【完結】 禍の子

赤牙

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22話 Sideジン

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 美しい人は『エクラ』と名乗り、俺の事を色々と聞いてくる。そして、初めに目があった人は『ゲイル』と名乗り、俺のことをじっと観察してきた。
 二人は俺を引き取るといい、世話をしてくれた。
 大きな風呂にいれてくれて、綺麗な着物、そして、温かな食事と寝床を与えてくれた。

 この国の一番偉い人の呪いから出てきた不吉な存在のはずの俺を、二人は大事にしてくれる。
 生まれてから人に優しくしてもらったことなどなかった俺にとって、二人は初めて俺に優しさを教えてくれた人だった。

 エクラ様はたえず微笑みを向けてくれ、俺の心をいつも温めてくれる。
 ゲイル様は、常に俺のそばにいてくれた。何もできない何も分からない俺に文字を教えてくれ、この世界の知識を与えてくれた。
 厳しくも優しいゲイル様は……俺にとって兄のような存在だった。
 それから、俺はゲイル様の従者としてお二人のもとで過ごすようになった。
 大好きな二人のために働くのは楽しくもあり、とても誇らしかった。

 

 そして、この世界に来てから六年が経ち、俺はすっかりこの世界の生活に慣れてしまった。
 仕事も一人前にこなせるようになり、今では胸を張ってゲイル様の隣に立てるようになった。
 ゲイル様は常に忙しく、多忙な方だった。
 ゲイル様は、呪いを取り込める特殊な体質だった。
 人の怨念を取り込むなんて考えただけでも恐ろしいが、ゲイル様は人々のために毎日その身を犠牲にしていた。
 それなのに、人によってはゲイル様を『呪い』だなんて言い、避ける者もいた。
 俺はそんなことを言う奴らが許せなかった。

 人の呪いを取り込んだ日のゲイル様は、顔色が悪くなるのだが、本人は普段と変わらぬ様子で過ごすため気付く者はあまりいない。
 毎日ゲイル様を見ている俺は、その変化に気づくと疲れがとれるように、リラックスできるお茶を用意したり、マッサージをしたりしてゲイル様を労う。
 入浴後には、気持ちが穏やかになれる香油を使って、ゲイル様の綺麗な長い髪をとかす。

「ゲイル様の髪はいつ見ても綺麗ですね」
「そうか?」
「はい。髪の毛はずっと伸ばされているのですか?」
「あぁ、幼い頃は、髪を切りたいと言えなくてな……。それから、ずっと伸ばしているんだ」

 ゲイル様は養子として教皇様のところにやってきたと聞いていた。きっと、幼い頃はもっと辛い思いをしていたと考えると心が痛くなった。
 ゲイル様が俺を助け幸せにしてくれたように、俺もゲイル様を幸せにしたい、そう強く思った。






 
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