【完結】招き猫は幸せと愛を両腕に抱えて

赤牙

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21話:僕を好きじゃない?

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 救いの花から作られた薬を飲んで以降、オスカーの発作が起きることはなかった。
 死の恐怖から解放されたオスカーの輝くような笑顔にルイスとフェリスは心から喜びを噛み締める。

 治療を終えたウーヴェたちは視察途中だったが、一度帝国に帰国することとなる。理由は、救いの花が開花し薬を完成させたことを報告するためだ。
 出発前、救いの花を咲かせた花壇を見せてもらいたいと申し出たウーヴェ。
 温室に到着するなり、ウーヴェはブルーノに使用している肥料や育てている草花について色々と質問をしていた。ブルーノから土や水、肥料のサンプルをもらったウーヴェは最後にフェリスの花壇へやってくる。
 花壇にはすくすくと成長を続ける救いの花の姿が。凛とした姿で成長を続けている花を見てウーヴェは微笑む。

「この花も皆に希望を与えてくれる大きな花をさかせるのでしょうな」

 小さなつぼみをつけ始めた花を見つめ、ウーヴェがフェリスに振り返る。

「フェリス殿、またこの花を見にきてもよろしいかな?」
「はい、もちろんです」
「ありがとう。では、救いの花のことで悩むことがあったら一番にキミに相談に訪れるよ」
「は、はい! 僕でお役に立てるのならば。また再会できる日を楽しみにしております」

 フェリスが微笑むとウーヴェも目尻に皺を寄せて優しい笑顔を見せる。
 オスカーを救ってくれた恩人ウーヴェと結んだ小さな約束をいつか果たせる日がくればと思いながら、フェリスはウーヴェたちを見送った。

 それから数ヶ月が経ち、シュミット侯爵家は賑やかな日々が過ぎていく。
 発作を恐れ今までは屋敷の外に出ることが少なかったオスカーだったが、今ではルイスの仕事にも同行し沢山のことを学んでいた。
 共に過ごす時間が増え、さらに兄弟仲を深めていくルイスとオスカー。
 そして、ルイスとフェリスの仲はというと……初々しい関係が続いていた。
 今だにキス以上の関係には発展しておらず、そんな関係性に最近フェリスは焦りを感じていた。
 フェリスが焦りを感じ始めたきっかけは、オスカーとのたわいない会話がきっかけだった。

「フェリスは、お付き合いしている人がいる?」
「えっ? あ、いや、それは……」

 昼食を食べ終えた頃、オスカーがとんでもない質問をしてくる。顔を真っ赤にして黙り込むフェリスを見て、オスカーが興味津々に次の質問をしてくる。

「いるんだね! どんな感じの人なの?」
「えっと、あ……素敵な、人です」
「いいなぁ~。僕は小説でしか恋愛について知らないから教えてよ。お付き合いしている人はどんな人なの?」

 恋愛について教えてくれと言われても、何を教えればいいのか分からず、フェリスはルイスの名を伏せてルイスの好きなところを話していく。
 オスカーは目を輝かせながら話を聞き、興奮した口調でさらに質問を重ねる。

「とても素敵な人なんだね。じゃあさ、その人とキスの次もしたの?」
「キスの次、ですか?」
「うん。小説ではさ、キスをしたカップルが抱きしめあうところまでは書いてあるでしょ。でも、その次はなぜか二人で朝を迎えていて、さらに愛が深まったって書いてあることが多いんだ」

 オスカーの無垢な瞳が真実を知りたいとフェリスに訴えてくる。フェリスは恥ずかしげに首を横に振る。

「僕は、まだ……」
「そうなの? じゃあ、二人の愛はまだ深まってないんだね」

 オスカーのなんてことのない一言がフェリスの心にトゲのように刺さる。
 ルイスは自分のことを好きだと言ってくれるが、それ以上のことを望むような仕草や言動はみられない。
 ルイスはどう思っているのだろうか。このままの関係を望んでいるのならば、愛を深めることを避けていることになる。
 つまりそれは……

「僕のことは、そんなに好きじゃないって……こと?」
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