嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする

赤牙

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【番外編】二度目の人生番外編

隣国、ミャーム国編 ④

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———俺を前にすると感情が抑えられない?

マエル国王の言葉に、首をかしげているとノア王子が俺の手を握る。

「シャルル様、突然抱きついてしまい申し訳ありません」
「あ、いえ……お気になさらないで下さい」

水色の瞳を潤ませ謝ってくるノア王子。慌てて気にしないでと微笑むと、パッと顔が綻ぶ。
というか、ノア王子は俺の名前も知っているんだな。

「……本当に似ているな」

その言葉に再び首を傾げると、マエル国王は小さく息を吐き口を開く。

「今回、貴方を誕生祭に招待したのは、ノアの願いを叶えるためでした。貴方は私の亡き妻……レシスにとても似ているのです」
「……え?」

マエル国王の言葉に目を瞬かせると、ノア王子が近づいてくる。

「シャルル様は、母様にとてもよく似ています。煌めく水色の瞳に、優しい笑顔、それに綺麗なお顔も」

褒められると、なんだかゆず痒くて俺は少し恥ずかしくなる。

「一年前に母様が死んでから、僕の心の中は寂しさでいっぱいでした。でも、半年前にシャルル様の写真を見て驚きました。母様にとてもよく似た綺麗な人がいるんだって」

ノア王子は俺の手を握りしめ、強い眼差しで見つめる。

「シャルル様、一日だけでいいので一緒に過ごしてほしいのです。……僕の母様として」

ノア王子は真剣な顔をして、とんでもないことをお願いしてくる。

———俺が……王子のお母様!?

理解できずにマエル国王に視線を向ければ、俺に向かって頭を下げてくる。そして、ノア王子も。

「シャルル殿、無理な願いとは分かっている。だが、私の方からも……お願いしたい」
「あ、え、いや……そんな、お二人とも頭を上げて下さい」
「……シャルル様。やはり無理でしょうか?」
「そ、それは……」

はっきり言えば無理だ。母親なんて重役を俺ができるはずなどない。
けれど、国王と王子に頭を下げられお願いされて断れるはずなどなく……

「ノア王子のお母上の役目を私がつとめられる自信はありません。ですが、一緒に過ごすことはできます。それでもよろしいでしょうか……?」

俺ができる精一杯の提案をすれば、ノア王子は瞳を輝かせコクコクと大きく頷く。
そして、マエル国王も口元を綻ばせた。

「では、明日ノアと一緒にすごしてもらいたい」
「よろしくお願いします、シャルル様!」
「は、はい。よろしくお願いします」

頭を下げれば、ノア王子はニパッと笑顔を向けてくれる。
しかし、王子と一緒に一日を過ごすとなると、一体何をすればいいのだろうか?
王族の生活などあまり想像ができない……

「シャルル殿、もうすぐ宴が始まる時間だ。後ほど時間をいただきたいのだが……よろしいか?」
「はい、わかりました」
「シャルル様、またあとで会いましょうね」

ノア王子は満面の笑みを浮かべ、マエル国王のもとへ。二人が離れると、どこからともなく護衛の人々が現れ俺をパーティー会場へ連れ戻してくれる。
そして、会場へ戻れば心配そうな顔をしたジェイドとリエンを見つけた。

「ジェイド、リエン」
「兄様! もう、どこに行ってたの? 帰ってこないから心配してたんだよ」
「もしかして、迷子になっていたのですか?」
「えっとな……ちょっと、色々あってさ……」
「……色々?」

ジェイドの眉間の皺が深くなると同時に、大きな歓声が上がる。皆の視線の向く先を見ると、マエル国王とノア王子が会場へ。
先ほどの、穏やかな雰囲気とは違い二人は威厳に満ちたオーラを纏う。

「今日は我が息子ノアの誕生の日を祝うため集まってくれたことを感謝する」

マエル国王の挨拶が終わると、ノア王子が登壇する。先ほどの幼い雰囲気は消え、大人顔負けの凛々しい姿で挨拶を始める。

「今日、私の八歳の誕生日を、こんなにも沢山の人々に祝ってもらえることをとても感謝しています。この国の王子として皆の前に立つには、まだまだ学ばなければならない事が多くあります。ですが、今後我が国ミャーム国のよりよい発展に、この身を捧げ尽くしていきます」

八歳とは思えぬスピーチに来賓者は感嘆を吐き拍手を送る。俺も拍手を送れば、ノア王子が俺に気付きふわりと微笑み小さく手を振った。
思わず小さく振り返りすと、俺に突き刺さる人々の視線。そして、両隣にいたジェイドとリエンが近くに寄ってくる。

「兄様、なんでノア王子がシャルル兄様に手をふるの?」
「あ……いや、その……」
「王子と会われるのは初めてですよね?」
「そ、それがな……」

怪しいと感じた二人に問い詰められ、パーティーを楽しむどころではなくなる。
俺は二人の手をひき端へ移動すると、さっきの出来事を話す。
話し終えれば、ジェイドとリエンは二人して大きなため息を吐く。

「シャルル兄さんが亡くなられた王妃に似ている……ですか。では、今回兄さんが招待されたのは、ノア王子が王妃の代わりをつとめてほしくて招待したのですね」
「多分、そうみたいだな……」
「う~ん……。まぁ、ノア王子はまだいいとして、マエル国王の方が僕的には気になるかなぁ」
「ん? どうしてだ?」
「だって、亡くなった王妃に兄様は似ているんでしょ? もしかしたら、兄様のことを……」

リエンの言葉に思わず吹き出す。

「ハハ。さすがにそれはないって」
「……シャルル兄さん。笑いごとではないのですよ。兄さんは自分が思っている以上に魅力的なんです」
「そうだよ兄様。もしも、国王に気に入られてシャルル兄様が欲しいなんて言ってきたら……」
「……国王がそう言い出す前に、帰りましょう兄さん」

二人の雰囲気がどんどん恐ろしくなってくる。
だが、国王と話した感じではそんな様子もなかった。それに、ノア王子と約束もしてしまったしな……。

「大丈夫だよ。もし……もし本当に国王がそんな事を言ってきても、俺には一生を共にすると誓った相手がいますってコレ見せながら伝えるからさ」

左手の薬指にはめた指輪を二人に見せる。
俺の言葉に、険しい顔をしていた二人の表情も緩む。

「母親を亡くしたノア王子の小さな願いを叶えてやりたいんだ。けど、母親なんてどうしたらいいのか分からないんだけどなぁ……」
「まだ国王に対しては不安は残りますが、ノア王子の願いを叶えてはあげたいですね。兄さんをこちらに招待したということは、ノア王子はやりたいことがあるんだと思いますよ。話を聞いて上げて、望みを叶えてあげればいいと思います」
「うんうん。ソフィアとアルマンと一緒に過ごすって思えばいいんじゃないかな? 王子もまだ八歳と幼いから、きっと亡くなった母親に似た兄様に甘えたいんだよ」

二人の言葉に頷いていると、俺たちの世話をしてくれている執事長がやってくる。

「シャルル様。国王と王子がお呼びです。ジェイド様とリエン様にも是非ご挨拶がしたいと」
「はい、分かりました」

俺たちは執事長に連れられ、国王と王子のもとへと向かった。





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