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何かが始まるクリスマスの夜 ②
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今、苳也先輩なんて言った?
好き……? え? 好き?
俺の聞き間違い?
いやいやいや。またいつもの冗談かなんかだ。
クリスマスにそんな冗談言うなんて……ほんと最悪。
俺はどんな顔すればいいのか分からずに黙ったまま俯く。静まり返った部屋の中、時計の針の音だけが響き渡る。
何か返事しなきゃと、思っていると苳也先輩が話しかけてくる。
「気まずい……よな。突然そんな事言われても困るよなぁ。こうなるのが嫌でずっとこの気持ちをお前に気持ち伝えられなかったんだ。このまま先輩と後輩の仲ならずっとお前の傍にいられるって……。そんな臆病な事してっからダメなんだよな……」
苳也先輩……ずっと俺を好きだったの?
でも、いつも俺のこと揶揄って……
それでいつも傍にいてくれて……
方向音痴な俺に文句言いながらも道を教えてくれたり……
バイト先でも苦手な客がいたら俺を助けてくれて……
いつも千景、千景ってしつこいくらいに俺のこと呼んで……
苳也先輩と過ごした日々を思い出しながら俯いていた顔を上げると、先輩は辛そうな顔をしていた。
「もう大丈夫だから。ごめんな、一方的に気持ちだけ伝えて。千景には迷惑かけるつもりなんてないからさ。サークルも顔出す回数減らすし、バイトも後釜見つけたら辞めるから……」
黙り込む俺に申し訳なさそうに謝り無理に笑顔を見せる。
このままだと先輩が俺の傍からいなくなるの?
苳也先輩がいなくなる……。
自分の隣から先輩がいなくなった事を想像すると、何故だか寂しくて胸がギュッと締め付けられる。
「もう終電近いし、そろそろ出ないと間に合わなくなるな。ありがとな、話聞いてくれて」
そう言ってソファーから立ち上がり俺のコートを取りに行こうとする先輩のズボンを俺は咄嗟に握りしめる。
その行動に苳也先輩は目を開き俺を見つめてくる。
「俺……苳也先輩がいなくなるの……嫌です……」
俺の言葉にコートを取ろうとした先輩の足は止まり、俺の横にドカッと座り込む。
「千景……じゃあ、俺はどうしたらいいんだ?」
「どうしたらって……」
そんな事を俺に聞かれても困るのに、苳也先輩は捨てられた子猫のような顔して俺に答えを求めてくる。
「このまんまじゃ、ダメですか?」
「それは無理だ。俺は千景が好きなんだぞ。一度、お前に触れて……抱き合って……体を重ねちまったんだ。そんな俺が下心無しで大好きな奴の傍にいられると思うか?」
大好き……。
苳也先輩の口から聞くことなどないと思っていたフレーズが、まさか自分に投げかけられるなど予想もしてなかった俺は恥ずかしくて俯く。
「千景が思ってる以上に俺はお前のこと好きだからな。触れられないのに傍にいて欲しいなんて残酷すぎるぞ」
「すみません……」
「それで、俺はどうすればいい? どうやったら千景の傍にいれんだ?」
俯く俺を覗き込むように顔を近づけてくる苳也先輩。
「千景、こっち見て。なぁ、お前は俺のことどう思ってんの?」
「俺は……苳也先輩のこと……」
前だったらいつものように『嫌いだ』なんて言えてたのに、今の苳也先輩にそんな言葉をぶつけたら絶対悲しい顔にさせてしまう。
それに俺……苳也先輩のこと本当に嫌ってなんかいない。
「先輩のこと嫌いじゃないですよ」
「嫌いじゃないって……曖昧だな」
「そう言われても……。あ! こういうのはまずはお友達からが基本だったような」
「あ? お前は今まで俺のこと友達とすら思ってなかったのかよ」
「いやいや! そういう訳じゃなくて。だって……どう答えたらいいか分かんないです」
もじもじする俺に苳也先輩はニヤァといつもの意地悪な笑顔を見せる。
「じゃあ、これからも千景の傍にいるから、千景のこと沢山触れてもいいか?」
「触れる……?」
「あぁ、こんな風に……」
そう言うと苳也先輩は俺の頬を優しく撫でて顔を近づけてくる。思わずキスされるんじゃないかと目を瞑るとクスっと笑われる。
「今は触れるだけだから安心しろ。まぁ、友達以上の関係って事でいいんだよな? 千景」
嬉しそうな先輩の笑顔を見せられたら「普通の友達で!」なんて訂正も出来ずにコクッと頷くと、苳也先輩はギュッと俺を抱きしめてくる。
「千景~大好きだぞ~」
こうして、失恋したばかりの俺は先輩の親友と酔ってやっちゃて友達以上の謎の関係を築くことになる。
これからの俺達の関係性がどうなるのかは……神のみぞ知る。
おわり
最後まで読んでいただきありがとうございました☆
その後の二人はもちろん両想いハッピーエンドです!
需要があるなら、二人の両想いまでの話と両想いのゲロ甘らぶらぶ初夜を投稿したいと思います~☆
好き……? え? 好き?
俺の聞き間違い?
いやいやいや。またいつもの冗談かなんかだ。
クリスマスにそんな冗談言うなんて……ほんと最悪。
俺はどんな顔すればいいのか分からずに黙ったまま俯く。静まり返った部屋の中、時計の針の音だけが響き渡る。
何か返事しなきゃと、思っていると苳也先輩が話しかけてくる。
「気まずい……よな。突然そんな事言われても困るよなぁ。こうなるのが嫌でずっとこの気持ちをお前に気持ち伝えられなかったんだ。このまま先輩と後輩の仲ならずっとお前の傍にいられるって……。そんな臆病な事してっからダメなんだよな……」
苳也先輩……ずっと俺を好きだったの?
でも、いつも俺のこと揶揄って……
それでいつも傍にいてくれて……
方向音痴な俺に文句言いながらも道を教えてくれたり……
バイト先でも苦手な客がいたら俺を助けてくれて……
いつも千景、千景ってしつこいくらいに俺のこと呼んで……
苳也先輩と過ごした日々を思い出しながら俯いていた顔を上げると、先輩は辛そうな顔をしていた。
「もう大丈夫だから。ごめんな、一方的に気持ちだけ伝えて。千景には迷惑かけるつもりなんてないからさ。サークルも顔出す回数減らすし、バイトも後釜見つけたら辞めるから……」
黙り込む俺に申し訳なさそうに謝り無理に笑顔を見せる。
このままだと先輩が俺の傍からいなくなるの?
苳也先輩がいなくなる……。
自分の隣から先輩がいなくなった事を想像すると、何故だか寂しくて胸がギュッと締め付けられる。
「もう終電近いし、そろそろ出ないと間に合わなくなるな。ありがとな、話聞いてくれて」
そう言ってソファーから立ち上がり俺のコートを取りに行こうとする先輩のズボンを俺は咄嗟に握りしめる。
その行動に苳也先輩は目を開き俺を見つめてくる。
「俺……苳也先輩がいなくなるの……嫌です……」
俺の言葉にコートを取ろうとした先輩の足は止まり、俺の横にドカッと座り込む。
「千景……じゃあ、俺はどうしたらいいんだ?」
「どうしたらって……」
そんな事を俺に聞かれても困るのに、苳也先輩は捨てられた子猫のような顔して俺に答えを求めてくる。
「このまんまじゃ、ダメですか?」
「それは無理だ。俺は千景が好きなんだぞ。一度、お前に触れて……抱き合って……体を重ねちまったんだ。そんな俺が下心無しで大好きな奴の傍にいられると思うか?」
大好き……。
苳也先輩の口から聞くことなどないと思っていたフレーズが、まさか自分に投げかけられるなど予想もしてなかった俺は恥ずかしくて俯く。
「千景が思ってる以上に俺はお前のこと好きだからな。触れられないのに傍にいて欲しいなんて残酷すぎるぞ」
「すみません……」
「それで、俺はどうすればいい? どうやったら千景の傍にいれんだ?」
俯く俺を覗き込むように顔を近づけてくる苳也先輩。
「千景、こっち見て。なぁ、お前は俺のことどう思ってんの?」
「俺は……苳也先輩のこと……」
前だったらいつものように『嫌いだ』なんて言えてたのに、今の苳也先輩にそんな言葉をぶつけたら絶対悲しい顔にさせてしまう。
それに俺……苳也先輩のこと本当に嫌ってなんかいない。
「先輩のこと嫌いじゃないですよ」
「嫌いじゃないって……曖昧だな」
「そう言われても……。あ! こういうのはまずはお友達からが基本だったような」
「あ? お前は今まで俺のこと友達とすら思ってなかったのかよ」
「いやいや! そういう訳じゃなくて。だって……どう答えたらいいか分かんないです」
もじもじする俺に苳也先輩はニヤァといつもの意地悪な笑顔を見せる。
「じゃあ、これからも千景の傍にいるから、千景のこと沢山触れてもいいか?」
「触れる……?」
「あぁ、こんな風に……」
そう言うと苳也先輩は俺の頬を優しく撫でて顔を近づけてくる。思わずキスされるんじゃないかと目を瞑るとクスっと笑われる。
「今は触れるだけだから安心しろ。まぁ、友達以上の関係って事でいいんだよな? 千景」
嬉しそうな先輩の笑顔を見せられたら「普通の友達で!」なんて訂正も出来ずにコクッと頷くと、苳也先輩はギュッと俺を抱きしめてくる。
「千景~大好きだぞ~」
こうして、失恋したばかりの俺は先輩の親友と酔ってやっちゃて友達以上の謎の関係を築くことになる。
これからの俺達の関係性がどうなるのかは……神のみぞ知る。
おわり
最後まで読んでいただきありがとうございました☆
その後の二人はもちろん両想いハッピーエンドです!
需要があるなら、二人の両想いまでの話と両想いのゲロ甘らぶらぶ初夜を投稿したいと思います~☆
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