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二人だけの呼び名 ①
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苳也先輩が抜いてくれるようになってから二週間が経つ。
最初は申し訳ないなぁ……なんて、思っていながら気持ちよくしてもらっていたのだが、今じゃ先輩に抜いてもらわないと物足りない体になってしまった。
先輩がいない時にオナニーしても満足感はなく、中途半端な感覚に先輩が帰ってきてすぐに触ってもらうくらいだった。
その時の苳也先輩の勝ち誇ったような顔を思い出すと……ちょっとムカつく。
でも、気持ちいいから文句も言えずに俺は苳也先輩を求めてしまうのだった。
そんな日々を過ごしつつ大学三年目の春がやってくる。新学期も始まり、あと二週間で一年生の入学式も始まる。
そして、苳也先輩と過ごす大学生活もあと一年で終わりを告げようとしている。
大学四年になった先輩は、「卒論めんどくせー」と言いながらも、真面目にコツコツやっている。
苳也先輩は見た目はチャラいが意外と真面目な性格をしている。
土日もパソコンにぶつくさと文句いいながらも卒論に真面目に取り組む苳也先輩。
優しい俺はコーヒー淹れてあげたり、イライラしてたらチョコ食べさせたりしながら先輩をサポートしてあげる。
そして、集中力が切れてしまうと、俺の方にふらふらやってきて俺を抱きしめてくる。
「千景~。もう俺、無理~」
「はいはい。今日は終わりにしましょう。あと、一時間したらバイトですからね」
「あー……そうだったなぁ……」
先輩は俺の首筋に顔を埋めながら、しんどそうにため息を吐く。そんな先輩の頭を撫でてやりながら、元気づけバイトへ向かう準備をする。
バイト先の居酒屋へ到着すると、ロッカーに直史先輩の姿を見つける。
「直史先輩! お疲れ様です」
「チカ、今日もよろしくな。そして、苳也……大丈夫か?」
俺の後ろでげっそりしている苳也先輩を見て、直史先輩は心配そうに声をかける。
「うっす。俺、今日ダメダメだから調理場行くわ」
「それがよさそうだね。じゃあ、今日は俺がホールいくよ」
「頼むわ~」
苳也先輩は着替えが終わると調理場へと向かう。久しぶりに直史先輩と一緒にホールを担当か……。
「直史先輩、よろしくお願いします」
「よろしくね、チカ。でも、俺ホールやるの久しぶりだから……迷惑かけちゃうかも」
「大丈夫ですよ、俺がいますから」
「ハハ。チカは頼りがいがあるな~」
相変わらず優しさ溢れる直史先輩の笑顔。
やっぱり……癒される!
俺は先輩に褒められてちょっぴりアホ面を晒しながら、直史先輩に笑いかけた。
普段は賑わう日曜の午後七時。けれど、外は土砂降りの雨が降っており、日曜のわりに今日はお客さんが少ない。
「久しぶりのホールだから緊張してたけど、お客さんが少なくてよかった」
「ハハ。それ、店長が聞いたら怒りますよ」
「だよね~」
直史先輩とたわいのない話をしながら過ごすバイトは楽しくてニコニコしながら、オーダーの料理をとりにいく。料理を手に取ると、厨房のカウンターから苳也先輩が顔をだす。
「今日は客少なそうだな」
「雨が酷いですからね。でも、もう少ししたら団体のお客さんくるので忙しくなりますね」
「そうだな。あんま無理すんなよ」
「はい。先輩も無理しないでくださいね」
「おう」
苳也先輩が小さく微笑むと、背後から直史先輩の声が聞こえてくる。
「チカー。団体のお客さん来たよー」
「はーい!」
苳也先輩に行ってきますと言って、直史先輩に呼ばれバタバタと団体客のところへ。
それからは、あんなに暇だったのが嘘のように忙しくなる。外の雨も止み、新規のお客さんも増えワイワイと賑わう店内。
「チカ、三番テーブル頼んだ」
「わかりました!」
俺はあっちにこっちに走り回り、直史先輩も久しぶりのホールに忙しそうに走り回る。
そして、午後十時には団体客も解散し店内の慌ただしさも落ち着く。
そして、閉店時間を迎え片付けを終わらせロッカーにたどり着くと直史先輩と共にふぅ……と大きなため息を吐く。
「チカ、今日はありがとうね。凄く助かったよ」
「俺の方こそ助けてもらってばかりで……」
「そんなことないよ。ホールはチカの方が先輩だね」
「いやぁ……そんな~」
エヘヘ~と照れていると、コツンと頭にひんやりとした固いものが当たる。上を見上げれば、苳也先輩が缶コーヒーを俺の頭に乗せていた。
「あ、お疲れ様です」
「おう、お疲れ。ほれ、直史にもやる」
「わ! 苳也、ありがとう」
苳也先輩がポンと投げた缶コーヒーを直史先輩は上手にキャッチして、嬉しそうにコーヒーを飲む。
俺も頭上に置かれたコーヒーをいただく。
「今日のホールは大変だったろ。二人ともお疲れさん」
「大変だったけど、チカがすっごい頑張ってくれたんだよ。ホールに関しては、チカの方が先輩だって話してたところなんだ」
「へぇ~……チカ先輩ねぇ」
苳也先輩はニヤニヤと笑いながら俺を見てくる。
これは家に帰ってから「チカ先輩~」って、絶対に小馬鹿にしてくるパターンだな。
苳也先輩のやりそうな言動を思い浮かべ、俺は心の中で小さくため息をついた。
最初は申し訳ないなぁ……なんて、思っていながら気持ちよくしてもらっていたのだが、今じゃ先輩に抜いてもらわないと物足りない体になってしまった。
先輩がいない時にオナニーしても満足感はなく、中途半端な感覚に先輩が帰ってきてすぐに触ってもらうくらいだった。
その時の苳也先輩の勝ち誇ったような顔を思い出すと……ちょっとムカつく。
でも、気持ちいいから文句も言えずに俺は苳也先輩を求めてしまうのだった。
そんな日々を過ごしつつ大学三年目の春がやってくる。新学期も始まり、あと二週間で一年生の入学式も始まる。
そして、苳也先輩と過ごす大学生活もあと一年で終わりを告げようとしている。
大学四年になった先輩は、「卒論めんどくせー」と言いながらも、真面目にコツコツやっている。
苳也先輩は見た目はチャラいが意外と真面目な性格をしている。
土日もパソコンにぶつくさと文句いいながらも卒論に真面目に取り組む苳也先輩。
優しい俺はコーヒー淹れてあげたり、イライラしてたらチョコ食べさせたりしながら先輩をサポートしてあげる。
そして、集中力が切れてしまうと、俺の方にふらふらやってきて俺を抱きしめてくる。
「千景~。もう俺、無理~」
「はいはい。今日は終わりにしましょう。あと、一時間したらバイトですからね」
「あー……そうだったなぁ……」
先輩は俺の首筋に顔を埋めながら、しんどそうにため息を吐く。そんな先輩の頭を撫でてやりながら、元気づけバイトへ向かう準備をする。
バイト先の居酒屋へ到着すると、ロッカーに直史先輩の姿を見つける。
「直史先輩! お疲れ様です」
「チカ、今日もよろしくな。そして、苳也……大丈夫か?」
俺の後ろでげっそりしている苳也先輩を見て、直史先輩は心配そうに声をかける。
「うっす。俺、今日ダメダメだから調理場行くわ」
「それがよさそうだね。じゃあ、今日は俺がホールいくよ」
「頼むわ~」
苳也先輩は着替えが終わると調理場へと向かう。久しぶりに直史先輩と一緒にホールを担当か……。
「直史先輩、よろしくお願いします」
「よろしくね、チカ。でも、俺ホールやるの久しぶりだから……迷惑かけちゃうかも」
「大丈夫ですよ、俺がいますから」
「ハハ。チカは頼りがいがあるな~」
相変わらず優しさ溢れる直史先輩の笑顔。
やっぱり……癒される!
俺は先輩に褒められてちょっぴりアホ面を晒しながら、直史先輩に笑いかけた。
普段は賑わう日曜の午後七時。けれど、外は土砂降りの雨が降っており、日曜のわりに今日はお客さんが少ない。
「久しぶりのホールだから緊張してたけど、お客さんが少なくてよかった」
「ハハ。それ、店長が聞いたら怒りますよ」
「だよね~」
直史先輩とたわいのない話をしながら過ごすバイトは楽しくてニコニコしながら、オーダーの料理をとりにいく。料理を手に取ると、厨房のカウンターから苳也先輩が顔をだす。
「今日は客少なそうだな」
「雨が酷いですからね。でも、もう少ししたら団体のお客さんくるので忙しくなりますね」
「そうだな。あんま無理すんなよ」
「はい。先輩も無理しないでくださいね」
「おう」
苳也先輩が小さく微笑むと、背後から直史先輩の声が聞こえてくる。
「チカー。団体のお客さん来たよー」
「はーい!」
苳也先輩に行ってきますと言って、直史先輩に呼ばれバタバタと団体客のところへ。
それからは、あんなに暇だったのが嘘のように忙しくなる。外の雨も止み、新規のお客さんも増えワイワイと賑わう店内。
「チカ、三番テーブル頼んだ」
「わかりました!」
俺はあっちにこっちに走り回り、直史先輩も久しぶりのホールに忙しそうに走り回る。
そして、午後十時には団体客も解散し店内の慌ただしさも落ち着く。
そして、閉店時間を迎え片付けを終わらせロッカーにたどり着くと直史先輩と共にふぅ……と大きなため息を吐く。
「チカ、今日はありがとうね。凄く助かったよ」
「俺の方こそ助けてもらってばかりで……」
「そんなことないよ。ホールはチカの方が先輩だね」
「いやぁ……そんな~」
エヘヘ~と照れていると、コツンと頭にひんやりとした固いものが当たる。上を見上げれば、苳也先輩が缶コーヒーを俺の頭に乗せていた。
「あ、お疲れ様です」
「おう、お疲れ。ほれ、直史にもやる」
「わ! 苳也、ありがとう」
苳也先輩がポンと投げた缶コーヒーを直史先輩は上手にキャッチして、嬉しそうにコーヒーを飲む。
俺も頭上に置かれたコーヒーをいただく。
「今日のホールは大変だったろ。二人ともお疲れさん」
「大変だったけど、チカがすっごい頑張ってくれたんだよ。ホールに関しては、チカの方が先輩だって話してたところなんだ」
「へぇ~……チカ先輩ねぇ」
苳也先輩はニヤニヤと笑いながら俺を見てくる。
これは家に帰ってから「チカ先輩~」って、絶対に小馬鹿にしてくるパターンだな。
苳也先輩のやりそうな言動を思い浮かべ、俺は心の中で小さくため息をついた。
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