嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする

赤牙

文字の大きさ
上 下
29 / 98
連載

双子の一度目の人生 ①〜アルマンSide〜

しおりを挟む
「アルマン。ソフィア。六歳の誕生日おめでとう」
「「「おめでとー!」」」

僕とソフィアは、シスターと孤児院の皆に囲まれて沢山のお祝いの言葉をかけられながら小さな花束と手紙を受け取る。
孤児院の周りに生えている草花も綺麗に束ねられれば立派な花束に姿を変えていた。

「うわぁ……。みんなありがとう!」
「ありがとう~!」

僕とソフィアが笑みを溢せば、シスターや孤児院の友達も嬉しそうに笑顔を向けてくれる。
教会の隣にある小さな孤児院には僕達も含めて15人の子ども達がいる。
下は0歳児から上は十四歳まで……。
みんな様々な理由でこの孤児院に辿り着いた。
僕とソフィアは産まれた時からずっとこの孤児院で育ちここが僕達の『家』でもある。
裕福な生活はできないけれど、僕達は皆と一緒にいられるだけで幸せだった。
皆が僕達の『家族』だから……。





誕生日を祝ってもらってから数日後。
いつものようにソフィアと一緒に食事の準備に取り掛かる。食事の準備は当番制でまだ料理が上手く作れない僕達はお使いや下準備を中心に手伝っていた。

「あっれ~。今日使う予定のジャガイモと玉ねぎが足りない。ねぇアルマン、ソフィア。シスターに貯蔵庫から何個かもらってきてもいいか聞いてきて~」
「「わかったー!」」

僕とソフィアはシスターの元へ急いで向かう。
今の時間帯なら、シスターは教会にいるはず。
隣にある教会へ向かい長い廊下を進んで行けばシスターの部屋が見える。
そして、部屋の前まで来ていつものようにドアをノックして部屋へと入ろうとした時だった……


「なんだと! 俺はあの子たちの父親なんだぞ!」

男性の怒声が聞こえノックしようとした手は止まる。
僕とソフィアはその男性の怒鳴り声に固まってしまう。

「何度来られてもあの子達を渡すことはできません」

そして、聞いたことのないシスターの酷く冷めた声が聞こえれば、部屋の中にいるシスターと男性の関係性が嫌でも分かる。

「ソフィア、また後で来ようか……」
「うん……」

孤児院で生活している子供は僕達のように親がいない者だけではない。
親に捨てられた者、虐待されていた者、人には言えない理由を抱える子もいた。
シスターの元には時折孤児院の子供を引き取りたいと言ってくる親や親族が来ることがあると聞く。
きっと今シスターに会いに来た人も誰かの親なのだろう。

二人の会話を聞いてはいけない気がして部屋の前から去ろうとした時……男性は自分の子どもの名前を呟く。

「えぇーっと……アルミンとソフィーだったか……」
「アルマンとソフィアです」
「あぁそうそう。名前なんてどーだっていいんだ。とりあえずあの二人は俺の子だ。つまり俺のモノってことだろう? 俺にはあの子達が必要なんだと何度言ったら分かるんだ」

……俺の、子……?
今呼ばれたのは僕とソフィアの名前……?

聞こえてきた名前に僕とソフィアは顔を見合わせる。
シスターから両親の話を聞いた時、母さんは俺達を産んで半年後に亡くなり父さんは何処の誰なのか分からないと聞かされていた。

じゃあ、今部屋にいる人は一体誰……?
僕、達の……父さん……?

ドアの前から立ち去ろうとした足を止め、僕とソフィアはそのまま部屋の中にいる二人の話の続きを聞く。

「ライルさん。子供は『モノ』ではありません。その考えが変わらない限り貴方に二人を渡すことはありません」
「あぁ? 子は親のモノだろう。二人と血の繋がった親が現れたんだから、血も繋がらないあんたの役目は終わったも同然だろ?」
「それでもです。とにかく今の貴方には親としての資格などありません。どうぞお帰りを……」
「ハァァ………まぁいい。また来るからな」

呆然と二人の会話を聞いていた僕達はドアの方へ近づく不機嫌な足音に気付かずに、バンッ!とドアが開かれた瞬間出てきた男性と目が合う。
派手な服に身を包んだその男性は僕達を見ると嫌そうな顔を浮かべる。

「チッ、薄汚ねーガキだな……」

僕達を映し出す水色の瞳は蔑むような目をしていた……。

僕達の父さんと名乗る男性の背中が消えるまで僕とソフィアはその場所から動く事ができず、姿が消えるとやっと息ができるようになる。

ソフィアは嗚咽混じりの声を上げ目には溢れんばかりの涙を浮かべていた。
僕はソフィアの手をぎゅっと、握りしめシスターの部屋のドアを震える手でノックした……。
しおりを挟む
感想 506

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。