【完結】招き猫は幸せと愛を両腕に抱えて

赤牙

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11話:隣国へ

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 自国を離れいよいよルイスのいる隣国シーベリックを馬車は走る。フェリスは大きく胸を躍らせ窓から外を見つめていた。
 だが、隣国シーベリックに入ると風景がガラリと変わる。
 精霊が飛び回る楽しげな風景が続くものだと思っていたが、シーベリックの耕作地に精霊たちの姿は見えない。
 痩せた大地を見つめていると目的の停留所へ辿り着く。
 着いた先は、シュミット家に一番近い街の停留所。停留所でルイスが住む屋敷の場所を教えてもらったフェリスはその足でシュミット家の屋敷へと向かった。
 教えられた場所に辿り着くと大きなお屋敷が現れる。古いお屋敷は厳かな雰囲気につつまれていた。
 柵越しから見える庭はとても手入れされており、そこには一匹の土の精霊が飛んでいた。
 この国に来て久しぶりにみた精霊の姿にフェリスは安心感を覚える。フェリスの周りにいた精霊たちも、仲間を見つけたのが嬉しかったのかみんな庭の方に飛んでいき土の精霊を取り囲んでいる。
 何も気にせずに屋敷に入っていける精霊を羨ましく思いながら、入り口へ近づくと屋敷のには行列ができていた。
 シュミット家に用のある人たちが並んでいるのだろうか?
 そう思いながらフェリスもその列に並び自分の番が来るのを待つ。一時間ほど待ち、ようやくフェリスの番がきた。
 フェリスが要件を伝えるよりも先に入り口の守衛が屋敷の中を指差す。フェリスが首を傾げると、守衛が疲れた口調で説明する。

「予想以上に希望者が多くて予定時刻がすぎているんだ。お前で最後だから早く行ってくれ」
「え、あの僕は……」
「ほら早くしないと取り次いでもらえないぞ」

 守衛に急かされフェリスは訳がわからぬまま屋敷の中へ。大きな玄関ホールに辿り着くと若い従者が疲れた顔をして名簿帳を手に持ち立っていた。
 フェリスを見るなり慌てた様子で名簿帳に目を通すと独り言を呟く。

「えっと……紹介状をいただいた方たちは全員通したから、あとはブルーノさんに通せばいいはず」

 名簿帳を閉じると若い従者は疲れた顔から一転、ニコリと笑顔を見せる。

「おまたせいたしました。ご案内します」
「あ、はい……」

 フェリスは訳もわからず従者のあとをついて行き、案内された先は温室だった。
 ドアを開けた瞬間から土の香りと草花の香りが混じる。従者は、土をいじっている壮年の男性に声をかける。男性はフェリスを見て、汚れた手を手拭いで拭き近寄ってきた。
 男性は灰色の髪の間から垂れた耳をのぞかせ、ふっさりとした尻尾を優雅に振ってフェリスの近くにやってくる。

「どうもこんにちは。相方が急にやめてしまってな、急いで園丁の募集をかけたから人が来てくれるか不安だったがキミが来てくれて嬉しいよ。まずは、名前を教えてもらおうか」

 男性の言葉を頭の中で何度も繰り返し、自分の置かれた状況にハッと気付く。自分がシュミット家に園丁の面接にきたことになっていると。
 困惑していると男性の柔らかな笑顔と灰色の瞳と目が合う。

「ハハ、緊張してるな。そんなに硬くならなくていいよ。私はブルーノ。シュミット家に仕える園丁だ」
「フェリス、です」
「フェリスか、とてもいい名だな。だが、どこかで聞いたことがあるような……まぁ、それはいいとして、フェリスは今まで園丁の経験はあるのかい?」

 フェリスは顔を大きく横に振る。

「いえ、初めてです」
「そうか。となると、初めから教えなくてはいけないな。文字は読めるか?」
「はい、共通語は読めます」
「それで十分だ。後から見習い用に使っていた教本を渡すからそれを読むといい。土や種の種類や、肥料の使い分けなんかも書いてある。読んでみて分からなければいつでも聞いてくれ。あとは、募集条件に即日と書いていたが、それも大丈夫か?」
「は、はい! 大丈夫です!」

 日に焼けた肌に刻まれた目尻のシワを深くしてブルーノはフェリスに微笑みかける。
 フェリスは今の自分の状況が信じられなくて目をぱちくりとさせていた。
 感謝の気持ちを伝えたくて手紙を渡しにきたはずなのに、ルイスがいるシュミット家に仕えることになっている偶然が信じられずにいた。
 なんで? どうして? と、頭の中は疑問でいっぱいだったが、奇跡的な出来事にただ身を任せることにした。
 
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