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【番外編】〜嫌われ者の兄はやり直しの義弟達の愛玩人形になる〜
家族ごっこ ③
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シャルル兄さんは一度目と変わらず、私たちを蔑むように見てくる。一緒に食事をとる時は、大きくため息を吐き、明らかに嫌そうな顔をしていた。
母はシャルル兄さんの態度を気にしながら、気を使い話しかけるが、もちろんシャルル兄さんは無視をする。
そして、チラリと私とリエンの様子を見てくる。
きっと、怯えているか確認しているのだろう。
私とリエンは、兄さんの考えとは逆にニコリと笑みを向ける。
シャルル兄さんは、私たちの微笑みを見て、目を開き驚いた顔をしていた。
なんとも可愛らしい表情に、笑みが深くなる。
———さぁ、兄さん。もっと、もっと、私たちを楽しませて下さい。
しかし、微笑む私たちに、兄さんは視線を合わせてくることはなかった。
それからも、私たちに罵倒する言葉をぶつけ、傲慢な態度を見せる兄さん。
怯えることも、怒ることもせず、何の反応も示さないまま静観し続ければ、シャルル兄さんの限界がきてしまったようだ。
昼食が終わり、部屋に帰ろうとした時、兄さんが私たちを呼び止める。
その声は怒りに満ちていて……私たちを追い出した時のようだった。
兄さんの自室へ連れられ、ドンと肩を強く押される。
「なぜお前たちが我が物顔で屋敷の中で過ごしているんだ。ここは、俺と父様の家だということが分かっているのか?」
兄さんは顔を真っ赤にして怒りを露わにする。
その様子に、リエンは口元を綻ばせ口を開く。
「シャルル兄様~僕たちはここにいちゃダメなんですか?」
「当たり前だ! お前たちみたいな者がいたら、ウォールマン侯爵家の名が落ちる」
一度目でウォールマン侯爵家の評判を地に落とした張本人が何を言っているんだと、笑いが込み上げるが我慢する。
兄さんと真っ直ぐに向き合い、冷静な口調で質問をする。
「……兄さんは、なぜ私たちを否定するのですか?」
「だ、だってお前たちは卑しい人間だ!」
キッと表情をつよくして、兄さんが睨みつける。
一度目ならばこの兄さんの表情に怯え何もいえなかったが……今は違う。
「卑しいとはどういう意味ですか? 運良く兄さんは侯爵家に産まれただけです。頭も普通、要領も悪い貴方が侯爵家に相応しいとお思いですか?」
「なっ! 貴様!」
私の胸ぐらを掴む兄さんは凄んでいるがまったく怖くはない。
「貴方がこうやって威張れるのは全て父上のおかげです。そうでなければ貴方など私たちと同じ……いやそれ以下の存在です」
真っ直ぐに目を見つめ、そう告げると兄さんは少し尻込みする。
「こうやって弱い者にしか威張ることができないなんて……シャルル兄さんは可哀想な人ですね。これから私とリエンが成長していけば貴方など必要ないと父上に捨てられるかもしれませんね……」
「父様はそんなことはしない!」
「そうでしょうか? こうやって私やリエンを虐げる人間が次期領主に相応しいと父上は考えるでしょうか? そんな人間が領民のことを想い尽くしていくとは到底考えられないですよね? では……父上はこのまま兄さんを愛してくれるんでしょうか? まぁ、それ以前に今も兄さんを愛しているかも分かりませんね……だって、私たちを選びこの屋敷に迎え入れたのは父上なのですから」
私の最後の言葉に、シャルル兄さんは顔を青くし小さく震える。
兄さんにとって、父は心の支えだ。
その人物が、自分を愛していない、捨てられるかもしれないと思えば困惑するのも仕方のないことだろう。
震える兄さんに近づき、下から覗き込み声をかけてあげる。
「シャルル兄さんは、本当に可哀想な人ですね。亡くなられたお母上の代わりと、自分の代わりを用意され、あとは追い出されるのを待つだけだなんて……」
「……そんなこと、父様はしない! 絶対にしない!」
「そうだといいですね、兄さん」
ニコリと微笑めば、兄さんは私のことを恐ろしいものを見るような目で見てくる。
あの時のように可愛らしい表情を見せる兄さんに、私の心はじわりと満たされていった。
母はシャルル兄さんの態度を気にしながら、気を使い話しかけるが、もちろんシャルル兄さんは無視をする。
そして、チラリと私とリエンの様子を見てくる。
きっと、怯えているか確認しているのだろう。
私とリエンは、兄さんの考えとは逆にニコリと笑みを向ける。
シャルル兄さんは、私たちの微笑みを見て、目を開き驚いた顔をしていた。
なんとも可愛らしい表情に、笑みが深くなる。
———さぁ、兄さん。もっと、もっと、私たちを楽しませて下さい。
しかし、微笑む私たちに、兄さんは視線を合わせてくることはなかった。
それからも、私たちに罵倒する言葉をぶつけ、傲慢な態度を見せる兄さん。
怯えることも、怒ることもせず、何の反応も示さないまま静観し続ければ、シャルル兄さんの限界がきてしまったようだ。
昼食が終わり、部屋に帰ろうとした時、兄さんが私たちを呼び止める。
その声は怒りに満ちていて……私たちを追い出した時のようだった。
兄さんの自室へ連れられ、ドンと肩を強く押される。
「なぜお前たちが我が物顔で屋敷の中で過ごしているんだ。ここは、俺と父様の家だということが分かっているのか?」
兄さんは顔を真っ赤にして怒りを露わにする。
その様子に、リエンは口元を綻ばせ口を開く。
「シャルル兄様~僕たちはここにいちゃダメなんですか?」
「当たり前だ! お前たちみたいな者がいたら、ウォールマン侯爵家の名が落ちる」
一度目でウォールマン侯爵家の評判を地に落とした張本人が何を言っているんだと、笑いが込み上げるが我慢する。
兄さんと真っ直ぐに向き合い、冷静な口調で質問をする。
「……兄さんは、なぜ私たちを否定するのですか?」
「だ、だってお前たちは卑しい人間だ!」
キッと表情をつよくして、兄さんが睨みつける。
一度目ならばこの兄さんの表情に怯え何もいえなかったが……今は違う。
「卑しいとはどういう意味ですか? 運良く兄さんは侯爵家に産まれただけです。頭も普通、要領も悪い貴方が侯爵家に相応しいとお思いですか?」
「なっ! 貴様!」
私の胸ぐらを掴む兄さんは凄んでいるがまったく怖くはない。
「貴方がこうやって威張れるのは全て父上のおかげです。そうでなければ貴方など私たちと同じ……いやそれ以下の存在です」
真っ直ぐに目を見つめ、そう告げると兄さんは少し尻込みする。
「こうやって弱い者にしか威張ることができないなんて……シャルル兄さんは可哀想な人ですね。これから私とリエンが成長していけば貴方など必要ないと父上に捨てられるかもしれませんね……」
「父様はそんなことはしない!」
「そうでしょうか? こうやって私やリエンを虐げる人間が次期領主に相応しいと父上は考えるでしょうか? そんな人間が領民のことを想い尽くしていくとは到底考えられないですよね? では……父上はこのまま兄さんを愛してくれるんでしょうか? まぁ、それ以前に今も兄さんを愛しているかも分かりませんね……だって、私たちを選びこの屋敷に迎え入れたのは父上なのですから」
私の最後の言葉に、シャルル兄さんは顔を青くし小さく震える。
兄さんにとって、父は心の支えだ。
その人物が、自分を愛していない、捨てられるかもしれないと思えば困惑するのも仕方のないことだろう。
震える兄さんに近づき、下から覗き込み声をかけてあげる。
「シャルル兄さんは、本当に可哀想な人ですね。亡くなられたお母上の代わりと、自分の代わりを用意され、あとは追い出されるのを待つだけだなんて……」
「……そんなこと、父様はしない! 絶対にしない!」
「そうだといいですね、兄さん」
ニコリと微笑めば、兄さんは私のことを恐ろしいものを見るような目で見てくる。
あの時のように可愛らしい表情を見せる兄さんに、私の心はじわりと満たされていった。
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