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17話
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エクラのいる礼拝堂へ到着すると、エクラは膝を折り神に祈りを捧げていた。
白で統一された教会の中で、光に包まれエクラの神々しさは増すばかりだ。
見慣れた光景。
私は、いつもその光景を見ては劣等感と嫌悪感を抱いていた。
誰にも言えない感情を押し殺して、ずっとエクラの義兄をやってきた。
素直で優しくて美しい全てが完璧なエクラ。
……そんな、エクラとも今日でさよならだ。
「エクラ」
名を呼ぶと、祈りを終えたエクラがこちらに振り向く。
「ゲイル兄さん。何か御用ですか?」
優しく微笑むエクラに近寄る。
「少し話がしたくてな……。今、時間はあるか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「なぁ、エクラはジンとはどういう関係なんだい?」
私からと突然の質問に、エクラは珍しく慌てる。
「えっ!? ぼ、僕とジンは親友で……」
「親友同士が体に痕を付けあうのかい?」
「あ……それは……」
私の質問に恥ずかしそうに俯くと、少し間をあけて真剣な顔つきに変わる。
「……僕とジンは恋人同士です」
『恋人』
その言葉に胸の中の憎悪が大きくうねる。
「そうか……。だが、どうしてジンを恋人に? エクラにはもっと相応しい相手がいるんじゃないか?」
「そんなことはありません。ジンは僕にとって無くてはならない大切な存在です。相応しいか相応しくないかなんて、関係ありません」
エクラは堂々とした態度でジンをどれだけ想っているか語る。言葉を聞けば聞くほどに、体の中の呪い達が騒ぎ立てる。
「しかし、父上に関係を知られればジンから離されるんじゃないか? お前は父上にとって大切な後継者だ。そして、教会の光とも言える。……ジンを諦めるつもりはないか?」
エクラは真っ直ぐ私を見つめ首を横に振る。
「僕はジンと離れるつもりはありません。例え、周りから引き裂かれようと、必ずジンを守りずっと一緒にいます」
眩しいエクラの言葉に、私の影がより一層濃くなる。
「なぁエクラ。以前、人は何故呪いを生み出すのか分からないと言ってたじゃないか……」
「えぇ、そんな話もした事がありましたね」
「私もエクラと同じことをずっと考えていたんだ。自分の体や記憶を失ってまで人に呪いをかけ、死に至らしめ魔物にしたいなんて……馬鹿げているとずっと思っていたんだ……」
「…………ゲイル兄さん? 一体どうしたんですか?」
エクラは私がおかしくなってしまったのではないかと心配そうに見つめてくる。
私はエクラの方へと一歩ずつ近づいていく。
「呪いを喰らうたびに『この人はどんな人生を送り、怨みをかったのだろうか』と、ずっと考えて考えて……やっと答えが出たんだ」
「…………。」
話の意図が分からぬエクラは、呆然と私を見上げる。
「エクラ、私はずっとお前が羨ましかった。人々から愛され必要とされるお前が……。お前には愛してくれる者が沢山いる。なのに、何故ジンを選ぶんだ? ……ジンは私にとって太陽だ。私を明るく照らし包み込んでくれる存在……。私だけのモノだった……」
「ゲイル……兄さん……」
「それなのに……お前がジンを私から奪い……汚した」
溢れ出した憎しみの感情が私を包む。負の感情をぶつけられ硬直したエクラの目の前に立ち、両頬に手を添える。
「ジンは……私のものだ」
そして、私はエクラに口付けをして……呪いを流し込んだ。
白で統一された教会の中で、光に包まれエクラの神々しさは増すばかりだ。
見慣れた光景。
私は、いつもその光景を見ては劣等感と嫌悪感を抱いていた。
誰にも言えない感情を押し殺して、ずっとエクラの義兄をやってきた。
素直で優しくて美しい全てが完璧なエクラ。
……そんな、エクラとも今日でさよならだ。
「エクラ」
名を呼ぶと、祈りを終えたエクラがこちらに振り向く。
「ゲイル兄さん。何か御用ですか?」
優しく微笑むエクラに近寄る。
「少し話がしたくてな……。今、時間はあるか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「なぁ、エクラはジンとはどういう関係なんだい?」
私からと突然の質問に、エクラは珍しく慌てる。
「えっ!? ぼ、僕とジンは親友で……」
「親友同士が体に痕を付けあうのかい?」
「あ……それは……」
私の質問に恥ずかしそうに俯くと、少し間をあけて真剣な顔つきに変わる。
「……僕とジンは恋人同士です」
『恋人』
その言葉に胸の中の憎悪が大きくうねる。
「そうか……。だが、どうしてジンを恋人に? エクラにはもっと相応しい相手がいるんじゃないか?」
「そんなことはありません。ジンは僕にとって無くてはならない大切な存在です。相応しいか相応しくないかなんて、関係ありません」
エクラは堂々とした態度でジンをどれだけ想っているか語る。言葉を聞けば聞くほどに、体の中の呪い達が騒ぎ立てる。
「しかし、父上に関係を知られればジンから離されるんじゃないか? お前は父上にとって大切な後継者だ。そして、教会の光とも言える。……ジンを諦めるつもりはないか?」
エクラは真っ直ぐ私を見つめ首を横に振る。
「僕はジンと離れるつもりはありません。例え、周りから引き裂かれようと、必ずジンを守りずっと一緒にいます」
眩しいエクラの言葉に、私の影がより一層濃くなる。
「なぁエクラ。以前、人は何故呪いを生み出すのか分からないと言ってたじゃないか……」
「えぇ、そんな話もした事がありましたね」
「私もエクラと同じことをずっと考えていたんだ。自分の体や記憶を失ってまで人に呪いをかけ、死に至らしめ魔物にしたいなんて……馬鹿げているとずっと思っていたんだ……」
「…………ゲイル兄さん? 一体どうしたんですか?」
エクラは私がおかしくなってしまったのではないかと心配そうに見つめてくる。
私はエクラの方へと一歩ずつ近づいていく。
「呪いを喰らうたびに『この人はどんな人生を送り、怨みをかったのだろうか』と、ずっと考えて考えて……やっと答えが出たんだ」
「…………。」
話の意図が分からぬエクラは、呆然と私を見上げる。
「エクラ、私はずっとお前が羨ましかった。人々から愛され必要とされるお前が……。お前には愛してくれる者が沢山いる。なのに、何故ジンを選ぶんだ? ……ジンは私にとって太陽だ。私を明るく照らし包み込んでくれる存在……。私だけのモノだった……」
「ゲイル……兄さん……」
「それなのに……お前がジンを私から奪い……汚した」
溢れ出した憎しみの感情が私を包む。負の感情をぶつけられ硬直したエクラの目の前に立ち、両頬に手を添える。
「ジンは……私のものだ」
そして、私はエクラに口付けをして……呪いを流し込んだ。
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