【完結】幼馴染みが勇者になり何故か俺は勇者の番になりました

赤牙

文字の大きさ
上 下
46 / 56
番外編:片想い勇者の恋の行方

勇者と魔王のお留守番 ⑦

しおりを挟む
魔王とのお留守番も早いもので3日が経った。
今日は魔族の集会日……。ミシェルさんは無事に到着しただろうか…?

ミシェルさんが出発してから魔王は毎日のように俺に血を求めてくる。
嫌な顔をすれば帰ってきたミシェルさんの血をたらふく喰らうと脅してくるので嫌々ながらも魔王に首を差し出す。

ミシェルさんは毎日こんな苦労をしていたのかと思うと何もしていなかった自分に嫌気がさす。
けれど……流石に3日も連続で魔王に血を与えると体が少し怠く感じる。
今日くらいは理由を話し魔王にも我慢してもらわないと……

そう考えながら僕は毎朝の日課の稽古を始める。
しばらくすると、いつの間にかやってきた魔王が退屈そうな顔をして僕の稽古を見ていた。

「ヨルダ~。退屈だぞ~。私の相手をしろ~」
「……お前もいい大人なんだから退屈ならば自分でやる事見つけろ。僕よりもかなり歳上のくせに……」
「ぬぅぅ……魔王としては私はまだまだ若い方なんだぞ! それにしても毎日毎日飽きもせず稽古とは……。何故鍛える必要があるんだ?」

キョトンと不思議そうな顔を見せる魔王に稽古の邪魔をされ少し苛立っていた僕は軽く睨みつける。

「……いつかお前を倒す日がくるかもしれないからな」
「何その顔! こわっ! そんな事言って私に意地悪したらミシェルに嫌われるぞ!」
「———ッッ! いつもミシェルさんを盾にしやがって……お前は自分で戦うつもりはないのか!」
「ふん! そんな事したら腹が減るだけだろ! いいのか? 私がお前と本気で戦えば……一度だけでは決着はつかないだろうな。その時、私は自分を回復する為にミシェルを喰らわなくてはならない。ダメージによっては……ミシェルが死んでしまうかもしれないぞ?」
「っっ!! そんな事……絶対にさせない!」

下唇を噛みさらに睨みつけると魔王は「ヒッ……」と体をビクつかせるが、何もしてこない僕を見ていつもの我儘魔王へと戻る。

「ふ、ふん……。ならば私を倒そうなど考えるな。それよりもヨルダ。腹が減ったぞ」
「………昨日喰ったばかりだろ」
「それでも腹が減ったんだ! お前の甘美な魔力を喰らってからは空腹感に耐えられなくなってきているんだ。ほれほれ。勿体ぶるな」

魔王は僕に近づいて来ると、菓子でも食べるように僕の手を取り指先に尖った犬歯を突き立てる。チクリと痛みが走るとじわじわと痛みが広がりジン……と痛む。指先からは血が溢れ出し魔王は赤子のように僕の指先にしゃぶりつく。

「う~~ん……足りないな。ヨルダもっと血をよこせ」
「これ以上やれるか! 血をやりすぎて体がダルいんだ……少しは我慢しろ」
「それは無理だな!」

他人事のように言ってくる魔王に腹を立てていると、魔王は何か思い付いたのか不敵な笑みを浮かべる。

「血が無理ならば……違うモノでもいいんだぞ? そうだなぁ……手始めに唾液でもいただこうか……」
「はぁ……? 何を言って……んぐっ!?」

ずいっと魔王の顔が近づいたかと思うと魔王のヒンヤリとした唇が僕の口を塞ぐ。文句を言ってやろうと口を開けば長い舌が僕の口の中に入ってきて……尚更深い口付けに変わる。

「んっ! や、やめっ……ん!」

やめろやめろと魔王の肩を押し返そうとするが、華奢な体の割に力が強くなかなか引き剥がせない。
無理に力を入れれば魔王を傷つけてしまい……そうすれぼミシェルさんが魔王に食べられてしまう。そう考えると強くは抵抗できず、諦めた僕は嫌々ながらも魔王の行為を受け入れる。

くちゅくちゅと舌で口の中を犯されるような感覚にゾクッと背中が震える。大嫌いな魔王にキスをされて気持ち悪いはずなのに……そんな僕の思いとは裏腹に何故だか体は魔王の行為を喜んでいるような気がした……。

「はぁ……ヨルダは唾液すらも甘いのか……。こんな事ならもっと早くキスするんだったな……」
「……このクソやろう」
「毎度毎度、睨みつけてくるなヨルダ。お前とのキスはとても気持ち良かったぞ」

クスクスと笑う魔王を見て、こんな場面をミシェルさんが見てしまったら絶対に傷ついてしまうと思うと心底腹が立った。

「お前は食えるならば何でもいいんだな……」
「まぁ……そうだな。お前達も食えるならばなんでもいいだろう?」
「そうだけど……。これからはキスとかはミシェルさんだけにしろよな……」
「ん? 何故だ?」
「何故って……キスは好きな者同士がする行為だろ……」

僕の言葉に魔王は、ん……と少し考え口を開く。

「私はヨルダの事も可愛いと思っているぞ? キャンキャンと私に吠えながらミシェルがくれば嬉しそうに尻尾を振る姿は見ていて可愛いからな! そうだなぁ……これは人間達でいう『好き』ってことだな」
「なっ!? 何を言っているんだ! お前は……ミシェルさんが好きで……傍に置いているんじゃないのか?」
「ミシェル? あぁ、もちろん好きだとも。ミシェルは何でもできる優秀な奴だしな」
「……そんな中途半端な気持ちでミシェルさんを縛り付けるな! 好きだというなら真っ直ぐミシェルさんだけを見つめていろ!」

ガシッと胸ぐらを掴み魔王を睨みつけるが、魔王は僕の言葉の意味が分からないといった顔をしてクスクスと笑う。

「前々から思っていたが……人間とは窮屈な生き方をするな~。好きな者など何人いてもいいではないか。何故一人だけにしなければいけないと縛りを課すのだ? まぁ……そのおかげで『勇者の番』は成り立っているのだがなぁ~」

魔王はそういうと僕の頬に優しくキスをして気持ちが悪いくらいに綺麗な顔をして微笑んでくる。

「私はヨルダを愛しているぞ。お前が望むのならば……これからはお前だけを愛すると誓おう」
「あっ……な、な、な、何を言ってるんだーーー!!」
「アハハハッッ! なんだその間抜けな顔は! やはりヨルダは最高だな」

魔王の言葉に不覚にも顔を赤く染めてしまい、僕のその表情を見た魔王は吹き出すように笑い転げる。
僕は恥ずかしさと苛立ちが混ざり合い、またカァァァ…と顔を赤く染める。

「お、お前なんて大嫌いだっっ!!」

そして、出てきた言葉もまた幼稚で……。
魔王の笑い声はしばらく止まる事はなかった……。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない

ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。 元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。 無口俺様攻め×美形世話好き *マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま 他サイトも転載してます。

処理中です...