41 / 56
番外編:片想い勇者の恋の行方
勇者と魔王のお留守番 ②
しおりを挟む
遡る事三ヶ月前の事……。
ミシェルさんを救う為に魔王城に乗り込んだ僕は五年という長い歳月を経てようやくミシェルさんを見つけ出す。
やっと見つけた大切な愛しい人の姿に僕は歓喜し救い出そうとしたが僕の願いは叶わなかった……。
それどころか、とんでもない事実を知らされてしまう。
魔王とミシェルさんは元々知り合いでミシェルさんは魔王の為に『勇者の番』になったという……。
魔王城へと向かう旅に同行したのも魔王の元に向かう為だと……。
その事実に僕は愕然としながらも必死になって地上へ一緒に戻ろうと説得はしてみたが……魔王はミシェルさんにとって命の恩人で恩を返すまでは帰れないと断られる始末……。
どんなに説得をしてもミシェルさんは首を縦には振ってくれず……僕がミシェルさんの事を諦め帰ろうとした時、何故か魔王がミシェルさんを説得し始めた。
「ミシェル。勇者を帰すな。そいつはここに置いておく」
「……どうしてですか? 食事ならば俺が……」
「食わせてもらっている分際で言うのもなんだが……最近お前の味が落ちてきている。どうやら勇者の魔力が薄くなってきているようだな」
「なっ!? あ、味が落ち………。リース様……その言葉もの凄く傷つきましたよ。しかし……ヨルダにリース様の食事事情を説明するのは……」
「別に構わん。まぁ……嫌だと言っても逃がしはしない。鎖で繋げばいいだけだ。お前のようにこの魔王城で飼ってしまえばいい」
鎖で繋ぐだの飼うだの不穏な言葉も聞こえてきたが、それよりもミシェルさんが魔王へと向ける優しい視線や態度が気になり、呆然と二人のやり取りを見ている僕にミシェルさんは心配そうな視線を向ける。
「ヨルダ……? ボーっとしているが大丈夫か? 瘴気の濃い地底に長くいるせいで体に負荷がかかっていないか?」
「あ……大丈夫……です。瘴気は数年かけて体に慣れさせたので……」
「ほぅ……。瘴気に体を慣らしたか……。下僕の契約もしないでいいとは気の利く奴だな。尚更気に入ったぞ勇者! ミシェル! 勇者は絶対に帰らせないからな!」
瘴気に慣れた僕の事を何故か魔王は喜びながらはしゃぎ、ミシェルさんはそんな魔王を見て諦めたように深いため息を吐く。
「ハァァ……。もうこうなったらリース様の説得は無理だな……。ヨルダ。今から俺が何故ここにいないといけないのか理由を話す。それを聞けばお前も納得するだろうからな……」
それからミシェルさんに魔王の食事事情や、勇者の番の役割など色々と説明されたが……
僕の予想を遥かに超える内容に頭がパンクした……。
つまりミシェルさんは魔王のご飯で……食べられているの?
しかも、血だけでなく……性的な感じでも!?
目の前にいる二人の食事風景が頭の中で浮かんでくるが僕は否定したくてその妄想を必死に消す。
「という訳だ。リース様の食糧として俺はここに残る必要がある。お前は地上に帰り元の生活に戻れ」
「おいミシェル。何を勝手に話を進めている。私は勇者をここで飼うと言っただろう」
「リース様。我儘を言ってはいけません。それにヨルダは勇者なんですよ。貴方は勇者に命を狙われる立場だ。敵を近くに置いておくのは危険です」
「ふん! その時はミシェルが守ってくれるから大丈夫だろ? それに、お前が倒された時はガルパスを盾にして逃げるから安心しろ」
ミシェルさんと魔王はとても仲が良さそうに会話をし、今まで見たことのないミシェルさんの拗ねた表情や怒った顔……そして魔王に向けられる笑顔を見て僕は二人が深い関係性がある事に気付きギュッと胸が締め付けられる。
ミシェルさんは僕のことを地上へと返したいようだが、このままミシェルさんを魔王の側に置いていたら心も体も食べ尽くされてしまう…。
理由を聞いた以上ミシェルさん一人にそんな犠牲を払わせる訳にはいかない。
それに……大好きなミシェルさんをぞんざいに扱い容易く触れる魔王が何よりも許せない……。
「僕……ここにいます。ミシェルさんの代わりに魔王に食べられます」
「お、おいおいヨルダ……。食べられるって意味を分かって言っているのか?」
「はは。勇者はミシェルよりも勇敢で話の分かる奴だな~。気に入ったぞ」
ケラケラと笑う魔王に苛立つがミシェルさんの為だ。
僕が負担すればそれだけミシェルさんは楽になる。
「よし。ヨルダと言ったな……。まずは味見をさせてもらおうじゃないか」
「味見……?」
「あぁそうだ。私は勇者の体液に含まれる魔力が食料だからな……手始めに血でもいただこうか」
ニンマリと悪魔のような笑顔を向けられると、ゾクリと背筋が凍る。見た目は華奢で強そうには見えないが……やはり魔王というだけはあるな……。
「構わない。好きにしろ」
僕はそういうと魔王の方へと向かい体を差し出した。
ミシェルさんを救う為に魔王城に乗り込んだ僕は五年という長い歳月を経てようやくミシェルさんを見つけ出す。
やっと見つけた大切な愛しい人の姿に僕は歓喜し救い出そうとしたが僕の願いは叶わなかった……。
それどころか、とんでもない事実を知らされてしまう。
魔王とミシェルさんは元々知り合いでミシェルさんは魔王の為に『勇者の番』になったという……。
魔王城へと向かう旅に同行したのも魔王の元に向かう為だと……。
その事実に僕は愕然としながらも必死になって地上へ一緒に戻ろうと説得はしてみたが……魔王はミシェルさんにとって命の恩人で恩を返すまでは帰れないと断られる始末……。
どんなに説得をしてもミシェルさんは首を縦には振ってくれず……僕がミシェルさんの事を諦め帰ろうとした時、何故か魔王がミシェルさんを説得し始めた。
「ミシェル。勇者を帰すな。そいつはここに置いておく」
「……どうしてですか? 食事ならば俺が……」
「食わせてもらっている分際で言うのもなんだが……最近お前の味が落ちてきている。どうやら勇者の魔力が薄くなってきているようだな」
「なっ!? あ、味が落ち………。リース様……その言葉もの凄く傷つきましたよ。しかし……ヨルダにリース様の食事事情を説明するのは……」
「別に構わん。まぁ……嫌だと言っても逃がしはしない。鎖で繋げばいいだけだ。お前のようにこの魔王城で飼ってしまえばいい」
鎖で繋ぐだの飼うだの不穏な言葉も聞こえてきたが、それよりもミシェルさんが魔王へと向ける優しい視線や態度が気になり、呆然と二人のやり取りを見ている僕にミシェルさんは心配そうな視線を向ける。
「ヨルダ……? ボーっとしているが大丈夫か? 瘴気の濃い地底に長くいるせいで体に負荷がかかっていないか?」
「あ……大丈夫……です。瘴気は数年かけて体に慣れさせたので……」
「ほぅ……。瘴気に体を慣らしたか……。下僕の契約もしないでいいとは気の利く奴だな。尚更気に入ったぞ勇者! ミシェル! 勇者は絶対に帰らせないからな!」
瘴気に慣れた僕の事を何故か魔王は喜びながらはしゃぎ、ミシェルさんはそんな魔王を見て諦めたように深いため息を吐く。
「ハァァ……。もうこうなったらリース様の説得は無理だな……。ヨルダ。今から俺が何故ここにいないといけないのか理由を話す。それを聞けばお前も納得するだろうからな……」
それからミシェルさんに魔王の食事事情や、勇者の番の役割など色々と説明されたが……
僕の予想を遥かに超える内容に頭がパンクした……。
つまりミシェルさんは魔王のご飯で……食べられているの?
しかも、血だけでなく……性的な感じでも!?
目の前にいる二人の食事風景が頭の中で浮かんでくるが僕は否定したくてその妄想を必死に消す。
「という訳だ。リース様の食糧として俺はここに残る必要がある。お前は地上に帰り元の生活に戻れ」
「おいミシェル。何を勝手に話を進めている。私は勇者をここで飼うと言っただろう」
「リース様。我儘を言ってはいけません。それにヨルダは勇者なんですよ。貴方は勇者に命を狙われる立場だ。敵を近くに置いておくのは危険です」
「ふん! その時はミシェルが守ってくれるから大丈夫だろ? それに、お前が倒された時はガルパスを盾にして逃げるから安心しろ」
ミシェルさんと魔王はとても仲が良さそうに会話をし、今まで見たことのないミシェルさんの拗ねた表情や怒った顔……そして魔王に向けられる笑顔を見て僕は二人が深い関係性がある事に気付きギュッと胸が締め付けられる。
ミシェルさんは僕のことを地上へと返したいようだが、このままミシェルさんを魔王の側に置いていたら心も体も食べ尽くされてしまう…。
理由を聞いた以上ミシェルさん一人にそんな犠牲を払わせる訳にはいかない。
それに……大好きなミシェルさんをぞんざいに扱い容易く触れる魔王が何よりも許せない……。
「僕……ここにいます。ミシェルさんの代わりに魔王に食べられます」
「お、おいおいヨルダ……。食べられるって意味を分かって言っているのか?」
「はは。勇者はミシェルよりも勇敢で話の分かる奴だな~。気に入ったぞ」
ケラケラと笑う魔王に苛立つがミシェルさんの為だ。
僕が負担すればそれだけミシェルさんは楽になる。
「よし。ヨルダと言ったな……。まずは味見をさせてもらおうじゃないか」
「味見……?」
「あぁそうだ。私は勇者の体液に含まれる魔力が食料だからな……手始めに血でもいただこうか」
ニンマリと悪魔のような笑顔を向けられると、ゾクリと背筋が凍る。見た目は華奢で強そうには見えないが……やはり魔王というだけはあるな……。
「構わない。好きにしろ」
僕はそういうと魔王の方へと向かい体を差し出した。
9
お気に入りに追加
2,134
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる