嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする

赤牙

文字の大きさ
上 下
41 / 98
【番外編】ジェイドとリエンのやり直し

俺の義弟達 ③

しおりを挟む
ジェイドとリエンと仲直りをした晩に部屋の扉をノックする音と父さんの声が聞こえてくる。
部屋の扉を開け父さんの顔を見上げれば、落ち込んだ顔をしていた。

「シャルル……少し話せるか?」
「……はい」

頬を打たれた後で、なんだか気まずいが父さんを部屋へと入れる。父さんがソファーへと腰掛けると俺に隣に座ってほしいのか手招きされる。
また叱られるんじゃないかと少し緊張しながら父さんの隣に座れば、眉を下げ申し訳なさそうな表情を浮かべたまま父さんが俺に謝ってきた……。

「シャルル。今日は叩いてしまいすまない……」
「大丈夫です、父さん……。あれは俺が悪い事をしたので、打たれても仕方のない事でした……」
「だが……お前をそこまでさせてしまったのは、私にも責任がある……。シャルル、すまない……」
「えっ………」

父さんが謝ってくる意味が分からなくて呆然としてしまうと、父さんはそのまま謝罪を続けてくる……。

「私がお前に何も言わずに再婚を決めてしまったのがそもそもの原因だ……。お前が寂しがらないようにと思っていたが、実際にはお前に孤独感を背負わせてしまった……。私がシャルルとちゃんと向き合っていればこんな事にはならなかったんだ……本当にすまない」

父さんは謝罪の言葉を並べて頭を下げてくる。
そんな姿を見せられたら……俺はどうしたらいいんだ……

「父さん……ずるいよ……。今になってそんな事を言ってきて……」
「シャルル……」
「俺は父さんだけがいてくれれば……それだけでよかったんだ! 死んだ母さんの代わりなんてこの世にはいない! だから父さんだけでよかったのに……。なのに……なんで俺に何も言わずに家族を作るんだ……。父さんは俺なんて本当は……いらないんだろ……?」
「違う! シャルルは私の大切な息子だ……。だから……そんな事を言わないでくれ……」

父さんは俺の言葉にショックを受けたのか、顔をくしゃりと歪めたまま抱きしめてくる。怒りで目頭が熱くなっていき、抱きしめられた腕から抜け出そうとするが父さんは強く抱きしめたまま俺を離そうとしない。

「シャルル……本当にすまない……」
「嫌いだ……。父さんなんて……大嫌いだぁ……」

父さんの胸に顔を埋め涙を流しながら何度も何度も嫌いだと呟く……。
父さんはそんな俺の言葉を受け止め「すまない……」と言い抱きしめ続けてくれた……。


しばらくすると父さんの腕が緩み、顔を上げれば不安定に揺れる父さんの瞳と目が合う。
威厳に満ちたいつもの表情と違い、一人の父親として俺とどう接したらいいのか分からず不安気な表情を浮かべる父さんを見ていると、怒りでいっぱいだった気持ちが少し落ち着く……。

「シャルル……。私はお前の事を知ったつもりでいたが……何も知らなかった。母さんにお前の事を任せきりで仕事ばかりして……。もっとシャルルと過ごす時間を取らなければいけなかったのに……」
「うん……。俺はもっと父さんと一緒に過ごしたかった……。こうやって色んな話をして……俺の気持ちを知ってもらいたい」
「分かったよ、シャルル……。これからはちゃんとシャルルと向き合う。二人で沢山話をして……決してシャルルを一人にはしない……」
「うん……。父さん……約束だよ……」
「あぁ、約束だ……」

再び父さんの腕に抱きしめられ俺はそっと父さんの大きな胸に顔を埋める。ジェイドとは違う安心感に体を預け、その晩は父さんと色んな話をして夜を過ごした……。





俺にとって長い一日が終わり、また変わらぬ朝を迎える。
……いや、色々と変わった朝なのかもしれない。

あんなに憂鬱だったダイニングへの道のりも、今は憂鬱さは減った。どちらかと言えば……皆と顔を合わせるのが恥ずかしい。
特に、ジェイドとリエンとは……。

ダイニングの扉をの前に立てば、皆の声が聞こえてくる。
以前は鬱陶しく感じた声に何故か安心感を覚え、扉を開ければ皆の視線が俺に集まる。

「シャルル兄さん。おはようございます」
「兄様~! おはよう~」
「シャルルくん。おはよう」
「おはよう。シャルル」

皆は俺に微笑みかけ声をかけてくれて……ずっと見ないようにしていた皆の笑顔に胸が締め付けられてしまう……。

俺はこの笑顔をずっと否定し続けていたんだな……。

自分の今までの行動を振り返れば、反省する事ばかりだ……。寂しさを理由に何でもしていいと思っていた頃は本当に最低だった。
でも、これからは違う。
俺は父さんの自慢の息子になって……ジェイドとリエンの兄になるんだから……。


「おはよう」

挨拶だけでもなんだか照れ臭く感じ、それを隠すように笑顔を見せるとジェイドとリエンが目を丸くしてこちらに駆け寄ってくる。
勢いよく走ってくるから思わず受け止めると二人して俺に抱きつき嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、それを見ていた父さんとフロル母さんも笑顔を見せる。

あぁ……こうやって皆と家族になっていくのか……。

腕の中では小さな二つの温もりを感じ、ずっと満たされなかった心の中がじんわりと優しさに包まれ……俺は本当の家族の意味を知るのだった。
しおりを挟む
感想 506

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。