47 / 98
【番外編】ジェイドとリエンのやり直し
シャルルの悩み ①
しおりを挟む
「ハァ……」
教室に着くなり俺はカバンを乱雑に置き大きなため息をついて席に座る。
ジェイドの登校初日。
本当はいろんな場所を案内して、色々な事を教えてやる予定だった。
学園の先生の事や俺のお気に入りの場所……。
けれど、イザークが余計な事を言って全てが台無しだ。
「シャルル~。そんなに怒んなって。次は義弟とも仲良くするからさ~」
「うるさい。今はイザークとは話したくない」
「なんだよ……。あ、エレンが来た! おーい! エレンー!」
俺の素っ気ない態度にイザークは不貞腐れていると、エレンがやってきてそちらに走り出しいつものように揶揄い始める。
以前はエレンを揶揄うイザークの事なんて気にもとめなかったが、ジェイドとリエンがやってきてからは少しずつエレンの事が気になり始める。
イザークがエレンに対してとっている態度は、まるで少し前の自分のようで……見ていて胸が痛くなる。
それに、イザークに揶揄われエレンが見せる笑顔が、ジェイドが俺に罵声を浴びせられている時に見せていた笑顔とよく似ている……。
二人のやり取りを見ているのに耐えきれなくなった俺はイザークに声をかける。
「イザーク。なぁ、次の授業は別棟であるから早く行こう」
俺の言葉にイザークはパッと笑顔を見せてエレンの傍から離れ俺の方へとやってくる。
エレンはというと、長く伸びた前髪の間から少し驚いたような目で俺を見ていた……。
「なぁなぁ、シャルル。今日の授業の宿題やってきたか?」
「うん。やってきたけど……少し難しいところがあって解けない問題もあったな」
「それ最後の問題だろ? 俺、兄さんに教えてもらったんだ! 後で教えてやるよ」
「ありがとう、イザーク」
授業には少し早いが上級生のいる別棟へとイザークと一緒に移動している最中、イザークとたわいもない話をしていると前からイザークと良く似た赤髪の人物がやってくる。
イザークはその人物がこちらに近づいてくると、さっきまでニコニコしていた顔が緊張した表情へと変わる。
俺たちよりも頭二つ分大きな男性……。
イザークとよく似た赤髪は綺麗に整えられていて、鋭い視線と厳しい雰囲気に一瞬にして空気が張り詰める。
「イザーク。今から別棟で授業か?」
「はい……」
イザークの四つ年上の兄、マチアスさんはジロリとイザークへと視線を向ける。その視線に返事をしたイザークはさらに顔を強張らせる。
エスタリア家はとても厳格な家系で兄弟でも上下関係が厳しいと言っていた。いつもはお喋りなイザークもマチアスさんの前では大人しくなる。
「マチアスさん。おはようございます」
「あぁ、シャルルくん。おはよう」
俺が挨拶すればマチアスさんは少し雰囲気が和らぎ、優しく微笑んでくれる。
「シャルルくん。今度、我が家で夜会が開かれるんだが、そこにお父さんとシャルルくんを招待しようと思っているんだ。どうかな?」
「はい……。多分、参加できると思います。父さんにも伝えておきます」
「あぁ、よろしく頼むよ」
俺の頭をポンと撫でるとマチアスさんは教室の方へと行ってしまう。イザークはマチアスさんがいなくなったのを確認してから大きく息を吐き緊張していた顔も普通に戻る。
「シャルル! 今度の夜会来てくれるのか?」
「うん。招待状が届いたら多分参加することになると思うけど……」
「そっかぁ~。夜会楽しみだな!」
「そうだな……」
イザークは嬉しそうに夜会で何を着るか話しているが、俺はマチアスさんの言葉が引っかかっていた。
普通、夜会に行くなら父さんと母さんも招待するはずなのに、マチアスさんの言い方ではフロル母さんを招待しないようにも聞こえた。
フロル母さんは元子爵だ……。
だから、フロル母さんは呼ばないということだろうか……。
もし、マチアスさんが言った通り招待状に俺と父さんの名前しか載っていなかったらフロル母さんはどんな気持ちになるだろうか……。
それを想像すると胸がズクリと鈍く痛む。
けど、俺もフロル母さん達が来た時には散々同じことを言ってしまった……それにジェイド達にはもっと酷いことも……。
そう考えるとイザークやマチアスさんと同じことを自分がしているようで、罪悪感で胸が押し潰されそうになった……。
教室に着くなり俺はカバンを乱雑に置き大きなため息をついて席に座る。
ジェイドの登校初日。
本当はいろんな場所を案内して、色々な事を教えてやる予定だった。
学園の先生の事や俺のお気に入りの場所……。
けれど、イザークが余計な事を言って全てが台無しだ。
「シャルル~。そんなに怒んなって。次は義弟とも仲良くするからさ~」
「うるさい。今はイザークとは話したくない」
「なんだよ……。あ、エレンが来た! おーい! エレンー!」
俺の素っ気ない態度にイザークは不貞腐れていると、エレンがやってきてそちらに走り出しいつものように揶揄い始める。
以前はエレンを揶揄うイザークの事なんて気にもとめなかったが、ジェイドとリエンがやってきてからは少しずつエレンの事が気になり始める。
イザークがエレンに対してとっている態度は、まるで少し前の自分のようで……見ていて胸が痛くなる。
それに、イザークに揶揄われエレンが見せる笑顔が、ジェイドが俺に罵声を浴びせられている時に見せていた笑顔とよく似ている……。
二人のやり取りを見ているのに耐えきれなくなった俺はイザークに声をかける。
「イザーク。なぁ、次の授業は別棟であるから早く行こう」
俺の言葉にイザークはパッと笑顔を見せてエレンの傍から離れ俺の方へとやってくる。
エレンはというと、長く伸びた前髪の間から少し驚いたような目で俺を見ていた……。
「なぁなぁ、シャルル。今日の授業の宿題やってきたか?」
「うん。やってきたけど……少し難しいところがあって解けない問題もあったな」
「それ最後の問題だろ? 俺、兄さんに教えてもらったんだ! 後で教えてやるよ」
「ありがとう、イザーク」
授業には少し早いが上級生のいる別棟へとイザークと一緒に移動している最中、イザークとたわいもない話をしていると前からイザークと良く似た赤髪の人物がやってくる。
イザークはその人物がこちらに近づいてくると、さっきまでニコニコしていた顔が緊張した表情へと変わる。
俺たちよりも頭二つ分大きな男性……。
イザークとよく似た赤髪は綺麗に整えられていて、鋭い視線と厳しい雰囲気に一瞬にして空気が張り詰める。
「イザーク。今から別棟で授業か?」
「はい……」
イザークの四つ年上の兄、マチアスさんはジロリとイザークへと視線を向ける。その視線に返事をしたイザークはさらに顔を強張らせる。
エスタリア家はとても厳格な家系で兄弟でも上下関係が厳しいと言っていた。いつもはお喋りなイザークもマチアスさんの前では大人しくなる。
「マチアスさん。おはようございます」
「あぁ、シャルルくん。おはよう」
俺が挨拶すればマチアスさんは少し雰囲気が和らぎ、優しく微笑んでくれる。
「シャルルくん。今度、我が家で夜会が開かれるんだが、そこにお父さんとシャルルくんを招待しようと思っているんだ。どうかな?」
「はい……。多分、参加できると思います。父さんにも伝えておきます」
「あぁ、よろしく頼むよ」
俺の頭をポンと撫でるとマチアスさんは教室の方へと行ってしまう。イザークはマチアスさんがいなくなったのを確認してから大きく息を吐き緊張していた顔も普通に戻る。
「シャルル! 今度の夜会来てくれるのか?」
「うん。招待状が届いたら多分参加することになると思うけど……」
「そっかぁ~。夜会楽しみだな!」
「そうだな……」
イザークは嬉しそうに夜会で何を着るか話しているが、俺はマチアスさんの言葉が引っかかっていた。
普通、夜会に行くなら父さんと母さんも招待するはずなのに、マチアスさんの言い方ではフロル母さんを招待しないようにも聞こえた。
フロル母さんは元子爵だ……。
だから、フロル母さんは呼ばないということだろうか……。
もし、マチアスさんが言った通り招待状に俺と父さんの名前しか載っていなかったらフロル母さんはどんな気持ちになるだろうか……。
それを想像すると胸がズクリと鈍く痛む。
けど、俺もフロル母さん達が来た時には散々同じことを言ってしまった……それにジェイド達にはもっと酷いことも……。
そう考えるとイザークやマチアスさんと同じことを自分がしているようで、罪悪感で胸が押し潰されそうになった……。
70
お気に入りに追加
7,540
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。