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送別会 ②
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大衆居酒屋に女子11名と男子2名という逆ハーレム状態で始まった送別会は部長の長い長い挨拶から始まる。
すでにヒクヒクと喉を震わせ涙目の部長を女子達が慰め、乾杯の音頭を三年の望先輩がとると楽しい楽しい送別会がようやく始まる。
「あれ~? 千景くんはジュースなの?」
「あ……えっと……はい」
乾杯の音頭をとった望先輩は仲のいい優香先輩を引き連れて俺の隣にやってくる。
「お酒飲めないの?」
「飲めない訳じゃないんですが……」
「じゃあ、どうして?」
「そのぉ……酒癖が悪いらしくて苳也先輩に人前で飲むなって言われてるんす……」
「そうなんだ~。少しもダメなの?」
「いやぁ……少しくらいは大丈夫かもしれません。やらかしちゃった時は一気に飲み過ぎちゃって……」
へへっと笑うと、望先輩は店員さんを呼びつけると、カクテルを頼む。
すぐに用意されたカクテルは、ミルクベースのカクテルでなんだかカフェオレに近い色をしていた。
「なんだかカフェオレみたいですね」
「カルーアミルクだよ。コーヒーリキュールだから、味も甘いカフェオレみたいで凄く美味しいよ」
「へぇ~そんなのもあるんすね~」
望先輩がせっかく頼んでくれたカクテルなので、受け取り口にすると本当に甘くて美味しいカフェオレの味がした。
飲んだ後に少しアルコールも感じるけれど、大したことはない。
「うわぁ~うまいです!」
「でしょでしょ~! さぁ、今日は苳也くんもいないしガンガン飲んで楽しもう!」
「うっす!」
望先輩に煽られるようにして俺はカルーアミルクをガンガン飲んでいく。そして、五杯目カルーアを飲み終わった時には頭はポヤポヤして俺はふらふらしながらどうにか座っていた。
「お~い、千景くん。ふらふらしてるけど大丈夫?」
「らいじょぶれすっ!」
望先輩の隣で飲んでいた優香先輩に声をかけられ、俺は大丈夫だと手を上げて返事をする。
すると、そんな俺を見た望先輩と優香先輩はキャッキャと楽しそうな声を上げる。
「いや~ん。千景くんすっごく可愛い……。前から可愛いと思ってたけど、苳也くんが怖くて近寄りずらかったんだよね~」
「あ~分かる分かる! 千景くんが誰かと喋ってると不機嫌になるしさぁ~」
「俺も分かります~! 苳也先輩って、すんげ~怖いんですよ! 今日も来る前にお酒飲んじゃダメだって怒られて……」
「え~! 千景くん可愛そう! ほら、お酒グイグイ飲んで苳也なんて忘れちゃお!」
先輩達に勧められてまたお酒を一口……。
やっぱり甘くて美味しい~。
クピクピと飲み干していけば、眠たくなってきて俺はゴロリと床に寝転がる。
「や~ん♡ 千景くん猫みたいで可愛い~♡」
「ねぇねぇ、千景くんは好きな人とかいないの?」
「ん~? 好きな人ですかぁ~? 好きな人……好きな人……」
好きな人と言われて浮かんだ直史先輩の顔……。でも、最近ではバイト以外では会うことも少なくなった……。
寂しくなって辛い気持ちになるんだろうなって覚悟してたけど、実際は苳也先輩と過ごす日々が多くなって……苳也先輩といると凄く楽しくてあったかくて……。
ずっと大好きだった直史先輩のことを忘れてしまっている時もある……。
俺の好きってそんな簡単なものだったんだろうか……。
「好きってなんなんすかね……」
「え……。なに!? 急に暗くなってどうしたの千景くん。もしかして……恋の悩みとか!?」
「私達で良ければ聞くよ! 教えて! 千景くんの恋バナ!!」
望先輩と優香先輩は俺を取り囲むと鼻息荒く相談に乗ると言ってくれる。
先輩達が恋愛話をしているのは、よく耳にする。
俺なんかよりも経験豊富な先輩達なら……俺の苳也先輩に対する気持ちを理解してくれるだろうか……?
「あの……俺、ずっと大好きな人がいたんです。でも、その人が最近になって恋人ができちゃって……。それで、やけになって酒飲んだ時に、仲良かった人と……体の関係もっちゃって……」
俺の話に先輩達はうんうんと頷きながら聞いてくれる。
「その後、その人から告白されたんですけど……俺、その人の事を恋愛対象として見たことなくて……。なんて返事したらいいか分からなくて……そしたら、その人が俺の傍から離れるって言うから……それは嫌だって思って……」
「ほうほう……。それでそれで! 千景くんはその人になんて言ったの?」
「このまんまじゃダメですか……?って、言いました……」
「くはぁ~。それは生殺しだよ千景くん! まぁ、いいや。その後、相手はなんて言ってきたの?」
「大好きな奴の傍にいて触れられないのに傍にいて欲しいなんて残酷だって……」
「そりゃそうだ」
「だから沢山触らせろって……」
「わぁお……。物凄い大胆な子だねその子」
望先輩と優香先輩は相槌を打ちながら、なんだか楽しそうに俺の話を聞いてくれる。
「そうなんです。でも、それからは手を繋いできたりするくらいで……映画みたり買い物行ったり部屋でゴロゴロしたりするくらいで……特にエッチなこともしてこないんです」
「意外に真面目だな……。でも、それって本当に千景くんの事を大切にしたいから手を出さないんだろうね」
「……そういうもんですか?」
「まぁ、普通ヤルだけが目的なら部屋に連れ込んだ時点でやっちゃうしね~」
「そうなんだ……」
俺って苳也先輩に大事にされてんだ……。
「千景くんは、その人と一緒にいてどうなの?」
「えっと……楽しいっす」
「そっかそっか~。じゃあさ、その人に触れられた時とか……ドキドキする?」
苳也先輩に手を握られた時……すっごくドキドキした……。
思い出すとまたドキドキしてきて……コクリと頷けば、望先輩と優香先輩は顔を見合わせニヤリと笑顔を見せる。
「千景くん。もうそれは恋してるんだよ」
「えっ……?」
「はぁ~甘酸っぱいねぇ~。体で始まる恋かぁ……まぁそれもアリだよね!」
「でも……俺ずっと好きな人いたのに……すぐに違う人を好きになんて……」
「千景くん! そんな過去の恋愛に引っ張られちゃダメだよ! 今、千景くんの目の前にいる人こそが千景くんの好きな人なんだよ!」
望先輩の言葉に俺は目を瞬かせる。
俺が………苳也先輩を……好き?
すでにヒクヒクと喉を震わせ涙目の部長を女子達が慰め、乾杯の音頭を三年の望先輩がとると楽しい楽しい送別会がようやく始まる。
「あれ~? 千景くんはジュースなの?」
「あ……えっと……はい」
乾杯の音頭をとった望先輩は仲のいい優香先輩を引き連れて俺の隣にやってくる。
「お酒飲めないの?」
「飲めない訳じゃないんですが……」
「じゃあ、どうして?」
「そのぉ……酒癖が悪いらしくて苳也先輩に人前で飲むなって言われてるんす……」
「そうなんだ~。少しもダメなの?」
「いやぁ……少しくらいは大丈夫かもしれません。やらかしちゃった時は一気に飲み過ぎちゃって……」
へへっと笑うと、望先輩は店員さんを呼びつけると、カクテルを頼む。
すぐに用意されたカクテルは、ミルクベースのカクテルでなんだかカフェオレに近い色をしていた。
「なんだかカフェオレみたいですね」
「カルーアミルクだよ。コーヒーリキュールだから、味も甘いカフェオレみたいで凄く美味しいよ」
「へぇ~そんなのもあるんすね~」
望先輩がせっかく頼んでくれたカクテルなので、受け取り口にすると本当に甘くて美味しいカフェオレの味がした。
飲んだ後に少しアルコールも感じるけれど、大したことはない。
「うわぁ~うまいです!」
「でしょでしょ~! さぁ、今日は苳也くんもいないしガンガン飲んで楽しもう!」
「うっす!」
望先輩に煽られるようにして俺はカルーアミルクをガンガン飲んでいく。そして、五杯目カルーアを飲み終わった時には頭はポヤポヤして俺はふらふらしながらどうにか座っていた。
「お~い、千景くん。ふらふらしてるけど大丈夫?」
「らいじょぶれすっ!」
望先輩の隣で飲んでいた優香先輩に声をかけられ、俺は大丈夫だと手を上げて返事をする。
すると、そんな俺を見た望先輩と優香先輩はキャッキャと楽しそうな声を上げる。
「いや~ん。千景くんすっごく可愛い……。前から可愛いと思ってたけど、苳也くんが怖くて近寄りずらかったんだよね~」
「あ~分かる分かる! 千景くんが誰かと喋ってると不機嫌になるしさぁ~」
「俺も分かります~! 苳也先輩って、すんげ~怖いんですよ! 今日も来る前にお酒飲んじゃダメだって怒られて……」
「え~! 千景くん可愛そう! ほら、お酒グイグイ飲んで苳也なんて忘れちゃお!」
先輩達に勧められてまたお酒を一口……。
やっぱり甘くて美味しい~。
クピクピと飲み干していけば、眠たくなってきて俺はゴロリと床に寝転がる。
「や~ん♡ 千景くん猫みたいで可愛い~♡」
「ねぇねぇ、千景くんは好きな人とかいないの?」
「ん~? 好きな人ですかぁ~? 好きな人……好きな人……」
好きな人と言われて浮かんだ直史先輩の顔……。でも、最近ではバイト以外では会うことも少なくなった……。
寂しくなって辛い気持ちになるんだろうなって覚悟してたけど、実際は苳也先輩と過ごす日々が多くなって……苳也先輩といると凄く楽しくてあったかくて……。
ずっと大好きだった直史先輩のことを忘れてしまっている時もある……。
俺の好きってそんな簡単なものだったんだろうか……。
「好きってなんなんすかね……」
「え……。なに!? 急に暗くなってどうしたの千景くん。もしかして……恋の悩みとか!?」
「私達で良ければ聞くよ! 教えて! 千景くんの恋バナ!!」
望先輩と優香先輩は俺を取り囲むと鼻息荒く相談に乗ると言ってくれる。
先輩達が恋愛話をしているのは、よく耳にする。
俺なんかよりも経験豊富な先輩達なら……俺の苳也先輩に対する気持ちを理解してくれるだろうか……?
「あの……俺、ずっと大好きな人がいたんです。でも、その人が最近になって恋人ができちゃって……。それで、やけになって酒飲んだ時に、仲良かった人と……体の関係もっちゃって……」
俺の話に先輩達はうんうんと頷きながら聞いてくれる。
「その後、その人から告白されたんですけど……俺、その人の事を恋愛対象として見たことなくて……。なんて返事したらいいか分からなくて……そしたら、その人が俺の傍から離れるって言うから……それは嫌だって思って……」
「ほうほう……。それでそれで! 千景くんはその人になんて言ったの?」
「このまんまじゃダメですか……?って、言いました……」
「くはぁ~。それは生殺しだよ千景くん! まぁ、いいや。その後、相手はなんて言ってきたの?」
「大好きな奴の傍にいて触れられないのに傍にいて欲しいなんて残酷だって……」
「そりゃそうだ」
「だから沢山触らせろって……」
「わぁお……。物凄い大胆な子だねその子」
望先輩と優香先輩は相槌を打ちながら、なんだか楽しそうに俺の話を聞いてくれる。
「そうなんです。でも、それからは手を繋いできたりするくらいで……映画みたり買い物行ったり部屋でゴロゴロしたりするくらいで……特にエッチなこともしてこないんです」
「意外に真面目だな……。でも、それって本当に千景くんの事を大切にしたいから手を出さないんだろうね」
「……そういうもんですか?」
「まぁ、普通ヤルだけが目的なら部屋に連れ込んだ時点でやっちゃうしね~」
「そうなんだ……」
俺って苳也先輩に大事にされてんだ……。
「千景くんは、その人と一緒にいてどうなの?」
「えっと……楽しいっす」
「そっかそっか~。じゃあさ、その人に触れられた時とか……ドキドキする?」
苳也先輩に手を握られた時……すっごくドキドキした……。
思い出すとまたドキドキしてきて……コクリと頷けば、望先輩と優香先輩は顔を見合わせニヤリと笑顔を見せる。
「千景くん。もうそれは恋してるんだよ」
「えっ……?」
「はぁ~甘酸っぱいねぇ~。体で始まる恋かぁ……まぁそれもアリだよね!」
「でも……俺ずっと好きな人いたのに……すぐに違う人を好きになんて……」
「千景くん! そんな過去の恋愛に引っ張られちゃダメだよ! 今、千景くんの目の前にいる人こそが千景くんの好きな人なんだよ!」
望先輩の言葉に俺は目を瞬かせる。
俺が………苳也先輩を……好き?
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