嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする

赤牙

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【番外編】ジェイドとリエンのやり直し

ジェイドとリエンのやり直しの人生 〜リエンSide〜

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「シャルル兄様~! 本読んで~」
「ん? 今日も読むのか? リエンは本が好きなんだな」
「うん! 大好きだよ~」

シャルル兄様が僕達に心を開いてくれてから三ヶ月が経ち、僕達は以前のような穏やかな日々を過ごしている。

『兄としてジェイドとリエンを守る』と約束してくれた兄様は、その日から人が変わった。
声を掛ければ挨拶してくれるし、目も合わせてくれる。
少しずつ少しずつ距離を縮めていき今では本まで読んでくれるようになった。

学園から帰ってきたばかりのシャルル兄様に本を手渡せば「リエンにしては珍しい本を持ってきたなぁ」と、言いながら兄様は本を読み始める。

兄様が言った通り、今日の本は僕にしては珍しく絵本を選んできた。
呪いで化け物にかわってしまった王子様をお姫様の真実の愛で呪いを解いてあげる女の子向けの絵本だ。
シャルル兄様はスラスラと絵本を読んでいき、ハッピーエンドで絵本のお話は終わる。

「こうして王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ……。おしまい。面白かったかリエン?」
「うん! すっごく面白かったよ。ねぇ、シャルル兄様……真実の愛って何?」
「真実の愛かぁ……なんなんだろうな。俺にはまだ分からないよ」

少し照れ臭そうな表情を浮かべる兄様の初々しい反応を見たところ……恋愛に関しての経験は少なそうだな……。
ここはもう少し深く話を掘り下げてもいいかもしれないな……。

僕は末っ子モード全開で上目遣いしながらシャルル兄様を見つめ話しかける。

「じゃあね……シャルル兄様は好きな子とか……いないの?」
「好きな子かぁ………いないかな」

よしっっ!!

僕は心の中でガッツポーズをしながら「そうなんだ~」とニマニマしながら返事を返す。



シャルル兄様との絵本タイムが終われば、ジェイド兄様の部屋へと足早に向かい今日の結果を報告する。

「ジェイド兄様! シャルル兄様に好きな子いなかったよ!」
「!! そうか……とりあえず一安心だな」

ジェイド兄様は心底安心した表情を浮かべ、ノートを開きメモをとる。


この世界に転生した時はシャルル兄様との関係修復に大忙しだったが関係が改善された今、今度はシャルル兄様の現状把握に追われている。
好みや趣味などは以前のシャルル兄様と近い物が好きなのだろうが、現在のシャルル兄様の交友関係や恋愛事情などはさっぱり分からない。

ジェイド兄様いわく『二度目の人生』の時のシャルル兄様は、僕達との関係性を重視してくれていたので学園が終ればすぐに僕やジェイド兄様の元に来てくれていたのだけれど……今のシャルル兄様は少し違う。

友達と遊びに行く事も多くて、ちょっぴり……いや、かなり寂しい!
本当はもっと一緒にいたいけど、我儘言ったら嫌われちゃいそうなので今はシャルル兄様の様子を伺いながらひっついている。


「はぁ……。未来に何が起こるか分かっていても、どうしたらいいのか分からないねぇ……」
「そうだな……。何が起こるか分かっているからこそ、恐ろしく感じる事もあるしな……」

ジェイド兄様はメモをとったノートを見つめ、ため息を吐く。
僕達の記憶を絞り出してこれから何が起こるのか書き起こしたのだが、なかなかの数にどう対処していくか悩ましい……。
というか、色々と状況が変わった今、本当にここに書き出された事が起きるのだろうか?

「今年、起きるのは……使用人に虐められて怖くなった僕が物置に逃げ隠れたところをシャルル兄様が助けに来てくれるやつかぁ~」
「あぁ……これか。お前は今も虐められているのか?」
「ん? まぁ、僕が一人の時にはネチネチ言ってくるけど、あんまり気にしてないかなぁ~。本当にウザくなったら父様に泣きついて解雇させるつもりだからさぁ~」
「そうか……。その時は私も加勢してやるからな」
「ハハ。ジェイド兄様まで加わったらアイツらの方が泣いちゃいそうだよ」

僕が使用人から何かいわれていると聞いたジェイド兄様は8歳児らしからぬ恐ろしい表情を一瞬見せる。

「まぁ、今のリエンが物置に逃げ隠れする事もないだろからこの事件は起こらないだろうな」
「えぇ~。また、シャルル兄様に助けてもらいたかったのにぃ~。こうなったら、自主的に物置に隠れたら……シャルル兄様が見つけに来てくれるかな?」
「どうだろうな……。まず、シャルル兄さんがリエンがいない事に気付くかどうかすら怪しいが……」
「酷~い! シャルル兄様なら絶対気付いてくれるって~」

頬を膨らまし反論する僕を見てジェイド兄様はクスクスと笑みを溢す。

逆行転生した当初の緊張感も薄まり、シャルル兄様との関係性も良好になった事で僕達はこれからの人生も以前のように上手く行くと油断してしまう……。

そんな僕達は後日、一度目の人生の強制力を思い知らされるのだった……。


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