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【番外編】〜嫌われ者の兄はやり直しの義弟達の愛玩人形になる〜
雷鳴と温もり ①
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春が終わりを告げ、初夏に入り狩りの季節がやってくる。
兄さんと迎える四度目の夏。
私にとって、忘れることのできない夏がやってくる。
鳴り響く雷鳴。
雨に濡れ体の芯まで冷えた体。
暗闇の中を一人震えながら耐えたあの日を忘れることなど到底できない。
朝食を終えた私は、シャルル兄さんの部屋へと赴き声をかける。
「シャルル兄さん、今度の週末は一緒に狩りに行きませんか?」
「……え? 狩りに? 俺と?」
「ダメでしょうか?」
「ううん、俺も行きたい! ジェイド誘ってくれてありがとう。凄く楽しみだ」
「私もです。楽しい一日にしましょうね」
「あぁ!」
私からの誘いに兄さんは嬉しそうに笑みを溢す。
その様子に私も口元を綻ばせる。
———一生忘れられることのない一日にしてあげますからね、兄さん。
†††
そして、週末を迎え私と兄さんは馬にまたがり森の中へ。
一度目と変わらない晴天に恵まれ青空が広がる。
ただ、一度目と違うのは、シャルル兄さんが私と同じ目に合うということだ。
シャルル兄さんの背中を見つめていると、兄さんの楽しそうな声が聞こえてくる。
「ジェイド、もう少し奥にいくと獲物がいると思うんだ。父様と一緒に狩りにでかけた時に、大きな鹿を見つけたことがあるんだ」
「そうなんですね。そんな大きな獲物を連れて帰ったら父上たちも驚くでしょうね」
「ハハ、そうだな」
呑気な笑い声をあげる兄さん。
その笑顔が消え失せるほどのことが起きるなんて微塵も思ってはいないだろう。
……一度目の私もそうだった。
兄さんに狩りに誘われ、ほんの少し期待し油断していたせいであんな仕打ちを受けたのだから。
過去を思い出し、ぐっと手綱を握りしめる。
それから、兄さんに誘導され森の奥へ。
雲一つなかった空は不穏げに陰りだす。
———もうそろそろいいだろうか……。
弓と矢を手に取り兄さんを見つめる。
今、兄さんの馬に矢を放てば……私と同じ目に合う。
ギリッ……と、弓を握りしめ構えた時、兄さんが私の方を振り返る。
「ジェイド! 今、鹿が通ったぞ!」
「———っっ……。そう、ですか……」
水色の瞳を輝かせ兄さんが笑顔を向ける。
その笑顔に構えていた弓を思わずおろしてしまう。
「どうしたジェイド? 俺の近くに獲物を見つけたのか?」
「……いえ、気の……せい、でした……」
同じ目に合わせようと思っていたのに、私は何故弓を放てなかったんだ……。
自分の行動に理解出来ず苛立っていると、突然、茂みから獣が飛び出してくる。
それに驚いた馬はいななきをあげ体を高く跳ね上げる。
兄さんのことで頭がいっぱいだった私は、いつのまにか手綱を持つ手を緩めていた。
体が馬から離れ、宙に浮く。
灰色の空が目に映り、一度目と同じ光景が私に襲いかかった。
兄さんと迎える四度目の夏。
私にとって、忘れることのできない夏がやってくる。
鳴り響く雷鳴。
雨に濡れ体の芯まで冷えた体。
暗闇の中を一人震えながら耐えたあの日を忘れることなど到底できない。
朝食を終えた私は、シャルル兄さんの部屋へと赴き声をかける。
「シャルル兄さん、今度の週末は一緒に狩りに行きませんか?」
「……え? 狩りに? 俺と?」
「ダメでしょうか?」
「ううん、俺も行きたい! ジェイド誘ってくれてありがとう。凄く楽しみだ」
「私もです。楽しい一日にしましょうね」
「あぁ!」
私からの誘いに兄さんは嬉しそうに笑みを溢す。
その様子に私も口元を綻ばせる。
———一生忘れられることのない一日にしてあげますからね、兄さん。
†††
そして、週末を迎え私と兄さんは馬にまたがり森の中へ。
一度目と変わらない晴天に恵まれ青空が広がる。
ただ、一度目と違うのは、シャルル兄さんが私と同じ目に合うということだ。
シャルル兄さんの背中を見つめていると、兄さんの楽しそうな声が聞こえてくる。
「ジェイド、もう少し奥にいくと獲物がいると思うんだ。父様と一緒に狩りにでかけた時に、大きな鹿を見つけたことがあるんだ」
「そうなんですね。そんな大きな獲物を連れて帰ったら父上たちも驚くでしょうね」
「ハハ、そうだな」
呑気な笑い声をあげる兄さん。
その笑顔が消え失せるほどのことが起きるなんて微塵も思ってはいないだろう。
……一度目の私もそうだった。
兄さんに狩りに誘われ、ほんの少し期待し油断していたせいであんな仕打ちを受けたのだから。
過去を思い出し、ぐっと手綱を握りしめる。
それから、兄さんに誘導され森の奥へ。
雲一つなかった空は不穏げに陰りだす。
———もうそろそろいいだろうか……。
弓と矢を手に取り兄さんを見つめる。
今、兄さんの馬に矢を放てば……私と同じ目に合う。
ギリッ……と、弓を握りしめ構えた時、兄さんが私の方を振り返る。
「ジェイド! 今、鹿が通ったぞ!」
「———っっ……。そう、ですか……」
水色の瞳を輝かせ兄さんが笑顔を向ける。
その笑顔に構えていた弓を思わずおろしてしまう。
「どうしたジェイド? 俺の近くに獲物を見つけたのか?」
「……いえ、気の……せい、でした……」
同じ目に合わせようと思っていたのに、私は何故弓を放てなかったんだ……。
自分の行動に理解出来ず苛立っていると、突然、茂みから獣が飛び出してくる。
それに驚いた馬はいななきをあげ体を高く跳ね上げる。
兄さんのことで頭がいっぱいだった私は、いつのまにか手綱を持つ手を緩めていた。
体が馬から離れ、宙に浮く。
灰色の空が目に映り、一度目と同じ光景が私に襲いかかった。
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