上 下
31 / 38

順番違いの恋だけど

しおりを挟む
柔らかくて気持ちのいい苳也先輩の唇。
ぎゅっとスウェットを握りしめていた手を解かれて、苳也先輩の手が絡む。指先を絡め取られると同時に、触れていただけの先輩の唇が少し開き……ゆっくりと舌が入ってきた。
初めてのキスをしたばかりなのに、舌をいれてくるなんて早すぎないか? なんて考えも過ぎったが、初めから順番違いの俺達に早いも遅いもない。
ちょっぴり恥ずかしくなりながらも、先輩が絡めてきた舌を必死になって受け入れる。

「ん……んむ……」

くちゅくちゅと舌が絡まったかと思えば上顎を舌で優しく撫でられたりして、先輩の舌は俺の口の中を沢山気持ちよくしてくれる。
絡めた手をぎゅっと握り締めれば、先輩も答えてくれるように握り返してくれる。
それから数分ぐらいだろうか、先輩の唇が離れれば長い長い俺のファーストキスが終わる。
ちょっぴり息切れしながら先輩を見つめれば、先輩は幸せそうな顔をして微笑む。

「千景、大好き」

そう言って先輩は大きな体で俺を包み込んでくれる。苳也先輩からの真っ直ぐな好きって気持ちが両腕から伝わってくると、俺の心の中は幸せで満たされる。

「俺も大好きです。苳也先輩」

互いに好きだと気持ちを伝えあった俺達は、顔を見合わせて微笑むとまたキスをした。

それから苳也先輩お手製のオムライスで遅い朝食を済ませ、いつものようにゴロゴロしながら過ごす。
ただ、いつもと違うのはどんな時でも苳也先輩と触れ合う距離にいて、目が合えばキスをするところだ。
最初はキスされるのを恥ずかしがっていたけれど、先輩とのキスが気持ち良すぎていつの間にか先輩にキスを求めるように見つめてしまう。
そんな俺を見て先輩は意地悪く目を細める。

「千景~俺とキスするのにはまったな」
「なっ! ち、違いますよ」
「そうか? 今さっきも、物欲しそうに見つめてたと思ったんだけどなぁ~」

俺の下心を見抜かれて恥ずかしくて下を向くと、クスっと笑われる。

「まぁ、千景がそう思っててくれるんなら、俺はすごく嬉しいんだけどな」

両手で頬を挟まれてクイっと上を向かされると、先輩の綺麗な顔が迫ってきてまたキスをする。そんな意地悪なキスでさえ胸がときめいてしまうのは、本当に俺が苳也先輩の事を好きなんだって自覚させられた。
沢山キスしながら映画を見たりして過ごせば、あっという間に夜が来る。

もちろん今日も苳也先輩の家にお泊まりなので、母さんに先輩の家に泊まるとメッセージを送れば『先輩に迷惑かけないようにね』と、いつも通りの返事が返ってくる。

「千景は一人暮らししないのか? お前の実家から大学まで結構距離あるだろ?」

俺がメッセージを送っていると、苳也先輩が背後からのしっと覆いかぶさってくる。

「俺、家事とか苦手で一人暮らしをしても、まともな生活送れる自信がなかったんですよ」

アハハと苦笑いを浮かべると、苳也先輩は「ふ~ん」と言って俺を背後から抱きしめる。

「じゃあ、俺と一緒に住めばいいじゃん」
「えぇ!? いや……でも俺達付き合ったばっかだし……」
「そんなこと気にする付き合いしてないだろ。てか、今も半同棲みたいな感じだろ? この部屋だって、お前の私物で溢れかえってるんだしさ」

……確かに。
苳也先輩の部屋は元々物が少なかったが、俺が出入りするようになってからは徐々に物が増えていった。
部屋の中を見渡せば、お揃いのマグカップに茶碗に歯ブラシ。俺の服も半分くらいは苳也先輩の部屋に置いている。

「……なんか、色々とすみません」
「気にすんなって。可愛いペット飼ってると思ってるから」

ペットって……。
けど、そう言われても仕方のない現状。苳也先輩の優しさを与えられまくった俺は、すでに先輩に飼われていたのか。
俺の事をペット扱いする苳也先輩を怒れる立場でもないので納得し黙っていると、先輩が顔を覗き込んでくる。

「ん? 怒んないのか千景?」
「本当のことなんで怒るに怒れないんです。俺は苳也先輩に餌付けもされてるペットなんで」

プイッと顔を背けると、笑みを溢しながら苳也先輩が謝ってくる。

「ごめんごめん、千景はペットなんかじゃないよな。お前は俺の大切な恋人なんだから」

そう言って苳也先輩は俺をまた抱きしめる。
「もう……」なんて、少し不貞腐れながらも苳也先輩からの『大切な恋人』って言葉に俺の心は満たされるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話

こじらせた処女
BL
 網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。  ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

キスから始める恋の話

紫紺(紗子)
BL
「退屈だし、キスが下手」 ある日、僕は付き合い始めたばかりの彼女にフラれてしまった。 「仕方ないなあ。俺が教えてやるよ」 泣きついた先は大学時代の先輩。ネクタイごと胸ぐらをつかまれた僕は、長くて深いキスを食らってしまう。 その日から、先輩との微妙な距離と力関係が始まった……。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

処理中です...