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14話:思いを伝えて
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土で汚れた手を払い、ルイスの方へ振り返り頭を下げる。
「ルイス様、こ、こんにちは」
「こんにちはフェリス」
ルイスの優しい笑みに、さらに鼓動が早くなる。
口を開くと心臓の音が聞こえてしまいそうなくらいに、胸はバクバクとはねていた。
ルイスは花壇で楽しげに飛び回る精霊たちを見て目を細める。
「フェリスは相変わらず精霊たちと仲良しなんだね」
「は、はい。とっても仲良くしてもらっています」
拳をぎゅっと握りしめながら緊張した顔でルイスと会話するフェリス。しっぽをピンとたて必死に答えるフェリスを見てルイスはふっと笑みをこぼす。
「そんなに緊張しなくていいんだよ」
ルイスの言葉にフェリスはぶんぶんと大きく首を横にふる。
「緊張……します」
「どうして?」
「え、どうしてと、言われると……」
会いたくてたまらなかった大好きな人の近くにいるのだから緊張して当たり前だ。とは言えず、頬を赤く染めたままルイスを見上げる。
視線が合うとルイスの瞳が柔らかな弧をえがく。
その優しい笑顔に促されるように、フェリスは自分の気持ちを精一杯伝える。
「ルイス様に助けられてから、ずっとルイス様に再会することを夢みてきました。だから、こうやって顔を合わせるだけでも……嬉しくてたまらないんです。あの、助けてもらった時は猫のままだったから伝えられませんでしたが、助けてくださり本当にありがとうございました」
フェリスは深々と頭を下げたあと、真剣な顔で語り続ける。
「本当なら、助けてもらった僕がルイス様に恩返ししなくちゃいけないのに、働く場所と住む場所もルイス様のお世話になってしまい申し訳ないなと思っています。でも……ルイス様の近くでお役に立てるように精一杯頑張ります。助けてもらった時から、僕の生きる目標の一つがルイス様への恩返しなんです。ルイス様には、たくさん幸せになっていただきたいんです。だから僕……頑張ります!」
両手を握りしめて誠心誠意の言葉を伝えるフェリスをルイスは目を丸くして見つめていた。
自分を思う気持ちでいっぱいの言葉がルイスの胸を温かくしてくれる。
緊張した顔つきで両耳をペタンと後ろに倒しているフェリスの頭にそっと手を伸ばし、優しく撫でるとフェリスの表情が少しやわらぐ。
「ありがとう。そんな風に思ってもらえるなんて私はとても幸せ者だな」
オレンジ色と黒の混じった綺麗な髪と毛並み。髪の毛の柔らかな感触に自然と笑みがこぼれ、耳の付け根にふれると、さらにふわふわの毛並みがルイスの指を包み込む。
毛並みの感触を楽しむように頭や耳を撫でていると、フェリスは顔を真っ赤にしたまま小さく震えていた。
大好きな人に触れられているだけでもたまらないのに、嬉しそうにきわどい部分に触れてくるルイス。
指の動きに合わせてピクピクと耳が震えてしまうが、その動きすらも「可愛い」と言ってくるルイスにフェリスは頬を真っ赤にして困ってしまう。
「ルイス、さま……」
名前を呼ぶとやっと指が止まった。
顔を真っ赤に染め、眉を下げ困った顔をしているフェリスを見てルイスはパッと手を離す。
「す、すまないフェリス。つい夢中になって触れてしまった……」
「あ、あの、僕は全然かまいません。ルイス様に触ってもらうのは……すき、なので」
ポロリと出てしまった『好き』という言葉。
なんてことを言ってしまったんだとフェリスの頬がカッと熱くなる。恥ずかしさのあまり笑って誤魔化していると、妖精たちがどうしたんだと二人のもとに飛んでくる。
妖精たちのおかげでその場をなんとか誤魔化すことができたフェリスはホッと息を吐く。
花壇の世話が終わる頃には、夕食の時間になりベルンがルイスに声をかけてくる。
「ベルン、今行くよ。なぁフェリス。また、ここに遊びに来てもいいかい?」
ルイスの申し出にフェリスは目を輝かせ大きく頷く。
「はい、もちろんです」
「よかった。じゃあ、また」
小さく手を振るルイスに手を振りかえしそうになるが、あわてて頭を下げて見送る。
温室のドアがしまるとフェリスはそのまましゃがみこみ大きく息をつく。
風の精霊クラウスと水の精霊ピーアが『どうしたの?』とフェリスの顔を覗き込む。
フェリスは頬を赤らめたまま二人に話しかける。
「どうしよう……ルイス様のこと、もっと好きになっちゃった」
フェリスの言葉に精霊たちは喜びわいわいと飛び回り温室はにぎやかな輝きに溢れた。
一方その頃。温室を出たルイスは廊下を歩きながらフェリスと過ごした時間を思い返していた。
今にも死んでしまいそうだった子猫のフェリスが、立派に成長して自分のもとに来てくれたことはとても嬉しかった。
子猫の時もとても可愛かったが、獣人の姿のフェリスもとても可愛い。
丸く大きな瞳、ふっさりとした毛は柔らかくとても触り心地がいい。
くるくると変わる表情や楽しげに動く尻尾、困った時にはペタンとおれる耳も可愛い。
そして、何よりも自分のことを想ってくれている真っ直ぐな気持ちがルイスの心をくすぐる。
愛らしいフェリスのことを考えると自然と笑みがこぼれてしまい、隣にいたベルンが声をかける。
「ルイス様。何かおかしなことでも?」
「あー……いや、これは困ったことになったなと思ってね」
困ったと言いながら楽しそうに微笑むルイスを見て、ベルンは忙しい毎日についにルイスがおかしくなってしまったのではないかと不安を覚えるのだった。
「ルイス様、こ、こんにちは」
「こんにちはフェリス」
ルイスの優しい笑みに、さらに鼓動が早くなる。
口を開くと心臓の音が聞こえてしまいそうなくらいに、胸はバクバクとはねていた。
ルイスは花壇で楽しげに飛び回る精霊たちを見て目を細める。
「フェリスは相変わらず精霊たちと仲良しなんだね」
「は、はい。とっても仲良くしてもらっています」
拳をぎゅっと握りしめながら緊張した顔でルイスと会話するフェリス。しっぽをピンとたて必死に答えるフェリスを見てルイスはふっと笑みをこぼす。
「そんなに緊張しなくていいんだよ」
ルイスの言葉にフェリスはぶんぶんと大きく首を横にふる。
「緊張……します」
「どうして?」
「え、どうしてと、言われると……」
会いたくてたまらなかった大好きな人の近くにいるのだから緊張して当たり前だ。とは言えず、頬を赤く染めたままルイスを見上げる。
視線が合うとルイスの瞳が柔らかな弧をえがく。
その優しい笑顔に促されるように、フェリスは自分の気持ちを精一杯伝える。
「ルイス様に助けられてから、ずっとルイス様に再会することを夢みてきました。だから、こうやって顔を合わせるだけでも……嬉しくてたまらないんです。あの、助けてもらった時は猫のままだったから伝えられませんでしたが、助けてくださり本当にありがとうございました」
フェリスは深々と頭を下げたあと、真剣な顔で語り続ける。
「本当なら、助けてもらった僕がルイス様に恩返ししなくちゃいけないのに、働く場所と住む場所もルイス様のお世話になってしまい申し訳ないなと思っています。でも……ルイス様の近くでお役に立てるように精一杯頑張ります。助けてもらった時から、僕の生きる目標の一つがルイス様への恩返しなんです。ルイス様には、たくさん幸せになっていただきたいんです。だから僕……頑張ります!」
両手を握りしめて誠心誠意の言葉を伝えるフェリスをルイスは目を丸くして見つめていた。
自分を思う気持ちでいっぱいの言葉がルイスの胸を温かくしてくれる。
緊張した顔つきで両耳をペタンと後ろに倒しているフェリスの頭にそっと手を伸ばし、優しく撫でるとフェリスの表情が少しやわらぐ。
「ありがとう。そんな風に思ってもらえるなんて私はとても幸せ者だな」
オレンジ色と黒の混じった綺麗な髪と毛並み。髪の毛の柔らかな感触に自然と笑みがこぼれ、耳の付け根にふれると、さらにふわふわの毛並みがルイスの指を包み込む。
毛並みの感触を楽しむように頭や耳を撫でていると、フェリスは顔を真っ赤にしたまま小さく震えていた。
大好きな人に触れられているだけでもたまらないのに、嬉しそうにきわどい部分に触れてくるルイス。
指の動きに合わせてピクピクと耳が震えてしまうが、その動きすらも「可愛い」と言ってくるルイスにフェリスは頬を真っ赤にして困ってしまう。
「ルイス、さま……」
名前を呼ぶとやっと指が止まった。
顔を真っ赤に染め、眉を下げ困った顔をしているフェリスを見てルイスはパッと手を離す。
「す、すまないフェリス。つい夢中になって触れてしまった……」
「あ、あの、僕は全然かまいません。ルイス様に触ってもらうのは……すき、なので」
ポロリと出てしまった『好き』という言葉。
なんてことを言ってしまったんだとフェリスの頬がカッと熱くなる。恥ずかしさのあまり笑って誤魔化していると、妖精たちがどうしたんだと二人のもとに飛んでくる。
妖精たちのおかげでその場をなんとか誤魔化すことができたフェリスはホッと息を吐く。
花壇の世話が終わる頃には、夕食の時間になりベルンがルイスに声をかけてくる。
「ベルン、今行くよ。なぁフェリス。また、ここに遊びに来てもいいかい?」
ルイスの申し出にフェリスは目を輝かせ大きく頷く。
「はい、もちろんです」
「よかった。じゃあ、また」
小さく手を振るルイスに手を振りかえしそうになるが、あわてて頭を下げて見送る。
温室のドアがしまるとフェリスはそのまましゃがみこみ大きく息をつく。
風の精霊クラウスと水の精霊ピーアが『どうしたの?』とフェリスの顔を覗き込む。
フェリスは頬を赤らめたまま二人に話しかける。
「どうしよう……ルイス様のこと、もっと好きになっちゃった」
フェリスの言葉に精霊たちは喜びわいわいと飛び回り温室はにぎやかな輝きに溢れた。
一方その頃。温室を出たルイスは廊下を歩きながらフェリスと過ごした時間を思い返していた。
今にも死んでしまいそうだった子猫のフェリスが、立派に成長して自分のもとに来てくれたことはとても嬉しかった。
子猫の時もとても可愛かったが、獣人の姿のフェリスもとても可愛い。
丸く大きな瞳、ふっさりとした毛は柔らかくとても触り心地がいい。
くるくると変わる表情や楽しげに動く尻尾、困った時にはペタンとおれる耳も可愛い。
そして、何よりも自分のことを想ってくれている真っ直ぐな気持ちがルイスの心をくすぐる。
愛らしいフェリスのことを考えると自然と笑みがこぼれてしまい、隣にいたベルンが声をかける。
「ルイス様。何かおかしなことでも?」
「あー……いや、これは困ったことになったなと思ってね」
困ったと言いながら楽しそうに微笑むルイスを見て、ベルンは忙しい毎日についにルイスがおかしくなってしまったのではないかと不安を覚えるのだった。
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