【完結】不幸な主人を幸せにするまで俺は何度でも『リセット』させられる

赤牙

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王子Side ①

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「アーサー。お前にリンドル家の従者をつける」

父がそう告げた時に、兄さんから刺し殺すような視線が向けられた。
『後継者』と呼ばれるリンドル家の従者がつく…それは時期国王への椅子に一歩近づいたことを意味している。
国王になんてなりたくもない私にとっては迷惑な話だった…。しかし、リンドル家の従者つけられる事は王命なので断ることができずにアレンが私の従者についた。
 
アレンは『後継者』と呼ばれる特殊な肩書を持っているのだが…見た目は他の者と何も変わらない。
特殊な何かがあるらしいのだが…それを知っているのは国王である父だけだ。

なんで私に……。

兄さんが部屋から出て行った後に、父にどうして私に『後継者』をつけたのか理由を聞くが「今は話す事ができないと」言われた…。

それからは元々仲がいいわけではなかった兄さんの嫌がらせが始まる。
気にしてもどうしようもないので無視していると、それが気にくわないのか嫌がらせはどんどんエスカレートしていった。


そして…ある日の昼食の時に事件は起こる。

「王子!その食事を食べてはいけません!」

アレンが突然そう叫び驚いた私は手が止まる。
それからアレンが従者に目を向けると一人の従者が顔を青くしてその場から逃げ去った。

逃げ出した従者はすぐに捕まり私の前に連れられてくるが。最近入った新人なのか初めて見る顔だった。
従者を問い詰めるがもちろん自分がやったとは言わないので後で話を聞く事にした。

助けてくれたアレンに礼を言うと、アレンは少しホッとした表情を見せる。

「王子を守り幸せにするのが私の役目ですから…」

柔らかな笑顔でそう話すアレンを見て私は思わずドキッとしてしまう。

「そうか。これからも私の事を守ってくれるのか…?」
「はい」
「幸せに…してくれるのか?」
「はい」

そう言って最後にアレンが見せた笑顔につられるように、私も思わず笑みを溢してしまった。
 



それからアレンは誰よりも私の傍にいてくれた。
相変わらず兄さんからの嫌がらせは続いていたがいつもアレンが助けてくれた。

しかし、時折アレンがとても辛そうな表情を見せる事に私は気付く。
最初にその表情を見せたのはアレンが私と一緒に寝たいと言ってきた時だった。
アレンからの突然の申し出にドキドキしながら了承し、初めて一緒に眠った時の事は今でも忘れられない。

「王子が安らかに眠れるように…」

そう言ってアレンは私の部屋に結界魔法をかけ始める。キラキラと煌めきながら結界が張られていく様子を二人で見つめた。
その後はアレンに抱きしめられるように体を寄せ合いながら眠りについた。

朝…目を覚ますとアレンが私の顔を見つめてなんだか泣き出しそうな顔をしていた。

「おはよう…アレン…」
「おはようございます王子…。ご無事でよかった…」

そう言ってアレンは私をギュッと抱きしめてきた。


その後は、外出する時も風呂にも入る時もアレンは私の傍から離れなかった。
外出時には何度か何者かに襲われ、その度にアレンが結界魔法を張りながら私を守ってくれた。
まだ幼かった私は何もできず怯えるだけで…ずっとアレンにしがみついていた…。

無事に私を守りきると「無事でよかった…」そう言ってアレンはまた辛そうな顔をして私に微笑みかけてくる。
その笑顔を見る度に、アレンがどれだけ神経をすり減らし追い詰められていたのかが分かった。

非力でひ弱で…守られてばかりの自分…
そんな自分が嫌になり…私は強くなる事を決意する。

アレンは私にとって…英雄だ。

私もアレンのようになりたい…アレンに認められたい…アレンに褒められたい…アレンと肩を並べられるような強い人間になりたい…

アレン…アレン…アレン…アレン…アレン…

私を突き動かす理由は全てアレンだ。




そして月日は流れ、20歳になった私はあの頃からすっかり変わりアレンを守れるくらいには強くなった。
体もアレンよりも大きくなったし力だって…

そして、アレンを思う気持ちも変わっていった…。
私にとってアレンは、かけがえのない大切な人だと気づいてしまった。

誰にも渡したくない…大切な私のアレン…

けれど、アレンは今だに私の事を幼い時と同じような感覚で接してくる。
どんなに熱い抱擁を交わしても、甘い言葉を囁いても、いつも「王子は甘えん坊ですね~」と言って流される。

そんなアレンにやきもきしていると、ずっと私の命を狙い続けていた兄さんの悪事が露呈し幽閉される事が決まった。

その話をアレンにすると、アレンはホッとした表情を見せ私に残酷な言葉を投げつけてくる。



「これで俺がいなくなっても安心ですね。王子」

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