嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする

赤牙

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【番外編】ジェイドとリエンのやり直し

シャルルの悩み ①

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「ハァ……」

教室に着くなり俺はカバンを乱雑に置き大きなため息をついて席に座る。

ジェイドの登校初日。
本当はいろんな場所を案内して、色々な事を教えてやる予定だった。
学園の先生の事や俺のお気に入りの場所……。
けれど、イザークが余計な事を言って全てが台無しだ。

「シャルル~。そんなに怒んなって。次は義弟とも仲良くするからさ~」
「うるさい。今はイザークとは話したくない」
「なんだよ……。あ、エレンが来た! おーい! エレンー!」

俺の素っ気ない態度にイザークは不貞腐れていると、エレンがやってきてそちらに走り出しいつものように揶揄い始める。
以前はエレンを揶揄うイザークの事なんて気にもとめなかったが、ジェイドとリエンがやってきてからは少しずつエレンの事が気になり始める。

イザークがエレンに対してとっている態度は、まるで少し前の自分のようで……見ていて胸が痛くなる。
それに、イザークに揶揄われエレンが見せる笑顔が、ジェイドが俺に罵声を浴びせられている時に見せていた笑顔とよく似ている……。
二人のやり取りを見ているのに耐えきれなくなった俺はイザークに声をかける。

「イザーク。なぁ、次の授業は別棟であるから早く行こう」

俺の言葉にイザークはパッと笑顔を見せてエレンの傍から離れ俺の方へとやってくる。
エレンはというと、長く伸びた前髪の間から少し驚いたような目で俺を見ていた……。







「なぁなぁ、シャルル。今日の授業の宿題やってきたか?」
「うん。やってきたけど……少し難しいところがあって解けない問題もあったな」
「それ最後の問題だろ? 俺、兄さんに教えてもらったんだ! 後で教えてやるよ」
「ありがとう、イザーク」

授業には少し早いが上級生のいる別棟へとイザークと一緒に移動している最中、イザークとたわいもない話をしていると前からイザークと良く似た赤髪の人物がやってくる。
イザークはその人物がこちらに近づいてくると、さっきまでニコニコしていた顔が緊張した表情へと変わる。

俺たちよりも頭二つ分大きな男性……。
イザークとよく似た赤髪は綺麗に整えられていて、鋭い視線と厳しい雰囲気に一瞬にして空気が張り詰める。

「イザーク。今から別棟で授業か?」
「はい……」

イザークの四つ年上の兄、マチアスさんはジロリとイザークへと視線を向ける。その視線に返事をしたイザークはさらに顔を強張らせる。
エスタリア家はとても厳格な家系で兄弟でも上下関係が厳しいと言っていた。いつもはお喋りなイザークもマチアスさんの前では大人しくなる。

「マチアスさん。おはようございます」
「あぁ、シャルルくん。おはよう」

俺が挨拶すればマチアスさんは少し雰囲気が和らぎ、優しく微笑んでくれる。

「シャルルくん。今度、我が家で夜会が開かれるんだが、そこにお父さんとシャルルくんを招待しようと思っているんだ。どうかな?」
「はい……。多分、参加できると思います。父さんにも伝えておきます」
「あぁ、よろしく頼むよ」

俺の頭をポンと撫でるとマチアスさんは教室の方へと行ってしまう。イザークはマチアスさんがいなくなったのを確認してから大きく息を吐き緊張していた顔も普通に戻る。

「シャルル! 今度の夜会来てくれるのか?」
「うん。招待状が届いたら多分参加することになると思うけど……」
「そっかぁ~。夜会楽しみだな!」
「そうだな……」

イザークは嬉しそうに夜会で何を着るか話しているが、俺はマチアスさんの言葉が引っかかっていた。
普通、夜会に行くなら父さんとも招待するはずなのに、マチアスさんの言い方ではフロル母さんを招待しないようにも聞こえた。

フロル母さんは元子爵だ……。
だから、フロル母さんは呼ばないということだろうか……。

もし、マチアスさんが言った通り招待状に俺と父さんの名前しか載っていなかったらフロル母さんはどんな気持ちになるだろうか……。

それを想像すると胸がズクリと鈍く痛む。
けど、俺もフロル母さん達が来た時には散々同じことを言ってしまった……それにジェイド達にはもっと酷いことも……。

そう考えるとイザークやマチアスさんと同じことを自分がしているようで、罪悪感で胸が押し潰されそうになった……。
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