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番外編:片想い勇者の恋の行方
勇者と魔王のお留守番 ⑦
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魔王とのお留守番も早いもので3日が経った。
今日は魔族の集会日……。ミシェルさんは無事に到着しただろうか…?
ミシェルさんが出発してから魔王は毎日のように俺に血を求めてくる。
嫌な顔をすれば帰ってきたミシェルさんの血をたらふく喰らうと脅してくるので嫌々ながらも魔王に首を差し出す。
ミシェルさんは毎日こんな苦労をしていたのかと思うと何もしていなかった自分に嫌気がさす。
けれど……流石に3日も連続で魔王に血を与えると体が少し怠く感じる。
今日くらいは理由を話し魔王にも我慢してもらわないと……
そう考えながら僕は毎朝の日課の稽古を始める。
しばらくすると、いつの間にかやってきた魔王が退屈そうな顔をして僕の稽古を見ていた。
「ヨルダ~。退屈だぞ~。私の相手をしろ~」
「……お前もいい大人なんだから退屈ならば自分でやる事見つけろ。僕よりもかなり歳上のくせに……」
「ぬぅぅ……魔王としては私はまだまだ若い方なんだぞ! それにしても毎日毎日飽きもせず稽古とは……。何故鍛える必要があるんだ?」
キョトンと不思議そうな顔を見せる魔王に稽古の邪魔をされ少し苛立っていた僕は軽く睨みつける。
「……いつかお前を倒す日がくるかもしれないからな」
「何その顔! こわっ! そんな事言って私に意地悪したらミシェルに嫌われるぞ!」
「———ッッ! いつもミシェルさんを盾にしやがって……お前は自分で戦うつもりはないのか!」
「ふん! そんな事したら腹が減るだけだろ! いいのか? 私がお前と本気で戦えば……一度だけでは決着はつかないだろうな。その時、私は自分を回復する為にミシェルを喰らわなくてはならない。ダメージによっては……ミシェルが死んでしまうかもしれないぞ?」
「っっ!! そんな事……絶対にさせない!」
下唇を噛みさらに睨みつけると魔王は「ヒッ……」と体をビクつかせるが、何もしてこない僕を見ていつもの我儘魔王へと戻る。
「ふ、ふん……。ならば私を倒そうなど考えるな。それよりもヨルダ。腹が減ったぞ」
「………昨日喰ったばかりだろ」
「それでも腹が減ったんだ! お前の甘美な魔力を喰らってからは空腹感に耐えられなくなってきているんだ。ほれほれ。勿体ぶるな」
魔王は僕に近づいて来ると、菓子でも食べるように僕の手を取り指先に尖った犬歯を突き立てる。チクリと痛みが走るとじわじわと痛みが広がりジン……と痛む。指先からは血が溢れ出し魔王は赤子のように僕の指先にしゃぶりつく。
「う~~ん……足りないな。ヨルダもっと血をよこせ」
「これ以上やれるか! 血をやりすぎて体がダルいんだ……少しは我慢しろ」
「それは無理だな!」
他人事のように言ってくる魔王に腹を立てていると、魔王は何か思い付いたのか不敵な笑みを浮かべる。
「血が無理ならば……違うモノでもいいんだぞ? そうだなぁ……手始めに唾液でもいただこうか……」
「はぁ……? 何を言って……んぐっ!?」
ずいっと魔王の顔が近づいたかと思うと魔王のヒンヤリとした唇が僕の口を塞ぐ。文句を言ってやろうと口を開けば長い舌が僕の口の中に入ってきて……尚更深い口付けに変わる。
「んっ! や、やめっ……ん!」
やめろやめろと魔王の肩を押し返そうとするが、華奢な体の割に力が強くなかなか引き剥がせない。
無理に力を入れれば魔王を傷つけてしまい……そうすれぼミシェルさんが魔王に食べられてしまう。そう考えると強くは抵抗できず、諦めた僕は嫌々ながらも魔王の行為を受け入れる。
くちゅくちゅと舌で口の中を犯されるような感覚にゾクッと背中が震える。大嫌いな魔王にキスをされて気持ち悪いはずなのに……そんな僕の思いとは裏腹に何故だか体は魔王の行為を喜んでいるような気がした……。
「はぁ……ヨルダは唾液すらも甘いのか……。こんな事ならもっと早くキスするんだったな……」
「……このクソやろう」
「毎度毎度、睨みつけてくるなヨルダ。お前とのキスはとても気持ち良かったぞ」
クスクスと笑う魔王を見て、こんな場面をミシェルさんが見てしまったら絶対に傷ついてしまうと思うと心底腹が立った。
「お前は食えるならば何でもいいんだな……」
「まぁ……そうだな。お前達も食えるならばなんでもいいだろう?」
「そうだけど……。これからはキスとかはミシェルさんだけにしろよな……」
「ん? 何故だ?」
「何故って……キスは好きな者同士がする行為だろ……」
僕の言葉に魔王は、ん……と少し考え口を開く。
「私はヨルダの事も可愛いと思っているぞ? キャンキャンと私に吠えながらミシェルがくれば嬉しそうに尻尾を振る姿は見ていて可愛いからな! そうだなぁ……これは人間達でいう『好き』ってことだな」
「なっ!? 何を言っているんだ! お前は……ミシェルさんが好きで……傍に置いているんじゃないのか?」
「ミシェル? あぁ、もちろん好きだとも。ミシェルは何でもできる優秀な奴だしな」
「……そんな中途半端な気持ちでミシェルさんを縛り付けるな! 好きだというなら真っ直ぐミシェルさんだけを見つめていろ!」
ガシッと胸ぐらを掴み魔王を睨みつけるが、魔王は僕の言葉の意味が分からないといった顔をしてクスクスと笑う。
「前々から思っていたが……人間とは窮屈な生き方をするな~。好きな者など何人いてもいいではないか。何故一人だけにしなければいけないと縛りを課すのだ? まぁ……そのおかげで『勇者の番』は成り立っているのだがなぁ~」
魔王はそういうと僕の頬に優しくキスをして気持ちが悪いくらいに綺麗な顔をして微笑んでくる。
「私はヨルダを愛しているぞ。お前が望むのならば……これからはお前だけを愛すると誓おう」
「あっ……な、な、な、何を言ってるんだーーー!!」
「アハハハッッ! なんだその間抜けな顔は! やはりヨルダは最高だな」
魔王の言葉に不覚にも顔を赤く染めてしまい、僕のその表情を見た魔王は吹き出すように笑い転げる。
僕は恥ずかしさと苛立ちが混ざり合い、またカァァァ…と顔を赤く染める。
「お、お前なんて大嫌いだっっ!!」
そして、出てきた言葉もまた幼稚で……。
魔王の笑い声はしばらく止まる事はなかった……。
今日は魔族の集会日……。ミシェルさんは無事に到着しただろうか…?
ミシェルさんが出発してから魔王は毎日のように俺に血を求めてくる。
嫌な顔をすれば帰ってきたミシェルさんの血をたらふく喰らうと脅してくるので嫌々ながらも魔王に首を差し出す。
ミシェルさんは毎日こんな苦労をしていたのかと思うと何もしていなかった自分に嫌気がさす。
けれど……流石に3日も連続で魔王に血を与えると体が少し怠く感じる。
今日くらいは理由を話し魔王にも我慢してもらわないと……
そう考えながら僕は毎朝の日課の稽古を始める。
しばらくすると、いつの間にかやってきた魔王が退屈そうな顔をして僕の稽古を見ていた。
「ヨルダ~。退屈だぞ~。私の相手をしろ~」
「……お前もいい大人なんだから退屈ならば自分でやる事見つけろ。僕よりもかなり歳上のくせに……」
「ぬぅぅ……魔王としては私はまだまだ若い方なんだぞ! それにしても毎日毎日飽きもせず稽古とは……。何故鍛える必要があるんだ?」
キョトンと不思議そうな顔を見せる魔王に稽古の邪魔をされ少し苛立っていた僕は軽く睨みつける。
「……いつかお前を倒す日がくるかもしれないからな」
「何その顔! こわっ! そんな事言って私に意地悪したらミシェルに嫌われるぞ!」
「———ッッ! いつもミシェルさんを盾にしやがって……お前は自分で戦うつもりはないのか!」
「ふん! そんな事したら腹が減るだけだろ! いいのか? 私がお前と本気で戦えば……一度だけでは決着はつかないだろうな。その時、私は自分を回復する為にミシェルを喰らわなくてはならない。ダメージによっては……ミシェルが死んでしまうかもしれないぞ?」
「っっ!! そんな事……絶対にさせない!」
下唇を噛みさらに睨みつけると魔王は「ヒッ……」と体をビクつかせるが、何もしてこない僕を見ていつもの我儘魔王へと戻る。
「ふ、ふん……。ならば私を倒そうなど考えるな。それよりもヨルダ。腹が減ったぞ」
「………昨日喰ったばかりだろ」
「それでも腹が減ったんだ! お前の甘美な魔力を喰らってからは空腹感に耐えられなくなってきているんだ。ほれほれ。勿体ぶるな」
魔王は僕に近づいて来ると、菓子でも食べるように僕の手を取り指先に尖った犬歯を突き立てる。チクリと痛みが走るとじわじわと痛みが広がりジン……と痛む。指先からは血が溢れ出し魔王は赤子のように僕の指先にしゃぶりつく。
「う~~ん……足りないな。ヨルダもっと血をよこせ」
「これ以上やれるか! 血をやりすぎて体がダルいんだ……少しは我慢しろ」
「それは無理だな!」
他人事のように言ってくる魔王に腹を立てていると、魔王は何か思い付いたのか不敵な笑みを浮かべる。
「血が無理ならば……違うモノでもいいんだぞ? そうだなぁ……手始めに唾液でもいただこうか……」
「はぁ……? 何を言って……んぐっ!?」
ずいっと魔王の顔が近づいたかと思うと魔王のヒンヤリとした唇が僕の口を塞ぐ。文句を言ってやろうと口を開けば長い舌が僕の口の中に入ってきて……尚更深い口付けに変わる。
「んっ! や、やめっ……ん!」
やめろやめろと魔王の肩を押し返そうとするが、華奢な体の割に力が強くなかなか引き剥がせない。
無理に力を入れれば魔王を傷つけてしまい……そうすれぼミシェルさんが魔王に食べられてしまう。そう考えると強くは抵抗できず、諦めた僕は嫌々ながらも魔王の行為を受け入れる。
くちゅくちゅと舌で口の中を犯されるような感覚にゾクッと背中が震える。大嫌いな魔王にキスをされて気持ち悪いはずなのに……そんな僕の思いとは裏腹に何故だか体は魔王の行為を喜んでいるような気がした……。
「はぁ……ヨルダは唾液すらも甘いのか……。こんな事ならもっと早くキスするんだったな……」
「……このクソやろう」
「毎度毎度、睨みつけてくるなヨルダ。お前とのキスはとても気持ち良かったぞ」
クスクスと笑う魔王を見て、こんな場面をミシェルさんが見てしまったら絶対に傷ついてしまうと思うと心底腹が立った。
「お前は食えるならば何でもいいんだな……」
「まぁ……そうだな。お前達も食えるならばなんでもいいだろう?」
「そうだけど……。これからはキスとかはミシェルさんだけにしろよな……」
「ん? 何故だ?」
「何故って……キスは好きな者同士がする行為だろ……」
僕の言葉に魔王は、ん……と少し考え口を開く。
「私はヨルダの事も可愛いと思っているぞ? キャンキャンと私に吠えながらミシェルがくれば嬉しそうに尻尾を振る姿は見ていて可愛いからな! そうだなぁ……これは人間達でいう『好き』ってことだな」
「なっ!? 何を言っているんだ! お前は……ミシェルさんが好きで……傍に置いているんじゃないのか?」
「ミシェル? あぁ、もちろん好きだとも。ミシェルは何でもできる優秀な奴だしな」
「……そんな中途半端な気持ちでミシェルさんを縛り付けるな! 好きだというなら真っ直ぐミシェルさんだけを見つめていろ!」
ガシッと胸ぐらを掴み魔王を睨みつけるが、魔王は僕の言葉の意味が分からないといった顔をしてクスクスと笑う。
「前々から思っていたが……人間とは窮屈な生き方をするな~。好きな者など何人いてもいいではないか。何故一人だけにしなければいけないと縛りを課すのだ? まぁ……そのおかげで『勇者の番』は成り立っているのだがなぁ~」
魔王はそういうと僕の頬に優しくキスをして気持ちが悪いくらいに綺麗な顔をして微笑んでくる。
「私はヨルダを愛しているぞ。お前が望むのならば……これからはお前だけを愛すると誓おう」
「あっ……な、な、な、何を言ってるんだーーー!!」
「アハハハッッ! なんだその間抜けな顔は! やはりヨルダは最高だな」
魔王の言葉に不覚にも顔を赤く染めてしまい、僕のその表情を見た魔王は吹き出すように笑い転げる。
僕は恥ずかしさと苛立ちが混ざり合い、またカァァァ…と顔を赤く染める。
「お、お前なんて大嫌いだっっ!!」
そして、出てきた言葉もまた幼稚で……。
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