嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする

赤牙

文字の大きさ
上 下
82 / 98
【番外編】〜嫌われ者の兄はやり直しの義弟達の愛玩人形になる〜

新たな感情

しおりを挟む
二度目の人生が始まり、早いもので二年が経った。
苦しんで日々を過ごしていた一度目とは違い、今は何不自由なく過ごせている。
兄さんは私たちのお願いごとなら、なんでも聞いてくれる優しい兄へと生まれ変わった。

最初は、私たちを避けて逃げ出したり、私たちのお願いごとを拒否して我儘なことを言うこともあった。
だが、時間をかけて兄さんを躾けていけば、兄さんは従順になっていく。
声をかけるたびに、今度は何をやらされるのだろうと不安な表情を見せる兄さんを最近では愛らしいと感じることもある。

学園でも屋敷でも、私たちを虐げるものはいなくなった。
それも全てシャルル兄さんのおかげだ。
そして、今日も兄さんを呼び出し戯れる。

「シャルル兄さん、課題で分からないところがあるので教えていただけませんか?」
「……あぁ」

声をかけると、体を小さく揺らし頷く。
私の部屋にやってくる兄さんの足取りは重い。

「ここが分からないのですが」

シャルル兄さんのレベルでは難しい内容を提示すれば、兄さんはかしげ考え込み小さく首を振る。

「……俺にはわからない」
「そうですか、それは残念です。侯爵家の長男である兄さんならば、簡単に解けると思ったのですが……」

意地悪く兄さんの自尊心を傷つける言葉を投げかけると、兄さんは瞳を潤ませる。
最近の兄さんは、感情が高ぶると涙を見せることが多くなった。
行き場のない怒りは、涙へと変わり、そんな自分が情けないのか、さらに涙は溢れてきている。

「シャルル兄さん、大丈夫ですか?」
「大、丈夫だ……」

声を詰まらせ必死に涙をこらえる兄さんに、背筋がゾクリと疼く。

———ここで、優しくすれば涙をこぼし私に泣きつくのだろうか?

ふと湧き上がる好奇心。
兄さんの手に触れ、優しく声をかける。

「すみません、シャルル兄さん。いつも頼ってばかりで……。やはり迷惑でしたか?」
「いや、そんなことは……ない」
「よかった。シャルル兄さんがそばにいてくれると、すごく安心するんですよ。シャルル兄さんが私の兄になってくださって本当に幸せです」

普段はあまり見せない笑顔を向ければ、兄さんは頬を赤らめる。
意外な反応を見せる兄さんに興味を抱く。

「顔が赤いですが、体調でも悪いのですか?」
「わ、悪くない……」
「ふふ。よかったです。では、兄さん。課題の続きを手伝ってくれますか?」
「うん……」

手を重ねたまま再度微笑めば、また頬を赤らめる兄さん。
まるで、恋心を抱いた少女のような反応を見せる兄さんが面白く私は、兄さんと話す時には体に触れることが多くなる。

ソファーに腰掛ける兄さんの隣に座り、緊張して握りしめられた拳に手を重ね話しかける。
頬を赤く染め緊張と不安な顔をしながらも、私を見つめる瞳は以前とは違い何か求めているようにも感じた。
求めるものは、私の好意や優しさだろうか……?
兄さんにとって、この屋敷では私とリエンだけが兄さんの味方だ。
私たちがいなければ、一度目と同じく叔父に利用され捨てられ惨めに死んでいく人生を辿る兄さん。
そう考えると、兄さんが可哀想な捨て猫のように見えてくる。
哀れな兄さんを私とリエンで躾ながら飼ってやるのも楽しいかもしれない。

———たまには、優しくしてやるのも飼い主の役目か。

重ねた手で拳を撫で、優しく話しかければ緊張が解けたのか兄さんが微かに笑みを浮かべる。
初めて見た、兄さんの微笑み。
喜びで淡く揺れる水色の瞳が私だけを映す。
そんな兄さんの表情に、なぜか心が満たされる。
兄さんに抱く新たな感情は、少しずつ少しずつ私の心を蝕んでいった。



しおりを挟む
感想 506

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。