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【番外編】ダンジョン ⑧
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ーー頭が痛い。
目を覚ました時、感じたのは頭痛と体の怠さだった。
全身筋肉痛で、体を動かすたびに筋肉が悲鳴をあげていた。
俺が意識を取り戻した時、ノルンから怒涛の質問責めにあう。
自分の名が言えるか、ここはどこか、日付けは……と、意識障害のテストでも受けている気分になる。
全てを正確に答えると、最後にもう一つ問いかけられる。
「私が誰だか分かりますか?」
「え? ノルンさんですけど……」
「本当に?」
「……ほん、とうです」
何を確認したかったのか分からないが、俺の答えにノルンは満足したのか、いつものようにキスをくれた。
◇
それから、数日間はミハルやイーザム爺さんにも毎日のように瞳孔を見られたり見当識を確認する質問をされたりした。
俺がまともかどうか確認する理由については、ダンジョン攻略の際に魔物の毒に侵されたためだと説明される。
ガリウスさんたちが調査した結果、あの触手はダンジョンの主で幻覚作用のある毒を使い魔物たちを飼い慣らしていたのだとか。
縄張り意識の高い魔物たちが、あんな狭い場所で住むように暮らしていることを考えると納得がいった。
そして、俺もその一員になりかけたようだ。
ダンジョンだった洞窟はその後の調査で、魔物たちがいなくなったのを確認。
ノルンが俺を助けるために倒した魔物が、ダンジョンを守っておりダンジョンコアも一緒に破壊したのだろうと結論付けられた。
治療小屋で、ランドルやキアルの傷の具合を確かめダンジョンの話をしていると、呑気な声でランドルがキアルに問いかける。
「でも、なんで毒で幻覚見させて魔物を集めてたんだろな~」
「さぁ、ダンジョンを守るために集めてたんじゃないか?」
「でもさ、それだと変じゃん。俺たちがダンジョンに入ってきたの分かってたんだから、守るために飼ってた魔物を解き放てばよかったのに、魔物にはあんまり出会わなかったんだぞ」
「確かに、そうだな」
キアルの索敵魔法を使っていたとはいえ、ダンジョンの主がその気になれば毒で洗脳された魔物たちに一斉に襲われてもおかしくはない。
だが、魔物たちはそれぞれの場所でとどまっていた。
「なんか変だよな~。……もしかして、ダンジョンの主は寂しくて魔物を集めてたとか?」
「そんなわけないだろ」
ランドルの言葉に皆で笑うが、ふとおぼろげな記憶が甦る。
洞窟内でノルンといちゃこらしていた時、俺の頭の中にまで感じた孤独感。
『寂しい……一緒にいて……』と、ずっと懇願されているような気がして……
「あ! アンジェロ様、そういえば依頼されたものができましたよ」
ランドルの言葉にハッとして視線を向けると、手にはピンポン玉サイズの長細い黒曜石が握られていた。
黒曜石はネットで包み込んだように麻紐で結ばれ、小ぶりなペンダントになっている。
「ありがとう、ランドルさん」
「いえいえ」
ランドルからそのペンダントを受け取ると、首にかける。
ペンダントにしてもらった石は、俺がダンジョンから助けられた時に握りしめていたそうだ。
ノルンからは、捨てましょうかと言われたが捨てちゃダメな気がしてずっと持っていた。
それを見ていたランドルが気を利かせて、無くさないようにとペンダントにしてくれた。
ランドルに礼を言っていると、イーザム爺さんが大声で俺の名を呼んでいる。
今日もまた忙しい一日が始まるなと気合いを入れて外へ向かう。
日の光を浴びた黒曜石はキラリと光を放ち俺の胸元で輝く。
なんだか可愛らしく感じて指先で軽く撫でると、黒曜石はまた光を放ったのだった。
【New】
アンジェロ・ベルシュタイ
持ち物:ダンジョンコア
称号 【ダンジョンの主人】
ーーーーーー
番外編読んでいただきありがとうございました☆
また、ちびちびと番外編を書いていきたいと思います!
そして、告知になりますが6/12ついに悪役令息ビッチの刊行日です~!!
楽しんでいただける一冊になったのではないかと思います。気になった方は試し読みもありますので、覗いてみてください!
あと、キャラ紹介のイラストが本っっっ当に最高なので是非!
枯れ専の私は、イーザム爺さんに胸を鷲掴みされて推しに推してますw
目を覚ました時、感じたのは頭痛と体の怠さだった。
全身筋肉痛で、体を動かすたびに筋肉が悲鳴をあげていた。
俺が意識を取り戻した時、ノルンから怒涛の質問責めにあう。
自分の名が言えるか、ここはどこか、日付けは……と、意識障害のテストでも受けている気分になる。
全てを正確に答えると、最後にもう一つ問いかけられる。
「私が誰だか分かりますか?」
「え? ノルンさんですけど……」
「本当に?」
「……ほん、とうです」
何を確認したかったのか分からないが、俺の答えにノルンは満足したのか、いつものようにキスをくれた。
◇
それから、数日間はミハルやイーザム爺さんにも毎日のように瞳孔を見られたり見当識を確認する質問をされたりした。
俺がまともかどうか確認する理由については、ダンジョン攻略の際に魔物の毒に侵されたためだと説明される。
ガリウスさんたちが調査した結果、あの触手はダンジョンの主で幻覚作用のある毒を使い魔物たちを飼い慣らしていたのだとか。
縄張り意識の高い魔物たちが、あんな狭い場所で住むように暮らしていることを考えると納得がいった。
そして、俺もその一員になりかけたようだ。
ダンジョンだった洞窟はその後の調査で、魔物たちがいなくなったのを確認。
ノルンが俺を助けるために倒した魔物が、ダンジョンを守っておりダンジョンコアも一緒に破壊したのだろうと結論付けられた。
治療小屋で、ランドルやキアルの傷の具合を確かめダンジョンの話をしていると、呑気な声でランドルがキアルに問いかける。
「でも、なんで毒で幻覚見させて魔物を集めてたんだろな~」
「さぁ、ダンジョンを守るために集めてたんじゃないか?」
「でもさ、それだと変じゃん。俺たちがダンジョンに入ってきたの分かってたんだから、守るために飼ってた魔物を解き放てばよかったのに、魔物にはあんまり出会わなかったんだぞ」
「確かに、そうだな」
キアルの索敵魔法を使っていたとはいえ、ダンジョンの主がその気になれば毒で洗脳された魔物たちに一斉に襲われてもおかしくはない。
だが、魔物たちはそれぞれの場所でとどまっていた。
「なんか変だよな~。……もしかして、ダンジョンの主は寂しくて魔物を集めてたとか?」
「そんなわけないだろ」
ランドルの言葉に皆で笑うが、ふとおぼろげな記憶が甦る。
洞窟内でノルンといちゃこらしていた時、俺の頭の中にまで感じた孤独感。
『寂しい……一緒にいて……』と、ずっと懇願されているような気がして……
「あ! アンジェロ様、そういえば依頼されたものができましたよ」
ランドルの言葉にハッとして視線を向けると、手にはピンポン玉サイズの長細い黒曜石が握られていた。
黒曜石はネットで包み込んだように麻紐で結ばれ、小ぶりなペンダントになっている。
「ありがとう、ランドルさん」
「いえいえ」
ランドルからそのペンダントを受け取ると、首にかける。
ペンダントにしてもらった石は、俺がダンジョンから助けられた時に握りしめていたそうだ。
ノルンからは、捨てましょうかと言われたが捨てちゃダメな気がしてずっと持っていた。
それを見ていたランドルが気を利かせて、無くさないようにとペンダントにしてくれた。
ランドルに礼を言っていると、イーザム爺さんが大声で俺の名を呼んでいる。
今日もまた忙しい一日が始まるなと気合いを入れて外へ向かう。
日の光を浴びた黒曜石はキラリと光を放ち俺の胸元で輝く。
なんだか可愛らしく感じて指先で軽く撫でると、黒曜石はまた光を放ったのだった。
【New】
アンジェロ・ベルシュタイ
持ち物:ダンジョンコア
称号 【ダンジョンの主人】
ーーーーーー
番外編読んでいただきありがとうございました☆
また、ちびちびと番外編を書いていきたいと思います!
そして、告知になりますが6/12ついに悪役令息ビッチの刊行日です~!!
楽しんでいただける一冊になったのではないかと思います。気になった方は試し読みもありますので、覗いてみてください!
あと、キャラ紹介のイラストが本っっっ当に最高なので是非!
枯れ専の私は、イーザム爺さんに胸を鷲掴みされて推しに推してますw
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