11 / 23
11話:隣国へ
しおりを挟む
自国を離れいよいよルイスのいる隣国シーベリックを馬車は走る。フェリスは大きく胸を躍らせ窓から外を見つめていた。
だが、隣国シーベリックに入ると風景がガラリと変わる。
精霊が飛び回る楽しげな風景が続くものだと思っていたが、シーベリックの耕作地に精霊たちの姿は見えない。
痩せた大地を見つめていると目的の停留所へ辿り着く。
着いた先は、シュミット家に一番近い街の停留所。停留所でルイスが住む屋敷の場所を教えてもらったフェリスはその足でシュミット家の屋敷へと向かった。
教えられた場所に辿り着くと大きなお屋敷が現れる。古いお屋敷は厳かな雰囲気につつまれていた。
柵越しから見える庭はとても手入れされており、そこには一匹の土の精霊が飛んでいた。
この国に来て久しぶりにみた精霊の姿にフェリスは安心感を覚える。フェリスの周りにいた精霊たちも、仲間を見つけたのが嬉しかったのかみんな庭の方に飛んでいき土の精霊を取り囲んでいる。
何も気にせずに屋敷に入っていける精霊を羨ましく思いながら、入り口へ近づくと屋敷のには行列ができていた。
シュミット家に用のある人たちが並んでいるのだろうか?
そう思いながらフェリスもその列に並び自分の番が来るのを待つ。一時間ほど待ち、ようやくフェリスの番がきた。
フェリスが要件を伝えるよりも先に入り口の守衛が屋敷の中を指差す。フェリスが首を傾げると、守衛が疲れた口調で説明する。
「予想以上に希望者が多くて予定時刻がすぎているんだ。お前で最後だから早く行ってくれ」
「え、あの僕は……」
「ほら早くしないと取り次いでもらえないぞ」
守衛に急かされフェリスは訳がわからぬまま屋敷の中へ。大きな玄関ホールに辿り着くと若い従者が疲れた顔をして名簿帳を手に持ち立っていた。
フェリスを見るなり慌てた様子で名簿帳に目を通すと独り言を呟く。
「えっと……紹介状をいただいた方たちは全員通したから、あとはブルーノさんに通せばいいはず」
名簿帳を閉じると若い従者は疲れた顔から一転、ニコリと笑顔を見せる。
「おまたせいたしました。ご案内します」
「あ、はい……」
フェリスは訳もわからず従者のあとをついて行き、案内された先は温室だった。
ドアを開けた瞬間から土の香りと草花の香りが混じる。従者は、土をいじっている壮年の男性に声をかける。男性はフェリスを見て、汚れた手を手拭いで拭き近寄ってきた。
男性は灰色の髪の間から垂れた耳をのぞかせ、ふっさりとした尻尾を優雅に振ってフェリスの近くにやってくる。
「どうもこんにちは。相方が急にやめてしまってな、急いで園丁の募集をかけたから人が来てくれるか不安だったがキミが来てくれて嬉しいよ。まずは、名前を教えてもらおうか」
男性の言葉を頭の中で何度も繰り返し、自分の置かれた状況にハッと気付く。自分がシュミット家に園丁の面接にきたことになっていると。
困惑していると男性の柔らかな笑顔と灰色の瞳と目が合う。
「ハハ、緊張してるな。そんなに硬くならなくていいよ。私はブルーノ。シュミット家に仕える園丁だ」
「フェリス、です」
「フェリスか、とてもいい名だな。だが、どこかで聞いたことがあるような……まぁ、それはいいとして、フェリスは今まで園丁の経験はあるのかい?」
フェリスは顔を大きく横に振る。
「いえ、初めてです」
「そうか。となると、初めから教えなくてはいけないな。文字は読めるか?」
「はい、共通語は読めます」
「それで十分だ。後から見習い用に使っていた教本を渡すからそれを読むといい。土や種の種類や、肥料の使い分けなんかも書いてある。読んでみて分からなければいつでも聞いてくれ。あとは、募集条件に即日と書いていたが、それも大丈夫か?」
「は、はい! 大丈夫です!」
日に焼けた肌に刻まれた目尻のシワを深くしてブルーノはフェリスに微笑みかける。
フェリスは今の自分の状況が信じられなくて目をぱちくりとさせていた。
感謝の気持ちを伝えたくて手紙を渡しにきたはずなのに、ルイスがいるシュミット家に仕えることになっている偶然が信じられずにいた。
なんで? どうして? と、頭の中は疑問でいっぱいだったが、奇跡的な出来事にただ身を任せることにした。
だが、隣国シーベリックに入ると風景がガラリと変わる。
精霊が飛び回る楽しげな風景が続くものだと思っていたが、シーベリックの耕作地に精霊たちの姿は見えない。
痩せた大地を見つめていると目的の停留所へ辿り着く。
着いた先は、シュミット家に一番近い街の停留所。停留所でルイスが住む屋敷の場所を教えてもらったフェリスはその足でシュミット家の屋敷へと向かった。
教えられた場所に辿り着くと大きなお屋敷が現れる。古いお屋敷は厳かな雰囲気につつまれていた。
柵越しから見える庭はとても手入れされており、そこには一匹の土の精霊が飛んでいた。
この国に来て久しぶりにみた精霊の姿にフェリスは安心感を覚える。フェリスの周りにいた精霊たちも、仲間を見つけたのが嬉しかったのかみんな庭の方に飛んでいき土の精霊を取り囲んでいる。
何も気にせずに屋敷に入っていける精霊を羨ましく思いながら、入り口へ近づくと屋敷のには行列ができていた。
シュミット家に用のある人たちが並んでいるのだろうか?
そう思いながらフェリスもその列に並び自分の番が来るのを待つ。一時間ほど待ち、ようやくフェリスの番がきた。
フェリスが要件を伝えるよりも先に入り口の守衛が屋敷の中を指差す。フェリスが首を傾げると、守衛が疲れた口調で説明する。
「予想以上に希望者が多くて予定時刻がすぎているんだ。お前で最後だから早く行ってくれ」
「え、あの僕は……」
「ほら早くしないと取り次いでもらえないぞ」
守衛に急かされフェリスは訳がわからぬまま屋敷の中へ。大きな玄関ホールに辿り着くと若い従者が疲れた顔をして名簿帳を手に持ち立っていた。
フェリスを見るなり慌てた様子で名簿帳に目を通すと独り言を呟く。
「えっと……紹介状をいただいた方たちは全員通したから、あとはブルーノさんに通せばいいはず」
名簿帳を閉じると若い従者は疲れた顔から一転、ニコリと笑顔を見せる。
「おまたせいたしました。ご案内します」
「あ、はい……」
フェリスは訳もわからず従者のあとをついて行き、案内された先は温室だった。
ドアを開けた瞬間から土の香りと草花の香りが混じる。従者は、土をいじっている壮年の男性に声をかける。男性はフェリスを見て、汚れた手を手拭いで拭き近寄ってきた。
男性は灰色の髪の間から垂れた耳をのぞかせ、ふっさりとした尻尾を優雅に振ってフェリスの近くにやってくる。
「どうもこんにちは。相方が急にやめてしまってな、急いで園丁の募集をかけたから人が来てくれるか不安だったがキミが来てくれて嬉しいよ。まずは、名前を教えてもらおうか」
男性の言葉を頭の中で何度も繰り返し、自分の置かれた状況にハッと気付く。自分がシュミット家に園丁の面接にきたことになっていると。
困惑していると男性の柔らかな笑顔と灰色の瞳と目が合う。
「ハハ、緊張してるな。そんなに硬くならなくていいよ。私はブルーノ。シュミット家に仕える園丁だ」
「フェリス、です」
「フェリスか、とてもいい名だな。だが、どこかで聞いたことがあるような……まぁ、それはいいとして、フェリスは今まで園丁の経験はあるのかい?」
フェリスは顔を大きく横に振る。
「いえ、初めてです」
「そうか。となると、初めから教えなくてはいけないな。文字は読めるか?」
「はい、共通語は読めます」
「それで十分だ。後から見習い用に使っていた教本を渡すからそれを読むといい。土や種の種類や、肥料の使い分けなんかも書いてある。読んでみて分からなければいつでも聞いてくれ。あとは、募集条件に即日と書いていたが、それも大丈夫か?」
「は、はい! 大丈夫です!」
日に焼けた肌に刻まれた目尻のシワを深くしてブルーノはフェリスに微笑みかける。
フェリスは今の自分の状況が信じられなくて目をぱちくりとさせていた。
感謝の気持ちを伝えたくて手紙を渡しにきたはずなのに、ルイスがいるシュミット家に仕えることになっている偶然が信じられずにいた。
なんで? どうして? と、頭の中は疑問でいっぱいだったが、奇跡的な出来事にただ身を任せることにした。
282
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
お一人様希望なので、その番認定は困ります〜愛されるのが怖い僕と、番が欲しい宰相閣下の話~
飛鷹
BL
森の民であるウィリテは、一族の持つ力を欲する権力者に一族を滅ぼされた過去を持つ。
一族の特別な力を継承していたウィリテは、一人ひっそりと生きていく事を望んでいた。
そんなある日、ウィリテが住む街に高位貴族が訪れた。獏の獣人であるその貴族は、どうやら番を探しているらしい。
街は俄に騒然となるが、ウィリテには関係のないことと思っていた。
しかし薬草採取で訪れた森で、怪我をしている男性を見付けた事から、ウィリテの平穏は崩れていく……。
番を望む聖獣『獏』の獣人と、精霊に愛されたの森の民の生き残りの、想いが通い合うまでのお話。
強面龍人おじさんのツガイになりました。
いんげん
BL
ひょんな感じで、異世界の番の元にやってきた主人公。
番は、やくざの組長みたいな着物の男だった。
勘違いが爆誕しながら、まったり過ごしていたが、何やら妖しい展開に。
強面攻めが、受けに授乳します。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
待て、妊活より婚活が先だ!
檸なっつ
BL
俺の自慢のバディのシオンは実は伯爵家嫡男だったらしい。
両親を亡くしている孤独なシオンに日頃から婚活を勧めていた俺だが、いよいよシオンは伯爵家を継ぐために結婚しないといけなくなった。よし、お前のためなら俺はなんだって協力するよ!
……って、え?? どこでどうなったのかシオンは婚活をすっ飛ばして妊活をし始める。……なんで相手が俺なんだよ!
**ムーンライトノベルにも掲載しております**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる