84 / 98
【番外編】〜嫌われ者の兄はやり直しの義弟達の愛玩人形になる〜
笑顔と涙 ① 〜リエンSide〜
しおりを挟む
「シャルル兄様~! あ~そ~ぼ!」
声をかけるとシャルル兄様は少し間を開けて頷く。
二度目の人生が始まってから、二年が経ちすっかり毒気の抜けたシャルル兄様。
今では僕たちのいいなりで、反抗することはほとんどない。
本人が嫌だと思っても、誰も味方がいない状況に色々と諦めたんだろう。
まぁ、一度目も一人じゃ何もできなくて、領民に嫌われ妻にも愛想をつかされて、最後は利用されるだけ利用されて奴隷にまで落ちた可哀想な兄様。
そんな可哀想な兄様に、手を差し伸べてあげるのは僕たちくらいだった。
「ねぇ、シャルル兄様何して遊びたい?」
「なんでもいいけど」
「じゃあ、かくれんぼはどう?」
「……かくれんぼは……嫌だ」
兄様はあの時のことを思い出したのか、首を小さく横にふる。
「えー。もう、シャルル兄様は我儘なんだからぁ~」
「ごめん……」
素直に謝るシャルル兄様の姿を見ていると、一度目の面影は見当たらない。
ジェイド兄様と僕によって従順になるように躾けられた兄様は、今では僕たちの可愛いペットだ。
ちょっとしたことでも不安な表情を見せ、機嫌を伺うシャルル兄様は、一度目の僕たちを見ているようで面白い。
シャルル兄様も、こんな気持ちで僕たちをいじめていたんだと思いながら兄様に微笑みかけ、今日も楽しい一日が始まる。
「じゃあ、兄様のやりたいことして遊ぼうよ。兄様は何がしたいの?」
「……湖に散策に行きたい」
「湖……?」
兄様から出た『湖』というフレーズに、首にかけていたペンダントを握りしめる。
一度目の時は、無くしてしまったペンダントを湖に捨てられ、僕は泣きながら湖に飛び込んだ。
冷たくて仄暗い湖の底に沈んだ、かけがえのない僕と父様の思い出。
そんな場所に行きたいなんて……やっぱりシャルル兄様は何も変わっていないんだな。
「いいよ。でも、今日はあまり天気も良くないから別の日に行こうよ。湖に向かうなら準備もしなくちゃね」
そう言って笑いかければ、兄様も顔を綻ばせる。
楽しい楽しい兄様とお出かけ。
しっかりと心に残る思い出を作ってあげないと。
そう思い、僕は笑みを深くした。
それから二日後。
兄様と共に、北のはずれにある湖へと向かう。
母様に兄様と出かけてくると言うと、お昼に食べてとランチボックスを手渡してくれる。
シャルル兄様に手を引かれ、湖へと辿り着くと美しい景色が広がる。
青々と芝生のように生えた草原の奥にコバルトブルーの大きな湖が見える。
「すごく綺麗だね、兄様……」
「そうだろ。とても綺麗は場所だから、リエンも気にいるかなと思ったんだ」
気恥ずかしそうに照れ笑いを見せる兄様。
その笑みが僕のペンダントを投げ捨てた時と重なり、引き攣りながら笑顔を向けた。
それから、兄様が湖の周りを案内してくれて母様の作ったランチボックスを開く。
僕の大好きなサンドイッチや果物、それに兄様の好きなパンも入っている。
二人で母様の用意してくれたサンドイッチを口にすると、兄様は水色の瞳を輝かせ顔を綻ばせる。
「リエン、美味しいな」
「うん、そうだね……」
食事中も楽しそうに学園の話をしたり学友との日常を話してくれる。
僕が学園にきたら自分が色々と案内すると言ってくる。
キラキラした笑顔を振りまく兄様。
生まれ変わったかのように、従順でいい子になった兄様。
けれど、その笑顔は本物なのだろうか?
僕は兄様に試練を与えることにした。
声をかけるとシャルル兄様は少し間を開けて頷く。
二度目の人生が始まってから、二年が経ちすっかり毒気の抜けたシャルル兄様。
今では僕たちのいいなりで、反抗することはほとんどない。
本人が嫌だと思っても、誰も味方がいない状況に色々と諦めたんだろう。
まぁ、一度目も一人じゃ何もできなくて、領民に嫌われ妻にも愛想をつかされて、最後は利用されるだけ利用されて奴隷にまで落ちた可哀想な兄様。
そんな可哀想な兄様に、手を差し伸べてあげるのは僕たちくらいだった。
「ねぇ、シャルル兄様何して遊びたい?」
「なんでもいいけど」
「じゃあ、かくれんぼはどう?」
「……かくれんぼは……嫌だ」
兄様はあの時のことを思い出したのか、首を小さく横にふる。
「えー。もう、シャルル兄様は我儘なんだからぁ~」
「ごめん……」
素直に謝るシャルル兄様の姿を見ていると、一度目の面影は見当たらない。
ジェイド兄様と僕によって従順になるように躾けられた兄様は、今では僕たちの可愛いペットだ。
ちょっとしたことでも不安な表情を見せ、機嫌を伺うシャルル兄様は、一度目の僕たちを見ているようで面白い。
シャルル兄様も、こんな気持ちで僕たちをいじめていたんだと思いながら兄様に微笑みかけ、今日も楽しい一日が始まる。
「じゃあ、兄様のやりたいことして遊ぼうよ。兄様は何がしたいの?」
「……湖に散策に行きたい」
「湖……?」
兄様から出た『湖』というフレーズに、首にかけていたペンダントを握りしめる。
一度目の時は、無くしてしまったペンダントを湖に捨てられ、僕は泣きながら湖に飛び込んだ。
冷たくて仄暗い湖の底に沈んだ、かけがえのない僕と父様の思い出。
そんな場所に行きたいなんて……やっぱりシャルル兄様は何も変わっていないんだな。
「いいよ。でも、今日はあまり天気も良くないから別の日に行こうよ。湖に向かうなら準備もしなくちゃね」
そう言って笑いかければ、兄様も顔を綻ばせる。
楽しい楽しい兄様とお出かけ。
しっかりと心に残る思い出を作ってあげないと。
そう思い、僕は笑みを深くした。
それから二日後。
兄様と共に、北のはずれにある湖へと向かう。
母様に兄様と出かけてくると言うと、お昼に食べてとランチボックスを手渡してくれる。
シャルル兄様に手を引かれ、湖へと辿り着くと美しい景色が広がる。
青々と芝生のように生えた草原の奥にコバルトブルーの大きな湖が見える。
「すごく綺麗だね、兄様……」
「そうだろ。とても綺麗は場所だから、リエンも気にいるかなと思ったんだ」
気恥ずかしそうに照れ笑いを見せる兄様。
その笑みが僕のペンダントを投げ捨てた時と重なり、引き攣りながら笑顔を向けた。
それから、兄様が湖の周りを案内してくれて母様の作ったランチボックスを開く。
僕の大好きなサンドイッチや果物、それに兄様の好きなパンも入っている。
二人で母様の用意してくれたサンドイッチを口にすると、兄様は水色の瞳を輝かせ顔を綻ばせる。
「リエン、美味しいな」
「うん、そうだね……」
食事中も楽しそうに学園の話をしたり学友との日常を話してくれる。
僕が学園にきたら自分が色々と案内すると言ってくる。
キラキラした笑顔を振りまく兄様。
生まれ変わったかのように、従順でいい子になった兄様。
けれど、その笑顔は本物なのだろうか?
僕は兄様に試練を与えることにした。
37
お気に入りに追加
7,540
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。