32 / 98
連載
双子の一度目の人生 ④〜アルマンSide〜
しおりを挟む
「あぁ……お帰りリエン。ほら見てくれよ。シャルル兄さんの代わりがやってきてくれたんだ。アルマンとソフィアだよ。今日から二人は私達の家族だ」
「……ジェイド兄様、もう~何を冗談言ってるの。応接間にお客さんが来ててずっと兄様を待ってたよ」
「……そうか。アルマン、ソフィアすまないが私は仕事をしてくるよ。いい子で待っているんだよ」
『リエン』と呼ばれた男性から声をかけられたジェイド様は僕の頭を撫で部屋を出て行く。
バタン……と、扉が閉まったと同時に緊張の糸が切れた僕はヘタリと床に座り込んでしまう。
怖かった。
ジェイド様のあの目は普通じゃない……。
座り込む僕をソフィアは泣きながら抱きしめ、恐怖で震える手で僕はソフィアの腕をギュッと握りしめる。
「ねぇ……、君達……何者なの?」
座り込む僕達を覆う黒い影と酷く不機嫌な声に僕達はビクンっと肩を揺らす。
視線を合わせるのが怖くて俯いたまま返事をしようとするが上手く声が出ない……。
「返事もできないの? せっかく君達を兄様から逃がしてあげようと思ってるのに」
助けて、くれる……?
その言葉に恐る恐る顔を上げれば、怪しげに輝くジェイド様と同じアメジストの瞳と目が合う。
「うわぁ……。似すぎでしょこれ……。こりゃジェイド兄様が執着するはずだねぇ……」
リエン様はさらにグイッと僕達に近づくとマジマジと顔を見てくる。
「気に食わない顔と……瞳の色……。泣き顔までもそっくりか……。せっかく本人がいなくなったのに……君達がいたらジェイド兄様がまた僕を見なくなるじゃないか……」
リエン様はブツブツと愚痴をこぼしながら最後に大きなため息をつく。
「ほら。君達はどうするの? 家に帰るの? それとも……このままシャルル兄様の代わりをするの?」
リエン様の言葉に僕とソフィアは必死に顔を横にふる。
「お家に……帰り……たいです……」
ソフィアが涙をポロポロと溢しながらそう答えればリエン様はフッ…と口元を綻ばせる。
「ふふ。いい子だね……。僕も君達に残られると困るから帰りたいと言ってくれて嬉しいよ……。さぁ、ジェイド兄様に捕まる前に逃げ出さないと君達は永遠にこの屋敷から出れなくなるよ~」
楽しいゲームでも始まるようにリエン様はニコニコと笑みを浮かべながら僕達にそう告げる。
僕とソフィアはどうにか立ち上がると、手を繋ぎ逃げるように部屋から出て行った……。
どこまでも続くんじゃないかと思う広いお屋敷の長い廊下を二人で小走りで走っていく……。
いつまで経っても辿り着かない出口……。
混乱した僕達にとってこの広いお屋敷は出口のない迷路のように感じた。
リエン様は僕達の後ろをついてきたがお屋敷の中を彷徨う僕達を助けてくれるわけでもなく……迷い困惑する僕達の姿を面白そうに見ていた。
ようやく玄関を見つけた時には安心感で思わず涙が出そうになる。でも、こんなところで泣いてる場合じゃない。
早く孤児院に帰りたい。
シスターや皆のところに……。
扉を開ければ眩しいくらいの夕陽の光。
そして、空一面綺麗な茜色の空が見える。
お屋敷の外へと一歩足を踏み出した時リエン様が僕達に声をかけてくる。
「アルマン、ソフィア。もうここに来ちゃダメだよ。君達は僕達の家にはいらない。ジェイド兄様の家族は僕だけで十分なんだからね……」
ヒラヒラと手を振りながら僕達に笑顔を向けるリエン様の顔は、夕陽に照らされ不気味さを増していた……。
それから僕とソフィアは振り返る事なく必死に孤児院を目指す。
教会が見え……孤児院へと辿り着けばシスターや孤児院の皆が玄関に集まっていた。
そして、僕とソフィアを見るなりシスターは顔をくしゃりと歪め僕達の方に向かってくる。
「もう! どこに行っていたの! 二人がいなくなったって聞いて……心配したのよ!」
シスターは怒っていたが……今はそんな事はどうでもよくて、僕とソフィアはシスターに飛びつくように抱きつく。
「アルマン? ソフィア? どうしたの……?」
「ひぐっ……しすたぁ……ごめんなさい……」
「………ごめん……なさい」
泣きじゃくるソフィアの横で僕もシスターの服に顔を埋めて泣き顔を隠す。
さっきまで怒っていたシスターは僕達の異変に気づいたようで頭を撫でながら優しく声をかけてくれる。
孤児院の皆も僕達を心配するように「大丈夫か?」と、声をかけてくれた。
皆の優しさに包まれると少しずつ安心する……。恐怖でいっぱいだった胸の中はじんわりと温かくなっていった。
きっと……僕とソフィアが求めていた『家族』という存在はこれなんだと今になって気付く。
あの人達は……僕達の家族なんかじゃない……。
血の繋がった父さんやジェイド様、リエン様の顔が浮かび上がると胸がギュッと締め付けられ、また恐怖が襲う。
僕にはソフィアがいる……シスターや孤児院の皆がいる……。
シスターの温かい胸に抱きしめられた僕とソフィアは、それから二度と『家族』を求める事はなかった。
~アルマンSide End~
「……ジェイド兄様、もう~何を冗談言ってるの。応接間にお客さんが来ててずっと兄様を待ってたよ」
「……そうか。アルマン、ソフィアすまないが私は仕事をしてくるよ。いい子で待っているんだよ」
『リエン』と呼ばれた男性から声をかけられたジェイド様は僕の頭を撫で部屋を出て行く。
バタン……と、扉が閉まったと同時に緊張の糸が切れた僕はヘタリと床に座り込んでしまう。
怖かった。
ジェイド様のあの目は普通じゃない……。
座り込む僕をソフィアは泣きながら抱きしめ、恐怖で震える手で僕はソフィアの腕をギュッと握りしめる。
「ねぇ……、君達……何者なの?」
座り込む僕達を覆う黒い影と酷く不機嫌な声に僕達はビクンっと肩を揺らす。
視線を合わせるのが怖くて俯いたまま返事をしようとするが上手く声が出ない……。
「返事もできないの? せっかく君達を兄様から逃がしてあげようと思ってるのに」
助けて、くれる……?
その言葉に恐る恐る顔を上げれば、怪しげに輝くジェイド様と同じアメジストの瞳と目が合う。
「うわぁ……。似すぎでしょこれ……。こりゃジェイド兄様が執着するはずだねぇ……」
リエン様はさらにグイッと僕達に近づくとマジマジと顔を見てくる。
「気に食わない顔と……瞳の色……。泣き顔までもそっくりか……。せっかく本人がいなくなったのに……君達がいたらジェイド兄様がまた僕を見なくなるじゃないか……」
リエン様はブツブツと愚痴をこぼしながら最後に大きなため息をつく。
「ほら。君達はどうするの? 家に帰るの? それとも……このままシャルル兄様の代わりをするの?」
リエン様の言葉に僕とソフィアは必死に顔を横にふる。
「お家に……帰り……たいです……」
ソフィアが涙をポロポロと溢しながらそう答えればリエン様はフッ…と口元を綻ばせる。
「ふふ。いい子だね……。僕も君達に残られると困るから帰りたいと言ってくれて嬉しいよ……。さぁ、ジェイド兄様に捕まる前に逃げ出さないと君達は永遠にこの屋敷から出れなくなるよ~」
楽しいゲームでも始まるようにリエン様はニコニコと笑みを浮かべながら僕達にそう告げる。
僕とソフィアはどうにか立ち上がると、手を繋ぎ逃げるように部屋から出て行った……。
どこまでも続くんじゃないかと思う広いお屋敷の長い廊下を二人で小走りで走っていく……。
いつまで経っても辿り着かない出口……。
混乱した僕達にとってこの広いお屋敷は出口のない迷路のように感じた。
リエン様は僕達の後ろをついてきたがお屋敷の中を彷徨う僕達を助けてくれるわけでもなく……迷い困惑する僕達の姿を面白そうに見ていた。
ようやく玄関を見つけた時には安心感で思わず涙が出そうになる。でも、こんなところで泣いてる場合じゃない。
早く孤児院に帰りたい。
シスターや皆のところに……。
扉を開ければ眩しいくらいの夕陽の光。
そして、空一面綺麗な茜色の空が見える。
お屋敷の外へと一歩足を踏み出した時リエン様が僕達に声をかけてくる。
「アルマン、ソフィア。もうここに来ちゃダメだよ。君達は僕達の家にはいらない。ジェイド兄様の家族は僕だけで十分なんだからね……」
ヒラヒラと手を振りながら僕達に笑顔を向けるリエン様の顔は、夕陽に照らされ不気味さを増していた……。
それから僕とソフィアは振り返る事なく必死に孤児院を目指す。
教会が見え……孤児院へと辿り着けばシスターや孤児院の皆が玄関に集まっていた。
そして、僕とソフィアを見るなりシスターは顔をくしゃりと歪め僕達の方に向かってくる。
「もう! どこに行っていたの! 二人がいなくなったって聞いて……心配したのよ!」
シスターは怒っていたが……今はそんな事はどうでもよくて、僕とソフィアはシスターに飛びつくように抱きつく。
「アルマン? ソフィア? どうしたの……?」
「ひぐっ……しすたぁ……ごめんなさい……」
「………ごめん……なさい」
泣きじゃくるソフィアの横で僕もシスターの服に顔を埋めて泣き顔を隠す。
さっきまで怒っていたシスターは僕達の異変に気づいたようで頭を撫でながら優しく声をかけてくれる。
孤児院の皆も僕達を心配するように「大丈夫か?」と、声をかけてくれた。
皆の優しさに包まれると少しずつ安心する……。恐怖でいっぱいだった胸の中はじんわりと温かくなっていった。
きっと……僕とソフィアが求めていた『家族』という存在はこれなんだと今になって気付く。
あの人達は……僕達の家族なんかじゃない……。
血の繋がった父さんやジェイド様、リエン様の顔が浮かび上がると胸がギュッと締め付けられ、また恐怖が襲う。
僕にはソフィアがいる……シスターや孤児院の皆がいる……。
シスターの温かい胸に抱きしめられた僕とソフィアは、それから二度と『家族』を求める事はなかった。
~アルマンSide End~
31
お気に入りに追加
7,509
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。