5 / 31
5話
しおりを挟む
国王が去った後、私の腕の中で眠る少年をどうするかで教皇様と司祭で数時間に渡る話し合いが行われた。
その間、私は教会の結界の中から出る事を許されず、呪いから生まれた少年とエクラと共に結論が出るのを待った。エクラは結界の外側からじっと私達の様子を伺っている。
「ゲイル兄さん。その子は生きてるの?」
「息もしているし、体も温かいから生きていると思う」
「僕達とよく似てるけど、人間なのかな? それとも、違う生き物なのかな?」
「どうだろう。見た目は人間だけどな……」
腕の中で深い眠りにつく少年は小さな寝息をたてている。
不揃いに切られた黒髪……痩せこけた頬……。もしも、呪いによって現れた悪魔的な何かであれば、こんな容姿をしているだろうか?
少年を見つめていると、閉ざされていた扉が開き教皇様を先頭に司祭達も入ってくる。そして、祓い師の姿もあった。
教皇様はこちらに視線を向けると、祓い師に声をかける。
「あそこにいる少年が例の呪いだ」
「ほぅ、あれが国王の呪いから産まれた子ですか。……しかし、呪い特有のオーラもなく、私にはただの人にしか見えませんね。まぁ、厄災といわれるレベルなので、私たちの常識では考えられない力も持っているかもしれないので……不安要素はすぐにでも排除すべきかと」
祓い師の言葉に教皇様は眉をひそめる。
「エクラ。私が席をはずしている間、ゲイルと呪いに何か変わったことはなかったか?」
「特に何もありませんでした」
「そうか……。そうなると、ソレの処分をどうするべきか……」
……処分。
教皇様の口から出た『処分』という言葉。それは、この子の『死』を意味する。
私の腕の中で眠る少年が死んでしまうと考えると……ゾッとした。
周りにいた教皇様を含める大人達が少年の処分方法について話し合っていると、エクラが口を開く。
「父様。僕があの子に浄化魔法をかけてもいいでしょうか?」
「……何を言っているんだエクラ」
「あの子が災いをもたらす呪いならば、浄化魔法に反応を見せると思います。もし……呪いでもないただの子どもを処分するのであれば、それは教会の教えに背くことになると思うのですが」
エクラは真っ直ぐに教皇様を見つめる。
エクラの言葉はもっともだ。この少年が、本当に呪いそのものならば浄化魔法になんらかの反応を示すはずだ。
エクラの言葉に教皇様は小さくため息を吐き、結界の一部を解除する。
「そうまで言うのならば証明してきなさい」
「はい、父様」
エクラは私たちのいる結界内に入ると、笑顔を向けこちらにやってくる。
「ゲイル兄さん、その子の顔を見せてくれる?」
「あぁ……」
抱きかかえていた少年をエクラに見せやすいように見せる。エクラは少年の顔を見て微笑むと、手のひらをかざし浄化を始める。
煌めく白銀のオーラが少年と私を包み込む。エクラの浄化魔法は今や国一番だ。エクラで払うことのできない呪いならば、本当にこの国を滅ぼしてしまうかもしれないな……。
そんな事を考えながら少年を見つめる。少年は浄化魔法をかけられても、顔色一つ変えずに深い眠りについたままだった。
そして、数十分にわたる浄化魔法が終わると、エクラは少年をまじまじと見つめ教皇様の方を振り返る。
「父様、やはりこの少年は呪いではありません」
「……ならば、お前はソレをなんと考える」
「そうですね……。僕にはこの少年がただの人に感じます」
エクラの答えに教皇様は渋い顔をして、私へと視線を向ける。
「ゲイルはどう考える」
「……この少年は……人、だと思います」
歯切れの悪い私の答えに、教皇様の眉間のシワは濃くなる。司祭や教皇様たちが話し合った結果は、国王の命に準ずることとなる。
つまり、私がこの少年を面倒みることとなったのだ。
その間、私は教会の結界の中から出る事を許されず、呪いから生まれた少年とエクラと共に結論が出るのを待った。エクラは結界の外側からじっと私達の様子を伺っている。
「ゲイル兄さん。その子は生きてるの?」
「息もしているし、体も温かいから生きていると思う」
「僕達とよく似てるけど、人間なのかな? それとも、違う生き物なのかな?」
「どうだろう。見た目は人間だけどな……」
腕の中で深い眠りにつく少年は小さな寝息をたてている。
不揃いに切られた黒髪……痩せこけた頬……。もしも、呪いによって現れた悪魔的な何かであれば、こんな容姿をしているだろうか?
少年を見つめていると、閉ざされていた扉が開き教皇様を先頭に司祭達も入ってくる。そして、祓い師の姿もあった。
教皇様はこちらに視線を向けると、祓い師に声をかける。
「あそこにいる少年が例の呪いだ」
「ほぅ、あれが国王の呪いから産まれた子ですか。……しかし、呪い特有のオーラもなく、私にはただの人にしか見えませんね。まぁ、厄災といわれるレベルなので、私たちの常識では考えられない力も持っているかもしれないので……不安要素はすぐにでも排除すべきかと」
祓い師の言葉に教皇様は眉をひそめる。
「エクラ。私が席をはずしている間、ゲイルと呪いに何か変わったことはなかったか?」
「特に何もありませんでした」
「そうか……。そうなると、ソレの処分をどうするべきか……」
……処分。
教皇様の口から出た『処分』という言葉。それは、この子の『死』を意味する。
私の腕の中で眠る少年が死んでしまうと考えると……ゾッとした。
周りにいた教皇様を含める大人達が少年の処分方法について話し合っていると、エクラが口を開く。
「父様。僕があの子に浄化魔法をかけてもいいでしょうか?」
「……何を言っているんだエクラ」
「あの子が災いをもたらす呪いならば、浄化魔法に反応を見せると思います。もし……呪いでもないただの子どもを処分するのであれば、それは教会の教えに背くことになると思うのですが」
エクラは真っ直ぐに教皇様を見つめる。
エクラの言葉はもっともだ。この少年が、本当に呪いそのものならば浄化魔法になんらかの反応を示すはずだ。
エクラの言葉に教皇様は小さくため息を吐き、結界の一部を解除する。
「そうまで言うのならば証明してきなさい」
「はい、父様」
エクラは私たちのいる結界内に入ると、笑顔を向けこちらにやってくる。
「ゲイル兄さん、その子の顔を見せてくれる?」
「あぁ……」
抱きかかえていた少年をエクラに見せやすいように見せる。エクラは少年の顔を見て微笑むと、手のひらをかざし浄化を始める。
煌めく白銀のオーラが少年と私を包み込む。エクラの浄化魔法は今や国一番だ。エクラで払うことのできない呪いならば、本当にこの国を滅ぼしてしまうかもしれないな……。
そんな事を考えながら少年を見つめる。少年は浄化魔法をかけられても、顔色一つ変えずに深い眠りについたままだった。
そして、数十分にわたる浄化魔法が終わると、エクラは少年をまじまじと見つめ教皇様の方を振り返る。
「父様、やはりこの少年は呪いではありません」
「……ならば、お前はソレをなんと考える」
「そうですね……。僕にはこの少年がただの人に感じます」
エクラの答えに教皇様は渋い顔をして、私へと視線を向ける。
「ゲイルはどう考える」
「……この少年は……人、だと思います」
歯切れの悪い私の答えに、教皇様の眉間のシワは濃くなる。司祭や教皇様たちが話し合った結果は、国王の命に準ずることとなる。
つまり、私がこの少年を面倒みることとなったのだ。
10
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
処女姫Ωと帝の初夜
切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。
七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。
幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・
『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。
歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。
フツーの日本語で書いています。
男前生徒会長は非処女になりたい。
瀬野みなみ
BL
王道全寮制男子校に、季節外れの転校生がやってきた。
俺様で男前な生徒会長は、周りの生徒会役員にボイコットされ、精神的にも体力的にもボロボロ……
そんな彼には、好きな人がいて……
R18/平凡攻め/結腸責め/メスイキ
※がついてる話はエロシーン含みます。
自サイト→http://nanos.jp/color04/
twitter→@seno_1998(裏話や細かい設定をボソボソ)
表紙は ソラ様(https://www.pixiv.net/member.php?id=454210)よりお借りしました。
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
僕の知ってるお兄ちゃんはこんなえっちな事しない!
沼田桃弥
BL
【ざっくり内容紹介】
終始えっち、イケメンリーマン兄×お兄ちゃん大好きな弟、溺愛、らぶえっち、ブラコン、ネクタイ拘束
【詳細なあらすじ】
お母さんが再婚して、僕に出来た初めてのお兄ちゃん。二十八歳で僕と十歳違い。僕よりも背が高くて、何でも出来て、スーツがとっても似合う男女問わず、モテモテな自慢のお兄ちゃん。すらっとした体型に茶髪で、いつもギュッとすると甘いムスクの香水の香りがした。
今日は、僕が遅くに帰ってくると、玄関で大好きなお兄ちゃんが待っていた。今日はお母さんが帰って来ないんだって! まさか、二人きり!?
でも、なんだかお兄ちゃんの元気が無さそう……だから、僕は膝枕をしてあげた!お兄ちゃんの柔らかい髪、綺麗な顔……見ているだけでドキドキする!
え? お兄ちゃん、なんだか様子がおかしい? え、嘘でしょ? 今、お兄ちゃんのお仕置きが始める――。
◆この作品は「小説家になろう」にも同タイトルで掲載しています
彼氏持ち大学生がストーカー犯に遭遇して人生終わる話
むぎ
BL
ストーカー被害にあってるけどまあいっか〜心配させたくないから彼氏にも黙っとこ〜とナメかかってた少年がストーカー犯に押しかけられてぶち犯されて果てには誘拐される話です。
これって普通じゃないの?~お隣の双子のお兄ちゃんと僕の関係~
syouki
BL
お隣の5歳上のお兄ちゃんたちと兄弟のように育ってきた僕の日常。
えっ?これって普通じゃないの?
※3Pが苦手な方は閉じてください。
※下書きなしなので、更新に間があきます。なるべくがんばります。。。(土日は無理かも)
※ストックが出来たら予約公開します。目指せ毎日!!
※書きながらかなりエロくなりました…。脳内ヤバいですwww
※エールをしてくれた方、ありがとうございますm(_ _)m
真夜中の秘め事
弥生
BL
夜の9時には眠くなってしまい、朝まで起きることがない少年。
眠った後に何が起きているかは、部屋の隅の姿見の鏡だけが知っていて……?
透明な何かに犯されるだけのどすけべなお話です。倫理観はありません。ご注意ください。
R18です。
屈強冒険者のおっさんが自分に執着する美形名門貴族との結婚を反対してもらうために直訴する話
信号六
BL
屈強な冒険者が一夜の遊びのつもりでひっかけた美形青年に執着され追い回されます。どうしても逃げ切りたい屈強冒険者が助けを求めたのは……?
美形名門貴族青年×屈強男性受け。
以前Twitterで呟いた話の短編小説版です。
(ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる