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12話:幼馴染みと魔獣
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俺は目の前にいる巨大な熊の魔獣を確認すると、すぐさまベヌエット様を抱き上げると走り出す。
「え?シモンどうしたの…ひぃっ!」
ベヌエット様は後ろから追いかけてくる熊を見て小さな悲鳴をあげる。
ヤバイ…ヤバイヤバイヤバイ!
あそこまで巨大な魔獣は俺一人では対処できない。テオ達のいる方へと逃げ助けを求めるのが最善だ。
「ベヌエット様…テオ達の所まで逃げるのでしっかり掴まっていて下さい」
ベヌエット様は俺の体にギュッとしがみつく。
しがみつく手は震えているのが分かる。
熊の魔獣の唸り声と迫りくる足音に俺も恐怖に駆られる。でもここで立ち止まればベヌエット様共々殺される。
恐怖で震える足を必死に前に出すが上手く走れない。すぐ後ろまで迫ってきた魔獣の鋭い爪が襲いかかる。
ヤバい!やられるっ!
…だが襲ってくるはずの魔獣の攻撃は『何か』に阻まれたようで後ろを振り向くと魔獣が攻撃を弾き返された反動で倒れていた。
倒れている隙に必死に走り少しずつ魔獣との距離が遠くなる…
よかった…逃げ切れる…
そう思った瞬間、魔獣が一際大きな咆哮を上げる。
空気がビリビリと振動する程の大きな咆哮で鼓膜に痛みが走る。
怖い…怖い…怖い…
咆哮のせいで強烈な恐怖感に襲われ足が竦む。
走らないといけないのに逃げないといけないのに…足がなかなか前に出ない。
腕の中にいるベヌエット様は恐怖のあまり過呼吸を起こし顔は蒼ざめわなわなと震えている。
魔獣の足音がどんどん近づいてくる…
この足じゃ確実に追いつかれてしまう。
ベヌエット様だけでも守らなきゃ…
竦む足でなんとかベヌエット様を木の窪みにまで運び見つからないように隠す。
「いゃ…シモンいっちゃダメ…」
ベヌエット様は目に涙を溜めて俺の服の袖を引っ張る。
「大丈夫ですから。ベヌエット様はここで待っていて下さい」
俺を掴んでいた手をそっと離すと俺は魔獣のいる方へと足を向ける。
魔獣の注意を引き付けベヌエット様からなるべく離すんだ。さっきの咆哮でテオ達も魔獣に気がついたはず。きっと…きっと助けに来てくれる…
腰に下げている剣に手をかけ魔獣へ対峙する。
魔獣は口角からダラダラと唾液を垂らしながら俺の事を見つめる。
魔獣の口角がニヤリと上がった気がした…そして目の前でもう一度大きな咆哮を上げられると俺は恐怖で立っている事もできず膝から崩れ落ちるように座り込んでしまう。
やっぱり俺なんかが魔王を倒す旅なんかに来ちゃいけなかったんだ…
「テオ…」
何故か最後にアイツの名前を呟いてしまう。
魔獣の鋭い爪が俺の顔目がけて振り下ろされ死を覚悟しギュッと目を瞑る。
その時、隣を高速の何かが通り抜けていった。
……もう俺死んだ?
痛みも感じずに一瞬で死ねたのか?
疑問に思い目を開けた瞬間、魔獣の頭部が宙を舞い首から勢いよく血が吹き出し巨大な体が後方に倒れていく。
「シモン…シモン…!?大丈夫?怪我してない?」
大剣を片手に魔獣の返り血を浴びたテオがそばに来て座り込む俺を抱きしめる。
テオに抱きしめられ俺は自分が生きている事を実感した。
「え?シモンどうしたの…ひぃっ!」
ベヌエット様は後ろから追いかけてくる熊を見て小さな悲鳴をあげる。
ヤバイ…ヤバイヤバイヤバイ!
あそこまで巨大な魔獣は俺一人では対処できない。テオ達のいる方へと逃げ助けを求めるのが最善だ。
「ベヌエット様…テオ達の所まで逃げるのでしっかり掴まっていて下さい」
ベヌエット様は俺の体にギュッとしがみつく。
しがみつく手は震えているのが分かる。
熊の魔獣の唸り声と迫りくる足音に俺も恐怖に駆られる。でもここで立ち止まればベヌエット様共々殺される。
恐怖で震える足を必死に前に出すが上手く走れない。すぐ後ろまで迫ってきた魔獣の鋭い爪が襲いかかる。
ヤバい!やられるっ!
…だが襲ってくるはずの魔獣の攻撃は『何か』に阻まれたようで後ろを振り向くと魔獣が攻撃を弾き返された反動で倒れていた。
倒れている隙に必死に走り少しずつ魔獣との距離が遠くなる…
よかった…逃げ切れる…
そう思った瞬間、魔獣が一際大きな咆哮を上げる。
空気がビリビリと振動する程の大きな咆哮で鼓膜に痛みが走る。
怖い…怖い…怖い…
咆哮のせいで強烈な恐怖感に襲われ足が竦む。
走らないといけないのに逃げないといけないのに…足がなかなか前に出ない。
腕の中にいるベヌエット様は恐怖のあまり過呼吸を起こし顔は蒼ざめわなわなと震えている。
魔獣の足音がどんどん近づいてくる…
この足じゃ確実に追いつかれてしまう。
ベヌエット様だけでも守らなきゃ…
竦む足でなんとかベヌエット様を木の窪みにまで運び見つからないように隠す。
「いゃ…シモンいっちゃダメ…」
ベヌエット様は目に涙を溜めて俺の服の袖を引っ張る。
「大丈夫ですから。ベヌエット様はここで待っていて下さい」
俺を掴んでいた手をそっと離すと俺は魔獣のいる方へと足を向ける。
魔獣の注意を引き付けベヌエット様からなるべく離すんだ。さっきの咆哮でテオ達も魔獣に気がついたはず。きっと…きっと助けに来てくれる…
腰に下げている剣に手をかけ魔獣へ対峙する。
魔獣は口角からダラダラと唾液を垂らしながら俺の事を見つめる。
魔獣の口角がニヤリと上がった気がした…そして目の前でもう一度大きな咆哮を上げられると俺は恐怖で立っている事もできず膝から崩れ落ちるように座り込んでしまう。
やっぱり俺なんかが魔王を倒す旅なんかに来ちゃいけなかったんだ…
「テオ…」
何故か最後にアイツの名前を呟いてしまう。
魔獣の鋭い爪が俺の顔目がけて振り下ろされ死を覚悟しギュッと目を瞑る。
その時、隣を高速の何かが通り抜けていった。
……もう俺死んだ?
痛みも感じずに一瞬で死ねたのか?
疑問に思い目を開けた瞬間、魔獣の頭部が宙を舞い首から勢いよく血が吹き出し巨大な体が後方に倒れていく。
「シモン…シモン…!?大丈夫?怪我してない?」
大剣を片手に魔獣の返り血を浴びたテオがそばに来て座り込む俺を抱きしめる。
テオに抱きしめられ俺は自分が生きている事を実感した。
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