にスラッとした長身の体は、ハリウッド映画に出てくるイケメン俳優のようだった。
俺と目が合うと男性は顔を下に向け、慌てて背を向けて茂みの中へと戻っていく。
「あ、あの……!! 待って! ストップ! ストップ!!」
やっと出会えた人を逃したくなく必死に声をかける。
見た目が外国人みたいだったので英語も混ぜて声をかけると、男性は止まってくれたのて俺は慌てて駆け寄る。
「あの……あ、えーっと……どぅーゆーすぴーくじゃぱにーず?」
俺の最大限の英語知識で話しかけてみると男性は少しだけ振り向いてくれる。
「君は私の顔を見ても……怖くないのか?」
「え? 怖い?」
俺は再度男性をマジマジと見るが特に怖い感じはしない。イケメンだとは思う。
それよりも日本語を喋れる事に俺は歓喜する
「お兄さんは怖くない、ですよ? 日本語分かるんですか? ここは一体どこなんでしょうか?」
「私が怖く……ない。そうか……ふふ。怖くない………怖くないか……」
「え? 大、丈夫ですか?」
男性は俺の答えを聞くと突然クスクスと笑いだす。
前言撤回。
なんか怖い人かも……
「ここどこか分かりますか? 俺、気がついたらここにいて……」
「ここはバリスの森。王都からは西に進んだところにある森だよ」
ーーバリスの森? 王都?
聞き慣れない名前に困惑する俺を男性は心配そうに見つめてくる。
「もう日も暮れるからとりあえず私の家においで。暗くなると獣も出てくるから。家で話を聞くよ」
「……じゃあ、お邪魔します」
男性は俺に手招きして自宅があるであろう方向へと歩き出し俺は後ろからついていく。
見ず知らずの男について行くのも少し危険かなと思ったが野宿よりもマシだろう。
こんな森に置いていかれたらどうしようもないし。
男性に連れられ歩くこと三十分。
立派なログハウスに到着する。
はへ~っと、初めて見るログハウスを見上げていると家の中へと案内される。
北欧風の広いリビングに暖炉というオシャレな部屋に俺は失礼だがキョロキョロと視線がおよぐ。
「ソファーに座ってて。お茶持ってくるね」
「あ、すみません」
ふかふかのソファーに座り待っていると温かい紅茶が出てくる。
少し甘い紅茶の香りに心が少し落ち着く。
「じゃあ、まずは自己紹介からかな。私の名前はクリス。君の名前は?」
「薫です」
「カオルか……。この辺りではあまり聞かない名前だね。見た目もここの土地の者ではなさそうだし……」
「俺『日本』って国に住んでたんです。家に帰ろうとしたら土手から落ちて気付いた時にはこの森にいて……」
「……そうか。一人で見知らぬ場所にいたのは怖かったな。しかし『ニホン』という地名は…聞いた事がないな」
「そう、ですか……」
『日本』を知らないと言われなんだか泣きそうになる。
ここはまさかの異世界……?
俺、流行りの異世界転移しちゃった感じなのか?
つまり俺は家に帰れないのか?
下を向く俺にクリスさんは心配するようにそっと頭を撫でてくれる。
パっと、クリスさんの方を向くと撫でていた手を引っ込められた。
「あ……すまない……私に触られるなんてイヤだよな…」
「いえ……頭撫でられるなんて小さい頃以来だったんで驚いただけです。すみません……一人で落ち込んでしまって」
ニコっと笑うとクリスさんに顔を背けられ、なんだか少し気まずい空気が流れる。
俺はそっと目線を窓の方へと向けると外は日が落ち暗くなっていた。
今日は泊めてもらえるんだろうか?
いや、俺なら身元不詳な人物を泊めたりなんかしないな。
でも、野宿はマジで無理だ。
ここは土下座覚悟でお願いしてみないとな……。
「クリスさん……。初対面の人にこんな事をお願いするのもなんですが今日泊めていただけませんか? お願いします!」
俺は立ち上がり頭を下げる。
見ず知らずの男を家に置くなんていやだろうが、頼むから断らないでほしい。
神様仏様クリス様お願いしますぅ……。
クリスさんの返事が返ってくるまで俺は日本人の特技の一つでもある『とりあえず神頼み』を発動する。
クリスさんは少し間をあけて、柔らかく微笑む。
「もちろん構わないよ」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
クリスさんは御伽噺に出てくるようなキラキラした王子スマイルを俺に向けてくる。
顔良し、性格良し、こんな人に拾ってもらえて本当によかった……。
「困ってるカオルを突き放すことなんてしないよ。しかし、カオルに説明しておかないといけないことがあるんだ」
「なんですか?」
「実はこの家は森の奥深くに建っていて、周りには危険な生物や獣が生息しているんだ。だから、一人で外に出ちゃいけないよ」
「そ、そうなんだ……。はい、分かりました!」
クリスさんの言葉に、あのまま森にいたら……と、想像して身震いしてしまう。
では、家に戻る方法を探しに行くのは夜が明けてからがいいだろうか。
「クリスさん、一つ質問なんですが……この森を抜けるにはどれくらい時間がかかりますか?」
俺の質問にクリスさんの表情が曇る。
「さっきも言ったように、ここは森の奥地だ。危険な獣たちを対処しながらとなると……訓練を積んだ兵士で一週間。民間人はその倍以上はかかるだろう。そもそも、無事に森から出れるかさえも分からない」
「そんな……」
クリスさんの言葉に俺は絶望する。
「じゃあ、ここからずっと出られないんですか……?」
「……不定期だが、ここにも馬車が訪れる。それまで待った方がいい」
「馬車……。その馬車はいつ来るか分からないんですか?」
「分からないんだよ……。もしかしたら一年近く来ないかもしれない。それまで私と一緒にここで暮らしていくことになるが……無理にとは言わないよ」
見ず知らずの土地に来てここから先に進めないとなると日本へ帰る手掛かりを探すことができない。
だけど死んでしまったらそこで終わり。
ここはクリスさんのお誘いを受けた方がいいよな……。
「俺……何も持ってないし出来る事も少ないですけど、馬車が来るまでここに住まわせてほしいです。お願いします」
「うん、もちろん大丈夫だよ。カオル、よろしくね」
笑顔で俺の事を受け入れてくれるクリスさんの背後からは後光がさしているように見える……。
「それじゃあ、一緒に過ごすのだから敬語も使わなくていいよ」
「え……。でも……」
「じゃあ、敬語を使わないのがここに住む条件かな」
少し意地悪そうに微笑むクリスさんはやっぱりイケメンで……俺はコクリと頷いた。
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