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【番外編】〜嫌われ者の兄はやり直しの義弟達の愛玩人形になる〜
キスの意味は? 〜シャルルSide〜
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月明かりを背に受けたジェイドの顔が近づいてくる。逆光ではっきりと見えない表情のなか、ジェイドのアメジストの瞳が異様な輝きを放つ。
瞳がギラリと強い光を放ち俺をとらえ、その瞳から目が逸らせなかった。
ジェイドの吐息が感じられる距離まで顔が近づき、そして唇が触れた。
触れた瞬間に気付いたことは、ジェイドの唇が冷たいことと強い光を放っていた瞳が寂しげなかげりを見せたことだ。
触れ合った唇がゆっくりと離れると、ジェイドが満足げな微笑みを浮かべる。
「兄さん、屋敷に帰りましょう」
「あ、うん……」
俺を抱きしめていた手に導かれ馬車に乗り込む。
手を繋いだまま、肩と肩が触れ合う距離で座り馬車は走り出した。
ジェイドはずっと無言で小窓の外を見つめていた。月明かりに照らされたジェイドの横顔は、とても大人びて見えた。
なのに握りしめられた指先からは不安ばかりが伝わってくる。離れないように必死に繋がれた手……
「ジェイド……」
振り向いた時のジェイドの顔はさっきまで見せていた表情から一変して幼く見えた。
大人びたジェイドが時折見せるこの表情は一体なんなのだろうか……
「大、丈夫か? 体調が悪いのか? さっきは、いつもと雰囲気が違ったから……」
俺の問いかけにジェイドは目を丸くしたあと柔らかく微笑む。
「心配をかけてすみません兄さん。先ほどは慣れないお酒と人混みに酔ってしまっていたようです。今はだいぶよくなりました」
「そうか。それならよかった」
微笑みかけるとジェイドは意地悪げな笑みを浮かべる。
「兄さん、キスをされたことについて怒っていないのですか?」
「えぇ!? いや、怒ってなんか……」
「兄さんにとってはキスくらい大したことない行為でしたか? ……もしかして、キスをするのに慣れているのですか?」
ジェイドの怪訝な顔が近づいてくる。
キスをした時のことを思い出させる状況に心臓の鼓動は速くなる。
「慣れてなんかない! キ、キスはさっきのが初めてで……」
「そうですか、それは良かった」
ジェイドはそう言うと俺の頬に触れ、親指で唇をなぞる。
「兄さんに触れていいのは私とリエンだけですからね」
その言葉になんと返事をしたらいいのか戸惑いジェイドを見つめる。
ジェイドは困惑した顔の俺を見て嬉しそうに笑みをこぼすと抱き寄せてくる。
そしてまた、唇が重なった。
二度目のキスに驚き離れようとジェイドの胸を腕でぐっと押すが無駄な抵抗だった。抱きしめる腕の力が強くなり、一度目のキスより深く唇が重なる。
声を出そうと唇を動かせば、唇をついばまれる。
「ん、んぁ……」
くちゅっ……と、唾液が混ざり合う音がして恥ずかしさのあまり声がもれた。
ジェイドは俺が漏らした声を聞き目を細め、さらに唇をついばんでくる。
わざとらしくリップ音をたてるジェイド。
馬車の車輪の音の方が大きいはずなのに、俺の耳には唇から漏れる音の方が大きく聞こえてしまう。
たまらなく恥ずかしくてジェイドのシャツをぎゅっと握りしめ必死に耐え続けると、ようやくジェイドの唇が離れた。
長いキスに耐えた唇がジンと疼く。
キスの間、上手く呼吸ができなかったため呼吸が荒くなる。息を整えようと口を開くと、ジェイドの指先がまた唇をなぞる。
また、キスをされるのかと思い唇をキュッと結ぶとジェイドがクスリと笑う。
「安心して下さい兄さん、しませんよ」
本当か?と、思いジェイドを見上げると抱き寄せられていた腕の力が弱まる。
ホッとして少しジェイドと距離をとり、握りしめていたジェイドのシャツを離すと皺くちゃになっていた。
それを見て一瞬、申し訳ない気持ちになったがもとはといえばジェイドがキスをしてきたのが原因で、俺のせいだけど俺のせいじゃなくて……
考えなくてもいい言い訳が頭の中でぐるぐる回る。
そんな俺を見て、ジェイドは満足げな笑みを浮かべる。
「私のことで頭がいっぱいのようですね。これからもずっと私やリエンのことだけを考えて下さいね、シャルル兄さん」
その言葉に背筋がゾクリとする。
ジェイドの行動は、一度目の俺への復讐心からくるものなのだろうか。
嫌いだから、憎いから俺の嫌がることをして、こんなにも俺の心をぐちゃぐちゃにするのか?
ジェイドが見せる異様なまでの俺への執着心。
最初は怖いと思ったけれど、今は違う感じ方をしてしまう自分に正直戸惑っている。
怖いはずなのに二人に求められそばにいることが時折心地よく感じてしまう時がある。
俺は二人にとって『特別』。
二人は絶対に俺から離れていかないんだと思うと、嫌なことをされても受け入れてしまう。
ーーなぁ、ジェイド。なんで俺にキスしたんだ?
そんな簡単なことすら聞けない俺たちの歪な関係が行き着く先は、いったいどこなのだろうか……
瞳がギラリと強い光を放ち俺をとらえ、その瞳から目が逸らせなかった。
ジェイドの吐息が感じられる距離まで顔が近づき、そして唇が触れた。
触れた瞬間に気付いたことは、ジェイドの唇が冷たいことと強い光を放っていた瞳が寂しげなかげりを見せたことだ。
触れ合った唇がゆっくりと離れると、ジェイドが満足げな微笑みを浮かべる。
「兄さん、屋敷に帰りましょう」
「あ、うん……」
俺を抱きしめていた手に導かれ馬車に乗り込む。
手を繋いだまま、肩と肩が触れ合う距離で座り馬車は走り出した。
ジェイドはずっと無言で小窓の外を見つめていた。月明かりに照らされたジェイドの横顔は、とても大人びて見えた。
なのに握りしめられた指先からは不安ばかりが伝わってくる。離れないように必死に繋がれた手……
「ジェイド……」
振り向いた時のジェイドの顔はさっきまで見せていた表情から一変して幼く見えた。
大人びたジェイドが時折見せるこの表情は一体なんなのだろうか……
「大、丈夫か? 体調が悪いのか? さっきは、いつもと雰囲気が違ったから……」
俺の問いかけにジェイドは目を丸くしたあと柔らかく微笑む。
「心配をかけてすみません兄さん。先ほどは慣れないお酒と人混みに酔ってしまっていたようです。今はだいぶよくなりました」
「そうか。それならよかった」
微笑みかけるとジェイドは意地悪げな笑みを浮かべる。
「兄さん、キスをされたことについて怒っていないのですか?」
「えぇ!? いや、怒ってなんか……」
「兄さんにとってはキスくらい大したことない行為でしたか? ……もしかして、キスをするのに慣れているのですか?」
ジェイドの怪訝な顔が近づいてくる。
キスをした時のことを思い出させる状況に心臓の鼓動は速くなる。
「慣れてなんかない! キ、キスはさっきのが初めてで……」
「そうですか、それは良かった」
ジェイドはそう言うと俺の頬に触れ、親指で唇をなぞる。
「兄さんに触れていいのは私とリエンだけですからね」
その言葉になんと返事をしたらいいのか戸惑いジェイドを見つめる。
ジェイドは困惑した顔の俺を見て嬉しそうに笑みをこぼすと抱き寄せてくる。
そしてまた、唇が重なった。
二度目のキスに驚き離れようとジェイドの胸を腕でぐっと押すが無駄な抵抗だった。抱きしめる腕の力が強くなり、一度目のキスより深く唇が重なる。
声を出そうと唇を動かせば、唇をついばまれる。
「ん、んぁ……」
くちゅっ……と、唾液が混ざり合う音がして恥ずかしさのあまり声がもれた。
ジェイドは俺が漏らした声を聞き目を細め、さらに唇をついばんでくる。
わざとらしくリップ音をたてるジェイド。
馬車の車輪の音の方が大きいはずなのに、俺の耳には唇から漏れる音の方が大きく聞こえてしまう。
たまらなく恥ずかしくてジェイドのシャツをぎゅっと握りしめ必死に耐え続けると、ようやくジェイドの唇が離れた。
長いキスに耐えた唇がジンと疼く。
キスの間、上手く呼吸ができなかったため呼吸が荒くなる。息を整えようと口を開くと、ジェイドの指先がまた唇をなぞる。
また、キスをされるのかと思い唇をキュッと結ぶとジェイドがクスリと笑う。
「安心して下さい兄さん、しませんよ」
本当か?と、思いジェイドを見上げると抱き寄せられていた腕の力が弱まる。
ホッとして少しジェイドと距離をとり、握りしめていたジェイドのシャツを離すと皺くちゃになっていた。
それを見て一瞬、申し訳ない気持ちになったがもとはといえばジェイドがキスをしてきたのが原因で、俺のせいだけど俺のせいじゃなくて……
考えなくてもいい言い訳が頭の中でぐるぐる回る。
そんな俺を見て、ジェイドは満足げな笑みを浮かべる。
「私のことで頭がいっぱいのようですね。これからもずっと私やリエンのことだけを考えて下さいね、シャルル兄さん」
その言葉に背筋がゾクリとする。
ジェイドの行動は、一度目の俺への復讐心からくるものなのだろうか。
嫌いだから、憎いから俺の嫌がることをして、こんなにも俺の心をぐちゃぐちゃにするのか?
ジェイドが見せる異様なまでの俺への執着心。
最初は怖いと思ったけれど、今は違う感じ方をしてしまう自分に正直戸惑っている。
怖いはずなのに二人に求められそばにいることが時折心地よく感じてしまう時がある。
俺は二人にとって『特別』。
二人は絶対に俺から離れていかないんだと思うと、嫌なことをされても受け入れてしまう。
ーーなぁ、ジェイド。なんで俺にキスしたんだ?
そんな簡単なことすら聞けない俺たちの歪な関係が行き着く先は、いったいどこなのだろうか……
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