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7話
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エクラは何故かジンの事を気に入っているようだったが、私は呪いの中から出てきたジンの事を信用できずにいた。
本当は大きな災いをもたらす悪魔のような存在で、エクラも魅了したのではないか……。
そんな事を考えながら、まずはジンを綺麗にしなくてはと思い風呂へと連れていく。
ジンの体はお世辞にも綺麗とは言えず、少し匂いもした。呪いとはいえ、近くに置いておくのならば綺麗にしておきたい……。
そう思い着替えを持って風呂場へと向かう。
着替えは身長さがある私の服では大きすぎる為、同じ背丈のエクラが服を用意してくれた。
ジンの身に纏っていた服はとても特殊で、大きな一枚の布でできた羽織ものと細長い布を腰で巻いたものだった。着ていた服は何度も修繕した後が見え、ジンはあまり裕福な生活を送っていなかったのではないかと感じた。
ジンが着ていた服と同じようなものはなく、エクラの服を見せれば少し戸惑っていた。着方を教えると伝えれば、ジンはありがとうございますと頭を下げる。
悪魔も感謝するのか……。と、思いながらジンの服を脱がせ……私は絶句した。
服の下に隠された体は想像していたよりも痩せ細り、骨と皮のみだった。そして……体には至る所に傷跡が残っていた。
見るからに幼い少年は一体どんな罪を背負って、こんな傷をつけられたのだろうか……。
理由を知らずにはいられなくなった私はジンに問いかける。
「……この傷はどうしたんだ?」
「仕事が上手く出来なかった時に打たれる時があるんです。俺が要領悪いから……」
固まる私を見て、ジンは「汚い体ですみません」と、何故か謝ってくる。
村の為に死ねと言われ、仕事ができないからと鞭を打たれ体を傷つけられる。
その話が本当ならば、ジンの住む世界の住人は悪魔そのものなのかもしれないと感じた。
浴室に入ったジンは、風呂を見るなり驚き目を輝かせる。シャワーを使った時には「なぜお湯がこんなところから……」と、目を白黒させていた。
シャンプーを使ったこともなく、洗い方を教えながらジンのきしんだ黒髪を洗ってやる。シャンプーや石鹸の香りにジンは頬を緩め「いい香りですね」と笑みを浮かべていた。
風呂が終わり、エクラの服を着せればいくらかマシになる。そして、風呂から上がったタイミングで、エクラが食事を手に部屋へと入ってきた。
「兄さん、ジン、食事をもってきたよ」
「ありがとう、エクラ」
「あ、ありがとうございます……エクラ様」
ジンが頭を下げれば、エクラは目尻を下げる。
「頭を下げられることなんてしてないから気にしないで。さぁ、ご飯を食べよう!」
今日の食事はスープとパンにサラダ。そして、牛肉のステーキだった。エクラがテーブルに食事を並べている間、ジンは瞳をまん丸にして食事を見つめいた。
「さぁ、食べよう」
「は、はい!」
皆で食事をはじめるが、ジンは座ったまま食事に手をつけず私たちのことをじっと見つめる。
「ジン、どうしたの?」
「あの……すみません。俺……こんな食事初めてで……どうやって食べればいいのか分からなくて….」
「どうやってって……。いつものように食べればいいんだよ?」
「いつものように……」
ジンはそういわれ、スープの碗を手にとると、そのまま口にする。マナーなど気にせず、スープを飲み干したジンは満面の笑みを浮かべる。
「とても……とても美味しいです」
瞳を輝かせる微笑むジンに対して、エクラはニッコリと顔を綻ばせる。
「ジンの口にあってよかった。さぁ、他のご飯も食べて食べて」
「他のご飯も……」
ジンはエクラの言葉に苦笑いを浮かべる。
あんなに美味しそうに食べていたので、喜んで他の食事も口にすると思っていたが……本当は口にあわなかったのだろうか?
「……無理して食べなくてもいいが、ここの食事が口にあわないのならばそう言ってもらいたい。ジンの好みの食事を用意してもらうから」
「まずいとか、そんなんじゃないんです……。もう、腹いっぱいで食べきれなくて……」
申し訳なさそうに、腹をさすりながら苦笑いを浮かべるジン。
何故ジンがあんなにも痩せ細っていた理由を知った私は、悪魔だと思っていたジンに対して同情の気持ちが湧いてしまった。
本当は大きな災いをもたらす悪魔のような存在で、エクラも魅了したのではないか……。
そんな事を考えながら、まずはジンを綺麗にしなくてはと思い風呂へと連れていく。
ジンの体はお世辞にも綺麗とは言えず、少し匂いもした。呪いとはいえ、近くに置いておくのならば綺麗にしておきたい……。
そう思い着替えを持って風呂場へと向かう。
着替えは身長さがある私の服では大きすぎる為、同じ背丈のエクラが服を用意してくれた。
ジンの身に纏っていた服はとても特殊で、大きな一枚の布でできた羽織ものと細長い布を腰で巻いたものだった。着ていた服は何度も修繕した後が見え、ジンはあまり裕福な生活を送っていなかったのではないかと感じた。
ジンが着ていた服と同じようなものはなく、エクラの服を見せれば少し戸惑っていた。着方を教えると伝えれば、ジンはありがとうございますと頭を下げる。
悪魔も感謝するのか……。と、思いながらジンの服を脱がせ……私は絶句した。
服の下に隠された体は想像していたよりも痩せ細り、骨と皮のみだった。そして……体には至る所に傷跡が残っていた。
見るからに幼い少年は一体どんな罪を背負って、こんな傷をつけられたのだろうか……。
理由を知らずにはいられなくなった私はジンに問いかける。
「……この傷はどうしたんだ?」
「仕事が上手く出来なかった時に打たれる時があるんです。俺が要領悪いから……」
固まる私を見て、ジンは「汚い体ですみません」と、何故か謝ってくる。
村の為に死ねと言われ、仕事ができないからと鞭を打たれ体を傷つけられる。
その話が本当ならば、ジンの住む世界の住人は悪魔そのものなのかもしれないと感じた。
浴室に入ったジンは、風呂を見るなり驚き目を輝かせる。シャワーを使った時には「なぜお湯がこんなところから……」と、目を白黒させていた。
シャンプーを使ったこともなく、洗い方を教えながらジンのきしんだ黒髪を洗ってやる。シャンプーや石鹸の香りにジンは頬を緩め「いい香りですね」と笑みを浮かべていた。
風呂が終わり、エクラの服を着せればいくらかマシになる。そして、風呂から上がったタイミングで、エクラが食事を手に部屋へと入ってきた。
「兄さん、ジン、食事をもってきたよ」
「ありがとう、エクラ」
「あ、ありがとうございます……エクラ様」
ジンが頭を下げれば、エクラは目尻を下げる。
「頭を下げられることなんてしてないから気にしないで。さぁ、ご飯を食べよう!」
今日の食事はスープとパンにサラダ。そして、牛肉のステーキだった。エクラがテーブルに食事を並べている間、ジンは瞳をまん丸にして食事を見つめいた。
「さぁ、食べよう」
「は、はい!」
皆で食事をはじめるが、ジンは座ったまま食事に手をつけず私たちのことをじっと見つめる。
「ジン、どうしたの?」
「あの……すみません。俺……こんな食事初めてで……どうやって食べればいいのか分からなくて….」
「どうやってって……。いつものように食べればいいんだよ?」
「いつものように……」
ジンはそういわれ、スープの碗を手にとると、そのまま口にする。マナーなど気にせず、スープを飲み干したジンは満面の笑みを浮かべる。
「とても……とても美味しいです」
瞳を輝かせる微笑むジンに対して、エクラはニッコリと顔を綻ばせる。
「ジンの口にあってよかった。さぁ、他のご飯も食べて食べて」
「他のご飯も……」
ジンはエクラの言葉に苦笑いを浮かべる。
あんなに美味しそうに食べていたので、喜んで他の食事も口にすると思っていたが……本当は口にあわなかったのだろうか?
「……無理して食べなくてもいいが、ここの食事が口にあわないのならばそう言ってもらいたい。ジンの好みの食事を用意してもらうから」
「まずいとか、そんなんじゃないんです……。もう、腹いっぱいで食べきれなくて……」
申し訳なさそうに、腹をさすりながら苦笑いを浮かべるジン。
何故ジンがあんなにも痩せ細っていた理由を知った私は、悪魔だと思っていたジンに対して同情の気持ちが湧いてしまった。
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