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11話:幼馴染みはお留守番
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王都を出発してから5日目の朝。予定ならばとっくに町に到着していたはずだが、町まであと1日位かかる距離を残していた。
遅れた原因は『俺』。
ベヌエット様は馬車の旅に慣れず体調が悪く青い顔をしていても文句も言わずに一人我慢している事が多く俺が休憩を頻回にいれた為だ。
幸いな事に予定が遅れても誰も文句は言わない。
いや文句なんて言わせない!
こんな小さな女の子に魔王の討伐を言い渡す王や大人達もどうかしてる…
そして今日の移動も頻回に休憩を挟みながら進んでいく。
「今日はこの辺でテントを張ろうか」
陽が沈む前にアレンさんが少し開けた場所に馬車を止め皆はいつものように野営の準備に取り掛かっていく。
「んーむ。薪が少なくなってきておるのぉ」
ガルパス様が馬車の荷台に積んでいた薪を見て呟いた独り言が耳に入る。
予定よりも数日遅れてきているので足りない備品も出てきている。
「ガルパス様!俺が薪拾ってきます!」
テントの設営も終えて俺は薪拾いに向かおうとすると
「わ、私も薪拾いに行く」
ベヌエット様が恥ずかしそうに手を上げて手伝いを申し出てくれた。
「ありがとうございます。じゃあ一緒に行きましょう」
「あっ!はい!はいはい!僕も!僕も行く!」
ベヌエット様に薪拾い用の袋を渡しているとテオも手を上げてアピールしてくる…
「お前は馬車の点検整備が終わってないだろ…」
「終わってないけど…でもぉ…」
「終わるまで来たらダメだからな!」
テオは「酷いよぉー」と半泣きで馬車の整備点検へと戻り俺達は森へと向かった。
街道沿いには森が広がっており奥に入り込まなければ魔獣との遭遇率も少ない。
それでも俺は細心の注意を払いながら進み薪を拾っていく。
「ベヌエット様はこのような乾いた細い木を拾って下さい」
「細いのね…分かった」
ベヌエット様は俺から言われた通りに小枝を夢中で拾っている。
最初の頃は手伝いなど出来ずにただ見ている事が多かったベヌエット様が最近は少しずつ手伝える事がないか声をかけてくれる。
「ねぇシモン」
「どうしましたベヌエット様?」
「私…あなたに謝まりたいの…」
薪を拾う手を止めベヌエット様の方へと振り向くと下を向き今にも泣き出しそうな顔が目に入る。
「え?え?ど、どうしたんですか?」
「ごめんなさい…私…あなたに酷い態度をとってしまっていたわ…」
ぐすぐすと泣き出してしまったベヌエット様に俺は慌ててしまう。
「謝る事なんて何もないですよ!だからもう泣かないで下さい…」
「でも、私は自分の不安を全部シモンのせいにして睨んだりキツイ態度をとってしまった…」
「ベヌエット様…」
「父から聖女は『勇者の番』になれるから勇者の加護が得られ危険なことはないと聞いていたの。でもシモンを番にすると聞いて私は怖くなって…魔獣だけでも恐ろしいのに魔王になんて立ち向かえない…」
ポロポロと涙を流すベヌエット様を俺は思わず抱きしめてしまう。
「ずっと不安を抱えて辛かったですよね…でも俺達が全力でベヌエット様を守りますから安心して下さい」
ベヌエット様も俺をギュッと抱きしめ返し胸の中で今までの不安を吐き出す。
俺はベヌエット様の話をうんうんと聞き頭を撫でてあげた。
そういえばベヌエット様が言っていた『勇者の加護』って何だ?と思っていると背後からバキっと枝の折れる音がした。
…テオが来たんだな。
今の状況を見たらギャーギャー喚き出すんだろうな…
そう思い背後へ振り向くと
そこには興奮した巨大な熊の魔獣が仁王立ちしたままこちらを見ていた。
遅れた原因は『俺』。
ベヌエット様は馬車の旅に慣れず体調が悪く青い顔をしていても文句も言わずに一人我慢している事が多く俺が休憩を頻回にいれた為だ。
幸いな事に予定が遅れても誰も文句は言わない。
いや文句なんて言わせない!
こんな小さな女の子に魔王の討伐を言い渡す王や大人達もどうかしてる…
そして今日の移動も頻回に休憩を挟みながら進んでいく。
「今日はこの辺でテントを張ろうか」
陽が沈む前にアレンさんが少し開けた場所に馬車を止め皆はいつものように野営の準備に取り掛かっていく。
「んーむ。薪が少なくなってきておるのぉ」
ガルパス様が馬車の荷台に積んでいた薪を見て呟いた独り言が耳に入る。
予定よりも数日遅れてきているので足りない備品も出てきている。
「ガルパス様!俺が薪拾ってきます!」
テントの設営も終えて俺は薪拾いに向かおうとすると
「わ、私も薪拾いに行く」
ベヌエット様が恥ずかしそうに手を上げて手伝いを申し出てくれた。
「ありがとうございます。じゃあ一緒に行きましょう」
「あっ!はい!はいはい!僕も!僕も行く!」
ベヌエット様に薪拾い用の袋を渡しているとテオも手を上げてアピールしてくる…
「お前は馬車の点検整備が終わってないだろ…」
「終わってないけど…でもぉ…」
「終わるまで来たらダメだからな!」
テオは「酷いよぉー」と半泣きで馬車の整備点検へと戻り俺達は森へと向かった。
街道沿いには森が広がっており奥に入り込まなければ魔獣との遭遇率も少ない。
それでも俺は細心の注意を払いながら進み薪を拾っていく。
「ベヌエット様はこのような乾いた細い木を拾って下さい」
「細いのね…分かった」
ベヌエット様は俺から言われた通りに小枝を夢中で拾っている。
最初の頃は手伝いなど出来ずにただ見ている事が多かったベヌエット様が最近は少しずつ手伝える事がないか声をかけてくれる。
「ねぇシモン」
「どうしましたベヌエット様?」
「私…あなたに謝まりたいの…」
薪を拾う手を止めベヌエット様の方へと振り向くと下を向き今にも泣き出しそうな顔が目に入る。
「え?え?ど、どうしたんですか?」
「ごめんなさい…私…あなたに酷い態度をとってしまっていたわ…」
ぐすぐすと泣き出してしまったベヌエット様に俺は慌ててしまう。
「謝る事なんて何もないですよ!だからもう泣かないで下さい…」
「でも、私は自分の不安を全部シモンのせいにして睨んだりキツイ態度をとってしまった…」
「ベヌエット様…」
「父から聖女は『勇者の番』になれるから勇者の加護が得られ危険なことはないと聞いていたの。でもシモンを番にすると聞いて私は怖くなって…魔獣だけでも恐ろしいのに魔王になんて立ち向かえない…」
ポロポロと涙を流すベヌエット様を俺は思わず抱きしめてしまう。
「ずっと不安を抱えて辛かったですよね…でも俺達が全力でベヌエット様を守りますから安心して下さい」
ベヌエット様も俺をギュッと抱きしめ返し胸の中で今までの不安を吐き出す。
俺はベヌエット様の話をうんうんと聞き頭を撫でてあげた。
そういえばベヌエット様が言っていた『勇者の加護』って何だ?と思っていると背後からバキっと枝の折れる音がした。
…テオが来たんだな。
今の状況を見たらギャーギャー喚き出すんだろうな…
そう思い背後へ振り向くと
そこには興奮した巨大な熊の魔獣が仁王立ちしたままこちらを見ていた。
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